世界の端っこと
アニメの3期やる予定ですし推しの子二次創作界隈がまた盛り上がってくれると嬉しいです
高千穂から帰って数日後。撮影したばかりのMVが完成するのにはまだしばらく時間がかかると言うことでB小町はそれまで特に動きはない。アクアも舞台後の仕事は特に決まっていないようで両者仕事の無いぽっかりと空いた期間になる。仕事が無い期間二人はただの学生として過ごすことになる。しかし硝太はただの学生として過ごすことは出来ない。斉藤ミヤコを狙った貝原亮介による暗殺未遂を止めたインスタントバレットとしてやるべき事はどうしても発生する。
冬休みが終わり、新学期が始まる。冬休みの思い出を語る同級生の横をすり抜けて足早に校舎を出る。
「硝太」
校舎を出ると声をかけられたので声がした方向に首を回す。そこには見覚えのある顔が二つあった。一つは友人であり、同時に家族より先にインスタントバレットのことについて打ち明けた共犯者とも言える不知火フリル。もう一人は彼女のマネージャーである
「久しぶり、の方がいい?氷室のおっさん」
氷室という50代の初老を超えた男性。フリルのストーカーに刺された病院で会った男であり、その時はフリルの処遇を巡って口喧嘩をしたが今それを考える
彼にはフリル伝いに一つ、仕事を依頼している。自身が入院した病院に最近まで入院していた患者等の名簿を持ち出してフリルの事務所に合致する人間はいるか調べてもらっていたのだ。
「さっさと乗れ、クソガキ」
「相変わらず硝太のこと嫌いだね」
氷室は相変わらず機嫌が悪いようで乗るように促すも声特徴からは半グレかヤンキーが喧嘩を売っているようにしか見えない。
こう見えても彼は事務所の看板である不知火フリルのマネージャーを任されており、それなりの実力と立場を持っている。以前までは不知火フリルに近づく男、また事件の詳細を知る人間として死んで欲しいと思う感情を隠すことなく見せてきたが仕事の依頼の件もあり、今は多少丸くなっているように感じる。硝太は黙ったまま視線が無いことを確認して氷室の車に乗り込む。
氷室の車は加齢臭と煙草の匂いが混ざった酷い匂いがする…と思ったがいい消臭剤を使っているのかその辺は煙草の煙が煙たいだけで想像よりは快適だった。
「不知火に話は聞いた。随分でかいことをしたみたいだな」
こちらが乗り込んだのを確認して氷室が車を発進させて視線も向けずに話し始める。
「一応お前の出したやつを全部見て見たがウチの事務所に関わりがあるやつは特に居なかったよ」
氷室の出した結論は「硝太が入院していた最近亡くなった人、一日以上入院した人を纏めたリストを全て見て確認してみたが社員とその家族はフリルの事務所にはいなかった。」つまり社員の身内にあの病院に最近までいた人間はいなかったということ。
フリルの今後の安否が関わってくるかもしれない話なので氷室もふざけて作るはずがない。氷室の言う通りと考えていい。フリルの事務所の規模は苺プロとは比較にならない。当然そこに入社してる社員の数、そこからその身内の数も多いがその中から大きな病院ではあるが特に変わったものでも無い近所の病院にただの入院患者としても誰もいないのも不自然ではあるがありえない訳ではない。
「…社員じゃない、ってことか」
「その言い方だとまだ病院の患者とウチが関わってると疑ってるみたいだが?そもそもお前の入院した病院があそこだったのなんてたまたまだろ。お前への追撃が計画外である可能性が高いなら最初からそこまで仕込まれたなんて無理がある」
まだフリルの事務所が病院に関わっていると考えている硝太に対して氷室は冷静に推理の矛盾点を追求する。
硝太の左腕を撃ったストーカーの共犯者と思われる人間が硝太を狙ったのは衝動的なものと聞いている。これも硝太の推理でしかないので確定事項では無いとはいえ、それを真実と仮定すると硝太の怪我は犯人にとっても想定外のことと考えられる。その為追撃することは有り得ても前々から仕込みをしていた、患者としていたとは思えない、というのが氷室の指摘である。言われてみれば当然のことだが気になることがない訳では無い。
東京に数多くある病院だが突然腹を刺された人間を受け入れられる病院とつけると一気に数は減る。事件の現場はフリルが元々いたマンションの廊下。そこから病院もそこまで遠くないので病院を選択することだって一応不可能では無い。もちろん乱入者の存在を考えなければそこまでする必要も無いので氷室の指摘を否定できるようなものでもないが。
「…ああ」
「気になることと言えば不知火の住んでる部屋が事前にバレてたってことぐらいか…一応不知火が言ってたうさぎのぬいぐるみの中には小型カメラがあった」
「うさぎのぬいぐるみ…」
そういえばストーカー事件の前、フリルに最近変わったこととしてうさぎのぬいぐるみをもらったという話を聞いた。襲撃の直前だったので詳しい話は聞けなかったが確かオリジナルの白薔薇を持ったうさぎだった気がする。自作のぬいぐるみらGPSやカメラを仕込むぐらい造作もない。当然電池を消費するため永遠に使える訳では無いが周りの景色が映ればそこから場所の特定、外出時間から空き巣に入ることも出来る。
問題はそんなものをどうして事務所は本人に渡してしまったのか。これは事務所が仕掛けているカメラに気付かなかった、かつ手作りのぬいぐるみと何が仕込んであるか分からない危険なものをタレント本人に渡してしまうほど危機管理ができていなかったとしかいいようがない。だがいくらなんでも雑すぎる。おそらく間にストーカーの協力者──硝太を撃った共犯者と同一人物なのかは不明だが──がいたと考えるのが自然。
「ファンからの贈り物って貰ったんだよ。多分そのファンがストーカーだったんだと思うけど」
考え込む硝太に対してぬいぐるみのことを忘れているのだと思ったフリルが隣に移動して再び説明する。
ぬいぐるみをフリルに渡すまでにストーカーかその協力者の手が入っているのはほぼ確実、と言っていいほど確率が高いが硝太は何か別の──ある種の違和感を感じていた。
「それ、フリルの部屋に置いてあったの?」
「そうだけど?」
「じゃあ中にフリル以外の誰かをいた事は?」
「家族ですら入れたことないよ」
「それ貰ったのは?」
「入学直後。入学祝い、だそうだけど。実際は独り立ちを狙ったんじゃないかな。私中学生の頃はまだ実家にいたし」
ぬいぐるみはストーカーに襲われたマンションのフリルの部屋に入っていた。その部屋は高校入学に際して借りた部屋なので家族すら入ることはなかった。言い方的に引越し作業もほとんど自分一人でやったのだろう。フリル以外の人間は映らないようになっていたと考えていい。ぬいぐるみを作ってまで監視をするとなるとだいぶ手の込んだ犯行だ。それなりの動機が伺い知れる。
タイミングがいいのか悪いのか、フリルの実家にそのぬいぐるみが置かれることはなかった。そのタイミングも間者が指示したのか。何故そこまで回りくどいことを。一人暮らしのタイミングがわかるなら会社の機密事項だが、住所も自然と割り出せる。ぬいぐるみを作って特定するなんてそん中回りくどいことをする必要が無い。ストーカーの心理的にそうしたくなるのか。フリルが独り立ちを狙ったという言葉から実家にそのぬいぐるみを置きたくない理由でもあるのか。
「フリルの実家…」
「来る?」
フリルの実家を想像してるとフリルが横から実家に来い、とでも言わんばかりの勢いで硝太の手を掴んで押し倒す。
フリルとしては一早く家族に硝太を紹介するチャンスなので乗り気だが硝太本人は何がなんなのかわかっていないようで眉間に皺を寄せながら首を傾げる。
「おい、話ズレてんぞ。とりあえず、だ。社員の中にストーカーの協力者がいんのはまず間違いないだろ。そこは俺が何とかしてやる」
話題をズラしに行くフリルの変わりに氷室が声を上げて話をストーカーの共犯者の話に戻す。
病院と関わりがある可能性が薄いとはいえ、これまでの推理でも事務所内にフリルの情報を渡す何者かがいた事はほぼ確実。また行動を起こされるまでそこは確認しておかなくてはならない。出来れば警察が動いて欲しいが、ストーカー事件ははっきり言って捜査が充分じゃない。
国民的な美少女タレントが襲われたというのに事件を大体的にすることはなく
「出来るのか?」
「まずは事務所内でフリルに恨みがありそうなやつ、ぬいぐるみになにか仕込めそうなやつってところか」
フリルに恨みがありそうなタレントやそのマネージャー、うさぎのぬいぐるみにカメラを仕込めそうな立場の人間が怪しい。氷室はフリルのマネージャーとしてフリルと共にいる時間が長いのでその辺を絞り込むのは不可能では無い。とはいえあくまで推理でしかなく証拠を提示することは出来ない。仮に硝太が動いたとしてもその程度のことしか出来ないので大した違いはないがあくまで疑うだけの推理と証拠を提示して警察を動かせるのでは今後の対応が明らかに変わってくる。
「あくまで推理の枠からは出ないか」
「当然だろ、俺は警察でも探偵でも無いんだ」
ストーカーの共犯者も自分が何をやったのかを理解しているのならフリルは勿論、そのマネージャーである氷室を警戒するだろうししっぽを出すのには時間もかかる。
「どうせ捕まえるのは無理だと思ってたし、そっちが動いてくれるなら事務所の方は任せるよ。僕は…」
「高千穂で戦ったやつ?」
「うん。龍珠組に力借りたからちょっと礼をしてこないと」
何はともあれ氷室が事務所の方はやっておくと言っている以上、硝太も余計な手を出す必要は無い。それより優先順位の高い物事が沢山ある。
MV撮影で行った高千穂で起こった戦闘。貝原亮介というアイを殺した殺人鬼がミヤコを襲いに仕掛けてきた。
龍珠組という指定暴力団に力を借りる事になった。物理的な戦力が増えたという意味では今後楽になる話だが仮にも芸能事務所の社長の息子である硝太が指定暴力団と関わりを残し続けるのはあまり宜しくない。その点を上手く隠し通したとしても、そういう業界の腹の探り合いは硝太には出来ないので関係の精算、とまではいかないが面倒事の種は処理しておかなけばならない。
今回の目的はソレである。事前に打ち合わせた場所に集合して高千穂の件について話をする。その際に今後の関係について交渉することになるはずだ。
「龍珠組との交渉は」
「うん。私がやるね」
硝太にできないのなら、他の誰かがやるしかない。ヤクザとの交渉のような高度なやり取りにツクヨミを出せるはずが無いので必然的に硝太が交渉役に出せるのはフリルとなる。
フリルの話術に交渉は全て任せて硝太はその護衛、要するに用心棒となる。見た目は小さい上に未だに三角巾が取れない硝太が用心棒は心許ないが純粋な戦闘能力ならヤクザとは比べ物にもならない。最悪貝原亮介に使ったように左腕もある程度は動く。いくら荒れた世界にいるヤクザとはいえ、暴力を使えば無傷では済まないどころが一人残らず殲滅される可能性すらあることはよく知っている。そんな硝太の護衛付きなら、とヤクザとの交渉についてフリルは二つ返事で了解するが自社のタレントが暴力団と関わりを持つ事に氷室はより顔色を悪くする。だが口には出さずに黙って近くの駐車場に車を止める。
あとは歩いて行け、ということだ。氷室も龍珠組の名は知っているので下手に関わりたくないし、関わりがあると思われたくもないらしい。
「不知火。帰りの時間は事前に言っておけよ」
「はーい。行くよ、硝太」
「うん」
サングラスと帽子で軽く変装をした後に二人揃って車から降りる。繁華街から少し外れた人気のない道。氷室が車で何処かに行ってしまえばとても静かな場所になる。
硝太先導で人気のない道のさらに奥。ただ歩いているだけでは見つけられもしないような場所にある階段を下り地下にあるアジトのような場所に出る。
「薄暗いね、僕から離れないように」
「うん」
太陽の光が差し込まない、薄暗い道を少し歩いた先にある部屋。扉だけは都内にありそうな隠れ家的なバーに近い。実際昔はバーだったが人気が無くて潰れ、居抜きのような感覚で使われている、とどこかで聞いた気がする。
コンコン、と扉を軽く叩いてみる。当然、扉の先から誰かが出てきても速攻で仕留められるように準備は欠かさない。
「どうぞ」
扉の奥から低い男の声が聞こえたので、硝太は扉に手をかけて勢いよく扉を開ける。扉の先には予想通りの広い部屋がある。まず目につくのは高級感のあるソファが2つ向かい合わせになっており、その片方に一人の女性が座っている。女性の周りにはガタイのいい大男が所狭しと並んでいて、その先が見えなくなっている。女性の名前は龍珠桃。龍珠組組長の愛娘で今は都内の大学に通う大学生らしい。
「なんだ、意外と早かったな」
龍珠桃はコーヒーブレイク中だったようで比較的柔らかい顔でコーヒーを飲む。周りの男達に比べるとかなり華奢に見えるがこれでもこの男たちを顎で使うことも出来る立場にいる人間であることは変わらない。次期組長候補かどうかは別として現組長の娘として発言権は相当ある。
──隠してるな。
男たちの様子を見た瞬間に硝太は理解した。今見える男たちがこの建物にいる全員ではない、つまり隠し扉等に隠れてこちらの様子を伺っている人間がいる。龍珠組が硝太とフリルを完全に信用する理由は無い。特にインスタントバレットなんて言う魔法を持っている硝太に至っては何をしてきても不思議では無い。人数を誤魔化すぐらいはやって当然のこと。硝太が龍珠桃の立場でもそうするだろう。だがおそらく狙ってはいないだろうが硝太の弱点を突くような構成になっている。
「おい、茶でも入れてやれ。奥の棚のいいやつだ」
「はい」
ヤクザの一人が奥からコップを持ちながら歩いてきて龍珠桃の前にある机に置く。向かいのソファにはフリルが座り、硝太はその背後に立つ。丁度龍珠桃の背後に大量の男達がいるのと同じ形になる。硝太は身長が低いせいで頭の上半分ぐらいしか前方にいる龍珠達に見えないという違いはあるが。
それを見て龍珠桃は口角を僅かにあげる。とても戦いに向いているようには見えないが案外好戦的なのかもしれない。
「そう警戒すんなよ…っても無駄か。話は、宮崎のドンパチの件だろ?」
「はい」
コーヒーを飲みきった龍珠はフリル達が無駄話をする意図は無いのを感じるとさっさと本題に入る。内容は事前の話通り高千穂での戦闘の件。
高千穂での戦闘は主に硝太とツクヨミの二人が担当。あくまで龍珠組は諸々の調整が担当だったのもあり、龍珠桃とフリルは事の仔細について詳しくは知らない。──否、元よりそんなものはどうでもいいのかもしれない。売られた喧嘩は返す。出来る出来ないではなく、無理矢理にでもやらせる。女子大生である龍珠桃もその辺りは極道の人間だ。
「あれは複雑だからな、ウチの組も喧嘩売られたから買ったってのもあるしお前らが気にするもんじゃねぇよ。お前らの仕事に支障は出さねぇようにする」
「ありがとうございます」
「変わりと言ってはなんだがウチの馬鹿共の始末は私らに付けさせてくんねぇか。話が話だ、お外に流すもんじゃねぇ」
「硝太、いいよね」
フリルの言葉に背後に立つ硝太は黙って頷く。硝太としては龍珠組のアレコレの問題はこれといって興味が無い。龍珠組も出来るだけカタギに迷惑をかけたくないようで硝太とフリルとも深い関係を作る気はなさそうだ。
それだけで硝太としては安心できる。龍珠組にとって苺プロとの繋がりは特に利用できるカードではないというのもあるが極道らしくクソッタレな世界の中でも通す仁義はある。これで硝太側の都合はついたと言っていい。だがフリルはまだ用があるのか龍珠に視線を送る。
「よし。他に要件は?」
「では、貝原亮介という名前に聞き覚えは?」
「…無いな。お前は?」
フリルの視線を受け取った龍珠にフリルは今回の事件の発端となった男、貝原亮介について聞き込みを始める。貝原亮介が有名なのは今のルビーたちではない、旧B小町のアイを殺害したから。その後有名な事件や事故はテレビ局がネタとして食らいつくことも多いがアイの殺害事件にはそれが不思議な程無かった。つまりそれ以降の世代では明日は我が身の芸能人を除けば事件どころかアイのこと自体知るものはほとんど居ない。龍珠も例には漏れないようで背後の貫禄のある男に声をかける。龍珠の後ろで立っている男たちの中でも参謀、や知識袋、という言い方が似合いそうな男。なんだかんだ経験不足な龍珠の為につけている参謀、ということだろう。
「10年何ほど前にアイドルを殺した殺人鬼…ということしか。若いモンは知らないでしょう」
一般の人間が調べて手に入れられる貝原亮介の情報と言えばそんなものだ。もっと深く調べれば貝原亮介の詳しい情報、例えばアイのファンだった、など出てくるだろうが今回の説明にそれらは蛇足でしかない。現に男の言葉だけでフリルの質問の意図が分かったようで男に視線を送って奥にやるとフリルと再び向き合う。
「なるほど。そこの餓鬼の仇で、宮崎でやりあった相手って事か。問題は」
「はい。彼がどうして龍珠組に──その、」
「喧嘩を売ったのか、か。」
喧嘩を売った、といいにくそうなフリルの代わりに龍珠は頷きながら言う。現組長の娘の龍珠桃が知らない貝原亮介が何故龍珠組を巻き込んだか。いくらヤクザとはいえ手を出せば軽い反撃では済まない。知らないでは済まされない。そうでなければならない理由がどこかにかあったと考えられる。その原因が龍珠組にあるのではないか、とフリルは考えているのだ。
だがそれは可能性としては低い。この件に龍珠組が関わった理由を踏まえると貝原亮介としては仕掛ける相手はどうでもよかったと考えるのが自然だからだ。
「極道が恨まれないわけない、そういうやっかみやら面倒は当然あるが…そこの坊主はどう思う?」
「自分は…相手が龍珠組を認識してるかどうかも怪しいかと」
「結構言うなお前」
分かりやすく交渉役としているフリルではなくその後ろに立っているだけで一言も喋っていないはずの硝太に問いかける龍珠。交渉役を通さないということは硝太なりの視点、つまり戦闘──言ってしまえば荒事担当の意見が欲しいということ。ヤクザのイメージが悪いのは当然として敵の狙いはそこにないことを素直に伝える。
「敵の狙いはあくまで僕のインスタントバレット。フリルも龍珠組も、ついでにいうならお母さんですらそのための道具でしかない」
「…だろうな。そのインスタントバレットっていうデタラメな魔法があればアンタみたいな化け物が生まれてくるんだ。多少の犠牲を出してでも捕獲しようとするだろう」
龍珠は現実を真っ直ぐ受け止める。ヤクザの人間からすれば「舐められている」なんて最大の侮辱だろう。だがそうされても仕方ないだけの戦力があるのがインスタントバレット。
インスタントバレット相手にはいくら喧嘩慣れしたヤクザといえど数を揃えなければ相手にもなりはしない。当然硝太も例には漏れず、今この状態で全員で殺し合い、となったら最後に立つのは確実に硝太だ。インスタントバレットは世界を憎む悪意から生まれる破壊衝動、つまり異常な精神性から生まれるので龍珠の言った考えは順番としては逆になるのだが、今それについてはどうでもいい問題だ。
「…インスタントバレットについて、白岩からある程度の事は聞いてる。だが突然デタラメな話をされるわけだからこっちも当人ほど理解できる訳でもない。それを踏まえて、どうするんだ?」
硝太は軽くフリルに目配せをする。話題はもう荒事担当が答えるべき事ではなくなっている。硝太はあくまでフリルの指示で動く、実際は自己判断で勝手に動くことがあるのでそうとは行かないが龍珠組の方にそう印象つけることが大切になる。
「私は自らにかかる火の粉を振り払うことだけに努めます」
「そうか、まぁお前達の場合はそれでいいんだろ」
龍珠桃が軽く笑い、背後にいるヤクザ達の緊張が軽く緩む。それまでは臨戦態勢だったということなので負け戦だろうと死ぬ気で勝ちをもぎ取りに行こうとする姿勢に硝太も気を強く持つ。
「変な話だな。お前らとの付き合いなんて1ヶ月も無いのに、会ったのが遠い昔のように感じる」
「私もです」
フリルはそう言うと出された茶を口に運びながらこのヤクザと会った日のことを思い出す。
そう、それは二人が姫川大輝の家に彼の情報を聞きに行った日のこと。姫川の家に白岩が訪れた時まで遡る。
はい。次回からは過去回想、として硝太が旅行前にしていたことをやります。
プロット段階だとこの話は硝太と白岩の二人が戦闘後に話してる回(#102)の次の予定でしたがテンポが悪いなと思ったので削除──が、この辺やらないと白岩はともかく龍珠組について書くことないなと思ったのでここにて復活させました。ほんとその場のテンションで話変えてすみません
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渡世はそのままヤクザを表すわけではないらしい