ツクヨミってすげぇー!このまま事件の後処理全部任せようぜ!By硝太
一方ルビーは夢で懐かしい人物と会っておりました
煌びやかなライトがステージに立った3人を照らす。B小町のセカンドワンマンライブは成功したと言っていい。有料配信があって心配されていたチケットの売れ行きは即完売と、心配したのが馬鹿らしくなるほど売れて当日は多くのファンが駆けつけていた。ライブ会場は赤のペンライトがほとんどで、ちらほらと黄色が目立ち、少ないながらも白のペンライトも見える。割合にするなら赤7割、黄2割、白1割といった印象を受ける。赤、黄、白の光で覆われた客席はB小町の3人が出た瞬間、大きな歓声に包まれる。
登場と共にかかるのは新生B小町を代表する曲「POP IN 2」。センターのルビーが2人より一歩前に出る。その度に赤のペンライトが勢いよく振られ大多数を締めるルビーファンの声援が聞こえる。
一曲終わると3人が挨拶をしてその後も次々と旧B小町にはなかった、新生B小町の曲が流れる。新曲「Bのリベンジ」が流れる。
ライブを見に来たファンは皆スポットライトに照らされた3人に目を奪われる。一度魅了され心に焼き付いた映像は死ぬまで剥がれてはくれない。なにかの衝撃で忘れたとしてもふとした時に蘇り、古い過去になってしまってもその時のことのように感じられる。
その中でも目立っていたのは当然かもしれないがセンターのルビー。これまでの元気でアイドル好きな女の子、というよくいえば優等生、悪く言えばありきたりなキャラクターだったルビーに一滴の闇が追加されたことで妖艶で、扇情的なキャラクターへと進化した。女は秘密を抱えることで美しくなる、とは誰の言葉だったか。それを体現するかのようにこれまではセンターと言われながらも周りの2人の方が人気があるようにすら見えたルビーには大量の新規ファンが着き、今ではアイドル好きを名乗るのであれば見逃せないアイドルになっている。
「みんな!来てくれてありがとうー!」
曲が終わり、笑顔のルビーが手を振ると大量の赤いペンライトが振られる光景は実に壮観である。
硝太とミヤコはそれを客席の上で見ている。入口には関係者以外立ち入り禁止の札が下がっているからか、B小町のファンはもちろん会場のスタッフすら近付かず事実上硝太とミヤコだけの空間となっている。何故アイドルがライブをするような会場にこんな高級テラス席みたいな場所があるのかは知らないが人混みに弱い硝太からすれば落ち着いて3人を見られるので都合がいい。
「今日のライブは大成功、だね」
「ええ…」
満足そうにルビー達が歌って踊っているのを見ている硝太に対してミヤコは少し浮かない表情をしている。
「どうしたの?なんか心配事?」
「ちょっと有馬さんがね」
硝太がミヤコの顔を見てなにか思うとこがあるのに気付いて声をかける。折角のライブなのだから楽しまなければ損、なんてことを言おうとしたがミヤコはルビーの横にいる有馬の方を指さす。
指刺された有馬を注意深く見てみると笑顔は作っているのだがほんの少し、その顔が歪んでいるように見えた。楽しんでいる、という訳ではなく楽しんでいる演技をしている。優秀な演者である有馬が演技の表情を崩すわけがない。だが事実、歌って踊ってと動き回っているとはいえ演技にヒビのようなものが入っている。このヒビにファンの大多数は気付くことはないだろう。今のB小町のファンはほとんどがルビー目当てというのもあるが、いくら生でアイドルを見る機会とは言ってもそれ相応の距離がある。同じメンバーのルビーやMEMちょのような超至近距離でもないと気づくのは難しい。それにすぐに気づいてしまうミヤコがなんなのか、と言われたら返答に困るが。
「有馬先輩?ああ、確かに少し悲しそうな顔をしているような…」
「元々あの子やりたくてアイドルやってるわけじゃないのよ。それなのにアイドル活動で得た人気をルビーに奪われた形になっちゃったから。嫉妬と言うよりやる気を失っているのね」
有馬は元々アクアのスカウトでB小町に入ったがその理由は女優業を続けるためのカンフル剤のようなもの。元々やっていた女優業からすればアイドルはそこまで熱を入れる仕事ではない。実際B小町に入る前は明らかに低予算、低品質なドラマである実写版の『今日あま』でやっと仕事を貰ったレベルだった有馬が舞台の『東京ブレイド』でメインヒロインの役を貰うという大躍進を果たしている。
女優業がメインならアイドルの仕事にやる気がないのも無理はない。だとしてもやってきたことに報いがあれば自然と次への期待が出てそれがやる気や情熱へと繋がっていく。それが例え自分が心からやりたいことではなかったとしても基本真面目な有馬ならやりきることで楽しさを見出したりするものだと思う。それが無い、もしくは無くなっているのはメンバー間での人気差が原因──というのがミヤコの推理。
「でも有馬先輩にもちゃんとファンいるじゃん」
「そりゃあゼロって訳じゃないわよ。けどB小町が大きくなっていく中で新規ファンの目的はほとんどがルビーよ。元々大きな固定ファン抱えたりYou〇ubeからの新規ファンが来るMEMちょと違って有馬さんの人気は伸び悩んでる。母数が増えていくのに自分だけ変わらない、っていうのは本人からしたら退化しているのと変わらないのよ」
アイドルのメンバー間の人気差はこういったライブ会場ではもちろん、日々のYou〇ubeのコメントにも分かりやすく表れる。キッパリ別れているおかげでわかりやすいがそれ故に残酷な明確すぎる線引きがされる。事務所としては当然、人気なアイドルを推していった方がファンから受け取れる金も高いのでただでさえ人気のある娘がどんどん出番が増えて人気を総取りしていく。まだB小町はそういった軋轢を生まないためにメンバーで大きな差をつけないようにミヤコが調整しているがビジネスである以上どうしても金のかける割合を調整しなくてはならない。そしてルビーは戸籍にはミヤコの娘として登録されている。そこだけ見ればルビーが売れた理由も親であるミヤコが娘のルビーを売りたいがためにMEMちょと有馬の出番を減らしてルビーを前に出した結果順当にルビーが売れただけ、と考えることができてしまう。実際にルビーはアイドルの花形であるセンターでそれを選択したのはルビーの弟である硝太なのだから、この理論を明確に否定できるものが硝少なくとも硝太には出せない。
ファンはともかく苺プロに一年以上いる有馬がそんなことを考えるとは到底思えないが人間追い込まれたら何をするのか、何を考えるのか分からないものだ。
「…難しい問題」
「思春期の女の子のグループ抱えるのなんてほんっと大変よ。嫉妬にいざこざに…グループが人気になればなるほどそういった溝は大きくなるわ。誰も必死なの」
「…必死、か」
人に愛されることで対価を得るアイドルにわざわざなるのだから所謂承認欲求は人一倍あるとみて間違いない。「愛したい」「愛して欲しい」そんな心を言葉に出さずとも抱えていた女の子をミヤコはもちろん硝太ですらも見てきた。人に見て欲しい、という基本的な欲求、そして顔も分からない多くの人に見てもらったという自負とそれをしても当然と言えるほどの経歴があるだけそれを失った時の衝撃は大きい。有馬ほどなら文字通り世界が終わったような絶望感を感じるだろう。
トントントン
「どうぞ」
有馬の気持ちを考えて両者暗い顔をしたのを合図としたかのように扉が叩かれる。 ミヤコが促すと1人の男が部屋に入ってくる。会場のスタッフがミヤコに会いに来た、と思ったがしかし部屋に入ってきたのは金髪に飄々とした印象を受ける糸のような細い目の男。
「失礼します。かなり盛り上がっていますね」
「…リーダー。何しに来たんです?もう『世界の端っこ』は引き渡し終わりましたよ」
ミヤコは『世界の端っこ』という単語を聞いたことがないので、まさかインスタントバレットの組織名とは思わず二人の間の暗号のようなものだと解釈する。
「ええ、こちらも驚いているんです。我々がずっと捕まえられなかった奴らを君がしっぽを掴むどころか半壊させてしまうとは…いやはや『奇蹟』のインスタントバレットの恐ろしい」
「えっと、誰?硝太の知り合い?」
インスタントバレットという単語に先程まで男に警戒していなかったミヤコも目の前の男が危険だとようやく気づき、額から汗が出る。
硝太も硝太でミヤコに聞かれても黙ったまま、男とミヤコの間に挟まるようにして立ち続けている。その右目は青く輝き、凶器のような鋭さを見せる。
「申し遅れました。自分は公安警察の──敷島と申します」
「公安?」
「そうですね。国単位でインスタントバレットを管理している、といえばいいでしょうか。彼のお母様となれば十分承知しているでしょうが彼は人とするには
敷島、という偽名で名乗った
公安と聞けばミヤコは詳しいことなど知るはずもなくよくテレビ番組でやっているような自分たちの面子を守るためなら違法なことだろうとやる、警察組織の悪役のようなイメージしかない。勿論そんな事ばかりしている訳ではないということはわかるが目の前の敷島と名乗った男が何をするのか検討もつかない。インスタントバレットの名前、そして硝太が使えることを知っている、ということは高千穂で見たツクヨミと呼ばれていた白髪の少女と同じ硝太が関わっている側の人間だとわかるがわかるのはそれぐらいだ。硝太が攻撃することもないが、警戒は解く様子がない。どう言った関係性なのか読めない。
「インスタントバレットは個人の想像の範囲には収まりきらない強力な兵器だ。兵器なら、個人で管理するのはあまりにも危険と言わざるおえません。我々は貴女の機嫌ひとつで皆殺しにされてしまう可能性もあるのですから」
ミヤコがまだ話についていけていない間に畳み掛けるかのように敷島と名乗る男はインスタントバレット──というより硝太の危険性を説く。まるで斉藤硝太という男はもうミヤコの手に余るというように。
実際、言っている言葉自体は正しい。現状は『世界の端っこ』を打倒しうる戦力が事実上斉藤ミヤコに一点集中しているのと同然。言ってしまえばただの一般人に核兵器のボタンが渡されているようなものである。ミヤコと親しい人間なら「彼女がそんな暴挙に出るはずない」という人間がほとんどだろうが、彼女も人間なので自暴自棄になる時期もあったし、そもそもどんな善人であったとしても個人にそんな力があっていいはずがない。
普通に考えるのならそんな力は捨てさせるか国が巻き上げてしまうしかない。そうてもなければミヤコがかえって危険となる。
「おい、そこまでだ
だが硝太は
右手にはいつの間にかナイフが握られ、敷島を名乗る男の次の言葉しだいではその首が胴体と別れることになるだろう。そして
硝太が殺そうとすれば一息もつく暇もなく殺されるというのに敷島は怯えることすらしない。硝太を侮っている訳では無い。殺しに来られれば何も出来なずに殺されると知っている。だが同時に硝太が殺しをするプロセスを本人以上に理解している。硝太は頭がイカれた男ではあるが母親の教育の成果もあって無秩序な男では無い。殺しのハードルは低いが、自分が侮辱された、脅されたと言ったレベルの低すぎる理由で殺すほどでは無い。彼にとって殺しは相手に害を与えることが目的ではなく自分や仲間に安全を提供するのが目的。事実上、接触されしてこなければこれ以上に安全なモノはない。だからこうして1歩引いた立ち位置にいれば硝太からのターゲットは向かない。
「恐ろしいな、斉藤硝太。勿論、君との約束を違えるつもりはない。今こうして君の母親の前に出て我々もインスタントバレットで、君たち家族を護衛すると言いに来ただけだよ。『世界の端っこ』に対応する人員がいくらか割けたから本筋に手をつけられる」
「硝太、貴方…!」
硝太から警戒はされるが殺されはしないギリギリの立ち位置に
だが硝太は迷わない。この程度の情報、硝太からすればバレてもなんてことはない。何故ならそれは硝太が生きる上での最低限の仕事なのだから。これができないのであれば斉藤硝太は必要ない。そう心の底から思っているのだから。
「苺プロは守る。姉さんも、兄さんも。それは交渉する以前の最低事項だ。その上で、お前たちの目的に乗っても構わない。それが僕の考えだ。」
「勿論。そこは我々も変えるつもりはない、では失礼した。それにしても、アイドルのライブとはいいものだな。これまで見たことはなかったが…愛に狂う人間の気持ちが、少し理解できた気がするよ」
硝太の言葉に満足行ったのか敷島と名乗る男は数回頷くと踵を返して入ってきたドアから出ていく。最後に零すように言った言葉は、硝太とミヤコの耳に少しだけ響いた。
アニメで新曲がかかって盛り上がっておりましたライブでした。
ミヤコさんは高千穂の件でインスタントバレットについて聞いてはいたものの、
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ルビーは最早一番星