【硝子玉の子】   作:みっつ─

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この話は新章、そして共通ルートからフリルルートへの分岐となります
因みにサブタイトルのBはB小町のBであり、選択Aがある訳ではありません。
フリルルートは基本的な主軸は原作通りですが復讐(とルビーのアイドル物語)に焦点を当てたオリジナルストーリーとなります。なので特定の章ごとなくなったり、完全オリジナルの話が出てきたりします
お楽しみに


第二章〜フリルルート・序〜
#12 選択①〜B


 初めに、選択肢があった。

 一つは、引き続きアクアについて行き恋愛リアリティーショー『今からガチ恋始めます』の内部に侵入する選択。

 これは特に難しくない。全面的にアクアの仕事の手伝いをするだけなのだから。アクアの所属は苺プロなので護衛兼マネージャーになるのはお母さんに頭を下げるだけで済む。実際マネージャーの仕事ができるかどうかは別としてアクアの付き添いはできる。一度なってしまえば鏑木に目を光らせながらアクアの補助をすることが出来る。有馬先輩曰く顔のいい人が好きな鏑木には特に意識されていないのは半分とはいえ絶世の美女のDNAを持つ身としては素直に傷つくがそれは逆に鏑木の予想しない方向から攻め込める隙となる。アクアではこうはいかない。

 もう一つは、『今からガチ恋始めます』と鏑木はアクアに任せてルビーと有馬のいる名前未定のアイドルグループの援助に向かう選択。

 前者と比べてこれは簡単にはいかない。アクアの仕事ではなく、前知識ゼロのアイドルの仕事の手伝いになる。マネージャーという名の付き添い役になるのはアクアの場合と難易度は変わらないとはいえ、この違いは決して小さくは無い。俳優の仕事の手伝いも経験値があるかと言われれば無いがアクアの目的に対する経験値ならまだある。アクアの目的が『アイ』のことを知ること。だから自分の力でもある程度手助けはできる。それに対してルビーの目的は『アイ』のようなアイドルになること。アクアに比べてルビーの目標はかなりふわふわしており、自分に助けられる事があるかどうかすら分からない。

 しかしアクアに比べてルビーの方が不安定なのは間違いない。それにアイドルになりたいと言っていたルビーの本気度は決して見逃せるものでは無し、ルビーのアイドルになりたいという気持ちにアクセルを押したのは自分だ。責任を取る、という訳ではないがこれで何もしないのは無責任という他ない。

 何より、お母さんの『夢』を叶えさせたいなら、ルビーの手伝いをするのが一番近道だ。僕が生きている意味を考えるならその手を取るのが1番良い。

 

 僕は───。

 

◇◇◇

 苺プロこと株式会社苺プロダクションは斉藤家の一階部分に収まっている。その為小学生時代引きこもりでいつも母親についている硝太も苺プロの人間には『社長の息子』と覚えられ可愛がられている。

 高校に入る前の硝太からすれば苺プロのメンバーが世界で唯一信頼出来る人間達であり、そこから一歩でも外に出るのは魑魅魍魎に溢れた世界を生き続けるに等しい。それほど外の社会を警戒している硝太隣にいても気を休められるほどの相手しかいないのだから経営的にはともかく人としては人格者の集団だと言える。

 

「お母さん」

 

 そんな相手に今から無理強いをする。自分で決めたこととはいえそれで心が傷つかない訳が無い。

 それでもやる。頑固者と罵られようと構わない。活動こそしていないものの、ルビーのアイドルの夢は既に叶った。今後必要なのはどうプロデュースするか。その点については硝太は何一つ知らない。もうルビーがアイドルになった以上、今後知っていけばいいなんて甘い考えも通用しない。

 それでも。

 

「何?どうかしたの?」

「僕、アイドルのマネージャーやるよ」

 

 声に反応して顔を向けてきたミヤコに純粋な決意表明をする。ルビーと有馬の未だにグループ名すら決まっていないアイドルたちのマネジメント。

 アイドルのマネジメント、つまり苺プロの仕事の手伝いは家事などの家の手伝いとは次元が違う。ルビーと有馬のアイドルグループは社運をかけた、という程でもないが子供の小遣いでは払いきれないような金が発生する。いくら社長の息子とはいえおいそれと参加させるわけにはいかない。

 

「硝太、急にそんなこと言い出すのは…ルビーのことね」

「うん」

 

 硝太にもわかるようなリスクをミヤコが分からないはずがない。ミヤコは腕を組んでパソコンを眺める。

 ミヤコから見て硝太は決して出来の悪い子供では無い。小学生時代はPTSDでマトモに外に出ることすら出来なかったのに比べて中学生の頃は保健室登校の時期があったとはいえ勉強面では特に苦労せずに高校まで進んだ。むしろルビーの宿題を手伝ったりする程で、アクアがいるのと言動が幼い事から阿呆と間違われやすいものの、頭はかなりいい部類に入る。観察力と洞察力も高く、ミステリードラマなどを一緒に見てるとアクアより先に犯人やトリックを言い当てることも珍しくない。マネージャーに必要なスキル面を身につけるのも特に苦労はしないだろう。

 ルビーとの仲は実際の姉弟のように、いや。実際の姉弟より仲が良く有馬ともいい関係を築いているように見える。共感能力が高く、精神的な問題にすぐ気付いて動ける優しさも持ち合わせているので精神的なサポートだけを任せるならもう十分だろう。

 

──しかし、その反面。どうしても幼少期に人と過ごす機会が無かったからかコミュニケーション能力はとても低い。有馬といい関係を築いているのが奇跡と言える程で、中学生の頃は友達どころかアクアとルビー以外の話し相手すら作らなかった。

 精神的にも脆く、過去の事件からPTSDや解離性障害を抱えている点も見過ごせない。特に過去の事件を連想させることがあっただけで取り乱してパニックになってしまう。それも刃物やインターフォンなど日常的に目にするものが多く、誰かが気にして見てあげないと普通の日常生活を送ることすら出来ない。マルチタスクをこなせるだけの能力はあれど精神的に耐えることが出来ないのだ。

 

「硝太。マネジメントってのはね。これまでみたいに家にひきこもっても出来るものじゃないのよ。コミュニケーションは出来て当然、営業力も必要になるわ」

 

 マネージャーに必要なことは見事に硝太に足りない能力。

 ミヤコからすれば硝太が自分の意志を示すことが少ない分叶えさせてあげたいが「じゃあよろしく」とは言えない。

 

「それは…そうなんだけど…」

 

 理屈の上では正しい。ミヤコの懸念点を硝太も分からない訳では無い。だから『それでも』と言うしかない。

 

「…わかった。出来る範囲で仕事を任せていくわ」

 

 硝太の強い押しにはミヤコもそれ以上強く否定することは出来ない。先述のように硝太が何も出来ない子供という訳では無いので出来る仕事を振るだけでも苺プロにとってはプラスに働く。

 

「私からしたら、まだ小さい子供なんだけどね」

 

 思わずミヤコが小さい声で独り言を零す。

 硝太は言動も見た目も実年齢より幼く見える。身長なんて同い年な女の子のルビーより低い。顔もかなり童顔で小さい頃から硝太を見ているのなら兎も角、今紹介されたら小学生にしか見えない。少なくとも高校生として見るには無理がある。

 それを置いたとしても幼いころ記憶喪失となり、その後も人との関わりを極力排除してきたからか精神年齢も幼く甘えん坊なところは抜けていない。だからミヤコも甘やかしてしまうのだが。

 

「とりあえず、ルビーと有馬さんに話はしておきなさい。それが一番最初の仕事よ」

「任せて!バッチリ決めてくる!」

「心配…」

 

 硝太がキメ顔でサムズアップをしてくるので余計に心配になる。それでも親としては見守ってやるべきだろうと判断してそれ以上言うことはしなかった。

 

 硝太が部屋を出て行ったのを見てミヤコは机の上に置かれている、誰にも見られないようにと伏せられた写真立てを立てる。そこには少し古い一枚の写真が入っている。

 一人の女性が中心で笑いながら双子の子供を抱えてその膝の上に緊張しながら座っている子供。両脇にはその女性の親にも見える男女二人組。

 

─それは彼の無くした記憶。一人の女性、アイが無くなりそのそばにいる男、壱護がいなくなったことで解離性障害、PTSDによる記憶喪失になったことで失った輝かしい記憶。

 

 記憶を失ったものの、その時に負った痛みを硝太は引きずり続けている。それがあるから不特定多数と関わることを極端に嫌う。

 あの事件が無ければ、硝太はどうなっていたのだろう。もっと優秀な子に育てられて、幸せにさせられていたのでは無いか。記憶を失う前のように人懐っこい人との関わりが好きな子になっていたのだろうか。考えるだけ無駄な話だが後悔は積もり続ける。

 

「…壱護、硝太はアイと同じことをルビーにしてあげようとしているみたいよ。ねぇ、貴方ならどうしてた?」

 

 硝太は心のどこかでアイとルビーを重ねていると思う。記憶喪失でアイのことを完全に忘れているはずなのに、硝太の細かな態度や行動がアイに対するソレに近い。ルビーと重ねているのはアイドルになったからという共通点だからでは無い。一度アイドルのアイの映像を硝太に見せた時があるが、その時の反応は不思議なぐらい薄かった。硝太がアイに対する態度を知っていたから余計その驚きは大きく、その時硝太はアイドルにそこまで興味が無いのだと知った。だからルビーとアイを重ねる原因は天然のようで計算してる性格的なもの、もしくは顔立ちか。

 そんな死人に惹かれてるような硝太に父親である壱護ならどういう態度を取っただろうか。なんて言ったのだろうか。

 ミヤコと壱護は形式上のみ夫婦であったがあの関係は上司と部下の関係をそのまま続けたようなものであり、実際に愛があったとは言いづらい。だからミヤコは壱護を一人の人間として理解していた訳でも理解しようとしていた訳でも無い。しかし苺プロ社長としての力、特にプロデュース力は大手に匹敵すると言っても過言では無いと思っている。彼の目に硝太はどう映るのか。それすらミヤコには分からない。

 

 弱気な言葉を零しながら机につっ伏すミヤコ。小さな声ではあったが、その発言を壁越しにいた硝太は聞き逃さなかった。

 

「イチゴ…イチゴ、か」

 

──社名と同じ『いちご』と名前がついた人。

──母が項垂れた時に口にしてしまうような人物名。

 

 まず間違いなく、ミヤコ(母親)の夫。つまり自身の父親に当たる人物だと予想した。

 硝太はアイの死や壱護の失踪による精神的ショックで記憶喪失になった後、記憶喪失前の事はほとんど聞かされていない。特にアイと硝太の関係と硝太の父親の話はそれを匂わせるような言葉は出すことすら禁じられている。

 

 硝太からすれば家族は血の繋がった母親一人と血の繋がらない兄姉を含めた3人のみ。硝太の家族には父親は席すら存在しない。

 そんな中ミヤコが出した男の名前。それだけミヤコにとって頼りになる存在だったことが分かる。

 

──もし彼が、自分が記憶喪失になる前に亡くなったのなら、悲しいがそれでいい。それは仕方の無いことだから。だが、もし離婚などの理由でここにいないだけだとしたら。

 

 硝太の頭の中で最悪の式が作られていく。母を見捨てたクズ男。そしてそれに頼りたくなってしまうような母の精神状態。

 

「──大丈夫だよ、お母さん」

 

 ミヤコに聞こえない声で独り言を言う。

 硝太は産まれた時─より正しく言うなら記憶を失って、地獄を見たあとお母さんに助けられたあの日強い決意をした。

 

──斉藤ミヤコの為に自分の命を使う。

 

 斉藤硝太の命は最初からその為の使い捨ての道具の一つに過ぎない。使えなくなるまで使い切り、終わったらなんの感傷もなく捨てられる。それでいい、それがいい。その為に母が望むなら文字通りなんでもやる。アイドルのマネージャーも、仕事の仲介も、勿論他者の命を奪うような事もやる。自分が死ぬまで、それを迷わず続ける。

 この場合母の望みは夫、もしくはそれにあたる人物が出てくること。

 

「僕が、その人の代わりになるから」

 

 今の実力で彼ほどの能力を発揮できるとは硝太も毛ほども思っていない。ならこの場合手段は2つしかない。自分が必要な能力をつけるか、足りないところは別の人間なり道具なりを引っ張って代用するか。

──一先ず、前者を進めながら後者に必要なものを集めておくか。




今回選択したのはアクア(俳優)とルビー(アイドル)、どっちを主として応援するかの選択です。アクアを選択するとみなみルート、ルビーを選択するとフリルルートとなります。(みなみルートまでちゃんと書くとは言っていない)
『教えて!アイ先生!』で言ったようにフリルルートは復讐優先、インスタントバレットの要素も含まれるので手に汗握るバトルシーンや様々な思惑が重なりあらぬ展開を迎える復讐など、原作とは違うストーリーを楽しみいただけると思います。

ということで感想、高評価よろしくお願いします!

正直投稿ペースが遅いので週二投稿に切り替えて欲しいかこれまで(月曜日19時に本編、他の曜日に番外編を不定期に投稿)の方がいいか

  • 週一投稿
  • 番外編等も一話としてカウントして週二投稿
  • 番外編等は一話としてカウントせず週二投稿
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