【硝子玉の子】   作:みっつ─

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前回のあらすじ
お昼時、芸能科に突入して食事をした硝太。
不知火フリルの悩みを聞いて頭を悩ませるものの、明確な答えは出せずにいた。



#15 恋愛リアリティショー

 恋愛リアリティ番組。

 恋愛バラエティ番組とも呼ばれ、事前の台本など無しに出演者が恋愛の駆け引きをするという番組。無名の芸能人や一般人が出てくる場合が多く、色んなイベントに参加してくっつくかくっつかないかを視聴者も眺めて楽しむというスタンスを取っている。

 恋愛リアリティショー『今からガチ恋始めます』は10代後半の若者、より詳しく言うのなら高校生の男女それぞれ3人、合計6人が放課後に集まって様々なイベントを行い恋愛関係を築いていくというコンセプト。

 出演者は以下の6名。

 

 鷲見ゆき。高校1年生15歳、ファッションモデル。恵まれた体格に整えられた長い黒髪。高身長という訳ではないがスタイルがよい。普通なら気にしない、目が届かないような細かい場所まで気を配っている。

 熊野ノブユキ。高校2年生17歳、ダンサー。はねっ毛が特徴的な艶のある黒の短髪。スタイルなどに気を配っているようには見えないが、全体的に筋肉の配列がよく立ち姿からも体幹の強さを感じさせる

 黒川あかね。高校2年生17歳、女優。男っ気のない、何処かで見たことがあるような女性。硝太とルビーは彼女の出ている作品を見たことこそないがトプ画と実際の彼女の違いから相当の演技力を理解する。他のメンバーと比べるも垢が抜けてない様子だがそれでも大人と感じさせる。何よりパッと見ただけなのでまだ断定は出来ないが一番おっぱいがでかい。

 MEMちょ。高校3年生だが年齢は不明。ユーチューバー兼ティックトッカー。6人の中で唯一本名でないとひと目でわかる名前を持っており、髪はプリンのような色に染められている。鷲見ゆきと黒川あかねが美しい、芸術方面での美に対してMEMちょは可愛らしい、子供のような雰囲気を持っている。骨格も幼く、動きの一つ一つに強い個性を感じる。キャラを作っていると言えばそれまでだが、そのキャラがどことなくルビーに似ているように感じる。あとなんか角生えてる。おそらくカチューシャだろうが何故ただのカチューシャではなく角を生やしたのだろうか、と気になってしまう。

 森本ケンゴ。高校3年生17歳、バンドマン。先程出た5人と比べると目立つような特徴こそないが我の強いメンバーに気後れしない芯を持っている様子が伺える。同じく高校三年生、最年長であろうMEMちょが遊びのある分、落ち着きながらも支えられる、強い男というイメージは強く見える。

 そして苺プロの俳優星野アクア。高校1年生、16歳。いつも通りの兄。

 

 それぞれ自己紹介をして『今ガチ』が始まる。この番組はアクアが鏑木との交渉の為に出演する番組。恋愛リアリティ番組に出たら必ず恋愛しなければいけないという訳でもないので、目立つ他の出演者を立てるだけでもいい。ある意味アクアからすれば売れる必要性のない番組でリアリティを押しているので普段の素の姿を晒しても問題は無い。筈なのだが。

 

『星野アクアです。めっちゃ緊張するわ〜みんな、よろしくね!』

「「「いや誰!?」」」

 

 アクアが誰よりもキャラを作っていた。

 アクアは冗談でも明るい人物では無い。硝太のせいで霞んでいるがアクアも考え事は熟考しながらも消極的、笑うことも少ない暗い性格。だと言うのに画面に映るアクアは明るい陽キャにしか見えない。口調も軽く、悪い言い方をするとかなりバカっぽい。

 そんな強烈すぎるキャラ作りに思わず硝太、ルビー、有馬と仲良く並んでソファに座りながら画面を見ていた3人が揃ってツッコミを入れる。

 ほかの出演者もある程度はメディア用の自分を演じていると思われるが、アクアはキャラを作りすぎて原型が見た目しかない。高校生のスタートダッシュに失敗して孤立する生徒ぐらい滑っている。流石の硝太も『これは、兄さんの方について行った方が良かったな』と自分で決めた決断を後悔した。

 

「お兄ちゃん闇系じゃん!」

「メディア用とはいえキャラ作りすぎ!」

「もう原型ないじゃんこれ!」

 

 文字通り人が変わったようなキャラを演じているアクアに長年暮らした姉弟のように仲良く連携するようにヤジをいれる三人。その3人から少し離れたところで見てるだけのミヤコが微妙そうな顔をパソコンで隠しながら仕事をしている。

 ミヤコからすれば他人とは話すこともない、慣れている苺プロの人間相手にすら少し遠慮する傾向のある硝太がルビーの目の前ならともかく有馬の目の前で感情的な言葉を吐き出しているのは嬉しい。だがそれが(アクア)へのヤジなのもあって複雑な心境は隠しきれない。

 

『えーかっこいー役者さんって憧れるぅー』

 

 三人は好き勝手にヤジを飛ばしているが同じ場にいる3人の女性には好感を持たれたようで代表するようにMEMちょがぶりっ子のようにわざとらしく可愛こぶる。

 

「あーお兄ちゃんこういうぶりっ子には厳しいんだよねー」

「計算高いのはいいけど媚びる相手は嫌だね」

 

 MEMちょの対応に少しイラッとしたルビーとそのルビーの怒りに共感した硝太が内心でMEMちょへのポイントを下げる。

 異性に媚びるぶりっ子らしい対応は同性のルビーが嫌がるのはよくある事だが異性である上にパッと見わかりやすい、チョロく見える硝太がぶりっ子のような対応を嫌がる。

 

『MEMちょも可愛いね。めっちゃ照れる…』

「「は?死ね」」

 

 が、アクアはそれを知りつつも『可愛い』と言ったことで有馬とルビーの怒りが基準値を超える。精神的な遊びが無くなるのと同時に声のトーンが落ち、目から光が消えて殺意すら見えてきている。

 

「なんだあいつ…私には勧誘の時しか可愛いなんて言わなかったのに…」

「結局アクアもオスなんだね。チョロそうなメスを見つけたらすぐこれだ」

「うぅぅ…お母ーさん!」

 

 ルビーが有馬と組むか組まないかとなった時に言っていた因縁とはなんの事やら。いくら演技とわかっていてもアクアが知らない女にデレデレするのを見せられるのが癇に障り2人の反応が揃って激しくなる。そんな二人を見て硝太がミヤコの元に逃げ出す。

 いくら共感しやすい硝太と言えど自分の内側にない感情を表現することはおろか、理解することも出来ない。理解できない感情なのだから、その時点で硝太にとってソレは倒すことの出来ない化け物、ホラーゲームの怪物と大した違いは無い。

 

「2人とも落ち着きなさい。アクアも役者。メディア用に演技することだってあるわよ」

 

 今にも泣き出しそうな顔で逃げてきた硝太を抱きしめたミヤコが二人を冷静に落ち着かせる。この中で一番大人なミヤコに窘められては流石のルビーと有馬もそれ以上言うことは出来ない。

 ルビーと有馬が口を閉じたのを確認してミヤコは助けを求めてきた硝太の頭を撫でる。

 

「まだ硝太に恋愛は早かったわね…」

「甘やかしすぎでは?」

 

 ミヤコに抱きしめて頭を撫でられている姿は本当に甘えん坊の小学生にしか見えない。硝太は見た目は子供でも精神面は高校生。間違っても高校生の息子がちょっと周りがイライラしてるからという理由で母に抱きつくなんてまず考えられない。本人の事情に詳しければ話別だが、硝太の事情に詳しくない有馬は見てられないように死んだ目で見つめている。

 

「いいのよ。この子はちょっと周りより遅いだけだから」

 

 有馬の死んだ目と常識的な指摘にもミヤコは怯むことなく硝太の頭を撫で続ける。ミヤコにとっては抱きしめる、頭を撫でるといった愛情表現をするだけで問題だらけの硝太が落ち着いてくれると思えば精神的な成長が遅い程度、気にもならない。

 

「硝太は甘えん坊じゃないと危ないし怖いから」

「どういうことよ?」

「…あーえっと、ね…?」

 

 ミヤコが説明しないのを見てルビーがミヤコの発言をフォローする。それも、上手く言語化が出来ず有馬には更なる疑問を追加するだけになってしまう。とはいえこれ以上深く説明すると家庭の問題になってしまう。硝太の甘えん坊でいる時の方が安全、というのはつまり硝太が甘えん坊では無い時は危険な時ということになってしまうからだ。同じアイドルグループのメンバーになったとしても流石に家庭の問題に巻き込む訳にも行かず、ルビーはそれ以上説明出来ずに目線を向けてミヤコに助けを求める。

 

「それより貴女だって役者続けるならキスシーンとかも求められる。仕事として割り切らないと辛いわよ」

「…」

 

 ルビーに助けを求められるも、上手い誤魔化し方が浮かばないミヤコはまた絶妙な顔をするものの、すぐに話を切り替えることで追求を逃れる。ミヤコの言葉は有馬にとっても自覚している問題だったからか、体育座りの体勢になって自分を見下ろすように顔を下に向ける。

 実際、役者として仕事をするならキスシーンなんて珍しい話では無い。中には濡れ場のような撮影をしなくてはならない時もある。恋愛リアリティ番組に出なくても、カップルにならないとキスもしませんというようなガチガチの貞操観念では仕事もままならない。

 そういう意味でもミヤコは硝太を芸能界には関わらせたくなかった。まだ自社のマネージャーというミヤコ側が仕事の選別をできる立場なので許せたが、何かの間違いで恋愛対象が芸能人になったら諦めてもらうしかないと思っている。

 

「有馬先輩ってもしかして…」

 

 母親がそんなことを考えているとは露知らず、下を向いた有馬が気になった硝太はミヤコから一度離れると有馬の隣に座り覗き込むように顔を向ける。

 硝太の測るような目にアクアへの好意を自覚した有馬は気付かれないように目を逸らす。

 

「人の食べかけとか食べられないタイプですか?分かります。何入ってるか分からなくて怖いですよね」

「なんでそうなるのよ!?」

 

 しかし恋愛感情を理解出来ない硝太の頓珍漢なセリフに体育座りの体勢から全身で硝太に覆い被さり、硝太の手首を抑えて馬乗りになる。同年代と比べて一回り小さい有馬ですら馬乗りになると硝太の姿が周りから見えなくなる。当然硝太の視界も有馬に埋め尽くされる。

 すぐ側にいるルビーも止めようとすることなく諦め半分呆れ半分、といった表情をして死んだ目で二人を眺める。

 

「あれ?粘膜接触が怖いのでは?」

「…こんのクソガキ!アンタは昔っから気付いてそうで何にもわかって──あ」

「おっとっと」

 

 馬乗りになられても自体を理解していない硝太の手首を強く押さえて馬乗りになった有馬だが、硝太に即座に手首を掴み返されると素早く体重を逸らされてソファからバランスを崩して逆に硝太に抱き抱えられる。

 下手なお姫様抱っこのような体勢になるも硝太は特に気にせずに有馬をソファに座らせる。ルビーのような姉を持てばお姫様抱っこも慣れたこと、ということだろうと有馬は自分を納得させる。

 

「手首を掴む時は関節を回しておかないとすぐに解かれますよ。あと、足は抵抗されないようにしておかないと。ちゃんとやらないと僕みたいに慣れた人間相手じゃ通用しませんよ?」

「…あんたホントにこの2人の弟?」

 

 降ろした後ですら再び恋愛感情のれの字すら引っかからないような頓珍漢な言葉に有馬は怒りを通り越して呆れて隣のルビーと硝太を見比べる。

 あれほどのことを言えばルビーにもミヤコにも好意はバレたと言っていい。有馬自身が口には出さなかったがあの対応は私は恋をしていますと言っているようなもの。ミヤコの言った通り恋愛はまだ早いと言われるほど情緒が育ちきっていないとみていい。まるで昔の弟分がタイムマシンでそのままやってきたような子供の対応に有馬はため息をつくことしかできない。

 

「えぇ。いま画面の先で顔のいい女の子と仲良く話している男の弟ですが、何か?」

 

 そう言って硝太がノートパソコンの画面を指差すとその瞬間に『今ガチ』出演タレントとアクアがいい雰囲気になっている映像が流れた。

 アクアの癇に障る演技もだが、分かっているように見えて実は何も理解していない硝太も中々イラつかせる。

 

──恋愛感情は無いくせに一丁前に性欲だけ持ちやがって!

 

 思わず内心でそう毒づく有馬だった。

 




恋愛リアリティショー『今からガチ恋始めます』スタート!
とは言ってもルビーのマネージャー主体として動く硝太の物語としては特に触れずに話が進んでいくんですけどね。ただ一件だけ硝太の物語としてどのルートでも避けられない件があるのでそこだけは見に行きますけど。
それはそれとして今ガチは推しの子でも好きな章何ですよ。(なんなら一番好きかも)けど仕方ないんだ…硝太が関われない以上原作丸写しになってしまうから。
(書くか分からないけど)みなみルートだとアクアについて行くので今ガチもちゃんと書きます(その代わりJIFが実質無くなったりしますけど)


お気に入り、感想、高評価お待ちしております!よろしくお願いします!

今更だけどこのアンケート週一の方が有利な風になっちゃってるよな…何も考えてなかった。今更だけど二重投稿は出来ない訳だし週二は合算してそれぞれの高い方を優先するとかそう言うことにしとこうかな…?別に卑怯じゃないよな?これ。うん

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