【硝子玉の子】   作:みっつ─

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今回は番外編───けどこれまでの幕間や番外編とは別の話、ルート分岐を行います。

もし、硝太があかね復帰後の今ガチの現場に参加していたら!


E① 0秒の初恋

 外は暗くなり、皆家に帰る。硝太は最後まで「女性を一人夜道に置いて帰れるか」と言っていたがあかね達がタクシーを呼ぶ、親に迎えを頼む、と言うと渋々と引き下がった。三人からしても可愛がっていた子供が、唐突に同年代という衝撃のカミングアウトをしてきて脳が混乱しているのもあるのだろう。流石に共に帰らせるのはアクアも気が引ける。結果アクアは硝太を引きずって帰宅した。

 

 そんな二人を迎えたのは玄関で仁王立ちしているルビー。頬はリスのように膨らませて見るからに「私は怒っています」と表現している。

 

「お兄ちゃん、硝太。私が何言いたいかわかる?」

 

 玄関で仁王立ちするルビーを見て思わずアクアと硝太は目を合わせる。ルビーを怒らせると相当面倒な事になる。ルビーはとにかく一度怒ったらは早々許してくれないのでしばらく口を聞いてくれなかったりする。そんなルビーの地雷を踏まないように兄弟間で回答の譲り合いを始める。

 

「…はぁ、もういいよ。硝太が勝手にどっか行くのも、それをお兄ちゃんが隠すのも今に始まった話じゃないし」

 

 そんな二人を見て怒りが冷めたのかルビーはため息をつくとそう言ってリビングの方へとゆっくりと歩き始めた。

 余程二人でいたことが気に食わなかったのだろう、大きな音を立てたり物に当たっているわけではないが怒りを感じさせる行動を撮っている。

 

「硝太、今日のことはしばらく内緒だ」

「了解」

 

 歩いて行ったルビーの背中を見守りながら今度はアクアが硝太に耳打ちをする。撮影をしていたアクアはともかく黒川あかねの誹謗中傷をしていたアカウント個人情報を集めていた、なんて今のルビーにバレたらどうなるか、アクアですら予想はできない。

 

「けど、良かったの?」

「何が?」

「アイさんのこと」

 

 靴を脱いで手洗いをするために洗面所まで二人で歩きながら硝太は今ガチメンバーと共にいた時の会話を思い出してアクアに聞く。

 硝太が高校生だと分かった後、今ガチのメンバー達は当初のあかねのキャラ付けの話題に戻った。その時にまた脱線してアクアの好みに話が移ったのだが。その時のアクアの出した条件が『B小町のアイ』そのものだった。

 

「あくまで似てるってだけだろ。そもそもアイは天性のものだ。誰にも真似はできない」

 

 硝太の質問に冷静に返すアクア。しかしその発言を聞いた硝太の目は鋭くなる。

 

「甘いよ、兄さん」

「何がだ」

「真似ができるできないじゃない。兄さんの口から『B小町のアイ』の話題が出てくること自体が問題なんだよ」

 

 踏み台を手洗い場の前に置いて手を洗い始めながら硝太は冷たい声でアクアを糾弾するように言った。

 

「アイは有名人だ。多少世代がズレているからって俺と同じ年代のやつが知っててもおかしくないだろ。現にメムは知ってた」

 

 世代交代が激しい芸能界においてもB小町のアイはその亡くなった原因も合わせて有名だ。特に芸能人からして見れば知っていて当然、同じ苺プロのアクアは立場としては知らない方が不自然と言える。

 だからアクアもアイに近い女性像を出したのだが硝太の青く輝く右目はそこにあるひとつの違和感を確かに捉えた。捉えた、のだがアクアの態度に瞳を閉じて見なかったことにした。

 

「あの人は基準にするべきじゃないと思うなー。まぁ兄さんがそれでいい、って言うならいいや。次回からは()()()()()()()()()()番組のスタッフの人にはマネージャーとでも嘘ついておいて」

「はぁ…わかったよ」

 

 アクアの中で何か歯車が崩れたような気がしたが気にしないことにした。

 硝太と今ガチのメンバーの相性はアクアから見てもかなりいい。まず硝太が無視したりせず真っ当に向き合っている時点でクラスメイトよりは良い関係を築けている。なんなら一部メンバーはアクア相手より硝太相手の方が気安い関係に見えた。今ガチのメンバーからの受けもそこまで悪くなく、硝太の異常性を見せつけられながらも受け入れている彼らは貴重な存在と言える。特にノブユキとMEMちょとは波長が合うのか普通の友達のような関係に見えた。

 とはいえアクアのマネージャーというのは流石に無理がありすぎる。アクアはため息をつきながら対策を考え始めた。

 

◇◇◇

 撮影日。

「すいません、今日家に誰も居なくて。撮影に迷惑はかけないように言ってあるので」

「あーわかった。その辺に座っておいてくれ」

 

──なんでこうなった。

 硝太はアクアのマネージャー、ではなくアクアの弟として撮影現場に来た。それも高校生の弟ではなく小学生以下の弟として。実際に弟であることに変わりはないのでただ弟と紹介するだけならいい。しかしその年齢が完全に見た目通りの小学生として紹介されている。それを硝太は訂正しようとするも撮影スタッフは何の不思議も思わずに受け入れている。

 高校生になりながら小学生として扱われるのは屈辱的だが炎上後の黒川あかねを見るにはどうしても撮影現場に入る必要があったため大人しく受け入れる。

 

──次からは絶対裏道で侵入してやる。

 

 スタッフの一人に言われた廊下の端の辺りで待機しながらそう心の中で強く宣言した。勝手に子供扱いされて撮影を遠くから眺めるぐらいしか出来なくなるぐらいなら今日もこの前のように隠れてきた方が良かった、と思ったがもう後の祭りだ。

 

「本日よりあかねちゃん復帰になります」

 

 番組のスタッフ、おそらくディレクターと思われる人がそう言うとその隣から黒川あかねが顔を出す。気配を消してスタッフの間から黒川あかねの様子を確認する。多少緊張しているようだが周りにはアクアマリンを始めとした他のメンバーもいるので安心出来る。

 

「皆さんご迷惑おかけして申し訳ございませんでした。頑張りでお返ししたいと思います宜しくお願いします」

 

 黒川あかねが頭を下げると拍手が鳴る。それを確認した出演者は教室に入っていきカメラマンもカメラを覗き込みながら出演者達を写していく。撮影開始、ということだろう。リアリティショーどころかドラマの撮影現場を見なこと自体記憶にないが雰囲気で察した。肌を撫でる特殊な緊張感は幼少期、泥のような風呂に沈められた時のことを思い出す。

 自分にはなんの仕事もないというのに瞳の奥がチカチカする。心臓は強く鼓動してその存在を強調する。

 

「行くぞ」

 

 アクアマリンが歩き出す。すると、彼の背後に立った黒川あかねの気配が変わった。

 

「そうだねアクア」

 

 ドクン、とただでさえ強く打っていた心臓が一際大きく強く跳ねる。あまりに強い鼓動に口から血反吐を吐き出す妄想が脳裏を過ぎる。

 血、反吐?何を言っているんだ、こいつは。僕に生き血が通ってるわけないだろ

 

 アクアマリンも同じことを思ったのだろうか、呆然とした顔で背後にいる黒川あかねに瞳が吸い込まれる。

 

「ふぁっ、眠いんだよね。収録早すぎてさー。あっもうカメラ回ってる?」

 

 別人のようになった、というより別人になった黒川あかねは自然な足取りでアクアに向き合う。その様子はまるで女神のようで。古代ローマのカリギュラのように自分が壊れる感覚に襲われる。

 目の奥が熱い。まるで脳をドロドロに溶かしているように熱い。口の水分が一瞬で抜けて肺ごと焦げる。そのくせ全身を伝う汗は自分に命の危機を知らせる。冷静になれと何度か命じるものの、身体はその通りに従ってくれず逆に全身の筋肉をちぎってでも黒川あかねを手中に収めようと本能だけで動き出そうとする。

 

「てへっ☆」

 

 そこには、星野アイがいた。

──嘘だ。

 黒川あかねは星野アイを完璧に理解して、完璧に演じている。

──有り得ない。

 その圧倒的なカリスマと魅力は出演者も、スタッフも、カメラマンも吸い込まれる。そこからは逃れらない様はまるでブラックホールのよう。

──彼女は死んだはずだ。

 

 

 

『どうして?』

「はっ!」

 

 何処からか、声がした。

 反射的に左側を見るとそこには先程までいたはずのスタッフの姿はなく、その代わりにニット帽を被った10歳頃の少女がいた。

 彼女は悲しそうな瞳でこちらを見てくる。左目から星の光と共に涙が零れており、見ているだけで心臓を抉りだしたくなる程の罪悪感に襲われる。

 

『どうして、ママを助けてくれなかったの?』

「誰、誰だっ!」

 

 撮影を邪魔しては行けないと言うのに気付けば大声を張り上げながら少女を退かすように腕を振っていた。そうでもしなければ気が狂ってしまいそうな気がしてきた。

 その間も黒川あかねに意識が集中される。女神すらも素人の作った玩具に思わせてしまうような程綺麗で狂気的な彼女がそこにいる。

 

『お前がアイを守っていれば、その身体で庇っていれば』

 

 背後、丁度少女と挟み込む位置に白衣を纏った長身の男性が現れる。男の眼鏡に隠された瞳の力が強く、右目からは星の光が見える。

 罪と罰を訴えかけてくるその言葉に自分は反抗する術を持たない。何故なら、男の言葉が真実だから。男言葉を否定できるものは少なくともこの世には誰一人としていないから、いてはならないから。

 

『お前がいなければアイは生きていた。あの日死ぬべきだったのはお前だった』

「あっ、ぐ───」

 

 頭が割れそうな程に強い頭痛を感じてその場に倒れ込む。ビシャッ、と音を立てて何か赤い液体が跳ねる。生暖かくて金属のような味がする全身にまとわりつく汚い液体、血だ。

 血は床全体を覆う用に広がっており、黒川あかねを始めとした今ガチのメンバーたちはその上で撮影をしている。

 この血には覚えがある。脳ではなく全身の神経がそう告げて反射的に周りを見渡す。この血の正体を探らなければならないと思った。

 

「え、あ──ああっ…」

 

 周囲を確認する時間は二秒もかからなかった。白衣の男の背後に一人の女性が倒れていた。紫がかった綺麗な黒髪に星の輝きを放つ瞳。同年代と比べると低身長な身長に世界中の女性が嫉妬する美しい肌を化粧や化学の力を全く借りず当然のように持ちえている。世界中誰が見ても魅力的な女性と言う彼女が腹から血を流しながら死んでいた。彼女は腹から血を止まることなく流しており、その血が地面に溜まっている。

 非現実的すぎる状況なのに、身体は冷静にその現実を受け入れてしまう。

 

『お前のせいだ』

『硝太のせいだよ』

 

 男と少女が同時に耳元でその正体を告げる。僕のせい、僕のせいで彼女は死んだ。一人のこれからも輝くはずだった命が死んだ。こんなただの使い捨ての命の為に死んだ。誰よりも死ぬべきだったはずの命を庇って死んだ。

 

 

『硝ちゃんの嘘つき』

 

 倒れた女性からそう聞こえたと思ったら女性がゆっくりと立ち上がる。腹に空いた大きな穴からはとめどなく血を流しながら倒れたこちらを見ている。星の光を放つ両目から涙のように血を流しながら獣のような速度で組み付いてくる。その両手を振り払うことは出来ない。一瞬で首を掴まれる。

 

『お姉ちゃんは死なないって言ってくれたのに、僕が守るって言ってくれたのに、全部嘘だった。硝ちゃんは嘘つきなんだ』

「ち、違っ──」

 

 何が違うんだ、そう思いながらも女性の言葉を魂が否定する。しかし女性の追求は止まらない。

 

『嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!嘘つき!ずっと私を騙してたんだ!信じてたのに!最後まで信じてたのに!』

 

 女性の魂からの咆哮に手足が痺れ、太い血管が割れる。血溜まりから大量の手足が出てきてただでさえ動かない手足を引っ張る

 

「ガァァァァッ!」

 

 痛みに耐えかねて絶叫するがそれで彼らの恨みが果たされるわけが無い。それどころか女性の首を掴む強さが明らかに強くなる。

 

『どうして、どうして、どうして!』

「アァァァァ!」

 

 女性が悲しみながらより一層強く首を掴むと、首が一気に締まり呼吸が出来なくなる。肺が割れ、血が逆流するが、喉を停められているため溜まった血が首の血管と皮膚を割って吹き出す。

 

 手のひらと指が首に食いこむ。そのまま全身を血と大量の手に襲われながら意識を落とす。

 

──最後に、女性の瞳から流れる涙が血ではなく本当の涙に一瞬だけ見えた。

 

◇◇◇

 後日、警察の調べで斉藤硝太は自分の首を自らねじ切って自殺したことが遺族に伝えられた。比喩表現ではなく、自身の腕力だけで首を切り落とした。その様子はまるで武士の切腹のようだと第一発見者の今ガチの出演者達は語った。

 もぎ取られた硝太の頭部は完全に切り取られたからか異例の速さで腐り、突如混乱していた撮影所に乱入した烏に持っていかれた。母親と姉が硝太の死に顔を見たのはそれから一週間後。蛆虫に集られカラスにつつかれ、頭蓋骨ですら半壊した、人の頭とは思えないモノだった。

 それを見て泣き崩れた母親の顔を双子の兄妹はただ見ていることしか出来なかった──そうだ。

 

 

【エンド① 0秒の初恋】

 

◇◇◇

 

『教えて!アイ先生』

 

この(コーナー)はストーリーの解説、ヒントコーナーです。

ただ本編を楽しみたい方、本編のイメージを崩したくない方は読まずに飛ばして下さい。

 

その他以下の点にお気を付けてください

・本編に500%上乗せでふざけ倒しています

・このコーナーでは台本形式を取っています。地の文はほとんどありません。というかありません。

・このコーナーの登場キャラは本編のキャラクターとかけはなれていますが本編には関係ありません。

・考えるな。感じろ

 

それでは。

 

キャラ紹介

アイ先生

自分の子供達(アクアマリンとルビー)が大好きなメガネにスーツのドス(ry…美女教師にしてこのコーナーの顔。

その正体は元B小町のセンター、アイ。

自称本作のメインヒロイン。何故か不明だが硝太のことを硝ちゃんと呼ぶ。

このコーナーではギャグ枠に当たる。ギャグ枠は死なない?本作にそのジンクスは通用しないのである。

 

ツクヨミ

弟子一号の名を得られなかった悲しきブルマ。

カラスは飛ぶが落とされる。

 

 

アイ「死んでしまうとはー」

ツクヨミ「死んでしまうとはー」

アイ「情けなーい!」

ツクヨミ「ナサケナーイ!」

アイ「はい、っと言うわけで始まりました!『教えて!アイ先生!』第二弾です!これまでの物語は楽しんで貰えました?B小町のアイ、もといアイ先生です!」

ツクヨミ「アシスタントのツクヨミですー」

アイ「さて、第二弾と言いながら初めて死んじゃった硝ちゃん!アレ?初めてじゃない?…時空が歪んでるなぁ」

ツクヨミ「君、そういうの全く分からないだろう。まぁそれはさておき、今回の死亡原因について話しておかないと。一応ここはヒントコーナーだからね」

 

 第一弾の時点からその前提が崩壊していることに、少女は気づいていない。

 

アイ「それもそうだね!じゃあ解説を始めよっか!」

アイ「まず、今回の死亡原因は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが原因だね」

ツクヨミ「一人?撮影所のスタッフがいたじゃん」

アイ「スタッフは首をねじ切ってる硝ちゃんよりあかねちゃんに夢中だし、アクアたちは撮影中で気付けない。人が沢山いながら完全な死角だったと言えるね」

ツクヨミ「これもアイドルという名の光があることで生まれる闇…か。黙ったまま自分の首を切った硝太も異常だけどそれに気づけないスタッフって一体…つまり、キミの演技を見ても硝太のことに気付いてくれる人を呼べってこと?」

アイ「そうだね、もしくはその人達と同じ場所で見ること!そもそも!原作を読んだりアニメを見てくれた人達はここであかねちゃんが私の演技をするのを知ってるはず!それなのに硝ちゃんを一人にしたら危ないのは知ってたでしょ!」

 

ツクヨミは、アイをジト目で睨んだ

しかしアイは気付かない!

 

アイ「それじゃ気を取り直して。今日も星の砂、あげちゃうぞ!」

 

 星の砂×1を受け取った!

 

アイ「これからも大変なことがいっぱいで毎日大変だろうけど頑張ってね!硝ちゃん!」

ツクヨミ「さて、物語はまだ始まったばかり。これを勝ち抜けば硝太のターンが来るような…来ないような…」

アイ「どっちなの?」

ツクヨミ「んーまだ序かな…」

 




っと言うわけで今回は最初のエンド、0秒の初恋でした。
硝太が『今ガチ』の撮影場所にいたらこうなってたのかーって思っていただけたら幸いです。


なぜ硝太はこんな悲惨な死を遂げたのか、それについても今後の作品を読んでいただけたらわかるようになるのでこれからもお楽しみに!
ハーメルンの規約違反にならない範囲ならどんな感想でも受け付けますので感想、高評価、お気に入り登録よろしくお願いします。


またアンケートやってます。今回は特に期間を求めず、内容もあくまで参考程度にしてます
幕間や番外編やるぐらいなら他のヒロインルートが読みたいって声もあったので(そもそもフリルルートですらまだ序、起承転結の起なんですけど)
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