【硝子玉の子】   作:みっつ─

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前回のあらすじ
硝太が刺されて命の危険と伝えられた斉藤ミヤコ、星野ルビー、星野アクアマリンの三人は病院に行くとICUで治療を終えたばかりの硝太の元へと通される。傷口の縫合は終わったものの、脳に血液が届かなかった時間が長く脳死する可能性が高いと告げられる。
翌日、ルビーは硝太の見舞いをした後硝太の部屋に硝太からの遺言書を見つける。自分のことを忘れるように願った硝太の遺言書に怒りを顕にするルビーだが硝太と話がしたいと思うようになり硝太の生還を待つことにした。


#49 好意の是非

「やっぱり来ないなー」

 

 東京の街の中にある個室付きの飲み屋。その中で小規模な飲み会をしている二人の漫画家。その内の一人、吉祥寺頼子は最近友人になった相手へのLI〇Eが未読になっているのを眺めながら独り言を呟く。

 

「来ないって誰ですか?」

 

 もう一人の女性漫画家。『東京ブレイド』の作者、鮫島アビ子はビールジョッキを両手で抱えるように持ちながら師匠でもある先輩漫画家の独り言に興味を持って話しかける。22歳とかなり若いながらも累計5000万部売れた売れっ子漫画家な彼女は既に師を超えているものの二人の関係は昔の鮫島アビ子が吉祥寺頼子のアシスタントをしていたころと変わらない。

 

「最近仲良くなった男の子。小学生ぐらいの子なんだけどね」

「え゛!?」

 

 L〇NEの画面を見ながら吉祥寺はそのトーク画面の相手でもある自身のことを頼子ちゃんと下の名前かつ、ちゃん付けで呼んでくる小さな男の子のことを思い出して表情を弛める。

 対しアビ子は驚きのあまり食事をしていた手を止めてカエルが潰れたような声を出す。アビ子から見て吉祥寺は色んな人と仲良くしている陽キャだが流石に小学生ぐらいの異性の子供と個人的に連絡先をかわしている、なんてことを聞けば「ショタコン」というワードが頭の中を行き来する。まだこれが身内、例えば甥っ子や年の離れた従兄弟ならいいがそれならそれで最初から甥っ子や従兄弟というはずだ。つまりこの時点で頼子とその男の子の関係は流石のアビ子でも引くような事件性を感じる関係ということになってしまう。

 

「あー違う、違う!『今日あま』の俳優さんの弟の子よ」

「あー『今日あま』のドラマの…」

 

 自分の言った言葉の危険性に気付いた吉祥寺は即座に弁明する。吉祥寺とその男の子の関係は一般的な友人関係に年齢と性別の差が生えてきたようなもので犯罪に発展するようなものでは無い。その男の子にとってそのような関係を結べること自体運命と言ってもいい関係だが、あくまで最低限の友人関係でしかない吉祥寺はそれには気付かない。吉祥寺の弁明を聞きながらアビ子は酷い出来だった『今日あま』の俳優の弟、と言うだけでその男の子を内心見下し、興味を急激に失う。

 

「この前その子の友達と一緒にアイドルのライブ見に行ったんだけど、その帰りに文字化けしたメール飛ばされて。それ以降返信どころか既読すらつけてくれないのよね」

 

 仲良くなった小学生ぐらい男の子、斉藤硝太と初めて出会ったのは『今日あま』のドラマの打ち上げ。ストーカー役の星野アクアの付き添いとしてきていたジャージ姿の子供でその時はほんの少し話をしたぐらい。病院で会うことがなければそのまま忘れていたかもしれない。それぐらいの関係ではあるが年端も行かない男の子にしては人慣れはしていないものの、礼儀正しい子で印象に残った。今思えば星野アクアもそうだったので親がちゃんとしている人なのだろう、と思う。何はともあれ大人びたところがありながらも年相応な子供らしさを含む彼と連絡先を交換して『今日あま』のヒロイン役をしてもらった有馬かなが所属するグループのライブにも連れて行ってもらった。問題はその後。硝太から文字化けしたメールを飛ばされて以降、硝太と連絡が繋がらない。

 

「その子小学生なんですよね?親にスマホ取り上げられてるんじゃないんですか?」

 

 硝太を顔だけで作品へのリスペクトすらない下手な俳優の弟、とみて見下したアビ子はその話題に興味が無くなり料理を口に運ぶ。因みに、硝太は小学生ではなく高校生だが、幼い雰囲気と見た目で小学生だと判断されている。

 

「そういう子じゃないと思うんだけど。小学生にしては少し大人びてる子で…そうそう。アビ子先生(アナタ)にそっくりよ」

「私に?」

「ああ、中身の話ね」

 

 吉祥寺は病院で硝太と出会った時に感じた、誰かと繋がり合いたいのに怖くて自分に蓋をしてしまうところや蓋をした時の反応、そして懐いてきた時の反応がアビ子に似ていたことを思い出す。アビ子からすれば年下の、それも小学生の子供と同列に扱われていることに不満はあるが仲良くしている吉祥寺の手前強く言うことは出来ない。

 

「今度会わせてあげるわよ。結構面白い子だから」

「別にいいです。忙しいですし」

 

 スマホの画面を閉じて二人があった時に起こる化学反応を想像して笑う吉祥寺。その顔には少しばかりの母性を感じる。

 若干ぶっきらぼうに拒否するアビ子だが、内心吉祥寺に母性を芽生えさせた子供に興味のようなものが湧いてきたことは否定できない。

 

◇◇◇

 ほぼ同時刻。硝太のいる病室。

 硝太は完全治療を諦められ延命治療となった硝太は病棟を移動した。しかし人工透析機などの機械が並ぶため病室は狭く感じられる。

 せめてもの気持ちなのかルビーが置いた花瓶に花が刺さっているが、その隣には何やら禍々しい雰囲気のするアタッシュケースが置かれている。

 

「傷だらけね」

「ライブの時はあんなに元気だったのにね」

 

 もうそろそろ日が落ちる時間帯に硝太の病室には有馬とMEMちょが来ていた。JIF終了後硝太が刺されたというニュースはすぐに苺プロ全体に広がり、当然有馬とMEMちょも聞きつけて見舞いをしに来た。先程までルビーと共に硝太からの贈り物のようなYouTube撮影を終えてその足で見舞いに来たので事件後の硝太を初めて見ることになる。機械に身体を繋がれて、専門的な知識がなくても見ただけで機械に繋がれなければ生きることすら出来ない身体の硝太を見て二人の表情は暗くなる。

 

 唯一少し肉が裂けて骨が露出している()()の怪我で済んでいる右手を撫でる。左腕は包帯で縛り付けてギリギリ原型を保っているもので、頭部も額から上は包帯に覆われている。パッと見生きている人間の延命治療、というより死体の保存に見える。

 

「ほんと、信じられないな。JIFの前からずっと長い夢でも見てるんじゃないかって思うよ」

 

 MEMちょにとっては夢だったアイドルになってJIFという何年かアイドルやってやっと望めるような大舞台で初ライブと幸せの絶頂まで来た直後に弟のように見ていた友人が重傷の傷を負う、という現実離れしたことが続け様に起きて頭が状況の理解を拒んでいる。大人なのでルビーのように動揺したり取り乱したりはしないものの、胸の奥に叩かれたように響くダメージは誤魔化しきれない。

 比較的現実を受け止めている有馬も生意気ながらも可愛げのあった弟分の機械に生かされている状態を見ていられずに目を背けてしまう。

 二人で黙ったまま硝太のベットの近くの椅子に座っていると病室のドアが開く。そこから黒川あかねが入ってくる。彼氏のアクアや硝太とも仲が良かった今ガチのメンバーと共に来る訳ではなく一人でやってきた。

 

「あ、MEMちょ」

「あかね…」

 

 あかねは先に中に入ってきたMEMちょと有馬を確認すると小さく頭を下げる。あかねのことをよく思っていない有馬も半死の弟分の前で喧嘩をする気は無いので、黙ってあかねを視界から外す。

 あかねは有馬とMEMちょの間に入って腰を下ろすと硝太の右手を握る。

 

「遅くなってごめんね。硝太くん」

 

 あかねから見ればビジネスではあるが彼氏の弟、そして本人に自覚はなかったが自分を好いてくれた一人の男の子。炎上騒動の時に誰よりも怒ってくれた人で、かなり強引かつ短慮ではあるものの一番最初に対策に動き出していた。直情的で曲がったことは許せないくせに自分が被る被害のことはこれっぽっちも考えない子供。

 あかねはその気持ちを断るわけでも受け取るわけでもなくアクアと恋人関係となった。番組の残り話数、つまり残りの撮影時間と硝太に自覚がない以上硝太からの感情をあかね側から処理することは難しかったとはいえあかねにも後悔はある。

 こんなことになるぐらいなら、ちゃんと本人に気持ちを自覚させた上で断ってあげるべきだった。硝太の気持ちを受け取ることが出来なくてもそれぐらいは硝太にさせてあげるべきだった。そうすれば硝太は一時的に悲しむだろうが元は自覚のない感情だったのですぐに立ち直ることも出来ただろう。もっとも、今回の事件に硝太からあかねへの恋心は関係ない為硝太には余計な事だったが。

 

「あかね、アンタ硝太の気持ち知っていたでしょ」

 

 あかねの表情を見て察しがついた有馬は黙っているはずだった口を開く。人との距離感を測るのが下手で極端、そして直情的ながらも線引きはされている硝太が怒り、感情的になるのはそれ相応の理由がある。何より硝太が何を考えているのかわかりやすいタイプでもあり、硝太からあかねのことを一度も聞いていないはずの有馬でさえも硝太からあかねへの感情はすぐにわかった。

 

「うん、知ってた」

「アンタね!」

「有馬ちゃん」

 

 あかねは素直に頷いたのを見て有馬はつい感情的になる、が動き出すより前にMEMちょが間に入って止めた。

 有馬から見てそんなあかねは硝太の気持ちに気付いていないフリをしているようにしか見えなかった。まだ本当に気づいていなかった、気付いていて影で断ってきたというのなら有馬も納得出来たがあかねは素直に硝太の気持ちを知っていながら答えなかったと知りついカッとなってしまったのだ。しかし冷静になってあかねの立場に立ってみればそれ以外の対応はできない。

 

「私は硝太くんの気持ちには答えられない」

「…そうね。それが正しいわ」

 

 硝太から告白されたのなら、「ごめんなさい」と断れた。しかし自覚すらしていない状態で尚且つ硝太は恋愛リアリティショーに出ている訳でもない外野の存在。あかねの立場からすれば『関係ない相手に勝手に好意を持たれた』事になる。芸能人なら、特に若い女性芸能人ならそういう見方をされることもよくあるしあかねもそこまで硝太に懐疑的な目を向けていた訳では無い。しかしだからといって硝太の恋心を大切に扱う必要性もない。あかねの行動としてはあれが正解だった。それはアクアも同様。余計に手を出さなかったゆきとMEMちょも。誰も間違っていないからこそ、負けるべき硝太が負けただけ。

 それでも、もし好意を自覚していなかった硝太が後々好意を自覚したら。既に交際している兄と好きな人を応援しなければならない。そこから逃げることも、ましてや略奪愛など根性もなければ誰かを傷つける勇気もない硝太にできるはずもない。

 

「今死ぬのは不幸中の幸いだったわね、硝太」

 

 不意に有馬が零した言葉は誰にも拾わずに消えていった。

 

◇◇◇

 硝太が何者かに刺されたという話はすぐに苺プロ全体に話が広がり、硝太の数少ない友人達にも話が回った、JIF翌日。

 当然その話は硝太が刺されたのを知っていたフリルの耳にも入ってきた。しかしフリルはすぐに見舞いに行くことは出来なかった。何せ今回刺されたのは硝太だが本当ならフリルが刺されていた、という危険な状態かつその場から逃げ出した犯人もいるのではないか、という疑いが警察から上がった。つまりフリルの住所は犯罪者たちにとってはもうその辺の掲示板に晒されいるのと同じ状態と言っていい。

 事務所の支援で別のマンションに移動したフリルは体調不良として数週間とはいえ一時的な休暇を取った。これも休暇、というより謹慎処分に近い。運良くレギュラー番組は撮り溜めた分がある為次の収録を遅らせるだけで済んだ。稼ぎ頭とあって事務所の支援も徹底しており、警察、マスコミに掛け合って今回の事件に不知火フリルの実名とそれを匂わすような要素は出さないことになった。一応、警察内部に隠すことは無理なので取り調べは受けたもののネットニュースなどには関係者として上がってはいない。

 テレビをつければどのチャンネルのニュースでも「高級マンション街で友人宅から帰宅しようとしていた高校生『斉藤硝太』(15)が友人のストーカーに刺されて重体」と出ている。ニュースのキャスターはこんな事件何度も見たと言わんばかりに無関心でゲストとして呼ばれた元刑事の男性がストーカー対策を文章を読み上げるようにつらつらと言っている。

 本来関係者であるはずのフリルはその事件から切り離され、しばらく硝太から受け取った帽子とサングラスを両手に抱えながらそのニュースを見ることしか出来ない。

 

『僕になにかあったら、姉さんに渡しておいて』

 

 彼が最後に言っていた言葉に従うなら今手元にあるサングラスと帽子はルビーに渡すべきもの。いくら実質的な謹慎処分の状態とはいえルビーに連絡して手渡しするぐらいならできる。しかしそれをすればルビーに今回の事件には不知火フリルが関わっていると証明するようなもの。そんな簡単に渡すことは出来ない。何より、これをルビーに渡してしまったら本当に硝太は死んでしまうような気がする。

 

「…」

 

 目を閉じれば思い出す警察が来た直後のことを思い出す。

 

 

 部屋の中で硝太を待っている私の元に鍵を開ける音が聞こえた時、すぐに状況を察した。硝太なら間違いなく、まず声をかける。警察でも同じだ。そもそも警察なら引きこもっている私より先に廊下にいるだろう硝太に話を聞くはず。つまり硝太が無事である限り硝太と警察はセットで来る。硝太が無事でなければ警察は硝太の方を先に対応するはずだ。つまり、何も声をかけずに鍵を開けに来るのは敵しかいない。

 そもそも警察も硝太も鍵を持っていない。

 

『逃げないと』

 

 硝太から受けとった帽子とサングラスを片手に逃げる場所を探す。硝太がどうなったのかも心配だがそれ以上に恐ろしかった。その時は慌てていたのもあり、近くの押し入れに逃げ込んだ。終わったあとから考えるとホラーゲームでもなければすぐに見つかりそうな場所だったがその時はそこが最善だと思って大急ぎで中に入っていた。

 

 すぐに男のドタバタした足音が響く。押し入れの隙間から見えたのは見たことの無い外国人の大男。芸能界ではもちろんファンとして会ったことがある人達の誰か、という線もない。男は花束とナイフを持って部屋に入ってくると近くにいないと勘違いしたのか大声で吠える。

 

『Fekkyu!』

 

 興奮したのか、男が勢いよく振り返ると大振りで何も無いはずの場所にナイフを振るう。直後、何故か男からほんのスレスレの距離をF1カーが走ったのかと思うほどの衝撃と頬を肌触りの悪い生暖かい風が流れる。気付くと男の腹には硝太の拳が突き刺さるように当たっており、左腕は男に弾かれたのかありえない方向に曲がっていた。腕から流れる血がそのダメージの強さを物語っている。

 相当強い打撃が鳩尾に刺さったのか男は泡を吹きながらその場に倒れる。その姿を数秒見下ろした硝太もその場に倒れ込む。

 最初は何が起こったのかわからなかった。本当ならすぐに硝太に駆け寄って介抱すべきだったのだろうが数分間何も出来ずに警察が来るまで押し入れの中で縮こまっていた。

 

 

 

 もし私が硝太の応急処置が出来たら硝太は命に関わるほどの重体にならなかったのかもしれない。勿論今更『もしも』を考えても意味が無いことなんてわかっている、が。あの外国人は間違いなく私を狙ってきていたストーカーだ。私が先に気付いて事務所の人に対策してもらっていれば今回のようなことにはならずに済んだかもしれない。

 硝太の事にはほとんど触れられずにテレビのニュースはすぐに別の内容に切り替わる。次の気の抜けたような平和なニュースを見ていられる気がせずテレビの電源を切る。普段ならこういう仕事の間に挟む休暇は撮り溜めたドラマや映画を見たりとやりたいことをやっていたが今はそんなことをする気にはなれず新居のベッドに寝転ぶ。前のマンションと比べると比較的安いものの、同じぐらい警備はしっかりしている。この部屋は今だけのものでいい部屋さえ開けばもっとちゃんとした部屋を見つける、とマネージャーが言っていたがそれはいつになるのか分からない。少なくとも今は人を呼ぶことも出来ないので大したことでは無いが。

 事件から切り離された立場なのと、実質的な謹慎処分もあってあれから硝太と会っていない。硝太の見舞いにすら行けず、今の状況もルビーからLI〇Eで何となく話を聞いただけ。手術の結果傷はふさがったものの大量出血でまだ意識が目覚めず、このまま死んでしまう可能性が高い、との事。謹慎処分になっていなければ見舞いには行けたが今はそれ以上の理由がないと厳しいらしくマネージャーに相談したらキッパリとアウトと言われてしまった。

 

「ストーカーは捕まったんだし、私の安全より硝太の事気にしたいんだけど」

 

 楽観的かもしれないがストーカーは現在捕まっている、とニュースでやっていた。実際に捕まる場面も見たのでそれを疑うことは無い。ならひとまず脅威は去ったということで仕事を少し控える程度にしておくべきではないか。そう思った時、引っかかるものを感じて今回のニュースについて検索する。

 検索して見るとそこには友人宅に行っていた斉藤硝太が友人のストーカーに刺されたとお決まりの内容がどのマスコミも出していた。事務所の手が早かったのかそこには不知火フリルの名前はもちろんそれを匂わせるものすらない。前の住所を知っている人ならともかく、そうでなければ繋がりがあるとは先ず思わないだろう。

 

「やっぱりおかしい」

 

 その記事を見て先程感じた違和感が的中したことに気づく。

 

「拳銃と空を飛んでいた人についての記述がない…」

 

 最初に硝太の左腕を撃った銃を持った人とその後逃げてる時に乱入してきた空を飛んでいたよく分からない人についてはどの記事でも触れていなかったのだ。この二点をバラしたところで不知火フリルが関わっているなど誰も思わないので事務所が隠させたということは無い。現実離れした空を飛んでいた人については記事にできないと思っても仕方がないがストーカーが自作なのか海外産なのか分からないが銃を使ったことはもっと大々的に使ってもいいはずだ。そっちの方が無関係の子供一人が刺されたニュースより人の気を引く。

 病院は硝太の治療をしたのなら確実に銃で撃たれた傷にも気付くし、警察にも取り調べの時に銃のようなものに硝太が撃たれたことは話した。仮にそれを混乱していた被害者の言葉として信用しなかったとしても男を確保した後に男の荷物を探すことぐらいはしたはず。撃たれた後の弾はともかく荷物から拳銃が出てこないのはおかしい。

 

「まさか、別人?」

 

 そういえば、襲ってきたストーカーの顔は見えたが銃を撃ってきた人は顔すら見えていない。自然と男性だと思ったが精々分かるのは赤いワンボックスカーに乗っていたことぐらいで体格や年齢はおろか、性別すら分からない。最初は自分を狙ってきた危険な相手ということからストーカーと同一人物だと勝手に解釈していたがストーカーが捕まったのに銃が見つかっていないとなるとストーカーと別人の可能性もある。

 

「だとするとあの場には私を狙っていた人が二人もいてほぼ同時に来た?そんなの都合がよすぎる」

 

 ストーカーだって最初から殺傷沙汰にはしない。まず行き帰りをつけたり事務所に迷惑行為をしたりなど軽犯罪から始めるはずだ。私は一度も気付かなかったが。となれば仮に私のストーカーが二人以上いた場合お互いに存在を認識するはずだろう。私がJIFを見に行くことを知って、襲うタイミングまでほぼ同時になるとは考えにくい。

 となるとひとつの考えが頭に浮かぶ。

 

「もしかして狙いは最初から私じゃなくて、硝太?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あの時硝太に庇われたように感じたが硝太が撃たれたのは左腕上腕。位置的に硝太を狙った結果当たったとしてもおかしくは無い。思い出してみれば撃たれたあとに出てきた空を飛んでいた人の狙いは硝太だった。空を飛んでいた謎の人のタイミングが硝太が逃げ出したのに合わせたように出てきて、何処かの組織に属しているような言い方をしていたのであの場にもほかにも誰かがいたはずだ。しかし硝太も私もそのような人は見つけていない。少し強引だがあの拳銃を放った人が硝太を誘導するためにそのようなことをしたとするなら話は通じる。では、その男は今どこにいるのか。

 私を狙っていないとすると、警察に捕まることを恐れて逃げ回っているのか。なにか狙っているとすると危険なのは硝太だ。硝太はより近くからストーカー男も拳銃の人も見ているのだ。顔を見られていると考えてもおかしくない。警察よりも報復がやりやすく今の位置も比較的簡単にわかる。もし目覚めたら最も厄介な存在で恨みをぶつけるには恰好の材料だ。

 とはいえこれがわかったとしても自分に出来ることは無い。これをマネージャーや事務所の人に言ったところで「それで?」で終わりだ。とはいえアクアやルビーに言えば事件に関わってると証明するようなものだ。事務所にわざわざ手をかけさせた以上頼れない警察に言ってもちゃんと受け取ってくれるかどうか怪しいし、そもそもこの話はあくまで妄想、証拠がない。

 

『だけどこれだけは信じて欲しい。僕は君の味方だ。君の身体は何があっても僕が守る。だから僕のことを信じて』

「…うん。そんなこと考えてる場合じゃ、無いよね」

 

 硝太の言葉を思い出してベットから立ち上がる。スマホをもう一度手に取り、L〇NEを開く。ルビーとのトーク画面を開き、メッセージを送る。

 

「硝太について話があるんだけど何処かで会えない?」

 

 何やらミステリーの犯人が被害者を呼び出す時のような内容になってしまったがLI〇Eだけで話せる内容でもない。元より今の私に何かが出来るとは思えない。でもこのまま立ち止まるぐらいなら、アクアとルビーに伝えなければならない話だ。これから硝太が亡くなるとしてもその相手ぐらいは知っておかないと流石に悲惨すぎる。そう決意してフリルはスマホからルビーの着信が来るのをしばらく待った。

 

 次の日の未明、LI〇Eの着信が来たのを確認してフリルがスマホを手に取る。そこには、ルビーから衝撃の内容が届いていた。




前々回はミヤコさん、前回はアクルビの対応だったので今日はその他の反応です。何も知らない頼子ちゃん。硝太からあかねへの思い。一人で蚊帳の外に出されながらも推理を始めるフリル。
そしてしれっと登場するアビ子先生。アビ子先生にショタコン疑惑かけられる頼子ちゃん、ごめんね。
そしてフリルに来た返信の内容とは…?

お気に入り登録、高評価、感想よろしくお願いします!
それはそれとして吉祥寺先生は年下好きの気はあると思う

今後R18シーンをそのシーンだけ抜きだして別小説として出すのはアリ、ですか?(もちろんURLは張りつけて分かりやすくはします)

  • アリ! エッチなシーンから逃げるな!
  • ナシ! そんな暇あるなら本編進めろ!
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