【硝子玉の子】   作:みっつ─

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前回のあらすじ
斉藤硝太が刺された翌日、日が落ちた病室にツクヨミが訪れる。硝太の状態を確認するツクヨミの背後からリビングデットのような動く死体が現れる。動く死体に苦戦するツクヨミを見兼ねたように硝太が目を覚まし、特殊な能力で動く死体を切り裂いた。

──インスタントバレットに覚醒した。


#51 追憶─死の世界─

「やっと、来てくれたのね」

 

 誰かに声をかけられて目が覚める。聞き覚えのある、人を魅了する声。堕落を悪とする考えが基本なら彼女はきっと悪魔だ。

 しかし何故か敵意は感じられなかった。というより彼女は誰よりも自分の理解者のような気がする。

 目を開けて最初に見えたのは見覚えのない部屋。大きな白いベットに素人目線でも見るからに高そうなシャンデリア。清潔感のある壁紙になんか不思議な匂いのする香水がベット近くの棚に置かれている。豪華なはずなのに製作者の意図何処かズレてるように感じる。感覚だけの話になるが拷問部屋のような雰囲気を感じる不思議な部屋。

 ただでさえアンバランスな部屋の中何より目を引くのが声をかけてきた女性。長く艶のある黒髪。成人男性並の長身にキメ細やかな肌。

 

「待っていたのよ」

 

 女性は優しい声でこちらの前に出てくると自分の頬を優しく撫でる。慈愛に満ちた女性の感覚は母に似たものを感じる。驚くほど警戒心が出てこない理由はおそらくそれだ。

 

「やっと私に踏み込んでくれたのね。少し待たされたけど、いいわ。キミも家族とお別れする時間が欲しかったのは分かるから許してあげる」

 

 女性の言っている言葉の意味は分からない。まず最初にこの女性とは出会った記憶が無い。警戒する必要のない美人に好かれるのは正直に言ってとても有難いが初対面から好感度が高すぎるため美人局の可能性を感じてしまう。しかし女性の言葉には嘘が一切混じっていないのがわかる。

 そう思った自分が何か言う前に彼女はこちらの手を引っ張って抱きついてくる。豊満な身体を全身で感じて気が少しだけ緩む。同時に彼女の身体(ココロ)に不思議な傷跡を見つけた。『傷跡』と言ったがそれは塞がっている訳ではなく、ガムテープでとりあえず補修したようなもので膿んだ場所からは一種の呪いを吐き出している。

 

──この呪いは彼女の加害性なんだと理解したが不思議と敵意が持てなかった。

 

「ああ、名前を言ってなかったわね。私は愛梨、呼び捨てでいいわ」

「アイ、リ」

「ええ」

 

 愛梨(アイリ)と名乗った女性はハグから解放するとベットからゆっくりと降りる。動作一つ一つに余裕と大人の色気を感じる。アイリは近くにある化粧机に備え付けられた椅子に座ると身につけた服を一つ一つ脱いで生まれたままの姿へとなっていく。

 急に抜き出したアイリから急いで背中を向ける。風呂に入る、にしては脱ぎ始めた位置が浴槽だと思われる位置から少し離れているのでおかしい。何はともあれ目を背けた先には大きな窓が目に見えた。外は何も存在しない無なので夜の日のように黒いガラスが鏡のようになってアイリの身体を映す。一瞬映ったアイリの裸体。窓ガラスに映ったものでも彼女が相当な美人であることがわかる。肉体だけを見るなら傷一つの無い、計算され尽くしたスタイル。胸部と臀部の大きさといい、まるで芸術家が作り出した肉体のような身体。しかしその裏にあるものを感じると一気に気持ち悪くなる。急いでベットから降りてカーテンを締める。

 

「無理しなくてもいいです、その傷。性被害でしょう」

「わかるの?」

「骨盤のズレは幼少期に腰を相当酷使した証拠だ。別に身体を差し出さなくていいから服着てください」

 

 アイリの身体は確かに綺麗だ。しかし腰周りのバランスを崩してそれを演技で治しているのが見えた。究極まで磨き上げたようでまるで戦時中の女性の少年兵のような言い方は悪いが劣悪な環境にいた事を察せられる。

 おそらくアイリが出会ってすぐ服を脱ぎ出したのもその経験からだろう。一度被害を受けた人はその被害を軽視する傾向にあると昔母が言っていた。理由は分からないが体を差し出すことで有利に進めたい要素があったのだろう。交渉か、友好か。どちらにしろアイリに敵意を感じないので話をするぐらいならいいはずだ。そう思い、アイリに背を向けてカーテンを見つめながらベットに腰掛ける。

 

──というか、ここどこ?僕はさっきまで何を?

 

 一時的に気を休められるようになったことでやっと今の状況について考える気になった。

 まずここはどこか、について。高いホテルの客室の一室、もしくはアイリの部屋と見るべきか。直前の記憶が無いため先程まで何をしていたのかわからない。直前の記憶が無い、ということは解離性障害で忘れた、例えば解離性遁走で逃げ出したのか。錯綜する頭で何とか覚えている中の最新の記憶を辿る。

 

『硝太、何処に行くの』

『誘うなら、私が逃げ込むだろう場所に行った方がいい』

 

 不知火フリルと共にいたことを覚えている。何故共に居たのかは覚えていない。他には誰もいない。いつも一緒の家族の影すら見えない。そのくせ左腕を何らかの原因で負傷して、不知火を抱えてどこかへ逃げていった記憶がある。

 何処かに逃げたあとは確かマンションに逃げ込み不知火を部屋に押し込んで、その後は。

 

「そう、死んでしまった」

「──っ!!」

 

 記憶が掘り返されたのと同時にアイリが頭の中を見ていたように的中させるので驚いて振り返る。そこには服を脱いだ後着直していない、つまり生まれた姿のままのアイリがベットの上で四つん這いになっていた。

 アイリの右手が頬を撫でる。逃げられない。

 

「なんで──」

「私も同じ。夫にね、殺されたの。心中だったそうだけど、私には関係ないわ」

 

 なんで服を着ない。なんで頭の中を読んだような発言をした。

 そう言った思考を回しながらもアイリの言葉には妙に納得する自分がいた。ああ、この人は誰かに呪いを振舞って恨まれて殺されたのだろう、と納得してしまった。敵意を持てない、と言ったが彼女は決して善人では無い。ただ危害を及ぼす存在で無い、あるいはこちらにかかる火の粉が弱いだけで悪意なら藤波のようなインスタントバレットを超えるものを持つ。それでいながらその悪意には同調できてしまうものがあるから、僕にはどんな力があろうと彼女を裁くことは出来ないということだけはわかる。

 

「とても暗くて、寂しかったの。ここには地獄の方がマシだって言える完全な無。キミがいないと私は私ですらいられない」

 

 アイリの羨望の目がこの言葉が嘘でないこととこの場所が何なのかを証明している。

 

「そうか。ここは死か」

 

 肉体が死んだ後残った魂や精神はどうなるのか。これまでの記憶を剥ぎ取られ、次の肉体に転生するのか。そのまま星の海に消えていくか。様々な宗教観や神話によって違いがあるがその全てにおいて明確な死を見てとることが出来るものは無い。

 アイリは死に、次の肉体に転生することも出来ず、無になることも出来ずにずっと留まっていたのだ。死には時間の概念も、空間の概念もない。通常の人間からすれば自分の体を認識することも出来ずに痛みも苦しみもなく意識を失うことも出来ず考えることを止めることも出来ずに永遠に漂う存在になるというのがわかりやすい。明確な拷問こそあれそれが罰として肉体と時間を感じさせる地獄とはまた違う苦しみ。

 

「キミが来てくれて本当に良かった。この場所はね、私の記憶から作られたの。死に至りながら肉体の経験を保持する君が触れる度に私は自分の体を得ることが出来る」

 

 アイリは泣きそうな声で裸のままこちらを抱き締めてくる。

 これまで泣くことも誰かに助けを求めることも出来ずただそこにあり続けた彼女の痛みはどれほどのものだったか。自分にはわかる。あらゆる世界あらゆる生物が全て理解できない死を自分だけが理解出来る。そしてそれは彼女も同じ。

 

「キミの絶望、キミの失望。キミの恐怖。私だけが理解出来る。キミのお兄さんも、お姉さんも、お母さんですら理解できないコトを私なら理解出来る」

 

 アイリと自分はある意味で同じ存在だ。違うことと言ったらアイリが言った死にいたりながら肉体を保持できるという特性があるかないか、程度のものだろう。正直それも自分が認識できる明確な強みでは無いが。

 

 アイリの力でベットの上に引き戻される。抵抗しようと思えばアイリの身体を弾き飛ばす程度容易だがそれをする気は自分には無い。ただ彼女の苦しみに同調した自分は彼女の為に何かしたいと思った。

 アイリの手によって服がゆっくりと逃がされる。手伝うことも、抵抗することもない。上着、下着と脱がしていく彼女の笑みはそれだけで快楽の絶頂にいると思われるほど気持ちよさそうに緩んでいる。

 そのまま全裸になったアイリは僕の上にまたがる。情欲的な彼女の手がこちらまで伸びる。これから何が始まるかは分からない。ただそれから逃げてはいけないことだけ分かる。

 

「私の身体を全てあげるわ。肉体は髪の毛先から足の指先まで。もちろん心も全て。だから私を愛して──硝太」

 

 そう言うとアイリは僕の胸板に手を伸ばす。この手はどんな意味を持つのかそれはアイリにしか分からない。

 

『させないよ』

 

 何処かから聞こえた声と共にアイリの手に何処かから飛んできた光が当たる。床に落ちたそれを見ると透明なビー玉が転がっている。アイリはパントマイムでもするように何度か手を引っ込めては伸ばすと胸板から数センチ手前のところで手を止めたアイリは遠目で見ても怒りがわかる顔で手を細かく震わせながら握りしめる。

 

「貴女にはヒカルをあげたじゃない。この子は渡しなさいよ」

「アイリ?」

 

 何処かから聞こえた声に対して声を荒らげるアイリ。傷口から膿んだ呪いが辺りに撒き散らされていく。

 未成年の頃から酒を飲まされ、金だけ持った下品な男たちに全身を触られ、嫌な顔ひとつ見せてはならない。面白くもない話を機嫌よく笑い、次の話を頼む自分の口を切り落としたくなる。

 大物番組のプロデューサーに事務所の看板を売る為に身を捧げることなんてよくあること。20歳になる前から、生理のためでもないのにピルは必需品だった。そのくせ避妊具なんて使われているところを見た事すらない。好きになった人に初めてを捧げるなんて幻想、聞くだけで耳が壊れそうになる。

 誰も守ってくれない。本当のことを言おうとした友達は次の日文字通り消えていた。名前を売ったせいで次の仕事にもありつけない。いつか友達なんて表面上なだけのものになり互いが互いをその日の気分で売れるようになった。

 ただの性欲に傷つけられた身体を化粧と笑顔で隠して綺麗に振る舞う。ただそれだけが彼女に許されたこと。彼女は芸能界の人形だった。

 

 この痛みは、感じた事がないはずなのによくわかる。崇高な嘘の為に汚れるのは、死にたいという感情さえ消し去ってしまう。

 

「私は身体を売って仕事を取って必死で汚いものを受け入れてきた。なんで綺麗なままの貴女が、この子を欲しがるのよ!この子は私のモノだ!」

 

 だから、彼女の怒りはもっともなもの。綺麗なままの人にそれを否定する資格は無い。傷付いたとしてもそのままでいろ、なんて自分勝手な綺麗事を吐くのがオチだ。彼女を汚したものに罰が下ることはない。仮に下ったとしても汚された彼女が綺麗に戻ることはなく、同時にその汚れに正当な罰は世界に存在しない。

 正当な罰が下ることがないなら自分も同じことをしてその鬱憤を少しでも晴らした方がいいという考えも理解出来る。僕もお母さんがいなければ■■の■■■を全員殺していたかもしれない。僕もアイリも決して善人では無い。悪意は当然のように持つしそれを自分の意識だけで抑え込める体質では無い。我が身可愛さで誰かを見捨てるなんて日常茶飯事。誰かの痛みを共感しても手を差し伸べることすらしないのに自分が傷付けば何もしない世間を憎む。所詮その程度。

 

「違うよ、アイリ」

「え?」

 

 それでももっともなはずのアイリの言葉の通りにはならない。アイリの手を伸ばしてくる手を横から弾く。絶対に拒否されないという確信があったのだろう。突然の拒否にアイリの顔が酷く歪む。

 

「僕がどんな女性と共に生きようと。共に死のうと、僕の命はお母さんの為にあるものだ。だから僕はお母さんのモノ。アイリのモノには残念だけどなれない」

「なんで…もうキミは死んだじゃない!お母さんは生きてるのに。死んだのに生きてちゃダメじゃない、死んだなら死んでなきゃ!」

 

 僕の命はお母さんの為にあるモノだ。覚えている限りもっとも古い記憶、幼い頃記憶喪失になって失ったものを除く記憶で決めたことだ。僕の人生をお母さんの為に使う。だからアイリのモノにはなれない。

 アイリの手を拒否するとアイリは死んだのだからそれはもう無効だ、と非難してくる。確かに人生をお母さんのために使うなら死んだ時点でもう十分と言ってもいいはずだ。しかし、よく考えてみるとおかしな話だ。僕がお母さんの為に生きたかったのは命じられた訳でも望んでいた訳でもない。ただ自分のためだけに涙を流してくれた母に幸せになって欲しいという理由だけで決めた自分勝手な決め事。

 結局のところ自分が納得できるまで『優しい人』の為になりたかっただけでしかない。そしてその思いは死んだと言われた今この瞬間ですら欠片も薄れていない。

 

「でも、まだこうしてアイリと話が出来る。それはまだ僕の自意識が生きてる何よりもの証明だ。なら、戦わなくちゃ。ごめんアイリ」

「ふざけないで…!キミのお母さんにキミの歪みを全部理解できるとでも!?」

 

 手前勝手な理論で何とか納得できるような結論を出すが、アイリに納得できるはずもなく感情的に怒り始める。無理もない。自分のモノだと思っていたものが突然手を切ったら誰しもこのような反応はする。可哀想だとは思う。同情はする。しかし所詮その程度でしかない。

 

「人は生きる限り一人だよ。僕はお母さんに僕の全部を理解して欲しいとは思わない。僕はお母さんに幸せになって欲しいだけなんだ」

 

 僕の生存がお母さんの幸せに直結すると思うほど浮かばれてはいない。やれることが全て無意味なのかもしれない。そもそもお母さんが幸せになりたいかどうかすら自分は一度も聞いていない。

 ただ僕自身が優しい人の優しさに見合う何かがなければ納得できないだけ。多額の資金でもいい。夢を叶えることでもいい。相応の立場と権限を手に入れるだけでもいい。要は何らかの見返りを世界から優しい人()に与えるべき、という結論だ。

 そうでもしないと優しい母は、ただ奉仕するだけでバカを見ただけで終わってしまう。そんな優しくない人間しか考えないような見返り前提の思考。立派とはとても言えないしこれが正しい思考だとはとても思えない。それでもやめることはしたくない。

 

 アイリの体を片手で持ち上げて傷つけないように隣に転がす。アイリから身体を引き離した後一人でベットから降りてアイリに背中を向ける。

 

「嫌、嫌、嫌!」

「…ごめん。せめて、その憎悪と悪意だけは僕が引き継いでいくから」

 

 僕は優しい人じゃないからアイリに向き合う資格は無い。同じ感情を、同じ悪意持ったところで出来るのは精々復讐の手伝いと同情程度。自分勝手な話だが、それよりお母さんのことが大切だから。お母さんの為になる何かがしたい。たとえ死んだとしても。

 アイリに背中を向けて何も無い空間に手を伸ばす。すると──途端に世界に亀裂が入った。

 

「ああ、これが僕の魔法(インスタントバレット)か」

 

 この空間はアイリの言葉が正しいのならアイリの記憶から作られた空間。VRゲームならともかく想像しただけで空間が作られる、と聞くと諸木のインスタントバレットを思い出す。同じような魔法なのか、と思ったがとなるとアイリは自分でこの世界を作ることが出来ることになるのでそれはおかしい。なのでこの空間があること、よりアイリがここにいる理由を考えた方がいい。そもそも人は死ねば終わる。自分も、アイリもそうだ。なら死んだはずの人間がいるこの世界はなんだろう、となる。妄想か、夢か細かいところまでは分からない。わかるのはアイリの記憶から作られたこと、そしてそれを外野のはずの僕自身が知覚できること。

 

 知的生命体であるなら誰しもが持つ個人の領域。記憶や経験を積み立て肉体と共に膨れ上がるもの。それを単語で表すとすると『魂』以外に相応しい言葉は思いつかない。ゲームで例えるなら肉体はSw〇tchやP〇5のようなハード、魂はソフトのようなもの。確かに存在しながら普通なら見ることすらできない精神的なもの。魂とそれに影響して作られるものが見えるだけでなく触れられるのならそれは魔法と言っていい。

 

「なら、この世界は壊せるってことだ」

 

 世界を俯瞰して観察する。触れることが出来るのはそれは物質的に見ていることになり、物質は例外なく壊れる可能性を孕む。

 伸ばした手を一度引っ込めて空間を見つめながら指で空間を撫でてその中に突っ込む。柔らかくも脆い不思議な感触。指が入った場所からヒビが生まれて動かす度に穴が広がるようにヒビが広がる。

 

「ッ!止めて、止めて!」

 

 アイリがベットから降りて鬼のような形相でこちらに走って来る。

 夢も、妄想も、記憶も触れて破壊できると知ったからだろう。この世界が壊されればアイリはまた何も無い『無の死』に捕われる。それは僕も同じこと。それを知っても体は止まらない。

 

「ごめん。また会いに来るよ」

 

 腕を強引に動かしてヒビを強引に広げて世界を割る。その瞬間にアイリは世界ごと消滅した。まるで癇癪を起こした子どもが積み立てたブロックのタワーを倒すように呆気なく、一瞬だった。

 何も無い世界に取り残される。光はなく、音はなく、物質はない。身体もアイリのいた世界ごとかき消されたのか全身の感覚が一瞬にして消え去った。黒でもなく白でもなく、触れる感触は無い。ただ永遠と落ちる。その感覚さえ摩耗し、いつかゼロになる。

 

「──舐めるな」

 

 その理不尽を腹の底で嗤う。何も無い世界であろうと、ここに自分がいるのなら対抗手段はいくらでもあるはずだ。

 見えないのは何も無いからだと認識しているから。認識していないだけで頭が回るなら存在はしている。

 

「僕は──まだ──」

 

 手足を夢想し、それをめちゃくちゃに振り回す。溺れるように必死に藻掻く。なにかに掴めれば、この落下は止まる。

 

『そうだね、硝ちゃんはそういう子だった』

 

 不意に、何処かから声が聞こえた。それはアイリが僕に触れようとした時に止めた声と同じ声質。同じ人の声。はつらつしていて、しかし同時に悲しさを宿した普通の女の子の声。

 

「あ」

 

 覚えていないはずなのに、夢想した目の奥から冷たい涙が零れる。見えないはずなのに、その温かさを僕は知っている。

 

『硝ちゃんは相変わらず頑張り屋さんだねー。そんな頑張り屋さんな硝ちゃんには特別に、お姉ちゃんが手を貸してあげよっかな!』

 

 元気な声と共に無の世界にヒビが生える。何メートル先にあるのかも分からない距離だが不思議と手を伸ばせば届く距離のように感じた。

 ヒビを壊して手を突っ込む。突っ込んだ手の感覚が消滅したが構うことはなく声に向かってもう片方の手を伸ばす。姿が見えないため方向は勘に頼るしかないが絶対に逃さないという確信があった。しかしその手に触れるものは無い。

 

「お姉ちゃ──」

『アクアとルビーをよろしくね。大丈夫。お姉ちゃんはいつまでも待ってるから、硝ちゃんが満足したら、また来てね』

 

 女性がそういうと死の世界が完全に瓦解した。肉体を持った命がある時点で、そこには物質的な何かがあることになり、それは無のはずの死の世界に反する。

 要するに斉藤硝太は死から弾かれる。生と死は背中を向けて向かい合うことがないのだから死んだら生きるか存在そのものが消える以外に出来ることは無い。

 最後に。こちらに向かって手を振る、完璧で究極のアイドルのシルエットが見えた。

 

 

──そうして、斉藤硝太は目を覚ました。




読者の皆様…すまねぇ。R15ではこれが限界だ…一応先に書いたプロット内だと硝太はそのまま逆レ〇プされて、それでも硝太は「気にしないで」と軽く流す事で異常性を公開する予定だったんですがここはプロットすら打ち破るお姉ちゃんガードが強すぎた…完全な無から硝太帰還させるし最強すぎんだよこの姉…
どうしよ…R18シーンだけでも別小説として書こうかな…いや、でも今回はそういう展開避けられたのが(コンプライアンス的な意味で)いいと見れるし…いやここはバットエンドで…もういいや、アンケートで選んでもらお

新キャラ
アイリ(愛梨)
死後の世界(?)で硝太を見つけた女性。彼女曰く旦那に殺されたらしい。ルッキズムで演出する芸能界の闇を語るに相応しい壮絶な過去を持つ被害性と被害者の頃の自分とは反対の立場になろうとする加害性を孕む。
硝太に相当な執着心を持ち、堕とそうと画策する。
やり方は強引ながらアクアとルビー所かミヤコですら理解できない硝太の歪みを知っていて理解が出来ると言うだけはあり、硝太の懐に簡単に入り込んでいる。母親(ミヤコ)への愛が無かったら多分落とされていたと思われるほどに人を惑わす技術は高い。
ヒカルという名前元カレがいるらしい

一応言っておくとインスタントバレットの人物では無い。原作勢からすれば「こいつっ…」ってなるでしょうがこの方原作の30倍ぐらいお労しいことになってるのでお許しください


感想、お気に入り登録、高評価よろしくお願いします!
ショタコンホイホイ系合法(違法)ショタ、斉藤硝太。
そういえば今の硝太の精神年齢10歳だからこのまま硝太が18歳になれば精神年齢12歳、肉体年齢6歳、実年齢18歳のガチの合法ショタが生まれるのか…合法ロリに人気があるのはロリコン文化とかから何となくわかるけど合法ショタに需要ってあるのか?男のツンデレもそうだけど僕の書くタイプの男って需要ないのばっかだな
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