話としては硝太復活後の実質的な回想シーン…の選択ミス
「やっと、来てくれたのね」
誰かに声をかけられて目が覚める。聞き覚えのある、人を魅了する声。堕落を悪とする考えが基本なら彼女はきっと悪魔だ。
しかし何故か敵意は感じられなかった。というより彼女は誰よりも自分の理解者のような気がする。
目を開けて最初に見えたのは見覚えのない部屋。大きな白いベットに素人目線でも見るからに高そうなシャンデリア。清潔感のある壁紙になんか不思議な匂いのする香水がベット近くの棚に置かれている。豪華なはずなのに製作者の意図何処かズレてるように感じる。感覚だけの話になるが拷問部屋のような雰囲気を感じる不思議な部屋。
ただでさえアンバランスな部屋の中何より目を引くのが声をかけてきた女性。長く艶のある黒髪。成人男性並の長身にキメ細やかな肌。
「待っていたのよ」
女性は優しい声でこちらの前に出てくると自分の頬を優しく撫でる。慈愛に満ちた女性の感覚は母に似たものを感じる。驚くほど警戒心が出てこない理由はおそらくそれだ。
「やっと私に踏み込んでくれたのね。少し待たされたけど、いいわ。キミも家族とお別れする時間が欲しかったのは分かるから許してあげる」
女性の言っている言葉の意味は分からない。まず最初にこの女性とは出会った記憶が無い。警戒する必要のない美人に好かれるのは正直に言ってとても有難いが初対面から好感度が高すぎるため美人局の可能性を感じてしまう。しかし女性の言葉には嘘が一切混じっていないのがわかる。
そう思った自分が何か言う前に彼女はこちらの手を引っ張って抱きついてくる。豊満な身体を全身で感じて気が少しだけ緩む。同時に彼女の
──この呪いは彼女の加害性なんだと理解したが不思議と敵意が持てなかった。
「ああ、名前を言ってなかったわね。私は愛梨、呼び捨てでいいわ」
「アイ、リ」
「ええ」
急に抜き出したアイリから急いで背中を向ける。風呂に入る、にしては脱ぎ始めた位置が浴槽だと思われる位置から少し離れているのでおかしい。何はともあれ目を背けた先には大きな窓が目に見えた。外は何も存在しない無なので夜の日のように黒いガラスが鏡のようになってアイリの身体を映す。一瞬映ったアイリの裸体。窓ガラスに映ったものでも彼女が相当な美人であることがわかる。肉体だけを見るなら傷一つの無い、計算され尽くしたスタイル。胸部と臀部の大きさといい、まるで芸術家が作り出した肉体のような身体。しかしその裏にあるものを感じると一気に気持ち悪くなる。急いでベットから降りてカーテンを締める。
「無理しなくてもいいです、その傷。性被害でしょう」
「わかるの?」
「骨盤のズレは幼少期に腰を相当酷使した証拠だ。別に身体を差し出さなくていいから服着てください」
アイリの身体は確かに綺麗だ。しかし腰周りのバランスを崩してそれを演技で治しているのが見えた。究極まで磨き上げたようでまるで戦時中の女性の少年兵のような言い方は悪いが劣悪な環境にいた事を察せられる。
おそらくアイリが出会ってすぐ服を脱ぎ出したのもその経験からだろう。一度被害を受けた人はその被害を軽視する傾向にあると昔母が言っていた。理由は分からないが体を差し出すことで有利に進めたい要素があったのだろう。交渉か、友好か。どちらにしろアイリに敵意を感じないので話をするぐらいならいいはずだ。そう思い、アイリに背を向けてカーテンを見つめながらベットに腰掛ける。
──というか、ここどこ?僕はさっきまで何を?
一時的に気を休められるようになったことでやっと今の状況について考える気になった。
まずここはどこか、について。高いホテルの客室の一室、もしくはアイリの部屋と見るべきか。直前の記憶が無いため先程まで何をしていたのかわからない。直前の記憶が無い、ということは解離性障害で忘れた、例えば解離性遁走で逃げ出したのか。錯綜する頭で何とか覚えている中の最新の記憶を辿る。
『硝太、何処に行くの』
『誘うなら、私が逃げ込むだろう場所に行った方がいい』
不知火フリルと共にいたことを覚えている。何故共に居たのかは覚えていない。他には誰もいない。いつも一緒の家族の影すら見えない。そのくせ左腕を何らかの原因で負傷して、不知火を抱えてどこかへ逃げていった記憶がある。
何処かに逃げたあとは確かマンションに逃げ込み不知火を部屋に押し込んで、その後は。
「そう、死んでしまった」
「──っ!!」
記憶が掘り返されたのと同時にアイリが頭の中を見ていたように的中させるので驚いて振り返る。そこには服を脱いだ後着直していない、つまり生まれた姿のままのアイリがベットの上で四つん這いになっていた。
アイリの右手が頬を撫でる。逃げられない。
「なんで──」
「私も同じ。夫にね、殺されたの。心中だったそうだけど、私には関係ないわ」
なんで服を着ない。なんで頭の中を読んだような発言をした。
そう言った思考を回しながらもアイリの言葉には妙に納得する自分がいた。ああ、この人は誰かに呪いを振舞って恨まれて殺されたのだろう、と納得してしまった。敵意を持てない、と言ったが彼女は決して善人では無い。ただ危害を及ぼす存在で無い、あるいはこちらにかかる火の粉が弱いだけで悪意なら藤波のようなインスタントバレットを超えるものを持つ。それでいながらその悪意には同調できてしまうものがあるから、僕にはどんな力があろうと彼女を裁くことは出来ないということだけはわかる。
「とても暗くて、寂しかったの。ここには地獄の方がマシだって言える完全な無。キミがいないと私は私ですらいられない」
アイリの羨望の目がこの言葉が嘘でないこととこの場所が何なのかを証明している。
「そうか。ここは死か」
肉体が死んだ後残った魂や精神はどうなるのか。これまでの記憶を剥ぎ取られ、次の肉体に転生するのか。そのまま星の海に消えていくか。様々な宗教観や神話によって違いがあるがその全てにおいて明確な死を見てとることが出来るものは無い。
アイリは死に、次の肉体に転生することも出来ず、無になることも出来ずにずっと留まっていたのだ。死には時間の概念も、空間の概念もない。通常の人間からすれば自分の体を認識することも出来ずに痛みも苦しみもなく意識を失うことも出来ず考えることを止めることも出来ずに永遠に漂う存在になるというのがわかりやすい。明確な拷問こそあれそれが罰として肉体と時間を感じさせる地獄とはまた違う苦しみと言える。ある意味痛みで今があることを感じさせてくれるだけ拷問の方がマシではないか、とすら思っているのが伝わってくる。
「キミが来てくれて本当に良かった。この場所はね、私の記憶から作られたの。死に至りながら肉体の経験を保持する君が触れる度に私は自分の体を得ることが出来る」
アイリは泣きそうな声で裸のままこちらを抱き締めてくる。
これまで泣くことも誰かに助けを求めることも出来ずただそこにあり続けた彼女の痛みはどれほどのものだったか。自分にはわかる。あらゆる世界あらゆる生物が全て理解できない死を自分だけが理解出来る。そしてそれは彼女も同じ。
「キミの絶望、キミの失望。キミの恐怖。私だけが理解出来る。キミのお兄さんも、お姉さんも、お母さんですら理解できないコトを私なら理解出来る」
アイリと自分はある意味で同じ存在だ。違うことと言ったらアイリが言った死にいたりながら肉体を保持できるという特性があるかないか、程度のものだろう。正直それも自分が認識できる明確な強みでは無いが。
アイリの力でベットの上に引き戻される。抵抗しようと思えばアイリの身体を弾き飛ばす程度容易だがそれをする気は自分には無い。ただ彼女の苦しみに同調した自分は彼女の為に何かしたいと思った。
アイリの手によって服がゆっくりと逃がされる。手伝うことも、抵抗することもない。上着、下着と脱がしていく彼女の笑みはそれだけで快楽の絶頂にいると思われるほど気持ちよさそうに緩んでいる。
そのまま全裸になったアイリは僕の上にまたがる。情欲的な彼女の手がこちらまで伸びる。これから何が始まるかは分からない。ただそれから逃げてはいけないことだけ分かる。
「私の身体を全てあげるわ。肉体は髪の毛先から足の指先まで。もちろん心も全て。だから私を愛して──硝太」
そう言うとアイリは僕の胸板に手を伸ばす。この手はどんな意味を持つのかそれはアイリにしか分からない。
パチッと、音を立ててアイリの手が弾ける。その瞬間身体中に静電気のようなものが走る。電気ショック、にしては敵意がない。攻撃性はあるがそこには間違いなく善意が含まれている。
──なんだ、コレ。
初めて感じる謎の力に体が混乱する。人体改造を受けている気分だ。大した力のないアイリの指が触れ、また音を立てて弾ける。なにかの能力か、と考えたがアイリがそのようなものを使っているようにはとても見えない。ただ自分の神経がアイリの指が触れる度に強い『何か』を伝えてきているだけだ。
「──出来れば初物が良かったけど。いいわ、君の体、君の愛さえ得られればもうどうでもいいの」
可愛らしく唇を尖らせながらもこちらの身体を弾く手は止まらない。
バチ、バチ、バチ。自分の体にこれだけの刺激が走っているのだからアイリにも何らかのフィードバックはあるはず。アイリはそれすらも楽しんでいる。
「アイリっ──」
「怖がらないで、大丈夫。すぐに気持ちよくなるわ。君は素質があるもの」
「そし、つ──?」
「そう。私とひとつになる素質。だって無限にも等しい時間と空間を縫って中で私と巡り会えたのですもの」
言われて始めて気付いた。アイリの持っている呪いのような攻撃性はこうして発揮されるものだと。性によって傷つけられ、その痛みを知っているアイリだから攻撃性には性を使うしかない。赤子であれ老人であれ自分がされた攻撃は例え記憶を失ったとしても残り続ける。誰かを傷つけようと考えた時、トラウマに起因したそれらが出てきても何ら不思議では無い。
──本当に、同じなんだ。
驚く程に自分とアイリは似ている。アイリがこちらに好感を持ってくれているのもその理由が含まれているのだろう。美しく、扇情的で、整備された芸術品のようでありながら同時に棘を隠している薔薇のような女性。そんなアイリでも根に付けられた呪いのような攻撃性だけは自分と変わらないという点にシンパシーを感じるのはある意味当然。
言うのならアイリはお母さんに出会えなかった僕だ。誰にも理解できない痛み。知られるのはもちろん、理解されてはならない。多くの期待や自分の夢が痛みを強くしながら助けてくれるのかもしれない誰かとの壁をより厚く、より深くする。
救おうとすること自体が暴力に等しい状態で彼女は決して救われることは無い。同じような誰かを作ることでさえ気持ちは晴れても傷口に塩を塗るように痛む。ゆっくりと身体を起こしてアイリの身体に触れる。ピリッ、と弱めの刺激が触れた指から全身を駆け巡る。
「アイリ」
彼女の名前を呼ぶ。今日初めて聞いた、会ったことも無いはずの貴女。運命の相手、と言うようなロマンチックなものでは無い。それどころか本当は彼女とや出会ってはいけなかったような気さえする。だけど、僕と彼女は同じだから。母が僕を救ってくれたように僕は彼女を救える気がする。
名を呼ぼれたアイリは頬を赤くすると目を輝かせて強くこちらを抱きしめる。たいした力は無いはずのアイリ熱い抱擁に自分の下腹部はじんわりと熱を持つ。
「愛してる、愛してるわ。」
何度目かの愛の告白が耳元で囁かれる。声をかけられているだけなのに脳を弄り回されているような快感が頭の中を駆け巡る。
自分は情欲的な沼に落ちていくのを、肌で感じとることしか出来なかった。
【エンド③ この快楽のままに】
◇◇◇
この
ただ本編を楽しみたい方、本編のイメージを崩したくない方は読まずに飛ばして下さい。
その他以下の点にお気を付けてください
・本編に500%上乗せでふざけ倒しています
・このコーナーでは台本形式を取っています。地の文はほとんどありません。というかありません。
・このコーナーの登場キャラは本編のキャラクターとかけはなれていますが本編には関係ありません。
・考えるな。感じろ
それでは。
キャラ紹介
アイ先生
その正体は元B小町のセンター、アイ。
自称本作のメインヒロイン。何故か不明だが硝太のことを硝ちゃんと呼ぶ。
このコーナーではギャグ枠に当たる。ギャグ枠は死なない?本作にそのジンクスは通用しないのである。
ツクヨミ
弟子一号の名を得られなかった悲しきブルマ。
カラスは飛ぶが落とされる。
アイ「うっ…うわ…わぁ…あ…」
唐突な両目黒星号泣。原作の泣きシーンが台無しである。
ツクヨミ「あーあ泣いちゃった。これがノウカハイ?ってやつかな」
アイ「変なのに硝ちゃん取られちゃったー!!!」
突然の大声に思わず耳を塞ぐツクヨミ。しかし気づいてからでは時遅く耳鳴りがするほどの轟音にその場に立ち竦む。
さながらモ〇ハンの
ツクヨミ「…(変なの?)」
アイリの特徴
大人の女性
性被害を受けていた過去があり、性加害をしていた過去もある
硝太との相性が(色んな意味で)いい
並べられる要素を見て大声から立ち直ったツクヨミは絶妙な顔をアイに向ける
ツクヨミ「…今回の敗因は彼自身のメンタル不足だね。魔法使いになる前の硝太じゃ魅了耐性も洗脳耐性も無いから。対処法は簡単。耐性がなくてもそれらを受け消せるものを君は持っているでしょ?」
アイ「こんなの寝取られ社会にあっていい内容じゃないよ!ちょっと潰してくる!」
ツクヨミ「昨今昼ドラとかで安易に不倫を流してる国のアイドルがなんか言ってる…」
アイ「それはそれ!これはこれ!」
ツクヨミ「ハイハイ…今回も星の砂をどうぞ」
_人人人人人人人人人人人人人_
> 星の砂×1を受け取った! <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
アイ「今日みたいなバットエンドは絶対に!ダメだからね!硝ちゃん!」
ツクヨミ「…君も君だろうに」
エンド3はアイリこと姫川愛梨に篭絡されるエンドです。なんか姫川ニキより早く愛梨出てきてるの酷くて草。
被害者にして加害者というFate作品ならそれなりにいい出番が約束されていた愛梨さんですが推しの子だと同情すらされずに終わってしまったの可哀想…なんだけど一応加害者だからプラスに書きにくいのもなぁ…
基本的に性被害を軽く見がちな硝太だからこそそんなに嫌っておらず本編でもお家に帰る時に「ごめん」って謝られますけど普通の人なら裸足で逃げるよこんなの。
破綻者になってしまった側のアイリですが元から破綻者の硝太の根っこを理解出来る存在でもあるんですよね。それはそれとしてその手を払ってお母さんの元まで帰るのが本編硝太ですが。
付き合っても絶対に幸せになれない2人。互いの傷を舐め合う、ではなく互いの傷を押し付け合うような関係なのがミソ。傷が深くなるから余計に悪化して治らないのいいよね、良くない。