【硝子玉の子】   作:みっつ─

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久しぶりのエンド分岐です。
たまにはこう言うエンディングも、いいよね?


E④ 普通の男の子

 少女が消えてから約一時間後。彼女が言ったように烏が伝書鳩のようにやってきた。窓を開けて部屋の中に入れると烏は少し飛んで近くの机の上に乗ると紙が結んである足を持ち上げる。紙を取れ、ということだろう。素直に結んである紙を取る。

 

「随分と古風だな」

 

 SNSで情報がやり取りされる現代では一周まわって新しい伝書鳩による手紙のやり取りに苦笑しながら肩に乗ってきた烏に見せつけるように紙を広げる。

 

『今日の夜9時、屋上』

「いや、早いな」

 

 必要な内容が書かれながらも口頭で充分な内容に硝太は内心で「ならさっき言っとけよ」とツッコミを入れる。動く死体を隠し場所から人の目に見えないように運ぶのは至難の業なので相当時間がかかると思っていくたがその日のうちに運んでこれるとはやふふ

かし名言しているのは素直に驚く。偽物か、と思ったが自分はともかく八咫烏の目はそんな簡単にはごまかせない。知らない手紙を結ばれたのに飛んでまさかそれを渡してしまうなんて失態を犯すとは思えない。まず信用していい。

 早いうちに作業が出来るのはどんなものでも情報が欲しいこちらにとっても都合がいい。すぐに準備を済ませて時間通りに屋上に上がる。

 

「あ、きたきた。遅いよ」

 

 屋上に上がった時には白髪の少女が昼時のように柵にもたれかかっていた。数羽の烏が柵の上をぴょんぴょん跳ねるように歩いており、その中心でだらけきっている姿は本物の子供のように見える。少なくとも最初に会った時のような危機感を感じさせる雰囲気は消えている。本命の死体と思われる何かがその辺から持ってきたとしか思えないぼろぼろのブルーシートに包まれた上で烏に囲まれて屋上のど真ん中に置いてある。無関係の人に開けられそうになったら烏が襲撃するのだろう。

 

「悪い」

 

 時間通りに来たはずなのだが遅いと言われてしまえばそれまで。一言だけ謝ってすぐに烏が群がっているブルーシートまで近づく。烏は一羽一羽がこちらの方向に目を向けてはぴょんぴょん跳ねながら少し離れた位置に移動して場所を作ってくれている。

 

「一応、最後に聞いておくよ」

 

 ブルーシートの端を摘んで開こうとしたその時、後ろから少女が声をかけてきた。その声からは人間離れした、神秘的なものを感じる。

 

「今ならまだ戻れる。それを開けたらもう、君は戻って来れない。一生日陰者、異端者として扱われるで済む。だなんて思わない方がいい。君がこれから起こすのは犯罪で、魔法の解剖だ。もう、後戻り出来なくなる」

 

 まるで神様のような声でありながらその言葉は人の社会にいるものに属した発言。

 犯罪を犯せば警察に捕まる。捕まれば家族に犯罪者の家族というレッテルが貼られる。犯罪者の母親、犯罪者の兄、犯罪者の姉。当然ルビーはアイドルができなくなるし兄は役者でいられない。苺プロは残っていたら奇跡だろうと言えるほどの傷を世間から加えられる。ならば死ぬまで、否。死んでからも隠し通すしかない。それができるのか。嘘が極度に下手な自分がそんな嘘をつき続けられるのか。

 その上、今回はただの死体損壊では無い。夢物語としか思えない魔法に触れることになる。自分が魔法使いなのは能力を使わずに内緒にする──というよりそのまま忘れてしまえば済む話。能力さえ無くせばただのズレただけの人間。しかし魔法の神秘を知れば今後その世界に生きていくことになる。ただ魔法を知っているだけの一般人ではいられない。明確すぎる他人と違う力を認めてしまえば水と油のように混ざらなくなる。colorfulや世界の端っこと同じ人間になる。フリルを襲おうとした、アイさんを殺すように指示した真犯人に睨まれる可能性も当然ある。

 まだ間に合う。ここで手を離して来た道を戻ればいい。その後は少女か眷属の烏がまたこの死体を監視するだけ。自分は何も知らない、無垢な一般人でいられる。何食わぬ顔で家族の中に帰ることが出来る。

 

「自己催眠による人格補正も限界だよ。今ならまだ私が能力に蓋をする事ができる、どうしたい?」

「…僕には分からない」

 

──分からない。

 どうするべきか、なら答えがある。これまで通りお母さんを始めとした家族の幸せの為に命を使い続ければいい。自滅的な行動は取れなくても命を使えない訳では無い。しかし、どうしたい。と聞かれても答えは無い。

 別にものを考えられないわけでも思考力を奪われた訳でもない。痛いのは嫌だし、他人は恐ろしいし、優しい人には幸せになって欲しい。ただ、そうするべきこと以外何をすればいいのかが分からない。

 少女もそれ以上何か言う気がないのか黙ったまま柵にもたれかかって空を見上げる。当然の話だが、背中を押す理由も後戻りさせる理由も彼女には無い。

 

「じゃあ…()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 少女の決定的な言葉に身体が一瞬だけ跳ねる。お母さんが何を望むのか。それはつまり、自分が何のために存在しているのかを問うことになる。

 錆び付いたように身体の動きが悪くなる。首を回して少女の方を向くが、それだけで首から骨と筋肉が軋む音と痛みがする。指に力が入らず、指の隙間からブルシートが落ちる。

 

『寂しい思いさせてごめんなさい。駄目なお母さんでごめんなさい。これからはずっと一緒にいてあげるから。絶対に寂しい思いなんてさせないから』

『硝太…大丈夫?痛くない?』

 

 選べない状況下で母の言葉を思い出す。母は何を望むのか。母は一度も、アイさんの事件の真犯人を捕まえて欲しい、友達を傷つけようとした犯人を捕まえて欲しいなどのことは言わなかった。フリルの件は知らないだろうが、アイさんは母にとっても娘のように可愛がっていただろう。彼女が殺されても復讐をしようとしたり無力感に苛まれるのではなく、残った子供たちに愛情を注ぐ選択を選んだ。何故かは分からない。きっと僕は死ぬまでその時の彼女の気持ちを理解できないのだろう。

 しかしそんな母に自分の決断は間違っていないと言えるのだろうか。バレるかバレないかは別として犯罪をしてまでアイさんの事件の真犯人を追い詰めようとする息子をみてどう思うのだろうか。

 

 悲しむに決まっている。自分のせいだと抱え込んで苦しむに決まっている。母は優しい人だから、使えない息子のことを愛してくれる人だから。

 

「お母さんは、きっとこんなこと望んでない」

「それが君の答えか」

「…」

 

 少女の言葉に黙って頷く。どうしたい、に自分は回答を出せない。ただ母は、お母さんは罪を犯す息子を黙って見られるような人ではない。事件に関わればアイさんやフリルを殺した、殺そうとした真犯人や『colorful(カラフル)』、『世界の端っこ』との衝突も自然と増える。その時に死ぬかもしれない。息子を愛してくれる母に、また愛する子供を失う経験をさせていいのか。いいわけが無い。母の幸せには子供三人がちゃんと生きているのは必須項目だ。仮にルビーがドームライブを成功させ、母の夢を叶えたとしてもその経過でアクアマリンや僕が死んだら母は本当に幸せでいられるとは思えない。残念だがそういう人だ。

 仮に母が僕のことを武器として使い捨てることになんの躊躇いも無い人なら躊躇わずに事件に踏み込めた。自分を鉄砲玉として割り切れた。しかしそれに気付いてしまったからにはもう、そんなことは出来ない。

 

「でも、姉さんが狙われるかもしれない。MEMちょや有馬先輩が狙われるかもしれない。僕はどうすればいいって言うんだ」

「いいよ、もう。」

 

 しかし事件から手を引けばその対価にアイさんを殺した真犯人にB小町の誰かが狙われる可能性もある。母も一度通った道なので注意はしているだろうが大手に守られたフリルですら殺される一歩手間まで行ったのだ。一人でできることにも限界がある。相手が本気で殺しにくるのなら守りきれない可能性の方が高い。こちらから殺しに行かなければ、ルビーが危ない。

 どちらにしろ誰かが手を汚さなければ安心出来ない。それを伝えたとしても母も兄も優しい人なので自分が手を汚して終わらせようとしてしまうだろう。そう思って頭を抱えるが直後に少女が言葉を遮った。

 

 柵に体重をかけるのをやめて目の前まで歩いてくる。ふっ、と声を漏らしながら笑っているがその表情はこれまで見たものとは違い、慈愛を感じるものに見えた。

 

「君がその選択を選ぶなら、戦うのは私だから」

 

 少女が手を差し伸べてくる。

 

 考えてみれば、おかしな話だ。彼女との出会いは有馬先輩を送った帰り。第一印象は変な事言うただの一般通行人としての印象しかない。ちゃんと話したのは解離性遁走になった時だがその頃から彼女には敵意がなかった。普通の人じゃない。それはもう確定と言っていい。七辻すいむを撃退し、普通の人は死ぬまで知ることの無いようなインスタントバレットに対して知識がある。『colorful』や『世界の端っこ』の所属でもない、子供。何故そんな彼女が最初から力になってくれたのか。敵意を持たずに接してくれたのか。

 藤波も、諸木も、敵意の有無は置いておくとしても斉藤硝太を利用しようとする立場にいた。しかし彼女だけは違った。彼女だけは斉藤硝太の味方だった。そんなことをするメリットは存在しない。そもそも彼女の行動は計算づくされたものでは無い、ただの感情由来の行動に感じられる。

 

「…君は、誰?」

 

 手を取る前に、思わず名前を聞いた。

 彼女の感情を知れれば、母が自分を見捨てなかった理由を理解できるような気がしたからか、それとももっと知りたいものがあったのか、本心は知らないが知りたくなった。

 

「ツクヨミ。君の味方だよ、斉藤硝太」

 

 ツクヨミ。日本神話でも有名な三貴子の内の一柱。そんな神と同じ名を名乗った彼女の手を取った瞬間、身体が一気に重くなる。──否。身体では無い。意識が落ちようとしている。強く自分を持って何とかしなければならないのに、そうする気すら起きない。

 

「君はこの事件のことを全部忘れる。そうでもしないとまた繰り返すからね。でも大丈夫。代わりに私が全部やるから」

 

 彼女はそう言って静かに微笑む。その笑みに安心を感じたまま素直に意識を放り投げた。

 

◇◇◇

 目が覚めてから二週間が経った。左腕は今のところ動く兆しは見えないが、病院から退院の通達が来た。今日は退院の日。ロクに寝ることも出来ず、宿題ばかりで夏休みの半分を食いつぶした生活もようやく終える。

 先に手続きを済ませた母と手を繋ぎ病院を出る。その後ろ兄と姉が並んでおり、宿題の残りがどーなの、仕事がどーなの、と話をしている。そんな中、自分はずっと胸の中に小さなしこりを感じていた。何か、大事なものを忘れているような気がする。入院中にそう思ってから母や兄姉に相談したところ事件の記憶を忘れていることに気付いた。それを聞いた時のアクアマリンのどこか安心した顔をよく覚えている。

 

「ん…?」

 

 朝の日差しが目に入ってきてぼんやりとした意識が目を覚ます。退院は朝早かった為、母に手を握られて安心して半分眠っていたらしい。クジラは半分眠ったまま起きると聞くがイメージとしてはそれに近い。半分眠っていたような気がする。

 眠っていた時に何か夢を見たような気がするのだが、その詳細を思い出すことは出来ない。夢とは起きたら忘れてしまうものなのだから。

 

「硝太、なんか変わった?」

 

 すると後ろを歩いていたルビーがふわふわした言葉で質問をしてきた。首だけを後ろを回して振り返る。

 

「変わったって、何が?」

「少し前の硝太みたいになった気がする」

「それいいことなの?」

「いい事だろ、少なくともお前にとっては」

 

 少し前、なんて言われたら事件のことを忘れてしまったのも含めて退化したと言われているようなものだ。思わずいいことなのか聞き返してしまうがルビーより早くアクアマリンが自信たっぷりに即答した。あまりにも早いので本気かどうか疑わしい。

 

「そっか」

 

 しかしそう思うことにした。事件のことを忘れてしまったのは痛いが、所詮その程度と思えばいい。前を向かない理由にはならない。少なくとも左腕が回復するまではB小町のマネジメントもできない事だし今のうちに必要なことの勉強でもしようか。

 そう思った時十羽ほどのカラスの群れが頭上を飛び去った。

 

「わ」

 

 ルビーがカラスの群れを見上げて驚く。都内でもこれぐらいの群れを見るのは別に珍しくもないがなんの前触れもなく、いた事にすら気付かなかった。

 

「お母さんカラス」

「飛んでるわね」

 

 カラスは不幸を象徴する鳥として語られることが多いがあくまでオカルト話に過ぎず、別段科学的な証明がなされたわけでは無い。流石にカラスに悪意はないだろう。

 それよりも空を自由に飛ぶ烏にどことなく羨ましさを感じた。空を飛ぶためだけに身体のあらゆる能力を下げてか弱い存在になった生き物。手を伸ばしても届かない世界に身一つで飛び立つ、まるで空に狂ったような生き方に、僕は憧れたのかもしれない。

 

 

【エンド④ 普通の男の子】

 

 

◇◇◇

 

『教えて!アイ先生』

 

この話コーナーはストーリーの解説、ヒントコーナーです。

ただ本編を楽しみたい方、本編のイメージを崩したくない方は読まずに飛ばして下さい。

 

その他以下の点にお気を付けてください

・本編に500%上乗せでふざけ倒しています

・このコーナーでは台本形式を取っています。地の文はほとんどありません。というかありません。

・このコーナーの登場キャラは本編のキャラクターとかけはなれていますが本編には関係ありません。

・考えるな。感じろ

 

それでは。

 

キャラ紹介

アイ先生

自分の子供達アクアマリンとルビーが大好きなメガネにスーツのドス(ry…美女教師にしてこのコーナーの顔。

その正体は元B小町のセンター、アイ。

自称本作のメインヒロイン。

このコーナーではギャグ枠に当たる。ギャグ枠は死なない?本作にそのジンクスは通用しないのである。

 

ツクヨミ

弟子一号の名を得られなかった悲しきブルマ。

カラスは飛ぶが落とされる。

 

 

 

ツクヨミ「こうして生まれながらに狂気に浸された男の子は普通の男の子として人生の再スタートを切ったのでした。おめでとう。これが真エンディング。この物語のハッピ───」

 

横からミサイルかの如く飛んできたカラスに弾かれて飛んでいくツクヨミ。ちなみにカラスはアイがハリセンでぶっ飛ばした個体である。

 

アイ「エンドなわけないでしょ!」

ツクヨミ「あ〜れ〜」

 

アイ「さて、バットエンドに辿り着いちゃったね、硝ちゃん。でも大丈夫、一つ前の選択肢に戻って戦う覚悟を決めればいいから」

 

※ADVなら選択肢があったでょうがこの小説には選択肢はありません。南無三。

 

アイ「このエンディングになっちゃった理由は実に自分が戦う理由に自信を持てなかった事だね。わかるよ、あかねちゃんの件もあるし迷いがあったんだよね。だけどね硝ちゃん。硝ちゃんが戦わないと何も守れないんだよ。そうだよね」

ツクヨミ「まぁ、確かにこの後私がちゃんとキミを殺した真犯人を捕まえられるか、と言われても分からないからね。返り討ちにあって死んでるかもしれないね」

アイ「よし!じゃあ今日も星の砂!あげちゃおう!」

 

 

_人人人人人人人人人人人人人_

> 星の砂×1を受け取った! <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

 

アイ「硝ちゃんは強いよ。私が保証する」

ツクヨミ「…」

 




これまでのエンディングとは違い、硝太が生存しています。とはいえ戦いから降りることになってしまったのでこのルートの物語はこれで終わりとなります。とはいえ次回は前回の続き、ちゃんと推理パートした次になりますのでご安心ください

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真ツクヨミルートは何処(いずこ)に…え?無いの?今んとこ一番ヒロインやってるのに?
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