心労に苦しむ硝太を心配するフリル。自分の胸を揉むかと聞いてみるがルビーに断られる。
そんなこんなしてる時に硝太にフリルのマネージャー、氷室から連絡がかかる。内容は硝太の左腕を負傷させ重傷を負わせたストーカーが自殺したというニュースが入ってきたこと。自殺の内容に疑いを持つ硝太だが圧倒的に情報が足りないことからもう一度調査することを決める
警察庁警備局、
「リーダー。全員集まりました」
いつもは年頃の女性らしくボディラインが出る服装にしている七辻すいむも、スーツに身を包み秘書のように伊達メガネをクイッと押し上げる。
現在
「うん、ありがとう。すいむくん」
リーダー、日本人とは思えない金髪に糸のように細い目をした30、40代程の美男。異常者、社会不適合者と呼ばれる
「では諸君。早速だが始めよう。まずは前回の仕事、お疲れ様。完全な成功、とまでは行かなかったが目的の半分は成し遂げた」
一般社会にいながら『普通』では無いインスタントバレットの資格を持つ斉藤硝太の覚醒。それは文字通り硝太が『普通』に馴染めないことの証明であり、現在はクラスでは浮きながらも普通の生徒として学校に行っているがそれが出来なくなるのも時間の問題。インスタントバレットの中には学生もいるが、斉藤硝太の『異常性』と名付けられた素質は他のインスタントバレットと一線を画す。全て思い通りに事が進んでいたら、今この会議室に斉藤硝太が交じっていたはずだが、大きな問題では無い。世の中から爪弾きにされたものの行く着く先は決まっている。放っておけば
今回
「だが同時に問題が見つかった。私の『検索』も機能停止するほどの神域を持つ女、ツクヨミ」
スクリーンに表示されるのは多数の烏を引連れた幼女。その姿に会議室がザワつき始める。真名不明、能力不明。リーダーの持つインスタントバレット、アカシックレコードから検索する『情報』のインスタントバレットを持ってしても全てを把握することは出来なかった女。
しかし、全てが不明という訳でもない。検索出来た内容からある程度の推理は行える。
「彼女は1000年以上昔、いや。かの救世主が誕生する以前。紀元前から続けられた外法が作り出したモノだ。あれが成功品なのか、失敗品なのか。作った当人たちは成功だと思っているようだが、実の所は不明。僕は前者だと思っているよ」
スクリーンに宮崎県の高千穂の地図が表示される。日本神話にて有名なエピソードがある観光地の高千穂にはオカルトチックな技術等を受け継ぐ家系がある。似たようなものは日本各地にあったが時代が進むうちにあるものは後継者が育たず打ち切り、あるものは馬鹿馬鹿しいと言われ歴史の闇に葬られ、あるものは目につく儀式だけを形式化して信仰心を失った。そんな中紀元前から長い歴史続いた家系が高千穂にある。
誰も信じないような情報だが同じようにデタラメなインスタントバレット達は笑い話と言い切ることは出来ない。
「その外法はインスタントバレットを血で受け継いできたってことか?」
「どうだろうね。インスタントバレットが目覚める要因、力の源は人の持つ悪意だ。これだけは間違いない。だが、誰しもが悪意を持つこの世の中で全人類がインスタントバレットに覚醒するという保証もない。…覚醒するのに必要な土壌が血統だというなら有り得ない話ではない」
インスタントバレットは今現在でも分からないことが多い。わかるのは個人が持つにはデタラメすぎる能力だということと、その力の源は使用者個人の悪意だということのみ。悪意さえ持てば地球上の誰しもがデタラメな能力を使い出すのか、選ばれた人間が覚醒することで使えるようになるのかインスタントバレットなのか。古くからある呪術と言われた呪いや天変地異の災害を起こしたとされる怨霊がインスタントバレットかどうかすら分からない。完全に同じものなのかもしれないし、全く違うものなのかもしれない。真相は結局闇の中。リーダーの情報のインスタントバレットで様々なことを知っている
「じゃあ、今回の仕事はツクヨミの捕獲?不確定事項が多いのに?」
「それにアイんとこの餓鬼が邪魔をしないとは限らない」
先程まで黙って話を聞いていたインスタントバレットの一人姫浦瀬良が感情を失った目のまま手を上げ、同じく黙っていた貝原亮介がその意見に乗る。
ツクヨミは
結局死んだら終わりの世界で出たとこ勝負を仕掛けなければならない。ツクヨミの危険度がある程度わかっているとはいえ、戦況をひっくり返される危険は常に付きまとう。それに今対象のツクヨミと斉藤硝太は手を組んでいる。ツクヨミを捕獲すれば本来なら
しかしリーダーはその意見が出ることは想定済みのようでその場で首を縦に振る。
「構わないよ。対策は既に済んでいる。けど──ああ、2人とも1つ勘違いしている」
ツクヨミが何をしてくるか分からないという事実も、敵に回す危険のある斉藤硝太も共に問題ないと言い切ったリーダーは二人が一つ勘違いをしていることを指摘する。
「今回の作戦は彼女の抹殺だ。いいかい?捕獲では無い。必ず殺せ」
捕獲ではなく、抹殺。
殺せと命令されて一部メンバーが息を飲むのに隠れて一人のインスタントバレットの口角が上がった。
◇◇◇
「リョースケくん」
会議が終わり、話を聞いていた全員が席を立ち、各々いつも通りの生活を再開し始める。ある者は学生の身分へ、ある者は通常の公安の警察官へと
その中
「なんだ」
「少し話をしたいんだ。構わないよね?」
会議室の出口側に立っていた貝原亮介はため息をついて会議室の奥にいるリーダーを睨む。しかしリーダーも睨まれた程度で萎縮するような人間であるはずもなく貼り付けたような笑顔のまま大型のアタッシュケース片手にリョースケの目の前まで歩み寄る。
「今回の作戦、君には別行動をして欲しいんだ。具体的に言うと斉藤硝太の足止めをお願いしたい」
今回の作戦はツクヨミという名前の少女を殺す為のものだが、現時点で彼女と手を組んでいる斉藤硝太の対策をリーダーは既に手を打っていると言って、会議では議題に出さなかった。
既に手を打っている、と言ったが足りないのか、もしくは既に手を打っていると言ったのが残りのメンバーのための方弁か。間違いなく後者だ。
それがわかるからこそ、亮介はリーダーの命令が気に食わない。リーダーの命令が「斉藤硝太を殺せ」なら亮介は喜んで受けていた。しかし降りたのは斉藤硝太の足止め、要するに殺すのが目的ではなく他のメンバーがツクヨミを対処する間の時間稼ぎが目的。
「あいつと斬り合うのか。構わないが、殺すぞ」
「いや、違う。君が狙うのは斉藤硝太じゃない。彼の母親の、斉藤ミヤコだ」
殺意を隠さず斉藤硝太を殺そうと考える亮介の目の前に斉藤ミヤコが映った写真が置かれる。インスタントバレットでなければ裏社会の人間ですらない。中小規模の芸能事務所の一社長。本来なら
だが、一つだけ彼女には普通では無い点がある。彼女は、斉藤硝太の母親であり、同時に彼の心の拠り所である。斉藤硝太に人間性を与えた相手で10年以上いつ爆発してもおかしくない爆弾を抱えるどころかそれを人間社会にある程度馴染めるように教育までしたイレギュラー中のイレギュラー。普通に見れば小難しい子供を抱えた母親だろうが、この一点だけである意味インスタントバレット以上の異常者でもある。
──
「斉藤硝太の心の拠り所、まだ彼が人の皮を被れる理由──斉藤ミヤコさえ死ねば斉藤硝太は本来のインスタントバレットとして生まれ変わる」
「…目的はそっちか」
リーダーの得意げな言葉に亮介も思わず眉を顰める。インスタントバレットの力の源は人の持つ悪意だ。斉藤硝太を人にした斉藤ミヤコは偉大であるが、同時に斉藤硝太の最大のブレーキになっている。いわば悪意を溜め込むダムだ。世界を滅ぼすレベルの悪意を溜め込み、ある時ほんの少しだけ放出する。斉藤硝太が今発動しているインスタントバレットはせいぜいそのレベル。溜め込んでいた悪意を全て吐き出すような衝撃があれば彼は本来の形に覚醒する。悪意を溜め込んでおける我慢が消え、人の皮を被る理由がなくなり、母親を失った痛みや悲しみが今まで溜め込んだ悪意を倍増させる。
「ああ。ツクヨミは最悪逃がしても構わない。私の目的は斉藤硝太のインスタントバレットの完全な覚醒。その為に邪魔となるものを殺す。簡単なことだろう?方法は君に任せる」
「ふっ、ふははっ!」
心を読んだのか、と思ってしまうほどに理想的な言葉が来て亮介は先程の不機嫌そうな表情から急に口角が上がり、笑い出してしまう。
方法は君に任せる、とは亮介が何をしても
「彼の脳と右目だけ無事なら、何しても構わない。拷問も、殺しも許可しよう。もう一度言うが、方法は君に任せるよ。ただ失敗は許されない」
斉藤硝太のインスタントバレットに必要な脳、そしてその影響を強く受けている右目の瞳。それさえ無事なら他の部位はいらない。斉藤硝太が死んでいたとしても
リーダーは持っていたアタッシュケースを近くの机の上に置き、中身を見せる。
「外部からの応援も特例で許可しよう。他に質問は?」
「──無い」
アタッシュケースの中に入っていたものを手に取り、感触を確かめる亮介。その瞳は硝太と同じように輝きを放っていた。
勝ったな(勝ってない)。いやマジでこれどうすんだよ…ツクヨミさんはともかくミヤコさん戦闘能力ゼロだぜ?芸能界マンガのキャラだから当然だけど。むしろ硝太にあるのがおかしいけど。
知らん間に狙われちゃったツクヨミちゃんとミヤコさん。彼女が一体何をしたって言うんだ!硝太を守った?うん、そうだね…
全体的に立ち回りが上手い
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君は、生き延びることが出来るか