硝太がぴえヨン(#19から出番がなかった)をボコる。慈悲なんて無かった。
後日。陽東学校芸能科。
昼食の時間帯になりいつも通りルビー、みなみ、フリル、硝太の4人で集まって教室の隅で食事をしている。
話題は当然、先日あったB小町の初の生放送。
「この前のB小町のライブ配信、盛り上がっていたね」
「ソウダネ(棒)」
B小町のライブ配信は有名配信者達のライブ配信に並ぶほどの最大同接数を誇り、これだけでもそれなりの事務所までなら営業をかけられる内容になった。MEMちょという有名なインフルエンサーがついていたとしてもまだ弱小としか言えない苺プロにいて半年程度でここまでの結果を出せたのは大きい。まだアイがいた頃のようなドームライブが出来た頃と比べると弱いものの、このまま順調に成り上がれば夢では無い。が、その内容はB小町の三人がCPUに扮したぴえヨンとゲーム対決をして大敗したあと、今はマネージャーですらない硝太が
当然放送終了後全員しっかりとミヤコに叱られた。苺プロの所属タレント達がみんなして正座をしている空間は何かの宗教団体にしか見えなかった──というのは後ほど舞台の稽古から帰ってきたアクアの言葉である。
結果としてはB小町チャンネルの登録者数は上がったがこれが三人が作り出した結果かと言われると甚だ疑問である。そんなカオスな状況を作り出した原因である硝太は楽しそうにライブ配信の切り抜きを見ているフリルの方向を死んだ魚の目で見つめる。
「あはは…あの後硝太くん有名になったりしたんやない?」
事前に聞いていたのもあり、配信を生で見ていたみなみだが、ぴえヨンとのコラボ動画にすら見えないカオスな動画を予想できるはずもなく途中から風邪でも引いて夢を見ているのかと錯覚してそのまま寝てしまったので全てを見たわけでは無い。しかしただでさえわかりやすい硝太の表情や反応から大まかな事情を理解すると同時に昨夜の風邪を引いた時に見る夢のような内容が夢ではなかったことを証明され、思わず乾いた笑いを浮かべてしまう。
「そうなんだよ!硝太さ!B小町の弟!って形で出ちゃってさー!硝太は私の弟なのに!」
「仕方ないよ。僕と姉さん同い年だから、いくら血が繋がっていないとは言っても姉弟としてみるのは難しいでしょ。見た目もあんまし似てないし」
生配信の内容を問題と思っていないのか、それとも硝太がB小町の弟と言われた事が不服だったのか大きな声で文句を言って頬を膨らませる。対して硝太は同い年なのに姉弟は珍しいと言ってるが自身が小学生低学年の体躯をしている事が原因だと気付いておらず三人からは生暖かい視線を向けられる。
終始硝太とぴえヨンが好き勝手やった生配信は苺プロのタレント達が多く出たこともあり、話題の内容はバラけたが、中には硝太のことに関して言っているコメントもあった。大人達がゲームで盛り上がる中で一人だけ片腕を三角巾で巻いた小学生男児(にしか見えない)人間が出てきたら目につくのも無理は無い。硝太自身が目立つ容姿をしている訳では無いがルビーに呼ばれて来た、その時にルビーの一人称が『お姉ちゃん』に変わった、呼ばれた後好き勝手やる姿勢がルビーそっくりと、ルビーの弟であることを誰も隠そうとせずひけらかすように言っていたのもありルビーの弟と言われるのならわかる。しかし何故かその後B小町の弟と認知されるようになった。ルビーがB小町のセンターだからなのか、有馬とMEMちょも硝太を弟のように可愛がっていたからか、理由はルビー達にはわからない。
「ルビーと硝太は似てると思うよ」
その中フリルは動画を見ているスマホから目線を外さずにポツリとつぶやく。
「そうなん?」
「動画だと硝太は自由で活発的、純粋で明るい子に見えるから」
フリルに言われ、みなみがフリルの背後に回り背中越しからライブ配信の切り抜きを見る。そこに映る硝太は笑顔で笑いながら他の実況者達と話したりゲームの相手をしている。こうも仲がいいとチャット内でライブ配信の内容が『ホームビデオ』といわれた理由もわかる。それこそ本当の家族のようで学校で友達を一人も作らずに塞ぎ込んでいる子と同一人物だとは思えない。硝太に警戒されているクラスメイトがこれを見たら同姓同名の別人を疑うだろう。
フリルから見ても苺プロの社員と所属タレントの仲はとてもよく見える。硝太がここまで明るい子ならルビーとは見た目が似ていないだけで中身はそっくりな姉弟、として受け取られる。
「あー確かに。いつもとは真逆やね。家だとそんな感じなん?」
「ある程度切り替えはしてるよ」
純粋で明るい子、とプラスに見えるイメージを迷いなく真逆と言われたことに若干不服に感じながらも否定出来ないため、せめてもの抵抗として頬を膨らませる。
切り替えはしている、と言うが実際は気心知れた人間しかいないので気を抜いているだけである。演技や体裁を保つのが極端に下手な硝太が警戒している相手に普通に接することが出来るはずもない。昼食中も話し相手は皆気心知れた相手だが周りの人間はそうでは無い。こうして話している間も周囲の警戒は怠らない。そういう意味では苺プロの社内が硝太にとって唯一の安心出来る場所ということになる。
「個人的にはMEMちょの慌てた姿も良い。目に良すぎてマサイ族になるかと思った」
「ナンデス?」
MEMちょ推しのフリルが硝太が乱入してすぐの慌てるMEMちょを見ながら少し口角を上げ爆弾のような天然のような発言を繰り出す。
硝太の乱入は負けず嫌いのルビーが勝手に始めたことなので当然MEMちょの予定にはない。ルビーなりのMEMちょへのサプライズの意図があったのだろうが、最初の流れが崩されたことでいつもは(年長者として)B小町を引っ張る立場にあるMEMちょも表情が百面相のようにコロコロ変わっている。生放送にありがちな放送事故なのだがMEMちょのいつもみられない顔を見れ、フリルは満足している。
「これからも月イチぐらいで硝太に好き勝手やって欲しい」
「ダメだよフリルちゃん。硝太は──」
「それじゃ、フリルが出る?」
「「はい?」」
硝太が好き勝手することでMEMちょはもちろん、ルビーと有馬も新しい面が見えるので今後もやって欲しい、と外部の人間らしい気の抜けた発言。いくら今回の件で良くも悪くも目立った結果B小町の弟として受け入れられた硝太とはいえそこまで好きにやって許されるはずがない。ただでさえ今回の生放送で好き勝手やってミヤコに怒られているのだ。自他ともに認めるマザコンの硝太が母の命令に従わない訳もなく即断れる、と思ったのだが硝太は特に考えもせずに了承するどころかむしろ話を進めようとする。これが普通の人なら冗談で済むが嘘が極端に下手な硝太の場合は本気の発言となってしまう。
もちろん他の事務所のフリルを許可なしでYo〇Tube出演は苺プロはもちろんフリルの事務所が黙ってない。ミヤコに余計怒られるだけ。
そんなことも思いついていなさそうな硝太のあまりの何も考えてなさにルビーはもちろんみなみすら首を傾げる。
「またミヤコさんに怒られたいの?」
「まさか。話を通せば良いってことでしょ?」
「ちーがーうー」
一応弟が変な趣味に傾倒していないか確認してみるルビー。結果としては思考がそこまで回っていないだけだったので罰として頬をつねる。
思い返せばJIFの時にケンゴとノブユキを引っ張って来たのも硝太だ。いつも周りの人間がどういう人間なのか警戒しているくせに、一度懐に入れて安心できると迷惑をかけに行く。流石甘えん坊。これは懲りない。
「私、出ようか?」
「…マジ!?」
硝太を頬をつねっているとフリルが意欲を見せたのでルビーも思わず手が離れる。
フリルの表情に変化は無いが先程の言葉が嘘や演技には見えない。つまりここでルビーが頷いたらフリルは本気でB小町チャンネルに出演しようとするに違いない。
「けど姉さん。フリル出たら盛り上がるよ」
「それは…確かに!」
頬から手が離れたのをいいことにルビーを乗せようとする硝太。それに丁寧に乗せられるルビー。お姉ちゃんとして硝太を叱っていた面影は既に無い。
「ルビーちゃん…?」
フリルが変な発言をするのは今に始まった話ではないが硝太がボケている時にも気にせずぶっ込んでくるので余計におかしくなる。しかもルビーが若干当てられているのもあり、現状ツッコミ不在の状況になりつつある。
そんな状況でただ一人残されたみなみは呆然と天井を見上げるしか無かった。
星野ルビー
硝太の前ではちゃんとしたお姉ちゃんを気取るが根っこがさりなちゃんな為割とバカ
【硝子玉の子】における【の子】担当
不知火フリル
頭は回るがボケに回るのが好きなのでボケる。自前のボケと計算されたボケが重なり最強に見える。天然が発動すると硝太ですら置いてけぼりにする加速力を持つ。バトル漫画のキャラかな?
【硝子玉の子】におけるFREEDOM担当。
斉藤硝太
シンプルにバカ。警戒していない相手しか身の回りにいないとただのクソガキと化す。地味に義務教育受けていないくせに四人の中で一番頭が回る。それはそれとしてバカ。
寿みなみ
ツッコミ不在となった現場を任されたツッコミ担当。しかしエセ関西弁のせいでボケの方が才能ある気がする。
やはりおっぱいは正義。