美少女権   作:ばきしむ

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2話

第二話

Re:ゼロから始める 「美少女」 生活

 

目が覚めた。

 

いつもの天井。さあ今日も今日とて仕事だ。早速準備しよう…

 

「おはよう。」

 

その時、声が聞こえた。女の子。可愛い声。我々オタクが考えたような声。でも根がしっか りしていて芯がある。

 

「疲れすぎて幻聴聞こえ始めたかぁ」

 

「はぁ!?」

 

目を凝らすと目の前に 「美少女」が仁王立ちしてこっちを見ていた…

 

「よくできてんな」

 

「 ちょ!?ちょっと!目の前に実際いるでしょうが!!」」

 

「さ、仕事仕事」

 

「無視すんな!!」

 

よくできた幻覚だなあと思いながら仕事の準備に取り掛かる。支度の最中幻聴が幾度となく聞こえていたが疲れてるんだろうと思ってそのままにしといた

 

いつも通りカギをかける。

 

「ちょ!」

 

幻覚及び幻聴はそこで途切れて電車内や会社では現れなかった。

 

夜。誰もいない電車の中で一人ケータイを見る。時計は1時を指している。

 

「もうこんな時間かよ。最近ちゃんと寝てないな。」

いつも寝るのが12時くらいなのだが…

(帰ったら2時寝れるかぁ。 )

幸い明日は会社自体が休みだからよく寝れる。とはいっても夕方に起きて飯食って寝るだけなんだけど。

 

そんなことを思いながら揺れる車体に身を任せて時が過ぎるのを待った。

 

帰宅。重い足を動かして階段を上る。エレベーター欲しい。足が辛い…

 

ドアの目の前に来た瞬間、ある事を思い出した。

 

「素体」をみてないな。

 

まさかゴミに埋もれた?もしや泥棒に取られた?まずい。さすがの俺でもそれは許せない。 急いで鍵を開けて、中を確認しようと戸を開ける。ガチャンという音がしてドアが思いっきり解放される。

 

その瞬間、何か硬いものがぶつかりガンという鈍い音がした。

(ゴミか?)

一瞬そう思ったが、俺の脳がその思考を瞬時に拒絶し新たな存在として認識し始める。

 

幻覚だ。朝に見た。朝は寝ぼけていてよくわからなかったが、今ははっきりとその姿を目視できる。

水色ツインテールに黄金色の瞳、俺のスーツを着ており、それがひどく大きく見える。恐らく体が小さいのだろう。そして、おでこを押さえて、半泣きになりながらこっちを睨んでいる。そして何より、何とは言わんが小さかった……

 

「幻覚にしてはよくできてんなぁ」

 

「だから幻覚じゃないっての!!」

 

今にも泣きだしそうな目線でこっちを睨んでいるそれの肌は、実に昨日拾った「素体」にそ っくりだった。

 

朝「素体」は見ていなかったけど... まさか……いや、さすがに。

 

「幻覚……だよな?」

 

絶対そうだ。そうに決まってる。第一、「素体」を「美少女」にするには設定や容姿を「心部」に入れなければならない。俺は昨日なにも触らなかった。だとすると俺の目の前にいるのはなんだ?

 

「ちょっと!目の前に人がいるのに何なのよ! 朝から!」

 

「喋ったあ!」

 

「喋るわぁ!」

 

昔のCMよろしく叫ぶとちゃんと返してくれた。ノリがいい幻覚だ。そう感心してると、い

 

「わたしだよ!風原!」

 

風原?なぜ俺の名前を知ってる?

 

「なんで俺の名前を?」

 

「え?だって私たち友達だったじゃん」

 

「???」。

 

目を瞬かせる。初対面だというのに。なぜ。知らないし記憶にない。ただ喋り口調が少し引 っかかった。

 

「いや誰だし」

 

すると彼女は目をぱちくりとさせてうーんと考える。

 

「分かんない」

 

「なんでだよ」

 

「記憶が………なくなってる」

 

「いや、そもそも何なんだ君は」

 

「君の友達」

 

「不法侵入だな」

 

「え!?ちょっと!!」

 

「通報するから」

 

彼女がケータイをとろうとする俺の手めがけて近寄ってくる。

 

ケータイをとった直後だった。

 

手首をつかまれた。

 

その時、触れられた感覚が、昨日拾った「素体」と同じだったことに気付いた。スーツから見える透き通った白い肌も 昨日の「素体」のままだった、その瞬間確信した…

 

彼女は「美少女」だと。

 

「美少女だ。本物だ」…

 

「え!ほんとう?可愛い?」

 

「そうじゃないよ」

 

彼女は眉をしかめる。そりゃそうか。

 

「いや、可愛くないっていうわけじゃないよ」

 

さすがにまずかったから訂正して伝える。

 

「それはそれとして、君は「素体」からできた「美少女」ってことだ」。

 

そして事実を告げる。

 

「そうだね。私は「美少女」だよ」。

 

ん?何だこの反応は。まるで自分が「美少女」であることを恨むかのような反応…

 

「いや……」

 

「.....ほら。好きに...して」

 

彼女は軽蔑の目をこちらに向けながら、スーツを脱ぐ。 肌が露出して目の前で全裸になる。少し小さい体に小さい胸がついていた。だけどすごくスタイルがよかった。というか滅茶苦茶痩せていた。

「ほら、早く、私が誘ってるみたいじゃない」

美しい。この一言に尽きる。普通の人間ならすぐにベッドインするだろう。だが俺はそんな汚い連中とは違う。美少女は美しいのだ。俺は遠くで眺めるのが至高だ。

「ちょ、なんで」

「なんでとは。てか風邪ひくぞ」

そういって彼女の脱いだスーツを被せる。身長差のせいなのか彼女の顔が俺の胸板に触れ る。

 

変な声を出して彼女は後ずさりをする。

 

部屋着に着替えながら口を開く

 

「どうして脱いだんだ?」

 

目線を合わせず彼女はぼそっと言う。

 

「だって「美少女」は飼い主の下僕で」

 

「全員が全員おんなじと思うなよ」

 

「ねえ」

 

「どうした?」

 

「いや、美少女って我々が望む最終形態だろ?それを玩具みたいに扱うなんて、おこがましいんだよ、」

続けて言う。

「君たちにだって自由に生きる権利があるからだよ。されるがままの奴隷生活なんか、苦しいだけじゃないのか」

 

気づくと彼女と視線が合った。彼女の眼はとてもキラキラしてて透き通っていた。

 

「風原!あんたは私の最高の救世主だよ!」

 

「急にどうした」

 

「私なんでか分かんないけど色々な記憶が入ってるんだ。頭で破裂音が鳴ったり、踏切の音がしたり、楽しそうな声が聞こえたり、自分が何かわからなかった。でも風原のおかげで分かった気がする!」

「そ、そうか」

「うん!」

でも、かわいらしい笑顔だった。「美少女」の中でもあの法をなくそうと思ってるのもいるのか。 あまりにも自我が強くて人間かと思ったわ。

「そう言う奴もいんのか」

彼女は首をかしげる。わからないといった様子だ。

 

「全員痴女かと思った」

 

すると彼女は顔を赤らめる。恥ずかしがってるようだ。

「全員そうだと... お、思うな!!」

こっちを指さしながら叫ぶ。

「ならよかった」

安堵しながら水を入れる。よかった。でも俺はこの娘を養えるほどの財力がない。悪いが、ここは出ていってもらおう。

「ねえ、風原はなんの仕事してるの?」

「会社員」

「帰り、ずいぶん遅かったけど」。

時刻は1時を切っていた

「社畜なんだよ」

「え!?大丈夫なの!?」

「俺のことはいいから」

「ああ…そう」

「まず俺は何で君が俺のことを知ってるのか知りたい」。

素直に、一番聞きたいことだった。

「私もあんまりわかんないけどね。遊んだことがあるんだ。風原と、そして後、2人」

「で?」

「わかんないけど、女の子が一人で男の子が風原入れて二人だったと思う。たぶん」

「でも、その時は 「美少女」はないぞ」

「そうだよねぇ…」

「でも俺の名前知ってんのは不思議だな」

「でしょ」

「なんか俺のこと他に知ってんのか?」

「オタク」

「よく知ってるな、でも間違ってることがある」

「え、何?」

「俺は“元”オタクだ」

「やめちゃったんだ」

驚きながら彼女はベッドの横に寝転がる。

 

疑問が山ほどある。彼女はどうして俺の幼少期遊んだ記憶があるのか。なぜ「美少女」とし てここにいるのか。名前はなんなのか。

 

考えるだけで気が遠くなりそうになる。

「じゃあ逆に私も質問していい?」

「どうぞ」

 

「風原はどう思うの?「美少女権」について」

 

唐突だった。予期せぬ質問に一瞬戸惑う。だが自分の強い信念が背中を押した。..

 

「俺は……」

 

「うん…」

 

「俺は「美少女」にだって自由に生きてもいいと思うんだ。人間のように」

 

「風原...」

 

「本当は変えたい、この腐った国を…でも、力がない。仲間がいない。俺には」

 

なんか徐々に自分で言ってむなしくなってくる。自分の非力さに。

 

「だから、何もできない」

 

自分でも表情が暗くなっているのが分かった。

「ほらそんな事より…」

「そんなことない」

 

はっと前を見る。すると彼女が目と鼻の先にいた。

 

「これから作ったらいいんだよ。仲間を」

 

「作るったってそう簡単に...」

 

彼女を見る。彼女はまっすぐ俺を見ていた。それで気づいた。察したんじゃない。 表情が、言葉として心に刻まれた。

 

「仲間はすぐ近くにいる」

 

捕捉されなくてもわかった。

 

彼女も俺と同じ考え方ということを。 彼女は外見こそ幼かったがその姿はとても優美だった。 その姿はなんだか懐かしかった…

 

新しい風が吹いた。 希望が目の前に現れたのはその日だった。 決心が顔をのぞかせたのもその日だった。

 

彼女が言った。

 

「ここから始めたらいいじゃない!!イチから――いや、ゼロから!」

 

 

 

 

「ここから始めましょう、イチから―いいえ、ゼロから!」

 

ーー「Re:ゼロから始める異世界生活」より。

 

 

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