ワカバの導き手   作:星月

10 / 53
第十話 vsスターミー 欲への誘惑

 俺たちがつながりの洞窟を抜けてヒワダタウンに着いたころにはすでに夜の9時を過ぎていた。

 時間が時間であるために、街の散策・ならびにジムリーダーの捜査は明日行うとサツキさんと話して決めた。今日泊まるホテルを見つけた後はゆっくり食事を取って部屋へと戻る。

 俺とサツキさん、二人とも同じ部屋に(・・・・・)。――そう、同じ部屋に。

 

「~~♪」

「……」

「~♪~~♪」

「…………くッ!」

 

 風呂場からはサツキさんの陽気な鼻歌がリズム良く聞こえてくる。少しでも思考を別のことへとまわしたいというのに、俺の努力をひたすら妨害するような行為だ。果たして彼女は壁一つはさんだ場所に思春期の男(シュン)がいるということをわかっているのだろうか? まさか俺のことを男として認識していないとか、そういうことではないだろうな?

 

 そもそもなぜこんなことになってしまったのか。

 昨日泊まったキキョウシティのホテルでは二人とも部屋は別であった。しかしながら、マダツボミの塔で俺が約束の時間を破ってまで修行をしてきたことで、サツキさんの中での俺への信頼が薄れてしまったようだ。『もう勝手に抜け出さないように』、ということで二人とも同じ部屋に泊まることになったのだ。

 

 ……だがしかし、そういう理由がわかっていてもそれでも男として本能的に反応してしまうことがあるわけで。扉の先に裸でシャワーを浴びている理想的な女性がいるという事実を考えると……うん、精神的に毒だ。悪い意味ではなく、むしろ良い意味で。

 

「はあ……」

 

 自然とため息がこぼれてくる。幸せがどれほど逃げることだろう。

 そういう風に考えてしまう自分が嫌になってくる。ヒワダタウンのジムリーダーのことも考えたいというのに、このままではろくに先のことも考えられないので一度部屋から出て外の空気を吸いに行きたいのだが……それさえ許されないのだから困ったものだ。

 俺は顔を上げて視線を部屋の出口へと向ける。出口に立ちふさがっている一匹のポケモンに向けて。

 

「…………」

「うん、詰んだなこれ」

 

 一つしかない部屋の出口ではサツキさんのスターミーが待機していた。無言で俺に圧力をかけている。

 サツキさんはスターミーに、『俺が部屋から出ようとした際には、怪我をしない程度ならば攻撃をしても構わない』と指示している。ゆえに部屋から出ようにも出られないのだ。少しでも不審な動きを見せたならば、俺は瞬く間に制圧されてしまうだろう。正直な話、さっきからスターミーがひたすら俺をにらみつけていて怖い。抜け出そうとしたら一体どんなことが起こるのか、想像することさえ恐ろしい。

 

 ……というかこいつ、本当に俺のことを監視しているんだよな? 今さらだが疑問に感じてしまう。

 なにせスターミーは自分の感情を顔にださないので、こいつが一体どういう風に思っているのかさえわからない。一歩もその場から動かないがために、立ったまま寝ているのではないかと疑ってしまうほどだ。しかしだからこそ、何を考えているかわからないからこそなおさら恐怖を沸き立たせている。

 

「なあ、ピカチュウ」

 

 俺はボールから出している唯一の手持ちポケモンであり、俺の長年のパートナーであるピカチュウへと声をかける。

 

「俺をこの部屋から出してくれるよう、スターミーを説得してくれないか?」

 

 多分まともに戦っての強行突破は無理だと思うので、説得を試みる。

 ピカチュウはスターミーを一瞥した後、俺に視線を向けてしっかりと首を()に振った。『無理』だと否定の反応をした。……おい、説得する前からあきらめるなよ。お前は仮にも俺のチームの切り込み隊長だろうが!

 

「シュンくん、上がったわよ」

「あ、はーい……」

 

 などとピカチュウを少しばかり説教しようと考えているとサツキさんの声が聞こえてきた。説教は後にしよう。

 その声に反応して顔を上げて……そのまま硬直した。風呂上りだということをしばし忘れていたために直視してしまった。

 

 ……『風呂上り』というシチュエーションの凄さを実感した瞬間だった。

 白いパジャマの胸元のボタンが開放されており、魅了するように姿を現している谷間や、風呂上りのためにほのかに赤くほてった頬。水分を吸ってしっとりと濡れた蒼い髪が色っぽく映る。

 

「お風呂も入れなおしておいたから、シュン君も入ってきて。明日も忙しいだろうからゆっくり暖まって、体を休めてね」

「ありがとうございました!」

「? ……うん。それじゃあ私は待ってるから」

 

 俺は感謝の意をしっかりとこめてお辞儀をする。今の姿にはそれだけの価値があった。逆にサツキさんは俺がお礼を言ったことに不思議がっているが、気を使ってくれたと思っているのだろう。下手に探られることなくすんでよかった。

 

 あまりサツキさんを遅くまで起こしているというのも悪いので、俺はすぐさま風呂へと向かう。

 

「……はあ。生き返る」

 

 体がお湯につかると旅の疲労がどんどん抜けていく。今日もキキョウシティからヒワダタウンと中々の距離を歩いた上、道中のバトルもあったのだ。これでは疲労もたまって当然だ。

 しかし……

 

「……ここって、つい先ほどまでサツキさんが入っていたんだよな?」

 

 ……よくよく考えたら、これも結構凄い状況なのでは?

 サツキさんと同じ部屋に泊まって、そのお風呂で、あのサツキさんがつい先ほどまで体を洗っていたという……

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! バカか! バカか、馬鹿なのか!! 何を考えているんだ俺は!?」

 

 サツキさんの裸の想像図を完成させた己の思考力を今すぐ削除してしまいたい。

 ……一体何を考えているんだ、俺は。疲れで思考までおかしくなっているのだろうか。

 

 駄目だ。こういう時はまともなことさえ考えられない。本当にさっさと上がって今日はもう寝るとしよう……

 

 

――――

 

 

 男の風呂シーンを描写したものなど、きっと誰も望んでいないと思うのでシュンの以降のシーンはすべてカット。見たかった人はご想像にお任せするが、決して望んでいるシーンなど皆無だったと思う。

 

 場所を移してサツキ。

 風呂場でシュンが馬鹿らしく騒いでいる中、彼女は自身のパソコンを通じてとある人物と連絡を取っていた。

 画面に映りだされているのは白衣に身を包んだ研究者であり、今回彼女に協力を要請した張本人。――オーキド博士である。実は彼女は旅が始まってから幾度もオーキド博士とは連絡をとっており、今日もこうして現状を報告しているのだ。

 

『……そうか。無事にヒワダタウンまで着いたか』

「はい博士。ここまでは仮面の男、ならびにロケット団残党との遭遇もなく無事に旅を続けています」

『ならば一安心じゃな。……だが、くれぐれも油断しないでくれ。特にヒワダタウンとその周辺は警戒を怠らずにな』

「わかっています。シュン君にも後で伝えておきましょう」

 

 警戒しているのは仮面の男だけではない。彼が従えているという巨大な犯罪組織・ロケット団も警戒対象に入っている。

 ヒワダタウンはつい最近、復活したロケット団残党達が現れたばっかりだ。この地で暮らしているヤドン達を捕らえ、彼らの尻尾を切り落とし、その尻尾を販売しようと計画していたのだ。ヤドンの尻尾は珍味で売れば高価で引き取ってもらえる。ロケット団は復活したばかりだったので、この財源を復活の足がかりにしようと試みたのだ。

 最もその結果としてヤドンの密漁には成功したものの、その後に現れたシルバーとその手持ちポケモン・リングマのために計画は破綻し、残党達は全員警察に引き渡されたのだが。

 

 さらにヒワダタウンの西にそびえるウバメの森。この森があることも警戒の念を強めさせる。

 ウバメの森はゴールドが初めて仮面の男と遭遇した場所であり、その実態と強さを知らしめた場所である。ウバメの森では仮面の男が放ったゴースにより、迷い込んだトレーナーとそのポケモンのカモネギが操られてしまうという事件まで起こった。

 

 この街にもジムリーダーがいるがために警戒して損はない。シュンもわかってはいるだろうが、改めて注意を促しておかなければならないとサツキは内心思った。

 

『よろしく頼むぞ。……ところでサツキ君。話は変わるが君に一つ、話しておきたいことがある』

「何でしょうか?」

 

 オーキド博士の顔が真剣なものへと変わる。

 一度瞳を閉じて再考した後、決心して顔を上げた。それでもまだその表情からは迷いが見える。

 

『本当ならばわしから話してよいことではないだろうが、これから先のことを考えるとそうも言ってられんとおもってな。

 君には話していなかったが……彼の、シュン君の力のことじゃ』

「……ワカバタウンに伝わる力のことですか」

「なっ? 知っておったのか!?」

 

 オーキド博士は驚きを隠さずにサツキに問いかける。旅立ちに当たって博士はサツキにはシュンが特別な力を持っていることなど何も話してはいなかった。それは自分から話して良いことことではないと感じていたからだ。だからこそ彼は旅を経験していない、普通のトレーナーとしか説明をしていなかった。

 だがしかし、シュン自身がそんな大事を打ち明けるとはオーキド博士は思ってもいなかった。力を見せるような機会があったとしても、上手く誤魔化してあしらうものとばかり思っていた。

 

「シュン君が私に話してくれましたよ。今日、彼の決意と一緒に」

『……そうか。彼が打ち明けたというのか』

「ええ。少しだけですが、彼の考えていることもわかった気がします」

 

 それは信頼の証でもある。シュンが自分のことを詳しく話さないのは他人に知られてしまうことを恐れているということ、そして何より簡単に話して良いことではないためだ。

 その秘密を共有するということは、シュンが並々ならぬ信をおいてくれたからに他ならない。

 

『ならばサツキ君。できるだけ、彼には力を使わせぬように、な。万が一の時を除いての話じゃが』

「はい。ご心配なさらずに。……その『万が一の時』のために、私がいるんですから」

 

 サツキは胸を張ってそう答える。その言葉を聞いてオーキド博士も満足そうに頷いた。

 その後は今後のシュン達の旅の方針の打ち合わせ、ならびにサツキたちが調べた情報と、ポケモン協会で独自に調べている仮面の男についての調査の情報交換を行った。

 

 結論を述べると、今日は事件解決に導くだけの情報はなかった。仮面の男の候補が一人減ったということが一番の情報源だ。

 オーキド博士の「引き続きよろしく頼む」の言葉で本日はお開きとなった。

 

 その後シュンが風呂から上がってきたときに「誰かと連絡をとっていたんですか?」と問われたが、サツキはただ「少し調べ物をしていただけよ」とだけ答えた。

 

 もうすぐ日付も変わってしまうため、二人は明日のことは明日話すということで早々に寝床に入った。

 ……念のため言っておくが、二人とも別のベッドにそれぞれ入っており、スターミーのシュンの監視は寝ている間もずっと続いていた。シュンは後にこう語ることになる。「あの日ほど寝付けない夜はなかった」と。

 

 

――――

 

 

 ――翌日の朝。

 現在の時刻は午前十時。サツキさんと一緒にポケモン達も連れて朝の食事を取っている。……今日はサツキさんの寝起きの悪さも昨日ほどではなかったので助かった。あくまで昨日ほどではなかった、のレベルだが。

 まあ、『目が覚めたらなぜか同じベッドで寝ていて、目の前で絶世の美女が裸で寝ていた』とかそういうレベルのハプニングが起こったら俺は終わるな。いろんな意味で。

 

「それじゃあシュン君。昨日は話せなかったから、今日の予定を今から言おうと思うけど……」

「はい。ヒワダジムジムリーダー、ツクシの調査ですよね?」

 

 ヒワダタウンのジムは虫タイプの専門家(エキスパート)、ツクシがリーダーだ。

 ……こいつも相当怪しいんだよな。なにせ『ウバメの森』という仮面の男が活動していた場所がすぐ近くのわけだし。

 おまけにヒワダタウンはそれほど活発した街ではないために潜伏する場所としても中々便利のように思える。事実、ロケット団は警察に見つかる事無くこの地で活動をしていたわけだし。(結果的には全員捕まったらしいが)

 

「ええ。でも、ジムリーダーを調べるのは午後になってからにしましょう」

「え? 午後になってから? 別に俺は構いませんが……なぜですか?」

 

 しかしサツキさんは調査は後で構わないと言う。

 近辺の調査からはじめるということだろうか? たしかにヤドンの井戸など調べるような場所はあるだろうが、そういう場所はすでに事件現場として警察が調べ終わっているはずだし、これと言った新しい発見は見当たらないと思うのだが……

 

「もちろん、ジム戦に向けて、そしてこれからのためにシュン君の特訓をするためよ。……私が教えてね」

「……え?」

 

 サツキさんが教える? 俺に特訓を?

 言っている意味がよくわからず、しばし硬直している間にサツキさんは席を立って先に部屋へと戻っていった。

 「準備をちゃんとしておいてね」と言われたものの……今までサツキさんの実力なんて見たことなかったからな。想像もつかない。果たして俺をどんな風に鍛えてくれるのだろうか。

 

 

――――

 

 

 朝食を取り、荷物をまとめてサツキさんと共にホテルを後にする。

 俺達はヒワダタウンからつながりの洞窟方面へと少し戻って、33番道路の平地へと来ていた。ここならば人も少なく、障害物のようなものもほとんどないために思いっきり体を動かすことができる。

 

「それじゃあまず今日の内容を説明するんだけど。……まずシュン君、そしてポケモン達により幅広い戦闘(バトル)に慣れさせること」

「……と言いますと?」

「今までの戦いについて振り返っておくと、大抵は相手のレベルが低いことが原因だったけれど接近戦がメインだったわ。キキョウジムのハヤト君との戦いでもそうだけど、シュン君はあまり遠距離からの攻撃への対処ができていない」

「……はい」

 

 たしかに言われてみると納得する。

 特に序盤のほうでは相手のトレーナー達もコラッタやイシツブテ、ホーホーなどと言った近接戦闘が主流(メイン)のポケモン達が殆どだった。それゆえにリーチの長いアーボックに襲われたときには対応に戸惑って攻めあぐねたし、ハヤトとの戦いにおいても相手が近づくまで踏ん張るしかなかった。『かぜおこし』の際には実質指示を何一つとして出せていなかった。対応できたのはマダツボミなど、レベルが低く、相性が良い相手だけだった。

 まだそういった戦闘場面に慣れていない、対応の仕方がわかっていないというのは最もな意見か。……なるほど、やっぱり自分だけでは全然気づけないようなことがあるんだな。今までは考えてもいなかった。

 

「だから、今日はそんな攻撃にどう対応していくかを試してみたいの。――スターミー、“サイコキネシス”」

 

 サツキさんの指示を受け、スターミーの中央の核が赤く光り輝く。

 とたんにスターミーの周囲の空間に(エスパー)の影響が広がっていった。地面から無数の小さな土の塊が続々と宙に浮き始めたのである。

 

「……地面に、強力な念力を送っているのか?」

 

 本来『サイコキネシス』は相手のポケモンに直接念力を放ち、攻撃する技なのだがこんな使い方もあるのか。

 その操っている塊の数は20、いや30。……いやもっと上なのかもしれない。これだけの数を同時に操るなんて……相当なレベルだぞ!?

 

「シュン君、ポケモンを出して。そしてこれを防ぎきって……ゴー!」

「ッ!? 出て来い、サナギラス! “いわくだき”だ!」

 

 とっさの判断でボールからサナギラスを繰り出す。

 戦法は昨日の戦闘のときと同じ、相手の攻撃の完全な相殺だ。

 

 ……だがしかし、(エスパー)の力に操られた土の塊たちは異様な動きを見せる。直線的な動きだけではなく、縦横無尽にその軌道を変化させる。ここまで動きを正確にコントロールできるものなのか!?

 その結果、すべてを防ぎきることなどできるはずもなく、サナギラスの体にいくつかの塊がヒットした。あくまで特訓ということで直撃させずに再び元の位置に戻しているあたり、その実力を伺える。だが本番だったら今の攻撃だけでサナギラスは戦闘不能だろうな……。

 

「そうじゃない! 相手が遠距離からの攻撃を仕掛けている上に、動きが読みづらく逆に相手の動きを制限させるエスパーよ。それならばまずは確実に当てることを優先するの。威力が弱くても技のコントロールがしやすく、ある程度遠距離への攻撃が可能なポケモンを!」

「は、はい!」

 

 サナギラスをボールへと戻し、サツキさんに言われたとおり遠距離の戦闘にも対応しているポケモン達を出す。マグマラシ、サンド、ラプラスの三体だ。サナギラスにも“いわなだれ”などがあるものの、あれはこういう場面では使いづらい。

 ボールからポケモンが出たことを確認すると、再び土の弾丸がこちら目掛けて放たれる。

 

「マグマラシ、“ひのこ”! サンド、“スピードスター”! ラプラス、“みずでっぽう”!」

 

 マグマラシの口から無数の炎の球体が、サンドの体からは星型の形をした光のエネルギーの結晶体が、ラプラスの口からは水流が勢いよく発射される。

 それぞれの技は弾丸へと進んで行き、命中した。攻撃を受けて形を失った土はぼろぼろに崩れていく。

 

「おおっ! よっしゃ!」

「そう。相手に動きを読まれる前にこちらも遠距離~中距離から攻撃を放って相手の技を打ち消す。そうすればもし失敗したとしても対応にそれほど遅れることはないからね」

「わかりました! ありがとうございます!」

 

 これはまたいい勉強になったな。攻撃の対処法というのはその場で思いつくというのにはさすがに発想力の限界がある。大抵は今までの戦いや経験の中で培ってきたものが問われるようなものだ。だからこそ、こういう風に実技で教えてもらうのは本当にためになる。

 

「それじゃあ、次に行きましょう!」

「はいっ、お願いします!」

 

 再びポケモン達を構えさせて臨戦体系へと移る。

 ……なんでだろう。勝負(バトル)が楽しくなってきた。こうやって何も敵のこととかを考えずにすごせればよかったのにな。

 

 

――――

 

 

「……それじゃあ、少し休憩を入れましょうか。10分くらい休んだらまたはじめましょう」

「はい。わかりました……ふう」

 

 昼食をはさんで二人の特訓は続けられた。

 ある意味ジム戦並に、下手すればそれ以上に集中力を費やすためにシュンもポケモン達も疲弊していた。

 そんな彼らを見守るサツキはそうでもない。あまり自身は動いていないということもそうだが、何よりも慣れているということが大きいのだろう。

 

 そんな中、一件のメールがサツキのポケギアへと届いた。

 送り主とその内容を確認するとサツキはシュンに歩み寄った。

 

「ごめんねシュン君。少しだけ私ヒワダタウンに戻るね」

「え? 何かありましたか?」

「私用で行かなければならないところがでてきたの。スターミーは置いていくから、私が戻ってこないときは特訓を続けておいて」

「……わかりました」

 

 個人的なこととなれば深くは聞かないほうがよいと判断したシュンは素直に頷いた。

 サツキは「ごめんね」と言うとヒワダタウンへと戻っていく。

 

 ……サツキが向かった先。

 それはヒワダタウンに住む一人の職人の家だった。様々な種類の木に生える『ぼんぐり』から特殊ボールを作っている、ガンテツという男が住んでいる。

 

「失礼します。……お久しぶりですねガンテツさん」

「うん? おお君か。よく来たな、サツキよ」

 

 家に入るや否や、ガンテツはサツキを出迎えた。

 ガンテツはよほどの実力者でない限りは自分の作るボールは扱えないがためにボールを作ることはないと言われているが、この反応を見る限りはサツキを実力者として認めているようだ。

 

「頼まれていたボールならできておるぞ。……ほれ、これじゃ」

「いつもありがとうございます」

 

 籠の中に入った数個のボールを手に取る。

 ボールのどれもが一級品の輝きを放っている。歳を取ろうともその技術は衰えを知らないようだ。

 

「ところでオーキドから聞いたのじゃが、今はジョウト地方を連れと共に旅しているそうだな。……その男は今どこにいる?」

「今彼は特訓の最中ですよ。呼んできますか?」

「はっはっは。よいよい、君が共に旅をしているということはそれなりの見所があるということじゃろう。それくらいは見ずともわかる」

「ええ。……まあそれに、彼はあまり自分からポケモンを捕まえようとはしないので、どちらにせよガンテツさんと会っても話が合わないかもしれません」

「なんじゃつまらん。この前あった坊主もそうだったものの……最近の若者にわしのボールを使えるものはおらんのか?」

「ガンテツさんの求める基準が高いんですよ。もう少し甘く見積もってくれても良いのに」

 

 もっともなことを言われて再び笑い始めるガンテツ。それを見てサツキも微笑を浮かべた。

 職人として多くのトレーナーを見てきた彼にも、やはりどこか譲れない信念のようなものをもっているはずだ。

 

「……ところで今日はもう一つだけ、聞きたいことがあってまいりました」

「どうした? そんなに改まって」

「あなたが常に持ち歩いているという『特殊玉作成秘伝の書』。その内容について、お尋ねしたいのです」

 

 ガンテツにそう問い詰める。

 彼女の顔が穏やかなものから急に深刻なものへと変わっていった。

 彼女が求めているものと彼女の表情から、ガンテツも突如その表情を重苦しいものへと変えていた。

 

 

 

 

 

ここまでの活躍をポケモンレポートに書き込んでいます…………

 

 主人公:シュン

 持っているバッジ:1個 (ウイングバッジ)

 

 手持ちポケモン

 

  マグマラシ♂ Lv19

  ピジョン♀ Lv18

  ピカチュウ♂ Lv21  

  サナギラス♂ Lv30

  サンド♂ Lv17

  ラプラス♀ Lv33

 レポートに書き込みました!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。