ワカバの導き手   作:星月

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このお話はフィクションであり、作者の過去のプレイとは一切関係ありません。
大事なことなので二回言いました。コガネジムでは事実、理不尽の連発だったかと……


第十八話 vsミルタンクⅡ 力を打ち破れ

 乾いた音が響く。

 俺には最初それが何が起こったのか、何の音なのかわからなかった。

 いきなり右へとブレた視界や徐々に熱を持ち始める左の頬、そして今までの経験から『目の前の相手に頬を叩かれた』という予測を立てたがそれはありえない。

 何故なら、今目の前にいる女性はそんな事とは完全に無縁だからだ。驚きを隠せないまま、視線だけをサツキさんへと戻す。

 その彼女は無表情で、何も感情のこもっていない目で俺を見ていた。

 自動的に脳が先程までの状況を振り返りはじめる。

 

(……コガネジムを後にして、一度ホテルに戻ろうという話になって、そして部屋についた途端彼女に呼ばれて、振り返ったらサツキさんが目の前まで歩み寄ってきて……)

 

 そしてあの衝撃があった。サツキさんは手を振りぬいたまま、動こうとしない。俺には何があったのか未だにわからず、その場から動けない。

 

「――目は覚めたかしら? シュン君」

 

 声が聞こえる。

 俺にはもはや聞きなれた筈の声だというのに、一瞬それが誰の声なのかわからなかった。

 

「ここまでも難なくジム戦を勝ち抜いてきたから、アカネが仮面の男でないとわかったから、相手が女の子だったから、アカネが楽に勝てる相手だと思った?」

「……いや、そんなことは……」

「思っていたよね? 少なくとも、今までの戦いの中で一番あなたは油断していた」

「……」

 

 ――『油断』。自分とは一番程遠いものだと思っていたそれが、まさに先ほどまでの自分だったと断言された。

 まだ俺はバトルの経験も浅く、ジム戦にしても挑戦者(チャレンジャー)である以上、油断なんて欠片も見せられないという状況だというにも関わらずだ。

 

「まともな対策も考えず、あらかじめ用意していた作戦ばかりで戦って、咄嗟の対応ができていなかった。ウバメの森の戦いでそれがどれだけ危険なことかもわかっていたというのに」

「……」

「しかもその作戦にしてもタイプ相性の問題であったり、そのポケモンの長所を活かすくらいのもの。新技に頼り切ってそしてその結果敗れた」

「……」

 

 何も声に出せない。

 言葉の羅列一つ一つが重くのしかかり、口を塞いでしまう。

 サツキさんの言っていることが感じなかったわけではない。そうわかっているからこそ、それが真実だと理解しているからこそ何も言い返せない。

 

「これではポケモン達も可哀相ね。自分のことだけを考えて、ただ相手を倒すことしか目にない主人(トレーナー)の指示に従うしかないなんて」

「なっ!? そんなことは……」

「だって事実、そうだったじゃない」

 

 そんなことはない、という言葉を続けることさえできなかった。

 ただ強くなるために挑んだというその考えさえ否定されてしまった。

 

「シュン君、手段と目的が入れ替わっていたよ。

 勝負の前はジムリーダーに勝つことが手段であり、その結果強くなることが目的だったはずなのに、ジム戦の時はただ相手を打ち負かすことしか考えていなかった。

 目の前の相手(アカネ)のことしか頭に入っていなかったんじゃない? きっと勝負中は今までの旅の目的さえ頭になかったはずよ」

「うッ!?」

 

 咄嗟に先ほどの勝負が脳裏に映し出される。

 相手の挑発に乗って、ただアカネを倒すことだけを考えていた。

 そしてその時俺は強さなど追い求めていなかった。そのためにジム戦に挑んでいたというのに、その目的さえ見失っていた。

 

「俺は……」

「先ほどのような試合を私はもう見たくはない。あんな姿を見せるくらいなら、もうワカバタウンに帰ったほうがいいわよ」

「ま、待ってください!」

 

 期待はずれだったと言う様に、俺に背を向けて去ろうとするサツキさん。

 ここで何かを言わなければ全てが終わってしまう。そう感じて、気が付いたら彼女を引きとめていた。

 

「もう、負けません。もう自分自身のために戦ったりはしません。ですから……」

「……あまり無理はしなくてもいいんだよ。シュン君ができることをしていけばいんだから」

 

 そう言って彼女は視線を戻し、ようやく笑顔に戻ってくれた。

 俺の手を握り落ち着かせてくれる。……それだけで心に随分と余裕が生まれた気がした。

 

「それでよし。シュン君がまたいつもの調子に戻ってくれたなら、私からは言うことはないよ。

 ……だけどこれからどうする? コガネジムでは負けてしまったけれど、もう一度挑戦したい?」

「サツキさんがそれを許してくれるならば」

 

 負けっぱなしというのはさすがに気がひける。それもあのような勝負だったというのならばなおの事だ。

 

「言ったでしょ、少しくらいは我が侭を言っても大丈夫だって」

「ありがとうございます」

「まあ、シュン君の状態が万全ではなかったとしても彼女のミルタンクは中々の強敵であったことは間違いないね。挑むにしても何かしら対策を立てなければならないと思う。

 私も手伝うから、今日一日はポケモン達と一緒に今日の戦いを振り返って作戦を考えていきましょう」

「……いいえサツキさん。今日は、この戦いだけは俺一人でやらせてください」

 

 サツキさんの言うとおり、あのミルタンクが強敵であったことは間違いない。

 しかし俺は彼女の協力を一蹴した。こればかりは譲れない。これだけは甘えてはいけないんだ。

 

「え? でも……」

「そうすることが一番良いと思うんです。

 大丈夫です、俺だって何もあの勝負から学ばなかったわけじゃないんで」

 

 そうだ、冷静になった今ならばわかる。……たしかに強い相手ではあった。しかし歯が立たないほどの相手ではないと。

 ならばこそ一人でできることは一人でやり遂げてみたい。そうしてポケモン達とも真正面から向かい合いたい。

 

「……わかった。でもそこまで言うのならば、次の挑戦で勝ってみせてね。私の提案まで断ったんだから」

「ええ。これ以上サツキさんの目の前で醜態を晒すわけにもいきませんから」

 

 ――絶対に次で終わらせる。

 同じ我が侭を二回も言うのは自分でも許せない。元々挑む必要がなかった試合だ、これ以上長引かせるわけにはいかない。

 俺は早々にポケモン達が入ったボールを腰につけ、部屋を後にした。

 

 

――――

 

 

「……まったくもう。男の子って本当どうしようもないなあ」

 

 ソファに腰掛け、誰もいない中で呟くサツキ。

 しかしそう言いつつもその顔に不満の表情はなく、穏やかな笑みを浮かべた。

 

「でも、健気な子供が頑張ろうとしているんだから……見守ってあげるのが年上の私の役目ですよね」

 

 

――――

 

 

「皆、出てきてくれ」

 

 コガネシティの南、34番道路。

 特訓に移る前に手持ちポケモン6匹を全員ボールから出した。

 その姿に疲労は見られないものの、どこか心配そうな表情で俺を見つめている。先ほどの敗戦が響いてるのだろう。

 

「特訓の前に一つ言っておく。……すまなかった。

 サツキさんに言われて気づいたが、俺は先ほどの試合自分勝手に戦ってお前達のことを考えていなかった。

 ……本当に、すまなかった」

 

 戦ったヘラクロスだけではない。ボールから見守っていた他のポケモン達にも俺は謝らなければならなかった。

 これだけは最初にはっきりとしておかなければならないこと。俺のけじめである。

 頭を下げると皆が俺に鳴き声で辞める様に言ってくるも、俺はその声が止むまで頭を下げ続けた。

 

「今回の敗北は相手の実力のこともあるが、全てが俺の責任だ。お前達が気にすることは何もないし、これからも同様に経験を積んでいってくれればいい。俺ならもう大丈夫だから」

 

 そう語りかければ信じてくれたのか、ポケモン達も不安な表情が少しずつ晴れていく。

 

「……もう一度だけ俺はコガネジムに挑む。その戦いで今度こそジムリーダーに勝って、何も悔いを残さないようにする。だからお前達も協力してくれ」

 

 そう言えば即座に首を縦に振って応じてくれた。

 まだ俺のことをトレーナーとして認めてついてきてくれるこいつらには感謝してもしきれない。

 ならば俺もできるだけのことはやってその期待と信頼に応えたい。

 

「ありがとう。ただ、先ほども言った事だが相手の方も中々の強敵だ。それは戦ったヘラクロスが一番わかっているだろう」

 

 戦っていたヘラクロスはそれを悔しそうにも認めるように頬をかき、他のポケモン達も表情を暗くする。

 攻防に優れたあの巨体は“ころがる”によってさらに強化され、俺達の攻撃も防御も全て壊していった。

 俺の問題もそうだが、ポケモン達ももう少し強化して挑みたい。これが最後の機会(チャンス)、勝利は確実のものでなければならないんだ。

 

「だからこれから『そだてや』に行こうと思う。ピカチュウ以外は知らないだろうが、俺の友達が修行した場所と聞いている。丁度この34番道路にあるから都合がいい。今から向かうぞ」

 

 サツキさんに頼めなかったのもこれが理由の一つでもある。

 ゴールドの話では無茶苦茶な、こちらの都合も状況も関係無しに特訓をさせられたと聞いた。しかしその効果はたしかにあったと。

 あのゴールドがそういうのだから効果は間違いない。そして今の俺にはその方がいい。サツキさんは効率も考えて俺のレベルに合わせてしまう。

 ……だが今の俺にはその優しさはいらない。甘ったれた根性を叩きなおすためにも、その方がいいんだ。

 手持ちポケモン達を一度ボールに戻し、俺はコガネシティから南へと離れていく。特訓の場所を目指して。

 

 

――――

 

 

「……なんや、性懲りもなくまた来たんかいな」

 

 翌日の昼。俺達は再びコガネジムを訪れていた。

 俺の姿を見てアカネは不敵な笑みを浮かべているが、そのようなこと関係ない。

 

「来るにしてもずっと先やと思うてたのに。十分慰めてはもらえたか?」

「随分と手荒いものだったけどな。おかげでもうすっきりしているよ」

 

 今さらだけどあの頬の一撃は中々痛かった。意識すると同じ部分が痛くなるのは心理的なものなのだろうか?

 だがサツキさんのあの一発で目が覚めたのもまた事実。今は感謝しておこう。本人は思い出して気恥ずかしくなったのか、先ほどから視線が泳いでいるけど。

 

「ええやろ。……ルールは変わらず一対一のシングルバトル。君が泣いて頼み込むようならば君の条件に応じてもあげるけど?」

「その必要はない。その程度のルール選択くらいは応じないとな。もとより、どんな条件であろうとも俺は二度と負けやしない」

 

 そのために昨日一日鍛え上げてきたのだから。

 俺もポケモン達も、昨日とは全然違う。今日は十全の状態で戦える。

 

 その会話を最後に俺とアカネはそれぞれのトレーナーズサークル内へと移動し、サツキさんも観客席へと移動する。

 

「せならその違いを見せてもらおうやないか! 頼むでミルたん!」

 

 アカネが繰り出したのは予想通り昨日と同じミルタンク。きっと彼女の切り札なのだろう。

 攻守に優れた重量級ポケモンだ。確かに強敵ではあるが、倒せない相手というわけではない!

 

「見せつけてやるさ! 行って来い――サンドパン!」

 

 ボールから出てきたのは一回り体が大きくなったサンド。昨日のそだてやの特訓の際に、サンドパンに進化したのだ。

 背中に幾多の赤い針を背負い、腕にはより鋭くなった爪を身につけている。たくましく成長した姿を見せ付けるように、サンドパンは咆哮した。

 サンドパンにとっては初のジム戦とは言っても強くなったことに自信があるのだろう、気負う様子は見られない。良い調子だ。

 

「今日はこっちからいかせてもらうで! ミルたん“ころがる”!」

 

 いきなり得意技の“ころがる”で来たか!

 とても重量級とは思えないほどのスピードでミルタンクは転がり始めた。徐々にスピードが上がり、威力も上がっていることだろう。

 

「まあわざわざ相手の土俵に立って戦うつもりはないが。サンドパン、“あなをほる”!」

 

 だがそんな相手の事情など知ったことではない。

 サンドパンは鋭い爪で瞬く間に地面を削り取り、地中へと身を隠した。これによりミルタンクは誰もいない空間を通り過ぎ、しかも突出した穴によってバウンドして壁に激突して跳ね返った。

 ……危なっ! サンドパンはかわしたけれど、逆に俺に命中しそうだったけど!?

 

「ちぃっ。ミルたん、攻撃中止! ……地中に逃げるとは、たしか前回とは違って逃げ腰やな」

「逃げているわけではない。勝ちに行っている。……それよりも、注意がおろそかになっているぜ」

「っ!? ミルたん後ろ!!」

「……ッ!?」

「そのまま“かわらわり”だ!」

 

 突如ミルタンクの背後の地面が盛り上がり、サンドパンが躍り出た。

 そのまま相手が振り返った瞬間に一撃、さらに相手が仰け反ったところに追撃の“かわらわり”が放たれる。

 だがこれでもまだミルタンクは膝を突かない。なんとか持ちこたえて反撃とばかりに腕を振るうものの……その前に再びサンドパンは地面に身を隠した。

 

「この戦い方は……」

「そ。ヒット&アウェイ。一撃加えたらすぐに回避行動をとりダメージを蓄積させる。

 しかも、普通の戦い方と同じだと思ったら大間違いだぜ」

 

 サンドパンは攻撃の他にフェイントを、強いて言えば次の攻撃への布石を打っている。

 地中から出てきたと思えば攻撃せずにまた別の場所から地面へともぐり、サンドパン専用の地面の通路を作る。

 この動きを繰り返すことにより、地中には無数の道が広がりサンドパンの行動範囲を広げる。それと同時に地面には幾多もの穴が出来たことによりミルタンクの“ころがる”が容易に繰り出せないようにする。

 

「これが俺の攻防一体のミルタンク対策だ。お前にはここから先、何もさせやしない!」

「……いつまでも上手くいくと、思うな!」

「なにっ!?」

 

 しかしついにサンドパンの動きに慣れ始めたのか、ミルタンクは横から攻撃しようとしていたサンドパンの腕を掴みとった。

 

「まずい! サンドパン逃げろ!」

「逃がすか! ミルたんもう地中になんて逃げられないよう打ち上げたれ、“メガトンパンチ”!」

「~~~~ギュゥッ!!」

 

 ミルタンクの重い拳がサンドパンのお腹へと炸裂し、短い悲鳴を上げた。

 その威力は計り知れず、まともに食らってしまったサンドパンは空中へと打ち上げられてしまった。これでは回避行動は取れやしない。

 

「……これで終わりや。ミルたん、とどめを!」

 

 最高点に到達し、徐々に落下しつつあるサンドパンを見つめながらミルタンクは右腕を引き、攻撃の態勢へと移る。

 空を飛べないサンドパンではここから攻撃を避けることはできない。あと一撃を食らえば戦闘不能になってしまうだろう。

 

「いやまだだ! サンドパン“ころがる”!」

 

 ……最も、攻撃を受けてしまったらの話だが。

 指示を受けてサンドパンは空中で丸くなり、落下の勢いも加えて高速回転する。

 徐々に両者の間が短くなるなか、ミルタンクは腕を振り上げて迎え撃つものの……その腕はサンドパンを襲うことはなく、逆にサンドパンの回転する無数の針がミルタンクを襲った。

 

「ミルたん!」

 

 無数の傷をその身に受け、さすがのミルタンクもふらついている。それもそのはずだ。

 

「サンドパンは体を丸めればトゲトゲのボール状になるんだよ。頭上から襲えば防ぎようのない攻撃ができる!」

 

 サンドが進化する前から考えていた作戦が、サンドパンに進化したことでより強力になったのだ。

 “あなをほる”で相手をかく乱し体力を削り取り、空中に投げ出されようとも“ころがる”で相手にダメージ倍増のカウンターとする。

 

「さあこれで終わりだ! “きりさく”!!」

 

 サンドパンは今もふらついているミルタンクに迫っていく。そして両方の腕を一気に振るい、鋭い爪で切り裂いた。

 この一撃はまさにサンドパンの必殺技であった。その威力は傷ついたミルタンクでは耐え切れるはずもなく、その重い体が地面にと沈んだ。

 

「う……うそーーん!!」

「ミルタンク、戦闘不能! よって勝者……ワカバタウンのシュン!」

「ッし! やったぞサンドパン!!」

 

 信じられない、とアカネが叫ぶ中審判の旗がこちらへ上げられ、判定(ジャッジ)が下された。

 サンドパンが嬉しそうにこちらへ駆け寄ってくる。さすがに進化したことで抱きかかえることは難しくなったが、頭を撫でてやれば嬉しそうに頬を緩ませる。

 ……公式戦初勝負、お疲れ様だ。よくぞ期待に応えてくれた。この戦いでサンドパンも十分な経験を得られたはずだ。

 

「さあアカネ。お前が馬鹿にした相手はどうだった? まあ、これが結果だ。おとなしくバッジを……」

「う……ううっ……」

「……うん?」

「ううう……うわぁーーーーん! うあーーん!」

「…………え? いやちょっと……え?」

「ううっ。……ひどい、ひどいすぎるわ! そんなにムキならんでもええやん! もぉ子供なんやから……」

「…………え?」

 

 突如アカネがその場で泣き崩れてしまった。勝った後だというのにものすごい罪悪感に襲われてしまう。

 ……てかちょっと待て。俺の時は散々言ってくれたというのに、自分が負けたらコレですか? 女って卑怯じゃね?

 

「うっ……ぐすっ。ひどいよぉ……」

「……いや、えっと悪かった。その……」

「あーあ。シュン君が女の子を泣かしちゃったね」

「俺ですか、俺が悪いんですか!? そうですか!」

 

 いつの間にか駆けつけてきたサツキさんまで敵に回ってしまい、まさに四面楚歌。

 なにこれ、活躍してくれたサンドパンまで気まずそうに頬をかいているじゃないですか! 力の加減を間違うなよ、怪我するから。

 

「しょうがないか。この場は私が引き受けるから、シュン君は先に出ていて。サンドパンもポケモンセンターに連れて行かなきゃいけないし」

「いや、でも……」

「どうせシュン君は女の子相手にどうすればいいかわからないでしょ?」

「すみません、どうかお願いしますサツキさん。……行くぞ、サンドパン!」

 

 この場をサツキさんに任せ、俺はサンドパンと共にコガネジムを後にする。

 決して逃げたわけではない。これは戦略的撤退というものだ。……なんでジム戦で勝ったのにこんな形で去らなければいけないのかわからないけど。

 まあ女性関連のことは、サツキさんに任せた方がいいからな。俺女友達少なかったからどう接すればいいかよくわからないし。

 サツキさんもそれを感じて言ってくれたわけだし。……ただ、あの時逆に知っているって答えたら、サツキさんが敵に回ってしまうような気がしたが。

 

「いや、女性ってわからないものだな。悪いなサンドパン。折角のお前の活躍に水を差す形になっちゃって」

 

 ジムの外に出ても気は晴れない。

 しかし『気にするな』とサンドパンは腕をふるう。……良いやつだな、コイツ。男前だよ本当に。♂だし。

 

「ありがとうな。それじゃあ早速ポケモンセンターに行こうか。お前もあの一撃は効いただろう。ゆっくりボールの中で休んでいてくれ」

 

 サンドパンをボールに戻し、腰に装着する。

 戦闘不能まではいかなかったもののあのミルタンクの“メガトンパンチ”をまともに食らったんだ。そのダメージは大きい。早く連れて行くとしよう。

 

「あの、すみません。そこの君、少しよろしいでしょうか?」

「え? ……えっと、俺ですか?」

「ええそうです。あなたのことですよ」

 

 ポケモンセンターへ向かおうとすると、いきなり近くから声がかかった。

 問い返すがやはり俺のことを指定しているようで。

 そこにいたのは黒いスーツに身を包んだ若い男性だった。眼鏡をかけた知的な男で、整っている容姿はまとっている服に負けずに高貴さを醸し出している。

 とてもではないが、旅の途中でバッグを持っているような俺とは到底つりあわないような相手だ。相手の意図が読めずに不審な目で見てしまうのは仕方のないことだろう。

 ……表情が読めないのだ。目はまるで閉じているのではないかと疑うほどに細く、表情も常に笑みを浮かべていて変化がない。……本当に本物の笑みなのか、疑うほどだ。

 

「突然申し訳ありません。決して怪しいものではありませんのでご安心を。

 あなたに二,三質問したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「……俺に答えられることならば」

「ありがとうございます。それならば早速。……あなた、サツキという女性のことをご存知ですよね?」

「ッ!?」

「やはりご存知でしたか」

 

 ……出そうになった声は抑えられたものの、表情までは隠し切れなかったようだ。

 男は俺の変化を読み取り、満足したように笑みを深くする。

 『サツキ』という女性。間違いなく彼女のことであっているだろう。……サツキさんに、こんな男が何の用で?

 

 

 ここまでの活躍をポケモンレポートに書き込んでいます…………

 

 

 

 主人公:シュン

 持っているバッジ:2個 (ウイングバッジ、インセクトバッジ)

 

 

 手持ちポケモン

 

  マグマラシ♂ Lv30

  ピカチュウ♂ Lv28 

  サンドパン♂ Lv27

  ラプラス♀ Lv38

  ヘラクロス♂ Lv40

  イーブイ♀ Lv30

 

 ボックスメンバー

 

  ピジョン♀ Lv22

  サナギラス♂ Lv35

 

 レポートに書き込みました!!

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