ワカバの導き手   作:星月

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第二十四話 vsハッサム 新たなるステージへ

 その後、俺達はロケット団の追撃を受ける事無く無事にコガネシティまで戻ることが出来た。

 ホテルのチェックインを済ませ、二人が別々の部屋に入って乱れた服を着替えたり、身なりを整える。

 さすがに今日ばかりは泊まる部屋は別々だ。サツキさんとて今日のことは堪えただろう。色々と考えることだってあるだろうし、一人でいる方がいいはず。

 ……そして何よりも、俺の方が今は一人でいたいという感情があった。

 部屋に入るや否やベッドに倒れこむように横になり、目を閉じる。

 

「……早速、約束を破ってしまったな」

 

 出てくるのは後悔ばかりだ。正しいことだと決断した上での行動だったというのに。

 ――約束。『もう二度と力は使わない』というサツキさんとの約束を、俺は今日破ってしまった。

 オーキド博士に無理を言ってピジョンとサナギラスも戻してもらったものの、やはりピジョンはまだ完全には回復していなかった。体の傷は癒えていたものの、羽の痺れだけは未だに残っていた。羽を動かすことはできても、飛び立つほどに羽ばたかせることはできていなかったのだ。

 だが空中戦ともなればピジョンは絶対に欠かすことのできない存在だと、そう考えた俺は……サツキさんとの約束を破り、力を行使した。

 

「ピィッ……」

「ああ、大丈夫だよピカチュウ。……今日は、体の痛みもないから」

 

 心配そうに顔を覗き込むピカチュウを少しでも安心させるよう呟けば、ピカチュウは何も言わずに俺の胸元に入ってくる。頭を撫でていると徐々に気持ちよさそうな鳴き声が聞こえてきた。

 ……大丈夫なはず。今回は今までと違って、力を使ったのは本当に短時間だけだった。時間にしておよそ数秒という時間。疲労もそれほど感じられなった。

 

「まさか、俺が壊れたわけではないしな」

 

 一番怖いのはその状態に慣れてしまうほど壊れるということ。

 だが今のところは普段の生活も滞りなく過ごせている。だから大丈夫なはずだ。

 

「……俺なら大丈夫だよピカチュウ。ゴールドだってまだ見つけられてないのに、そう簡単に倒れるわけないだろ」

「……チュー」

「俺が嘘を言ったことがあったか? ……大丈夫だから、今日はもう風呂に入って休もうぜ」

「ピッ!」

 

 相棒の力強い返事を聞き、バスルームへと向かう。

 ポケモン達も今日は疲れたことだろう。今日は早めに休ませてやらないとな。

 

 

――――

 

 

「……申し訳ありません、オーキド博士。この度はご迷惑をおかけしました」

『そのように頭を下げんでくれ。君が無事であっただけでわしは十分じゃよ』

「ありがとうございます。本当に……今日はシュン君に感謝してもしきれませんね」

『そうじゃのう。わしも今まで図鑑所有者など多くのトレーナーを見てきたが、たった一人で敵の戦艦に乗り込むなど初めてじゃ』

 

 サツキが泊まっている一室では、パソコンでオーキド博士と連絡を取り合っていた。

 あの後もオーキド博士は各地の伝手と連絡を取り合い、捜査に尽力していた。今ようやく彼女の無事を確認できて胸を撫で下ろしている。

 二人とも今日のシュンの活躍にはただ絶賛するだけだった。かつてのレッド達と同等の活躍と言ってもおかしくない。今回の彼の行動がなかったならば、今頃どうなっていたことか……想像に難くない。

 

『君もシュン君も、今日はゆっくり休養をとってくれ。さすがに疲労がたまったことじゃろう』

「そうですね。私も今日一日で疲れがどっと押し寄せてきたような感覚です。シュン君も同じことでしょう」

『無理もあるまい。……明日からまたよろしく頼むぞ』

「はい。それではまた」

 

 通信を切り、サツキは溜め込んでしまった疲労を流しだすべく、バスルームへと向かう。

 シャワーノズルから発射される暖かい水滴の一つ一つが彼女の体を伝い、次々に流れていく。

 鏡を見ればそこには見慣れた自分の顔がある。肌も綺麗の一言に尽きるもので傷一つない。

 

「……もう少しで、私が危ない目にあっていたのよね」

 

 肉体的な意味だけではない。女性としても傷つけられた可能性がある。まだ素肌を晒す程度で済んだのが幸いだ。

 共にいる男の子を助けるとそう決めたのに、今回もまた助けられてしまった。

 これ以上余計な心配はかけたくなかったというのに。危険な目には合わせたくはなかったというのに。……シュンは迷う事無く助けに来た。

 

「……もう君も一人前になったって、認めてもいいのかな?」

 

 お湯が張っているバスタブに浸かり、サツキは目を瞑ってシュンのことを考える。

 その顔には柔らかい笑みが浮かんでいて、頬がほんのり赤く染まっていた。

 

 

――――

 

 

「――送信、完了」

 

 ボールが問題なく発進されたことを確認して携帯転送システムを片付ける。

 今回はサンドパンとヘラクロスをオーキド博士の下へと送った。今日の戦いで特に消耗が激しかった二体。最近は戦いの連続であったし、休養の意味も兼ねて少し休んでいてもらおう。

 

「皆も今日はありがとう。しっかり休んでくれ」

 

 センターでの治療が完了し、ボールの中で待機しているポケモン達に一言声をかけて、俺も寝巻きに着替えた。

 さすがに疲労が限界を超えたのかまぶたが重い。すぐにでも寝付けそうだ。

 目覚ましをセットしてベッドに横になる。今日一日を振り返り、反省点を整理して瞳を閉じた。

 ……それから数十秒後。そろそろ眠れるころあいだと思ったところでポケギアがなり始める。手にとって見るとサツキさんからメールが来ていた。

 『今大丈夫?』と、それだけが書かれている単純な内容。

 果たして今日話さなければならないことでもあったのだろうかと考えをめぐらせるが、特に見当たらない。とりあえず大丈夫だと返信をすると、しばらくして部屋の入り口の扉がノックされた。

 

「……どうしたんですか、サツキさん?」

「……」

 

 扉を開ければ、やはりそこにいたのはサツキさんだった。

 しかし彼女は何も言わずに部屋の中へと入っていく。手元にはなぜか枕があった。

 周囲の物には目もくれず、ベッドまで歩いていき、そこで立ち止まった。

 不審に思いつつも彼女反応を窺っていると……すでにおいてあった枕の隣に自分の枕を置き、布団の中に入った。

 

「……え? サツキさん、それは……どういうことでしょう、か?」

「……来て」

「いや来てって……」

「今日だけは、一緒にいよ」

「……」

 

 ギリギリ聞こえるくらい静かで今にも消えてしまいそうな声だった。

 それ以上は語らず、彼女はずっと壁の方を見て俺と視線を合わそうとしない。このままではもう何も話さないのだろう。

 ……抵抗は当然ある。以前は一緒の部屋だったとしてもベッドは別だったのだから当然だ。

 しかし今のサツキさんを放っておくことなでできるわけもなく……俺はサツキさんとは逆向きを向く形でベッドの中に入った。シングルベッドなので、下手に振り返ったら危ないだろうな。

 

「……」

「……」

 

 ……重い。沈黙が辛い。

 先ほどの反応から何か話すことがあたのだろうが、サツキさんは一言も話さない。

 一人でいたくなかったという理由だけなのだろうか? たしかに今回の事件は彼女の身内が敵になったのだから衝撃は大きいだろう。拉致された時の精神的ダメージもあって、孤独を味わいたくなかったのかもしれない。

 それなら、やはり何か俺の方から声をかけてあげれば良いのだろうが……果たしてサツキさんとの約束を破ったような俺が、一体何を彼女に言えば良いのだろう。

 

「シュン君。まだ起きてる?」

「え……あ、はい」

 

 突如サツキさんの呼び声が耳に届いた。考えに浸っていたせいで驚いたが、反応があったので一安心だ。

 

「今日は本当にありがとうね。おかげで私もこうして無事に帰ってこれた」

「……いいえ。別にそんなたいしたことでは……」

「ううん。本当に感謝している。……これからはシュン君のことを一人のトレーナーとして、一人の男の子として、見ていくよ」

「……え? それってどういう……」

 

 ことですか、と繋げようとしたところで寝息が聞こえてくる。

 ……寝付くの早っ! というか、そこで寝るのですか!?

 どうして俺に変な疑問をもたせて自分は安心して眠れるのだろうか。仮にも異性がすぐ隣にいるというのにこんな無防備だなんて……信じているということか。そう考えると当然のことながら変な気が起こるわけもなく、俺も彼女のことはできるだけ気にしないように、静かにまぶたを閉じた。

 

 

――――

 

 

 そして次の日。

 コガネシティで一通り旅の準備を済ませた二人は、ここ数日滞在していた街を後にした。

 長く時間を費やしてしまったことを、そして自身の非力さをより理解したシュンは――ここから快進撃を見せる。

 

 同日の昼、より戦力を増やすために自然公園で開催されていた虫取り大会に参加。シュンはピカチュウと共にエントリーした。

 

「ピカチュウ、“でんじは”!」

 

 ハッサムの“でんこうせっか”をかわし、ピカチュウは攻撃を繰り出した。

 体から発せられる高密度の電気エネルギーは相手の動きを止めるには十分すぎる。直撃してしまったハッサムはその場で硬直し、ピカチュウの追撃を許した。

 

「これで終わりだ。ハッサム――ボールに収まれ!」

 

 ダメージが通った好機を逃さずシュンは大会専用のボール――パークボールを投げる。

 ハッサムの頭にコツンと当たり、ボールに体が吸い込まれたあともしばらく抵抗を見せるも、やがてその動きはなくなった。

 

 こうしてシュンはハッサムをゲット。虫取り大会でも優勝を果たし、勢いそのままにエンジュシティへと向かう。

 

 次の街・エンジュシティに着いたのは夕方だった。

 ホテルの予約を済ませるとすぐに、シュンはジムへと急行した。

 ジムリーダーはマツバというゴーストタイプの使い手。普段は彼自慢の念視能力を生かし、副業の物探し屋をしているが、その日は運よくジムに滞在していた。

 マツバはシュンの挑戦を快く引きうけ、そのままバトルは始まる。

 エンジュジムでのバトルは二体二のダブルバトル。マツバが繰り出したのはゴースとムウマだった。

 “シャドーボール”や“サイケこうせん”、さらには“うらみ”などゴーストタイプならではの異色の戦い方を見せるマツバ。

 

「エーフィ、“ひかりのかべ”! ハッサム、“つるぎのまい”!」

 

 それに対してシュンはイーブイが進化したばかりのエーフィ、そして昼に捕まえたハッサムで挑む。

 どちらもまだ完全にシュンが戦法を把握したわけではなかったが、そうとは思えないほどの戦いだった。

 エーフィは味方の特殊攻撃に対抗できる防御壁を張ることで守りを固め、その間にハッサムは戦いの舞いによって攻撃力を上げる。

 

「“サイコキネシス”に“メタルクロー”!!」

 

 そして防戦一方だった展開から一気に反撃に転じる。

 強力な念力と、鋼鉄の爪が相手の二体を襲った。弱点をついた攻撃・威力が高まった攻撃の威力は相当なもので、ゴースとムウマは同時にノックアウト。

 エンジュジムでもシュンは勝利し、見事ファントムバッジをゲットした。

 

 その後は調査を進め、マツバのアリバイを確認し一通り調べ終わると次に日にエンジュシティを旅立つ。

 彼らが向かったのは西のアサギシティだ。

 近頃アサギシティのすぐ側・41ばんすいどうで渦潮が頻繁に発生しているという知らせを聞き、『何かが起こる前触れかもしれない』というサツキの意見が決め手となり、すぐにでも駆けつけられるようにと。

 

 アサギシティにもジムはあり、リーダーはミカンという女性であった。

 専門家タイプは新タイプ『鋼』。ハガネールやレアコイルなど、防御が硬いポケモン達は彼女の『鉄壁ガードの女の子』という二つ名の象徴である。

 シュンは今回もジム戦に挑戦。ルールは六体六のフルバトルであった。

 防御が硬く、また彼女の切り札であるハガネールは攻撃力も並大抵なものではなく、徐々にシュンを追い詰めていった。

 

「焼き尽くせ、バクフーン“かえんぐるま”!!」

 

 しかしシュンも負けてはいられない。

 バトルの行方を決定付けたのは、ミカンとの戦いの最中で進化したマグマラシの進化系――バクフーン。より火力をましたバクフーンの攻撃はハガネールの防御をも上回り、その巨体は地面に沈んだ。

 

 その結果、シュンのチームは六体のうちピカチュウ・サンドパン・サナギラス・ラプラスが戦闘不能となったが、ヘラクロスとバクフーンは最後まで地面に膝をつけることなく相手を下した。

 こうしてシュンは見事にアサギジムでもジムリーダーとの戦いに勝利し、見事スチールバッジを手に入れたのだ。

 

 ジム戦後にシュンとサツキはしばし話し合い、しばらくの間この町に滞在することを決定。

 ミカンの調査を終えるとシュンはポケモン達を鍛えながら、情報収集に努めることとなった。

 シュンも彼の手持ちポケモン達も徐々に力を蓄え、ついにピジョンもピジョットへと進化を果たした。どんどん力強い存在へとなっていく。

 サツキもシュンとポケモン達の成長を見守っていた。

 できうるばらばこれからもずっと一緒にいたいと些細な願いを祈りながら。

 

 ――しかし、平穏な時間は決して永遠ではなく。次の戦いはすぐ近くまで迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ここまでの活躍をポケモンレポートに書き込んでいます…………

 

 

 主人公:シュン

 持っているバッジ:5個 (ウイングバッジ、インセクトバッジ、レギュラーバッジ、ファントムバッジ、スチールバッジ)

 

 

手持ちポケモン

 

 バクフーン♂ Lv42

 ピカチュウ♂ Lv45

 エーフィ♀Lv44

 ラプラス♀ Lv49

 ピジョット♀ Lv38

 ヘラクロス♂ Lv50

 

 

ボックスメンバー

 

 サナギラス♂ Lv48

 サンドパン♂40

 ハッサム♂ Lv46

 

レポートに書き込みました!!

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