ワカバの導き手   作:星月

4 / 53
第四話 vsマダツボミ 戦いに向けて

 トレーナーとの戦いや野生ポケモンとの戦いはあったものの、その後は(先ほどのアーボックによる急襲のような)ハプニングもなく無事にヨシノシティまでたどり着いた。……しかし、隣町とはいえども今回はバトルが多かったために時間がかかってしまった。普段はそれほど時間もかからないのだが、今はワカバタウンを出発してもう2時間ほどが経過している。

 そのおかげでポケモンたちのレベルが上がったのはいい事だが……最初から内容が濃すぎる。ここまで戦っていたポケモン達にも疲労が伺える。

「まずはポケモンセンターへ行きましょう。ポケモンたちを回復させて、私達も少し休まないとね」

「賛成です。さっそく行きましょう」

 

 サツキさんの提案に了承して街に入ってすぐのポケモンセンターへ足を向ける。

 思ったよりも大きく、ポケモンセンター内には多くの人がいた。ポケモンセンターは各地域に展開しているもののワカバタウンにはセンターは存在しないので、俺にとっては物珍しいのだ。

 

「こんにちは、トレーナーさん。こちらではポケモンの体力を回復します。あなたのポケモンをお預かりしますか?」

「はい、お願いします」

 

 俺は四個のモンスターボールを取り出し、受付のジョーイさんに預ける。

 自分の力で回復ができないこともないのだが、外傷を治すならばセンターに預けたほうがいい。それに俺の場合は自身の体力の問題もある。だからこれから可能な限りは回復はセンターを利用することにしよう。

 

「あら、彼女とご一緒ですか? よろしかったらそちらの方も一緒に預かりますよ?」

「あ、わかります? そうなんd……」

「いえ。私は彼の旅に同行しているだけです。バトルもしていないので、けっこうです」

「……」

 

 うん、わかっていたけどね。でも夢を見るくらいはいいと思うんだ。許されることだと思うんだ。だからそんなにはっきりと言わなくていいと思いますよ。……いかん。悲しくて自然と涙が……

「それでは、ポケモン達が回復するまでしばらくお待ちください」

 

 身分証明のトレーナーカードを登録して、俺達はひとまず近くの長椅子に腰掛ける。

 ……自動販売機で買ったおいしい水が本当に美味しい。ひんやりと冷えていて疲れた体を癒してくれる。アーボックの襲撃の際にけっこう走ったので汗もたまっていたのだ。

 

「ねえ、シュン君」

「はい? なんですか?」

「……さっきは、助けてくれてありがとうね」

「……ああ、アーボックのことですか」

 

 突如サツキさんが俺にお礼を言ってきた。

 先ほどの急襲のことだろう。何せ毒を持っている相手だ。生身の人間が受ければ、へたすれば命にも関わる。

 あの時は俺も焦ったけれど、反応できなかったサツキさんにとってはそれ以上に深刻なことだったようだ。

 

「礼を言われることではないですよ。それに、結局のところ倒すどころか敵に背を向けて逃げだしましたから。……格好悪いところを見せちゃいましたね」

「そんなことないわよ。野生ポケモン相手に、果敢に立ち向かっていく姿……格好良かったよ」

 

 そう言って素敵な笑顔で微笑むサツキさん。

 ……直視できずに思わず目を逸らしてしまった。その笑みは反則です。

 駄目だ。このままでは変な空気になってしまう。何か別の話を持ちかけないと……

「……そ、それにしてもポケモンセンターって便利ですよね。無料でポケモンの回復してくれるなんて。一体資金はどこから来てるんでしょうかね?」

「ポケモンセンターの収入源は、ポケモン協会が関わっているわ。『ポケモンセンター運営費』という形で協会から資金を支給されているの。ジムリーダーと一緒よ」

「世の中便利なものですね」

 

 よし、なんとかばれずに済んだ。

 センターもポケモン協会が関与しているのか。たしかにポケモンセンターも公共施設となっているわけだし、不思議なことではない。協会の資金源は不明だけど。

 

「……ああ、そうだシュン君。ポケモンセンターで思いだしたけど、ポケモンの捕獲については気をつけてほしいの」

「え? 捕獲、ですか? どうして……」

 

 捕獲に気をつけるという意味がわからない。

 図鑑所有者としてはポケモン図鑑の記録を埋めるためにもポケモンの捕獲は欠かせない仕事のようなものだ。(別に出会うだけでも問題はないのだが、ポケモンを捕まえたほうがより詳しい生態情報を得られるためである)

 それに自分の手持ちをより層のあるメンバーで固めるためでもある。ゆえにポケモンの捕獲はメリットばかりで特に気をつけるようなことはないはずなのだが……

「聞いてないかしら? 最近ジョウト地方全域でデータ通信が不通なのよ。そのせいでポケモン転送システムも使用が不可能になってるの。だから、6体以上のポケモンを持っているときに別のポケモンを捕まえたとしても、連れ歩くしかなくなる。……そのことだけは、覚えておいて」

「…………あ!!」

 

 忘れてた! そして思いだした! 

 そういえば、たしかにゴールドがニョロモを取り戻した時に通信がどうのこうの言っていたな。それでウツギ博士の助手がわざわざゴールドの所に直接出向いたとか言っていたし。……あんな細かいことみんな忘れていたよ。というか、もう直っているものだと思っていた。

 

 ……そして、すでに俺の手持ちポケモンはピカチュウ・ヨーギラス・ヒノアラシ・ポッポの四体。つまり手持ちメンバーにはあと2体しか余裕がないというわけだ。それ以上捕まえると本当に連れ歩くしかなくなる。

 参ったな。少なくとも海上の移動のために水タイプを一体はいれたいと思っているし、そうなるとあと一体をどうするかだ。手持ちのやり取りが困難となると、捕獲にも気を配らないといけない。

 

「オーキド博士達も解決に向けて動いているけれど、そう簡単には直らないみたい。だから、これからポケモンを捕まえるときは気をつけてね」

「……はい」

 サツキさんの言うとおりだ。いちいちワカバタウンに戻るわけにはいかないからな。

 となると、やはり通信システムが普及するまでは手持ちの数には注意しなければならない。

 しかし今教えてもらってよかった。後でシステムを使えないと言われても混乱するだけだからな。サツキさんがいてくれて大助かりだ。もしもいなかったら……何も知らずにポケモンをとにかくゲットしていたのかもしれない。やっぱり一人じゃなくてよかった!

 

「シュンさん。ポケモンの回復が終了しましたよ」

「あ、はい!!」

 

 ジョーイさんが呼んでいる。意外と回復は早くすんだ。

 俺は四体のボールを確認して受けとり、ベルトに装着した。

 

「ありがとうございます」

「いいえ。またのご利用、お待ちしています」

 ジョーイさんにお礼を言って、サツキさんと合流する。

 飲み終えたボトルを片付けてポケモンセンターを後にした。

 

「今日はこのままキキョウシティにまで行っちゃう?」

「ええ。今日中にキキョウシティに行き、明日ジムに行こうと思っています」

 

 まだ時間は16時だ。このまま真っ直ぐ行けば、辺りが暗くなる前にキキョウシティにはたどり着くだろう。

 フレンドリィショップできずぐすりを3個買って準備を整え、ヨシノシティを出発した。この先は30番道路・31番道路。俺にとってここから先は未開の地だ。

 

 

――――

 ―― 30・31番道路 ――

 ヨシノシティからキキョウシティへの道のりはワカバタウンからヨシノシティへの距離よりも長い。地図(タウンマップ)を見ればわかるだろうが、およそ2倍は見積もってもおかしくはないだろう。

 その分トレーナーとの戦いも多くはなるのだが……それがわかっていても、どうしても俺は納得できない。今にも怒りで爆発してしまいそうだ。なぜなら……とにかくここまでの状況を振り返ってみよう。

 

 短パン小僧が勝負を仕掛けてきた。

 短パン小僧が勝負を仕掛けて(ry

 短パン小僧が勝負を(ry

 短パン小僧(ry

 短パン(ry

 た(ry

 t(ry

「お前らどんだけ短パンが好きなんだよ!?」

「シュン君!?」

 

 そう叫んでしまった俺に罪はない。勝負を仕掛けてくるやつが全員短パンだなんて、最近の子供が元気すぎるんだよ。だからサツキさん、そんな変な人を見るような目で見ないでください。

 レベルを上げるには丁度いいのだが、いい加減にしろと言いたい。数が多すぎる!! アーボックみたいな強ポケ出るよりはいいけどね。

 だがその分学ぶことも多かったわけだが。……やはり現実と理論はまったくの別物ということだ。

 

「ほ、ほら! もうキキョウシティも見えているし、早く行こう!!」

 

 サツキさんが俺の手を引いて歩き出す。

 ……その優しさがなぜか痛い! 俺はいたって正常だと言うのに!!

 短パン小僧がしょu(ry

「くどい!!」

 

 挑んできた短パン小僧を瞬殺し、先を急ぐ俺達だった。

 

――――

 

 ―― キキョウシティ ――

 ゲートを通り、ようやくキキョウシティにたどり着いた。

 到着早々、ポケモンセンターに入る。それほどダメージはないが、連戦だったからな。みんな疲れている。もっとも俺の場合は身体的疲労だけではなく精神的疲労もはなはだしいのだが……

「お願いします」

「はい、お預かりします」

 四つのモンスターボールを預け、ソファーに座る。

 ポケギアを見ると……時間はもう18時になろうとしていた。この時間からジムは(体力的にも)厳しいし、宿泊場所を探すとしよう。

 ジョーイさんから回復したポケモンを受け取って、二人で今日の宿泊場所を探し始めた。

 

 そして探し当てたのは懐にも優しく、不満なく寝付けるホテル。

 一応部屋は別々だ。……ちょっと残念だが、当然か。14歳ともなれば家族でもない限り男女を一緒にするわけないとわかっていても、どこかやりきれない感がある……

 

 ちなみにホテル代はオーキド博士が別に作った口座から支払っている。

 旅立ちにあたって、博士達が財政面でもきっちりサポートしてくれたのだ。そういった気配りからも、今回の仮面の男をかなり警戒していることが伺える。

 

「さて、そろそろ行くか」

 

 部屋を整理し、最低限の荷物だけを持って部屋を出る。

 サツキさんに一言声をかけて、俺は31番道路へと向かった。

 

 日が暮れてしまったせいか、先ほどまでいたトレーナーも姿を消していて、辺りには野生ポケモンばかりが目に映る。……だが、そのほうがこちらにとっては好都合だ。

「お前達、全員出て来い!!」

 四体全員をボールから出す。皆回復しただけあって元気そうだ。これからすることを考えれば、そうでなければ困るのだけど。

 

「……明日俺達はキキョウジムに挑む。初めての公式戦だ。だけど今の力ではまだまだ心配だ。だからこれから特訓を始める! 行け!」

 

 四体は頷いて、草むらへと向かって行く。こいつらもまだまだ伸びしろがあるということを自覚しているのだろう。するとほどなくしてマタツボミやポッポと言った周辺の野生ポケモンたちが飛び出してきた。

 

「ヒノアラシ、“ひのこ”! ピカチュウ、“でんきショック”! ポッポ、“かぜおこし”! ヨーギラス、“かみつく”!」

 

 四体にそれぞれの得意技を命じる。みんな自慢の技で次々と野生ポケモンを撃退して行く。

 ……そうだ。もしも仮面の男と対峙したとき、一対一になるとは限らない! ゴールドの時だって四対四の複数戦になったと聞いている。場合によっては、ポケモン達には自分の判断で動いてもらわなければならない。

 

「よし、各々の考えで動いてみろ!!」

 

 俺の言葉を受けて、四体は各地に散った。俺は見当たりのいい場所で動きを見る。

 ……あらかじめ特訓(このこと)を伝えてはいたものの、やはり動きに精彩さが欠けるか。先ほどよりも動きのキレが悪い。どこか迷いがあるようだ。今まで俺の指示を受けて戦っていたがゆえに、自分だけで戦うことに慣れていないのだろう。これを改善するには回数を重ねる必要があるな。

 こういったことも含めて、やはり現実は違う! しかしだからこそ、今のうちにさまざまな状況を想定して鍛えておかなければならない。

 ……ポケモン達が戦っている間にここで一回、俺がこれまでのバトルで学んだことを振り返るとするか。

 まず一つは技の命中率。

 オーキド博士達ポケモンの研究者はポケモンを研究し、技のことも研究、世間に発表している。技一つ一つにおよその目安となる威力や命中率という数値も発表された。だが命中立100%と言う技でも、バトルの中では外れることが頻繁に起こる。やはり動いている相手に技を放つ以上、外れることは普通ということだろう。どちらかというとこの数値というものは、ポケモン達の技の制御のしやすさのように思える。

 

 二つ目は、技と技の間に起こる相性だ。

 その良い例が今日のヒノアラシとマタツボミの戦いだ。

 ヒノアラシの放った“ひのこ”は、いとも簡単に“はっぱカッター”を飲み込んでマタツボミに直撃した。つまりポケモンの相性だけでなく技同士にも相性の関係があり、効果を打ち消すこともできるということだ。

 

 三つ目。……これは二つ目にも共通することだが、技の使い方。

 本来の目的とは違った追加効果が技にはある。

 たとえば相手のすばやさをさげる“いとをはく”といった状態変化技で、相手の足を完全に巻きつけて動きを止めるということもできる。はたまた本来は攻撃技である“いわおとし”を敵に向けずに相手の行く先を阻める壁にする、といったように技にはいろんな使い道がある。

 

 そして今のポケモンたちのぎくしゃくした動きなど、現実には理屈通りにはいかないことが多すぎる。

 なんとかポケモンバトルには慣れてきたものの、もしも仮面の男と遭遇したときにイレギュラーが起こったら対処しきれない可能性があるからな。今のうちに強くなっておかないと。

 

 しばしポケモン達の様子を伺う。……が、苦戦こそしているが次々と野生のポケモン達を討ち払っている。やはりここまでのバトルを通じてそれなりの力が身についてきたのだろう。動きも最初と比べて良くなってきた。

 明日はジムリーダーに挑むが、この調子ならひょっとしていい勝負になるかもしれない。

 

「……そこの君! 一体何をしている!?」

「え?」

 

 突如後ろからまぶしい光を当てられた。振り返るとそれが懐中電灯の光だとわかる。

 ……そこにいたのは警察官だった。暗くてよくは見えないが若い顔だ。おそらく夜の見回りをしている最中なのだろう。それでこんな時間に一人でいる俺を不審に思って声をかけた、とかそんな理由だろうな。

 

「ご心配をおかけしたようですみません。旅をしているものなのですが、明日キキョウシティのジムリーダーに挑戦しようと思って……それで明日に備えてポケモン達の訓練をしていたんですよ」

「ジムリーダーへの挑戦? ……なるほど、そういうことか」

 

 気がついたら俺の元に近づいてきたポケモン達の様子を見て信じてくれたのだろう。みんなところどころ傷が見える。後で治療してやたないとな。

 ただ、警察官が一瞬うれしそうな顔をしたように見えたが……俺の気のせいだろうか?

「それならばここよりもちょうどいい訓練場所があるよ」

「本当ですか!?」

「ああ。キキョウシティには『マタツボミのとう』と呼ばれている大きな塔があるのだが、あそこはポケモントレーナー達の訓練場所にもなっていてね。ポケモンを鍛えるならばうってつけの場所なんだ」

 

 ……そういえば確かにここにくる途中に大きな塔が建っていたことを思い出す。

 なるほど、たしかに夜中にこのようなところで鍛えるよりもそちらのほうが安全だろうし、何より効率がよいのかもしれない。ここは素直に好意を受け取っておこう。

「そうなんですか。情報提供ありがとうございます。これからそちらに伺うことにします」

「ああ。だけど時間には気をつけなよ。明日の戦いにも響くかもしれないからな」

「はい。ありがとうございます!」

 俺は警察官に一礼してその場を去った。ポケモン達も「まだやれる!」 といわんばかりに思いっきり走っている。ならばそのやる気をとことん発散させるとしよう。一礼してその場を後にした。

「……挑戦者(ジムチャレンジャー)か。リーダーに就任してからというもの、俺を負かした相手はいなかったが。……今回の相手は期待してもよさそうだな」

 

 去り際に警察官が何かつぶやいていた気がしたが良く聞こえなかったし、事務的なものだろう。あるいは俺のように子供がバトルに真剣になっているのを見て何かを感じたのか……まあどちらにせよ俺には関係のないことだ。センターによろうとも考えたが大丈夫と判断し、一気にマタツボミのとうへと向かった。

 

 

――――

 

 ―― マダツボミのとう――

 早速塔の中へと入っていく。なかなか立派なものだが……なぜか内部に焼け跡のようなものが残っている。若干壊れかけている部分も見つかるし、ここで火事でもあったのだろうか? 先ほどの警察官は何も言っていなかったし大事ではないと思うのだが。

「……よくぞいらした少年。此度は何用で参った?」

「あ、こんばんは。ここでポケモンの修行をしようと思ったんですけど……」

 

 入って早々、一人のお坊さんに話しかけられた。

 正直に修行のことを話すと、なぜか喜んで出迎えられた。……そんなにここで修行する人は少ないのだろうか?

 

「そうでしたか。実は最近こちらに参られるトレーナーが減り続けていまして、あなたは五日ぶりの修行者となります」

「五日ぶり……」

 

 思わず言葉に詰まってしまった。少ないように感じるが、やはりこの塔の内部と関係があるのだろうか?

 まあポケモンを鍛えられるのならば俺はいっこうに構わない。場所なんて選んでいられるような立場ではないからな。

 

「ならば中にお進みください。この塔には私のような修行僧がポケモンと共に待ち構えております。また、最上階には我らが長老がお待ちしております。長老に勝てたならば、それ相応のものも用意しておりますよ」

 

 なるほど。修行を達成した者へのご褒美というわけか。これはなかなかどうして親切な話だ。ポケモンも鍛えられて勝てば商品ももらえる。これほどうれしい話はない。 早速挑戦するとしよう。

 俺は近くの階段へと足を向けると、修行僧が後ろから声をかけてきた。

 

「ですが、くれぐれもお気をつけください。この塔には挑戦者を試す多くの罠が仕掛けられており、修行僧も挑戦者には容赦なく戦いを仕掛けてきます。たとえば……こんな風に!!」

「ッ!? ポッポ!!」

 

 嫌な予感を感じ、俺は振り返りざまにポッポをボールから繰り出した。

 するとこちらめがけてマダツボミの“はっぱカッター”が襲い掛かってくる。ポッポは自分の両翼ですべて打ちはらった。

「いきなり何をする!?」

「言ったでしょう、『容赦なく戦いを仕掛けてくる』と。修行はすでに始まっております。あなたが勝ちたいのならば、一時も油断はなさらぬよう!」

「……上等だ!」

 

 確かにこれは修行には丁度いいのかもしれない。

 所々に仕掛けられている(トラップ)。いつ、どこから襲い掛かってくるかわからない敵。

 ……いいね。怖いけど、なぜか心が躍ってきた。どうせこれからこんなことが起こるかもしれないんだ、それならせめて修行のときくらい楽しまないと。

 

 俺はこちらに突っ込んでくるマダツボミを迎撃するべく、ポッポに指示を出した。

 

 

――――

 

「……はぁ……はぁ、はぁ……」

「……見事。わしの負けじゃ」

「……ッしゃ!!」

 

 マタツボミの塔最上階。襲い掛かる修行僧達を全て倒し、備え付けられていた罠をどうにか攻略し……そしてついに長老を倒した。俺もポケモン達もすでにぼろぼろだ。肩で息をしてなんとか体の調子を整えている。

 だが、これで今日の修行は完了だ。鍛え上げたこいつらなら、明日もきっといける……! 今ならそう迷うことなく言える!

「先の約束通り、そなたに差し上げたいものがある。受け取ってくれ」

「……これは」

「これは秘伝マシンの一つ、――『フラッシュ』じゃ」

 

 渡されたのは一つのディスク。技をポケモンに覚えさせることができるディスクだ。しかも秘伝マシン。冒険には欠かせないものだ。このフラッシュを使えばどんなに暗い洞窟であろうと、明るく照らすことができる。

 俺は喜んでこのディスクを受け取った。

「ありがとうございました。おかげでいい特訓になりましたよ」

「帰るならばこちらの階段を使うと良い。こちらには何の罠も仕掛けていないから安心してくれ。

 ……明日、キキョウのジムリーダーに挑むと聞いた。全力を尽くしてがんばってくれたまえ」

「はい!」

 

 俺は長老に一礼して階段を降りていく。さすがに疲労が蓄積しているな。

 ひとまず回復のためにポケモンセンターへと寄って、それからホテルへと戻った。

 

 戻ったのだが……俺の部屋の目の前で、サツキさんが待ち構えていた。

 

「……」

「……えっと、サツキさん。ただいま戻りました」

 

 無言で俺を見つめるサツキさんに報告する。……しかし、それでも無反応。

 心なしかどこか怒っているように見える。はて、一体なぜだろう?

 

「シュン君。修行は別にかまわないのだけど……今何時?」

「え? 今は……23時20分ですけど。それがなにか……あ!」

 

 時間を言ってから自分の過ちに気づいた。サツキさんが怒っている理由にも納得がいった。

 だがもう遅い。サツキさんは俺を部屋へ連れ込むなり、説教を始めた。

 

「いつまでたっても帰ってこないから心配したのよ!? 出かけるときに22時には帰ってくるって言ったんだから、遅くなるときはちゃんと私に連絡しなさい!」

「はい、すみませんでした!」

 

 正座の状態でサツキさんの言葉を甘んじて受け止める。さすがに今回ばかりは俺に非がある。

 そういえば警察官に話しかけられたあとまっすぐマタツボミの塔に行ったせいでサツキさんに連絡することを忘れていた。塔内部でも連絡するような余裕はなかったし。……むしろ約束を忘れていたし。 

 

「事件に巻き込まれたのかとも思ったのよ!? 私達はそういう状況にいるってこと、理解してる!?」

「わかっています! 本当に申し訳ありませんでした!」

 

 出会ってからサツキさんの穏やかな一面しか見ていなかったために俺は驚愕した。どうやら意外と心配性な性格のようだ。

 俺はその後も必死に謝り続けたが……サツキさんが俺を解放してくれたときには、すでに日が変わっていた。

 

 それだけ俺を心配してくれたのだと喜ぶと同時に、もう二度とサツキさんを怒らせないようにしようと決心した。

 

 

 

 

 

 ここまでの活躍をポケモンレポートに書き込んでいます…………

 主人公:シュン

 持っているバッジ:0個

 

 レポートに書き込みました!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。