ワカバの導き手   作:星月

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第四十話 vsラプラスⅡ 時間のはざま

 ウバメの森。

 ヒワダタウンの西に広がる自然豊かな森だ。

 中央には伝説のポケモンを祭り上げる祠が存在し、地元の人々の信仰も厚い土地。

 その平和であった土地に今、仮面の男が舞い降りた。

 

「間に合ったか」

 

 ホウオウとルギアは部下に預け、未だに妨害に来るであろう侵入者への迎撃にあてた。

 セキエイ高原で戦っていた敵もここまでたどり着くにはまだ時間がかかるはず。

 ボールも手にした今、準備は万全だ。あとはボールの完成を待って伝説のポケモンを手にするのみ。

 

「間に合った? 間に合ったのはあなただけじゃないわよ!」

「むっ?」

 

 地面に降り立った仮面の男。

 その男目掛けて、彼が来た方向からは逆の上空から声が届く。

 見上げるとすさまじいスピードで接近する影が一つ浮かんでいた。

 スターミーに乗ったサツキである。エンジュシティからの道中、数えきれないほどのロケット団員からの襲撃があったものの、それら全てを蹴散らしてここまでたどり着いたのだ。

 

「ちっ。やはり団員では時間稼ぎにしかならなかったか」

「スターミー、“ハイドロポンプ”!」

 

 攻撃範囲に至るやすぐに攻撃が開始される。

 警告はもう必要ない。容赦ない水流が仮面の男へ向け発射される。

 

「無駄だ」

 

 水流が直撃する寸前、仮面の男の眼前に氷の盾が広がった。水流は盾を打ち破る事は敵わずに離散する。

 

「氷の盾!」

「それだけではないぞ」

 

 驚いている時間を与えない。仮面の男が呟くと、氷の盾は形態を変えて人型の氷人形と化した。 

 

「行け。レプリカ!」

 

 自立人形と化した氷の塊はサツキ目掛けて突撃する。

 

「なら、メタグロス。“アームハンマー”!」

 

 対抗するのはサツキのメタグロス。

 遠距離攻撃が防がれるなら物理攻撃で破壊する。ボールから出ると、振り上げていた鋼の剛腕が氷人形を頭から打ち砕いた。

 氷人形の硬度もメタグロスの鋼の体から発揮される腕力には叶わなかったようだ。一瞬で人形は氷の粒となった。

 ——そして、すぐに元の形へと収束していく。

 

「高速再生!」

「そうだ。いくら破壊しても意味はないぞ。この空気中に存在する水分を吸収して何度でも再生する!」

 

 仮面の男の象徴である仮面の口が大きく広がった。

 確かに人形を壊しても水分が存在する限りは何度でもよみがえる。並大抵の攻撃では状況は好転しないだろう。

 

「ええ。そうでしょうね」

「むっ?」

「でも、そんなあなたにも弱点はあるでしょう?」

 

 どういう意味だと、そう仮面の男が尋ねる前に答えは明らかになった。

 突如上空から降り注ぐ日差しが強くなる。朝や昼の日差しの強さよりもさらに強い。明らかに人為的に操作されたものだった。

 

「日差しが強まった。まさか!」

「シュン君が戦った時も、あなたは水分が蒸発した事で完全に復活できなかった。……あの子の働きを、無駄にするわけがないでしょう?」

 

 みると、いつの間にかボールから出ていたサツキのキレイハナが舞いを踊っていた。

 キレイハナは踊る事で日差しを強くすることが出来る特性を持つ。これにより大気中の水分を取り込む速度が遅まってしまった氷人形は再生が間に合わず、メタグロスの追撃によって地に沈む。

 

「ギャロップ、“だいもんじ”!」

 

 さらに日差しによって強まったギャロップの炎技が放たれた。もう一度仮面の男が氷の盾を展開するが、氷はみるみると溶けていく。炎を防ぎきる事は出来たものの守りは完全に消えていた。

 

「ぐっ。もう一度!」

 

 ならばと再び仮面の男は氷の盾を生成する。

 

「遅いわ」

 

 だが完全に盾の形を成す前にニドクインの“かわらわり”が粉砕した。相手の攻撃を防ぐだけの強度に達していなかったのだ。

 

「ぐっ!」

 

 敵わないと判断したのか、仮面の男が後ろに下がる。

 

「逃がさない!」

 

 ただそれを許す相手ではなかった。サツキの手持ちで最速を誇るポケモン、サンダースが瞬時に相手との間合いを詰める。接近しながら放たれた電撃はデリバードを襲い、相性の良さを突いた一撃で戦闘不能とする。

 

「このっ。小癪な!」

「さあ、正体を現しなさい!」

 

 仮面の男が氷の腕を振るうが、サンダースは攻撃をかわして仮面を蹴り上げた。

 今まで正体を隠していた仮面が宙を舞う。

 ロケット団の残党を率い、この一連の事件を引き起こしてきた男の顔が明らかになった。

 

「あなたは!」

 

 敵の姿を見て、サツキは言葉を失った。

 今まで仮面の男がポケモンも使わずに超人的な技を振るっていたのもその理由となった。

 氷の人形の中心部に大きく空いた空間に車椅子を設置し、収まっていた老体。ジョウトのジムリーダー達の中では最年長であり、彼らの長にも選ばれていた実力者。

 チョウジタウンのヤナギだった。

 

「チョウジタウンジムリーダー、ヤナギ!」

「……そうだ。私が仮面の男の正体だ」

「あなたが!」

 

 巨悪の根源を目にして、サツキがさらに歯を強く食いしばった。

 ある意味ではよかったとも思えた。これまでシュンが戦い、そして認められたジムリーダーの中に犯人がいなかった事に。もしも彼らの中に敵の親玉がいると知ったならば、きっと彼は悲しむと思ったから。

 だが、それとは別にやはり怒りがこみあがった。

 この男のせいで幼い命は弔われた。実際にそうせざるをえなかったのは自分が原因であろう。だがそう仕向けた相手を目にして怒りが沸き上がらないはずがない。

 

「あなたほどの実力者が、どうしてこんな事を!?」

「ほう。意外だな。聞く耳を持っていたか。何も聞かずに攻撃するかと思っていたよ」

「貴方の処分は私が決める事ではない。警察に引き渡して決める事。でもその前に聞いておきたい。どうして……」

 

 どうしてこんな事をしたのか。どうして彼が命を落とさなければならなかったのか。

 聞きたい事はいくらでもある。ありすぎて、それ以上の言葉を紡ぐことが出来なかった。

 

「ふむ。まあ話すことは別にやぶさかではない。しかし、そうだな。一体どこから話し始めたものか……」

 

 ゆったりとした口調でヤナギは口を開いた。

 しかし相手の調子を崩すように言葉を濁し、中々本題に入ろうとしない。

 隙を見て逃げようとしているのか。あるいは時間稼ぎが狙いなのか。

 ひとまずサツキはサンダースへ視線を向けて逃がさないようにと指示を出す。

 ——直後、後ろに控えていたメタグロスが大きく拳を振り下ろした。その真下ではまだ再生しようとしていた氷人形が水分に逆戻りしていた。

 

「……見事に育てられているな」

「氷を生成する時間を稼ごうとしているなら無駄よ。ポケモン達は皆警戒を続けている。おかしな動きをすればすぐに制圧するわ。それに……」

 

 サツキは視線を遠い遠い世界に森の外周部へと向ける。

 そちらの方角聞こえてきた戦闘音。空中戦が行われているのだろうか、見ると冷気や電撃、炎などの激しい攻撃が繰り広げられている。

 

「わかるでしょう? 私だけではない。他にもあなたを阻もうとするトレーナーが集まっている。もうあなたに逃げ場はない。ここで終わりよ、ヤナギ」

 

 サツキは知らない事だが、戦闘を行っていたのは初代ポケモン図鑑所有者たちだった。

 ルギア、ホウオウを相手にして互角に戦っている。さすがの実力だ。

 そして他にもきっとセキエイ高原で敵を目にしたトレーナーが駆け付けるという予感がある。

 ならば時間稼ぎはむしろこちらに有利。

 だからもう勝機はないのだと、サツキはヤナギに厳しい視線を送った。

 

「一つ、勘違いを正そうか」

 

 ただ彼女の指摘を受けてもヤナギは全く動じていなかった。

 

「確かに私は時間稼ぎが目的だった。だが、その目的は何も氷を再製することではないよ」

「何?」

 

 余裕の笑みを浮かべてそう発言するヤナギ。

 どういうこと、とサツキが聞こうとした瞬間。

 二人の上空で突如何かがはじけるような音が響いた。

 

「ッ! 離れて、サンダース!」

 

 長年の勘がすぐさま行動を起こさせた。

 サンダースに回避を明じ、自分もニドクインに捕まって後ろに下がる。

 直後、上空の空間がゆがんだ。

 

「正しい判断だ。——成功だ。ボールは完成した!」

 

 歓喜の声を上げるヤナギ。

 彼の体を覆っていた氷が少しずつ破綻していく。そして崩壊に比例してヤナギの体は何かに吸い寄せられるように浮かんでいき、謎の空間へと消えていった。

 

「消えた!? 何、あれは!?」 

 

 突然の出来事に理解が追いつかない。

 ボールが完成したとヤナギは言っていた。つまり、ボールの完成を契機に何かが起こり、ヤナギの目的を果たす場所へと転移したと考えるのが妥当だ。

 だが今のが一体何が起こったことなのか、どうすればいいのかサツキにはわからない。

 

『その二枚があればほこらの中、つまり伝説のポケモンが眠るという時間のはざまへと入ることができる』

「……時間のはざま。まさか今のが?」

 

 ふと先ほどであった男が語っていた言葉が脳裏によみがえった。

 仮面の男の狙いはウバメの森の祠であるとは前から考えていた。ならば、そのほこらからつながるという時間のはざまにヤナギは何らかの干渉——おそらくは本人が最後に語ったボールによって突入したのだろうと結論づける。

 

「それなら、この羽をもって祠へ行けば! ギャロップ、お願い!」

 

 ならばサツキも同じ場所へ至れるはず。

 バックから二枚の羽を取り出す。

 敵の罠という可能性も捨てきれないが、今は他に選択肢はない。

 サツキはギャロップの背中に乗って駆け出した。走り出して10秒、すぐに目的地である祠へとたどり着く。

 すると祠は初めて訪れた時とは異なり、中からまばゆい程の光を放っていた。

 

「祠の異変。やっぱりただ事ではないはず」

 

 サツキはゆっくりと祠の扉を開ける。するとその中は先ほどヤナギが消えていった空間と同じ光景が広がっていた。

 

「……行かなきゃ!」

 

 未知の現象に対する迷いはある。不安もある。

 ただ、このまま待っていてもヤナギが目的を達成してしまうだけ。

 意を決して空間の中へと消えていくサツキ。

 時間のはざまに突入してすぐに、彼女の身に異変が生じる。

 

『突然すまない。今日は君に頼みがあって連絡したんじゃ』

『とても助かったよ。君の協力のおかげでレジロック、レジスチル、レジアイス。三匹の眠る場所を特定することが出来た』

『お久しぶりでございます、サツキ様。お迎えに上がりました』

「……これは?」

 

 周囲の空間にいくつもの情報、過去の映像が浮かび上がっては次々と消えていく。

 どれも見た覚えがある。間違いない。これはサツキが今まで経験してきた記憶だ。

 

『こちらこそよろしくお願いします、サツキさん!』

「ッ!?」

 

 ——間違いない。

 この屈託ない笑みは、すでに失われたもの。

 過去の記憶であるはずなのに今の自分に向けられているようなこの光景は、本当にサツキが経験したものだ。

 この空間では中にいるものの記憶が次々と呼び起こされていく。

 

「だからこそ“時間のはざま”? それなら……」

 

 それならばどこかにヤナギの過去も存在するのではないか。そう考えたサツキは悩みを振り払うためにも、辺り一面を見まわす。

 すると、いくつもの映像の中に見覚えのない映像が映りだされていた。

 

「若いころのヤナギ?」

 

 まだ髪も黒く、体つきも若い。しかし顔つきはまさにヤナギそのものである男性が二匹のラプラスと共に氷の大地を歩いていた。

 一見平和に手持ちのポケモンと楽しんでいるような映像。

 ただ直後、場面は一転し氷の大地に大きな亀裂が入る。亀裂は一気に広がっていき、大きな裂け目を呈した。裂け目はラプラスでさえも飲み込む程の巨大さであり、ヤナギのラプラスは二匹ともよける事が出来ず、その空間に飲み込まれていった。

 

「……これがヤナギの目的?」

「見たな」

「ッ!」

 

 悲劇を目にして落ち込んでいると、ふと声がかかった。

 この時代のヤナギだ。無事にボールの力で時間のはざまへの突入に成功したのだろう。

 

「今の映像が、あなたがこれほどの悪事を働いた理由?」

「そうだ。私は伝説のポケモンの力によって時代をさかのぼる。二匹のラプラスの元へと戻り、このヒョウガを孤独から救うのだ!」

 

 そう言うヤナギが持つモンスターボールにはラプラスが入っていた。

 先ほどの映像の直後、ヤナギは二匹のラプラスの子供であるヒョウガを孵したのだ。

 両親を自分の不注意で失ってしまった事への贖罪。それを達成するために今までやってきたのだと彼は言った。

 

「もう願いの成就は目前だ。誰にも邪魔はさせん!」

 

 ヤナギが指先をサツキへと向ける。

 すると四枚の氷の壁が浮かび上がり、サツキを包囲した。

 

「また氷の壁!?」

「かつて伝説のポケモンも封じた封印だ! どうやって“時間のはざま”へ入ってきたのかは知らんが無駄な足掻きだ! ここでは日差しを強める事もできまい! ここで私の氷に挟まれ、空間を彷徨い続けるがいい!」

 

 この特殊な空間では天候を操る事も不可能。

 四枚の盾を同時に破る事もまた不可能だ。ヤナギの最後の攻撃がサツキを襲う。

 この間にヤナギは目的を達成しようと背を翻した。

 四方から迫る氷。サツキは瞬時に両手をボールに伸ばし、ニドクインとメタグロスを繰り出した。

 

「ニドクイン、“かわらわり”! メタグロス“コメットパンチ”!」

 

 ニドクインは左から迫る氷に、メタグロスは右から迫る氷にそれぞれ技を放つ。

 さすが仮面の男の切り札。そう簡単には破れずに力が拮抗する。だが二匹も負けていない。徐々に押されはしたものの、最後まで腕を振り切り、壁を粉砕した。

 ただしまだ二枚の壁が残っている。

 前後からの壁が彼女たちを襲う。

両腕両足を伸ばして圧迫されないようにと力を篭めた。だが氷の圧力は強く、体が悲鳴を上げている。

 

「くっ。こんな、所で!」

 

 メタグロスやニドクインでも状態を維持するのがやっとだった。

 二匹の力だけでは足りない。サツキは判断すると右手だけを壁の支えに残し、左手を腰のボールへと伸ばす。

 

「ギャロップ、“かえんぐるま”!」

 

 出てきたのはギャロップ。空中に浮かぶと、体に炎を纏って氷に突撃する。

 二匹の力とギャロップの炎。これでようやく力が拮抗し、どうにか壁が打ち砕くことに成功した。

 

「ハァッ! ——よしっ、まだ動ける! 行くわよ!」

 

 今のでサツキは大きな負担を負ったものの、ヤナギを放ってはおけずすぐに駆け出した。

 距離感が把握できない空間だったが意外とヤナギは近くにいた為、簡単に発見できた。

 

「ほう。まだ追って来たか」

「ヤナギ!」

「まあいい。見るといい。あれが私の宿願だ」

 

 そう言ってヤナギは宙を指さす。

 そこは先ほどのように歪にゆがんだ空間だった。

 まるで何かが今から現れようとしているような不思議な感覚を覚える。

 そしてその通り、突如ポケモンが姿を現した。

 

「これが、伝説のポケモン!?」

「そう、ときわたりポケモンセレビィだ!」

 

 言うやヤナギがボールを投じる。

 ただのモンスターボールではない。セレビィを捕獲する為だけに作った専用のボール、時間を捕らえるボールだ。“にじいろのはね”と“ぎんいろのはね”、伝説のポケモンの羽から編んだこのボールはセレビィであろうとも確実に手に入れる事が出来る。

 

「まずい!」

 

 ヤナギの目的に気づいたサツキがスターミーに指示を出そうとした。

 ただ少し遅かった。今からスターミーがボールから出現し、エスパーの力を篭め、モンスターボールの動きを止めるまでに捕獲は完了してしまう。

 もうヤナギがセレビィを手にする事は確実なものとなっていた。

 

「……えっ?」

「なっ!?」

 

 そう、本来ならば。

 だがセレビィは一度はボールに収まったものの、すぐにボールから飛び出してしまい、そしてまたどこかへと転移してしまった。

 

「ばっ、馬鹿な!? 何故だ!? 何故? 時間を捕らえるボールがあればセレビィを手にする事が出来るはずなのに、何故!?」

 

 理解できるはずもなく、ヤナギが頭を抱え込んで一心不乱に叫ぶ。

 この時の為に今まであらゆるものを犠牲にしてきたのだ。

 幼い子供たちを浚い、ロケット団員を吸収し、野生のポケモン達を操り、同業者達を欺き、伝説のポケモンを捕らえ、多くの人々を混乱と絶望に陥れた。

 これだけの悪行を重ねてでも叶えたい願いだったのだ。そんな願いが目前で裏切られ、ヤナギは結果を理解できずに怒りを放ち続ける。

 

「まさか。あのセレビィは」

 

 一方、サツキは一つだけ心当たりにたどり着いた。

 確実に手にするボールで捕獲が出来なかったのならば。その理由はおそらく。

 

「——貴様! 貴様、何かを知っているのか!? ……うっ、ぐぅっ!?」

 

 サツキに問い詰めようと手を伸ばすヤナギ。

 だが突如彼は胸元を抑えつけ、苦しみにもがき始めた。

 この時間のはざまは特殊な空間だ。何の準備もなしに飛び込めば、時間の圧力によって人もポケモンも押しつぶされるだろう。

 伝説のポケモンの加護が宿る“にじいろのはね”と“ぎんいろのはね”がなければ。

 ヤナギもその二枚の羽から合成したボールを手にしていたからこそ影響を受けなかったのだ。その加護を失った事で、ヤナギの体には大きな負担がのしかかる。

 

「くっ。まだだ。こうなれば、もう一度ホウオウとルギアから羽を。今度こそ、我がポケモン達を……」

 

 諦めきれず、再び願いを叶えようともがくヤナギ。

 

「……くだらない」

 

 そんな敵を、サツキは冷たい声色で断じた。

 

「なん、だと……?」

「くだらないと言ったのよ! 多くの人を操って、傷つけて。その心を弄んで! 未来ある子供の命を踏みにじってまで! それでも取り返そうとした過去なんて、くだらないと言ったのよ!」 

「き、貴様!」

 

 お互いがお互いへの殺意をむき出しにする。

 どちらも相手を許す事が出来ない。そうでなくてもこの極限の場面だ。もはや相手の命を気遣って戦う事など出来そうにない。

 

「どけ! 私は未来を取り戻す!」

「させない! こんなやり方で人を傷つけた貴方を、これ以上好きにはさせない!」

 

 ヤナギは本気になった。

 全身に纏った氷を再び作り出す。さらにデリバードやウリムー、ラプラスにジュゴンなど今まで控えていたポケモン全てを繰り出した。

 負けじとサツキも手持ちポケモン全員をボールから出現させた。

 最後の全面衝突。激しい戦いの幕が切って落とされた。

 

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