長期出張の準備や出張先の多忙さに追われて執筆する暇がなく、やっと少し解放されたので更新することが出来ました。
藤川SIDE
清々しい朝で心地良い太陽光を浴びながら支度をしつつ、携帯にインストールしているAI『Winter`s Light』通称、『アケミ』が収集した情報を良い感じに読み上げているものを聞き、昨晩に使用した拳銃を手入れしていた。
『まず、悪いニュースを・・・表面的な学園内の情勢は文句なし。用務員寮は
爆薬マーカー*1を配合していないセムテックスをわざわざ使用しているから爆薬自体の探知はほぼ不可能に近いため、爆薬による爆発であると辿り着いたとしても爆薬を探知できないから証明をすることができない。
当時のチェコスロバキア共和国*2で開発された高性能プラスチック爆弾で元々は建造物爆破という商業用途で軍事利用もされていたが、テロリストが利用したことで有名になり、「テロリストのC-4」という別名がある。
東側の国々へ輸出され、入手が容易かつ探知が極めて難しく少量で大きな破壊力を得られるという厄介な性質を持っており、テロリストに愛用されたが9.11を契機に輸出は激減し、国内利用分の10トンのみに留まっているだけでなく、国際的な圧力によって爆弾の探知および検知がようにできるように爆薬マーカーとしてニトログリセリンが配合されているため、昨夜使用したのは表的には存在しえない代物だが、成分さえ分かれば作ることもでき、仮に爆弾を特定できたとしてもすでに偽装工作できるだけの時間は稼いでいる。
そして、監視の目が大幅に減った空白地帯という大事な要素が次に来る一人を守るために必要だ。
『クラス代表決定戦終了後にフランスの生娘とドイツの少佐が転校する予定だけど、前に言った通り地味に厄介な案件とはいえ筋書きに沿えば基本的に問題ない。しかし、フランスの工作員が相次いで入国しており、既に潜伏中のものは一部は摘んだが、相手もそう簡単には尻尾を出さないから要注意、油断は出来ない。ドイツの件も詳細をかち割るのに時間を要している』
「だろうな。向こうも案山子ではないからな」
想定される状況に対して必要な物資と人員を用意しているが、後片付けが面倒くさいことになることは容易に予想できるほどの大事になるのはほぼ確定していることだろう。
『「ニールは米海軍からの追跡を逃れることに成功。大まかな性能は露見してしまっているが、おおよそ想定内である。また、どうやら米原潜の救助もしたようで「ベイツ家」のご子息が総出で出撃した模様』
ベイツ家といえば、アメリカ合衆国を最初期から支え、あの国を体現をしている一族で現当主は確か米海軍で原潜の艦長か司令官で次期大統領候補と称されるほどの人物でさらに多様性も示すために次男がベネズエラの孤児で養子ながら努力と才能で応え、長女は最年少で昇任をし続けている女傑として有名だ。
『良いニュースは近々ベイツ家の長女との会談が予定されており、詳細はこれから決定される。1週間以内と見込んでいる』
軽く心積もりはしていたが、随分と早まったようで少し驚くが私に会う価値をどこで見出しているのだろうな・・・会談内容もどんなものかが非常に気になるところではあるものの、決まってから考えれば良いことであるが間違いなく襲撃されることだけは目に見えている。
投影された長女に関して『アケミ』がまとめた文書に目を通し、おおよその人物像を推測した上で目的を考えてみたが少なくとも政治的な要素は少ないと思えるが、会ってみないと分からないというのが正直なところだ。
『ベイツ家の長女「エイミー・ベイツ中佐」は筋金入りの反IS派、ベイツ家の前当主が冤罪によって失脚したことに対してただならぬ恨みを抱えている。そして、重度のブラコンでもあることも噂されている。この前の東京湾で魚雷を差し向けた艦の副艦長を務め、その当時の艦長の錯乱を迅速に拘束した上で艦を臨時した手腕が評価された中佐に昇任したばかりで「ニール」捕獲作戦で囮を担ったと思われる』
数年前のあの収賄および性暴行罪だったか・・・誰がどう見ても冤罪だったのに有罪になってしまったことで女尊男卑という現実を見せつけ、判決が下った直後に自殺したという胸糞な大事件だったな。
『超良いニュースとして潜水型のISをニールと米原潜が共同で撃破し、米海軍が回収および捕縛した。そして、米軍および
随分と良いニュースで向こうも潜水艦が大きな脅威として捉えているのだろうけど、そもそも宇宙へのプラットフォームが大気圏内の戦闘用機動プラットフォームとしてロールアウトされたものなのに潜水艦に撃墜されたからとノウハウがない環境へと足を突っ込んで性能が全く発揮できないまま、我々の餌食になったのだろう。
潜水艦はそもそも各国が冷戦時代ほどではないにせよ、今も莫大なリソースを注ぎ込んでいる分野でその価値はISが優位になった現在でも脅威度は健在であり、国家の安全保障に貢献している数少ない非IS兵器である。
なぜなら、潜水中においてはISは有効な攻撃および探知の手段を有していない、、、正確には眼中にないなかったのだが相模湾で撃墜したことで目の敵にされたが優位性が逆転すのはまだ先のことだろうけど、そんな事態がくる
内通者は自分も誰かは大まか分かってしまうあたり、それなりに恨みを買っているのだろうなと思いながら政治的には追放するつもりではあったからちょうど良い機会だ。
(時代遅れで現場を顧みない将官には引退してもらう・・・新任時代の恨みをここでお返しする)
『今日の予定としてはクラス代表決定戦だけど、ほぼほぼファーストボーイが負けるだろうね・・・大きくシールドバリアーを削る一度っきりのチャンスを有効活用出来れば良いがそれも不発に終わるでしょう』
中々に辛辣な評価ではあるけど、それは本人の飛行時間、アリーナの使用歴や訓練内容を見てしまうとむしろ彼女の評価はこれでも甘い部類に入ると断言できてしまうほどには悲惨なものであると言わざるを得ない。彼の直感的な飲み込み速度は完璧ではないにせよ少し驚異的なもので奴と対戦する際には脅威になるかもしれないが、それが発動するには些かロースピードか条件が劇的なものであるというピーキーなものでISも本人の気質にそっくりだ。
「超短期決戦の自壊癖があるISは欠陥品でしかない」
『そういう風にしているのがあのロクデナシな訳だけど、とことん人をモルモットとしか見てないね。口では親友を大事にしている素振りは見せているが、今に始まったことではない』
「実際、あれは
未完成ゆえに放置された欠陥を抱えた
銃の手入れを終えて手についた汚れをしっかりと落とし、しっかりとプレスされた作業服に着替えて登校の準備を終えたところでアケミに登校開始時間になったことを告げられて営業用の顔に切り替え、玄関へと向かった。
(玄関の外にはおそらくセシリアお嬢様が待ち伏せしているだろう・・・気配の消し方はまだ粗があるものの随分と成長したものだ)
あの時は必要なものとして教えたが、子供に殺しに関係する技術を教えてそれを上手く使えているという事実は決して喜べるものではないけど、私の
「おはよう、セシリアお嬢様。私を待たなくてもよかっただろうに」
「いいえ、私が好きでやっていることですわ・・・昨日の決闘で見せきれなかった成長、いえ、私の
確かにクラスのホームルームが終わり次第、移動する関係で慌ただしい朝で誘うとすれば今くらいしかないだろう・・・自分の生活リズムを鑑みると尚更ベストタイミングだ。
そして、彼女のISはまもなく到着する改修キットでISから自分と同じようにISの皮をかぶった何かに改造されることが決まっており、昨日は彼女が決闘でISでの本来の戦い方を無視した戦い方で私が彼女に叩きこんだ技術の一部フル活用をした故に今日はISとして最期の舞台を見せたいのだろう。
彼女を当主にした決定的なもので思い入れも深い機体で命令とはいえ、改修キットのことを良く受け入れたなと思ったが、少し盲信している部分がうっすら出ていることに関しては矯正しなければならないなと心の中で密かに誓った。
「盲信はないですわ」
(なんて?)
明美もそうだけど心の内側を簡単に読んでくるだろう・・・職業上、ポーカーフェイスはしっかりとしているはずだが、エスパーは本当に実在しているというのか?
「女の勘」
女の勘に関して研究すれば尋問にも応用できそうだと阿保っぽいことを考えながら食堂に向かい、いつもの質素な朝食を頼んで席について食べると同時に周囲の会話に盗み聞きしつつセシリアお嬢様との会話も疎かには・・・物凄く気を使ってもらっている気もするが、短いながら濃い付き合いは伊達ではない。
流石に深夜に起きた爆発を知らずに寝た者はほとんどいないようでそれに対して不安が多かったが生徒として潜入している工作員は少し情報を貰っているからか、やはり本当にただの爆発なのかという疑念を抱いているものの自分が標的になるかもしれないという恐怖は表情に少し漏れ出ている。
セシリアお嬢様には当然バレているが、彼女はほぼこちら側だから問題はない。
「仕事熱心なのは結構だけれど、少しばかり私にそれを傾けてもよろしいのでは?」
ご機嫌が斜めな件に関しては自分で切り抜ける必要があるのはご愛嬌というところで彼女も朝食を終えて教室に向かう途中は彼女と放課後の自主練習を見るという約束で手を打ったところで教室で割り当てられた席に座ってホームルームを迎えた。
爽やかな天気の朝には相応しくないほどにガス爆発の事故で落ち着きのないクラスに副担任である山田先生からガス爆発に関しての情報と臨時のガス管点検の旨が通達されたところで担任の織斑先生からガス爆発に対して過剰な心配をするなという注意のあと、すぐにクラス代表決定戦を行うアリーナへの移動を促される。
セシリアお嬢様は速攻で織斑先生に私をピットに入れる許可を取ってすぐに移動し、自分も彼女の後を追うように早歩きで向かっているが、顔には少し焦りと勝利ではない部分への不安が顔に滲み出ていた。
朝に成長したところを見せたいとは言ったものの偏向射撃を未だに成功できていないことへの焦燥感と相手が近接特化という部分的な情報を得てしまった故に苦手な近接戦闘への対処に対する不安が本番が近づくにつれて大きくなていいるのだろうなと推測しつつ、ちゃんと年相応な少女なという実感に対する安堵でどう発破をかけるかを一瞬で考えた。
ピットに入る前で彼女が着替え終えるの待っていいる間にファーストボーイのISに関する情報と自分が類似というかおそらく大元になっている機体であろう『白騎士』のデータから見いだせる弱点および彼女の戦い方に最適な対処方法をまとめたものの、欲しない可能性はある。
フェアな闘いを好む・・・ハンデも驕りも勝負を台無しにすることを非常に嫌うからこそ、自分のISの公開されている範疇の情報しか貰わないだろうけど、情報収集は仕事の癖でついついやってしまう。
父を嫌いながら好きでいたいという複雑な気持ちを抱えて手のかかる子供らしい彼女が大人と社会の汚さを直視したのにここまでへし折れずに成長したことを思えば娘みたいに思えて・・・これ以上は止そうと思いとどまって精神抑制剤を嚙み砕いて飲み込んだところでピットに入る許可をもらった。
試合開始までのわずかな時間だが、彼女への激励という名のアドバイスをした。
「焦る必要はない・・・君自身がもっとも分かっていることではあるけど、君のISの世代は特にイメージ力に大きく左右される」
イメージ・インターフェイスはISの直感的な操作による性能の向上および特殊兵装の運用を目的として採用され、これを搭載しているISは第3世代として定義されているのだが、このシステムは燃費の悪さ、つまり、戦闘継続能力を前世代と比較した場合に劣っており、今のところ試験機の域からは出れていないという事実がそれを物語っている。
「偏向射撃、字面では難しいように感じるが嚙み砕いて言えば発射したレーザービームを自分の意思でに自由に曲げて
イメージは妄想や空想に似ているようで似ていないが、根本にあるのはその本人が経験したことによってはじめて構成することが出来るもので無から1を生み出すことは困難だが、1から10や100にすることは簡単なことだ。
無論、ありえない現象も無から1にする行為に近いことではあるのだが、今回に関して彼女は少し難しく考えすぎている部分があるからこそ今日まで偏向射撃が出来なかった。
「レーザーポインターを鏡に当てると反射することがあっただろう。あれと同じことだよ。難しく考えなくていい。それでもやりにくいならば跳弾も手だ」
なにもビームやレーザーだけに限る必要はなく、直進性のある物体を曲げるものとして跳弾もあるのだ。
「ぶっつけ本番で試すことにはなるけど、君にはそれができると信じている」
「ええ、そうね・・・ありがとう」
少なくとも何かは掴めたような顔してISを装着し始め、整備科が最終チェックに入っていたが自分でも昨日ダメージは残っていないようで整備科のレベルが高いことが聞かずとも分かるのだが、学生ってなんだろうなとは思ってしまう。
「相手は少なくとも君のIS特性を知っているだろう。相手は近接型の・・・それ以上はいらんか?」
「ええ、相手の詳細は自分の目で看破してみたいもの」
戦闘狂の気質は少しばかり治すべきだろうと思いつつ、カタパルト射出で退避させられる前に一言を言うために近づいた。
「
怒られる前に退避するため小走りで彼女に背を向けて退避エリアへ向かい、扉に達したところで振り向くとそこにはサムズアップしている左手を少し掲げてすぐにスターライトmkⅢへと戻したところで扉が閉まった。
ピット内にあるアリーナを映したディスプレイが見えるところに行ったところで整備科の子に話しかけられたが、たぶん自分のISのことについてだろうなと画面を視野内におさめつつ、振り向くと技術者の卵らしい顔つきの子たちがうずうずしているのが分かる。
「藤川さんのISは何世代ですか?」
「あれを強いて定義するなら第2.5世代。第3世代のイメージ・インターフェイスの部分的な技術を第2世代に融合させたような形になっているからだ」
思いっきり大嘘だが、素直に言うわけにはいかないので適当なことを言って誤魔化すことに徹することにしたものの工学部出身で良かったなと思う。
技術者は気になる部分や疑問をとことん追求してくるが、その気持ちは共感せざるを得ないのは自分自身も技術者であるからだろう。
分野は違えれど、通ずる部分も多く大学生時代を思い出すものの、あれは自分にとってはいい思い出と最悪な思い出を抱き合わせたものだからすぐに頭から振り払ったところでセシリアお嬢様がファーストボーイに戦闘の意思を問うていた。
『あなたに闘う意思があるのかを確認したいですわ』
『ここまで来て、「ない」とは言わない。不本意ながら俺は戦う』
『ええ、分かりましたわ。ならば、本気でいきます』
ファーストボーイ、君はここまで来て運が悪いとしか言えんほどに可哀想とは思うが、彼女の本気は昨日は違うぞと心の中でお祈りすると試合開始のブザーがなると同時に速攻で直撃コースの牽制射撃の一発がスターライトmkⅢから放たれ、命中と同時にレーザービットを全て展開していた。
しかし、無防備になってしまうビットをここで展開してよかったのかと思ったが、それがどうやらビットの機動性を犠牲にすることで同時に操れる段階まで自力で漕ぎつけていたようだ。
ファーストボーイはレーザーの直撃を受けて無意識に顔を防御したが同時に高度も失ってほぼ地面まで落下しており、すでにシールドバリアーが2割削られている状況で目を一瞬なものの瞑ってしまっているが、それが不味かった。
もう既にビットからレーザービームが発射されており、目を開けた頃にはほぼ回避不能な段階まで迫ったところで身体を捩ったり、後進ブーストで対応したところで1発は完全回避、もう1発は左肩を掠ったが、残る2発は地面に着弾する寸前で両膝に向かって
偏向射撃が成功したことに驚きと喜びが垣間見えたが、すぐに追撃するために意識を切り替えてビットとスターライトmkⅢを僅かな時間差で撃ち続けることで弾幕を形成し、ファーストボーイが辛うじて回避しているものの掠っているレーザービームが多い中でなんとか武装を取り出したようだが、唯一の武装が刀とは事前に知っていても実際に見るとあまりにも異質な上にやはり欠陥で玄人仕様過ぎると驚くしかない。
太刀は近年の近接戦闘においては使われない武器であり、レンジが少し長い以外のメリットはないと触ったことある身としては個人的にそう思っている。
刃物を用いた近接戦闘において自分のセオリーでは相手が反撃できない若しくは受けないように接近し、取り回しの良いナイフで小さくかつ出来る範囲で連続的に切りつけるか地面に倒してから同じように連続で切りつける。
反撃を受けるおそれがある場合は相手から離れすぎない程度に離脱し、相手の反撃を受けないタイミングと姿勢になったところで再び接近した上で同じように切りつけて相手に出血を強いて痛みで動きを鈍化させ、いわゆる一撃必殺は初めから狙わない、否、狙えないから連続攻撃することになる。
近接戦闘が苦手ならば銃のような飛び道具で接近自体をさせないようにするしかないが、一般的な人間の反応速度ならば有効であるけど、ISというシステムによる補助がある場合はその限りではない。
しかし、基本的にライフル弾で約マッハ2、拳銃弾は遅くても秒速300mで銃口の向きで発射前ならともかく、発射された弾を避けるのは化け物だと断言できるほどには不可能なことでファーストボーイはなんとか接近しているが、当然セシリアお嬢様はそれを許すはずもなく弾幕を維持しながら距離を保っているものの猪突猛進的な進撃をする相手では近づかれるのは時間の問題でビットを墜とされると困るのは彼女になる。
ファーストボーイは流石に阿保ではないからビットを墜としてから接近を試みることにしたようで一機を墜としたが、それで彼女は焦らない。
なぜなら、ミサイルビットとはいえ予備があってシールドバリアーには影響しないから使い捨てことができる上に苦手にしても近接武器は存在しているからだ。
ファーストボーイは推理を口にしていたが、まあ答えるわけもなく・・・一応、レーザービームで応えてはあげているな。
初登場のISで戦闘に関して素人なファーストボーイが短時間でそこまで気がつくのは確かに驚異的な上に競技としての戦い方しか知らない彼女だったならば怖いだろうが、戦闘を知っている彼女相手には厳しい。
3機のレーザービットを彼女の周辺に座標固定する代わりにレーザービームの偏向で弾幕の維持とビットの損耗を抑えることに切り替え、なおさら接近を許さない環境を構築していた。
ただ、顔的にはこれで封殺できるとは思っていないようで近接武器をいつでも出せるようにし、ビットも盾運用に移行できる準備も抜かりない。
ファーストボーイも大分慣れてきたのか接近も差し迫ったもののになりつつある中でもレーザービームの偏向射撃の完成度も急速に高まっており、アンフェアな練度での試合の割には良く粘っててここで負けても無様なものではないと言える。
セシリアお嬢様もファーストボーイのISがかなりピーキーなものであると辿り着いたのか、アンフェアな戦いをしていることに対して嫌な顔を少ししていたが、ここで手を緩める方が侮辱になると考えてそのまま続行しファーストボーイが1機のビットを切って発生しているゼロコンマのラグにレーザービームを命中させたところでまさかの事実が判明することになる。
『まさかとは思いましたが、ファースト・シフトが終わってなかったですの・・・』
流石の俺も呆然としたというか、昨日は時間稼ぎというミッションは完了した上で向こうからも少し触れることができるとは聞いていたが、これは想定外だ。
ISコアの我儘にしてやられたと考えるがISはあまりにも重大な欠陥を抱えた兵器にして歪な存在である。
セシリアお嬢様は若干、ファーストボーイではなくそのISとそれを許した教師に対して不満を持っているのか目からハイライトが消え、一気に片を付けるべくミサイルビットを起動しながらレーザービームで動きを制限し始めていた。
ファーストボーイもこれ以上好き放題やられている前にレーザービームを避けながら急速接近を始め、寸前で発射されたミサイルの爆薬部分を切り捨てた上で攻撃範囲でワンオフ・アビリティーを発動したが不発に終わる。
『アケミ』が朝に言った通りの展開になったが、これほど酷いことを実感するとあのクソビッチがいかに最悪で大学生の時の自分の人を見る目のなさを痛感する。
ヴィクトーリアの微笑みをこんな形で望んだ覚えはないが、勝ったには勝ったもののセシリアお嬢様にとっては大いに不満の残る結果となるだろうから心の内は大荒れでピットに戻ってきた彼女の顔は表面上は普通に装っているけど決して良いとは言えなかった。
ISを解除し、足早に私のところまで来ると無言で抱き着いて胸にかおを押しつけて蹲るかのように胸中の不満を静かに吐き出し・・・いや、なんか気のせいとは思えない程荒い鼻息もあるがきっと奮闘で体力を使ったであろう青春のいたいけな少女を突き放すほど落ちぶれてはないからこのまま彼女が納得するまではこのままにしておこうとしても両腕は降伏を示すように上げておく。
決して触れるのが怖いとかではない。断じてな・・・女性の奇行について触れたら酷い目に遭うのは勘弁願いたい。
そういうのは明美だけで大満足だ。
さて、このままでいるのは風紀的には非常によろしくないので頑張って引き剝がす必要があるわけだが、なんか抱きついている腕に力が微妙に入っているせいか、全く思い通りにならず、困ったことになった。
そう思っていると入ってきた織斑先生が意地の悪い笑顔を浮かべており、山田先生はあわあわしていたことで余計に状況がややこしいになってきた・・・あっ、整備の子たちは最初からこの状況を見ているので問題ない(やけくそ)
「ほほう・・・」
「織斑先生、そういうお顔をできるんですね・・・あと、山田先生は些か初心すぎます。セシリアお嬢様、そろそろ離して頂けると助かる」
「・・・仕方ありませんわね」
とりあえず、一先ずなんとかなったが、明美への弁明が命懸けになりそうで勝利できるビジョンが思い浮かべない戦いの着地点を考えながら解放された身体を少し彼女から離れた。
彼女と恋仲ではないし、自分は男鰥だから社会的通念上は一定の距離を取るのが正解なのに間違っていると私を非難するような視線を向けてくるのは少しやめて欲しい、、、明美の機嫌が斜めどころか断崖絶壁になってしまうのだ。
ややこしい状況が終わったところで山田先生がセシリアお嬢様に要件があるようで話かけ始めた。
「セシリアさん、イギリスからISのパッケージのお話は聞いてますか?」
「パッケージですか?改修キットではありませんか?」
少し先になると思っていたところで携帯のバイブレーションが鳴り、ひっそり確認するとどうやらご機嫌斜めのサプライズだったようで私の負け戦はどうやら始まる前に終わったようだ。
「改修キット?」
「ええ、本国からはそう聞いております。我が国ととある方が共同開発された最初のキットで傑作になるとも」
今日も学園は大きく揺れることにだろうという他人事な感想を浮かべながら教師2人はその言葉の根拠となる部分が気になるようで少し勿体ぶって聞いた。
「つかぬことを聞くがそれは何故だ、そして誰だ?」
「正真正銘の共同開発者の一人『ショウ・フジカワ』が手掛けた代物ですから」
音が消えたかのように私と彼女を除いてこの場にいた全員が息を呑んでいた。
「本当か?」
「ええ、本国からまもなく発表がありますから」
携帯が再び揺れたかと思えば明美からメッセージが来ており、そこにはある意味私にとっては彼女からの意趣返しとも受け取れる作戦開始の詩文が綴られていた。
『春雨や 穴蔵の隅 影ひとつ』
その第一段階が今回のイギリスとの連携であり、後々のプランのために必要な下準備として外すことはできない大事な要素である。
(くそビッチ、貴様が我々の世界を壊した・・・だから、貴様の世界を消してやる)
周りの生徒が大急ぎで携帯を取り出し、私も見習うようにスマホを手にとって海外の動画配信サイトのアプリを開き、お知らせ欄の一発に表示されたポップアップに「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国のISに関する発表」というタイトルが出ており、それを押して動画を見るとちょうど始まったところだった。
『我が国は本日、第三世代のISである「ブルーティアーズ」の改修キットをロールアウトし、それに関する内容を発表する。詳細の説明についてはIS共同開発者の一人である「ショウ・フジカワ」博士より説明して頂きます』
『【紹介を頂いたIS共同開発者の一人、ショウ・フジカワ博士です。諸事情により遠隔での説明で失礼いたします。今回の改修キットは次世代型プロジェクトの一環である。改修キットは第三世代IS「ブルーティアーズ」の大規模改修を目標にBT兵器の運用をより容易かつ実用的なものへと進化させるものでこれまでのウィークポイントとも言える部分に焦点を当てたものである。さらに蛇足ながら第三世代で指摘されていた事項についても改善に着手しているが、その詳細についてはイギリス政府との契約によりお答えすることが出来ません。また、独占契約を締結しているのでお問い合わせに関してはすべてイギリス政府を通してください。以上で私からの改修キットに関する説明は以上となります』
この1分の文章だけでセシリアお嬢様の笑みは少しばかり深まり、私は薄っぺらい驚きの顔を浮かべながら一先ずの動きが順調に動いていることを喜んだ。
アケミは今頃大忙しなことだろうということははじめから分かり切っており、計画のうちであるというのはくそビッチがハッキングによる妨害や研究成果の奪取の防止、さらに小賢しく何かしらの発表するなどの対抗手段を全て無効化することで我々が作った既成事実の土台をしっかりと固めることで第二段階への布石を打つ。
さらに奴に暇を与えないために奴が潜んでいる秘密拠点をリークし、身柄を求めている連中に追わせる・・・連中は非常に便利で助かるし、そもそも指名手配犯のようなものだから問題ない。
『・・・さて、私、ショウ・フジカワはISが主任開発者である篠ノ之束の暴走によって私と「アケミ・フユカワ」の研究結果を無断で盗用しただけでなく、本来の目的から大きく逸脱した運用がされている現状が蔓延していることは非常に遺憾であり、その過程で発生した被害について非常に心が痛く、申し訳ない。ここでこの場を借りて謝罪をします。主任開発者の暴走を止めれず、多大なる被害を生み出したことを深くお詫び申し上げます』
「アケミ」が代行でプログラムしており、問題はないので本省から電話があるだろうからという言い分けで自室に戻るとしよう。
「織斑先生、海幕から・・・私の職場から電話がある可能性が高いので私は一足先に失礼いたします」
強引だが、英国の発表内容の方が衝撃的だからすんなり帰ることに成功し、セシリアお嬢様も同じように一緒に抜けようとしたが、どうやら改修キットの受け取りに向かわないといけないようで別れたが、本人が書類にサインした上で改修キットと適用予定の機体の護衛駐留許可もあるから時間はかかるはずだ。
部屋に戻ると特殊携帯端末で知り合いへと電話をかけた。
【通信暗号化•••認証•••接続確認•••】
「はい、藤川予備1佐です•••お久しぶりです、情本部長、いえ、分析官主任殿ですね」
『よせ、幹候同期の仲だろうに、、、小蠅ホイホイは上々だと聞いている。良くやった。「オペレーション•ミーシャ」は予定通りに実施する。貴官は抱えている案件を処理せよ』
「承知した」
『こっちで勘付いたやつはいないから安心してくれ・・・同期。いや、君の悪友として聞きたいがろくでもない結末を作る気だろ?変えられんか?』
「ははは、君には隠せんか・・・」
『むしろ、考えれば分かるだろうに・・・で、答えは?』
「無理としか言えん・・・すまん」
『だろうな・・・あと、抜かりないとは思うが準備しておけ』
「分かった。ではな・・・今度なにかの外出で飲みに行こう」
『お前の奢りだぞ。じゃあな』ブツリッ
(ああ、俺の答えはあの日から決まっている・・・止まれんよ)
世界はまだまだ踊るだろう・・・
否、最後まで私たちの手の上で踊ってもらうぞ
更識楯無
IS学園生徒会室
イギリスの電撃発表からすぐに各所からの問い合わせが殺到し、通常業務がままならず、一息をつく間も無く『ショウ•フジカワ』についての調査が追加されたことになり、藤川翔の件を保留せざを得ない。
ショウ•フジカワと藤川翔が同一人物だと一瞬考えたものの、本人がここにいたことが確実かつ未検証の情報が多い上にプロファイリングを重ねるごとに段々と分からなくなっていき、実家の舵取りを間違えられない案件と学業、そして妹の心配で私のリソースが容赦なく食い潰されていく。
休む暇もなく私は情報と負荷の津波に私は飲まれて続けて仕事の質を落としかねない所まで来ていた。
実家の部下たちも総動員状態で余裕もない状況になっており、タイミングが偶然とはいえ彼がこの学園に入学してから何かしらの出来事が起きて、それも悪い意味であり、彼が特異点であることは間違いないはずなのに調べても出てくる情報が少なくない。
しかし、何とか信憑性が僅かながらある情報も掴めて進展がないわけではなく、学園長への報告書をまとめているところなわけだけど、これほどの人物が露見されずに過ごせたのかが不思議でしかない。
ISの発明者である篠ノ之束と同時期に在学し、親交があるだけでなく、ISの研究に加わっていた可能性が大きく、研究者として約束されたも同然の次席卒業したのに篠ノ之束との親交が途絶えたに留まらず、約束されたキャリアをかなぐり捨てて自衛隊に入隊して実質的に反IS派に転じている。
その行動の根本的な出来事が篠ノ之束が彼が開発した超小型原子炉の技術を無断で利用した。そして、今日のイギリスの発表の情報を照らし合わせるとISが宇宙へのプラットフォームから軍用兵器になってしまったことに対して非常に憤っているとすれば納得は出来なくはない。
ただ、些か理由としては今ひとつ弱いと私の勘が感じてしまってて、そこに大きな引っ掛かりがある。
もちろん、研究者として研究成果を盗まれたことに対する怒りは私が想像出来ないものであるにせよ、決して小さいではないことは理解できるのだけど、まだ何かが残っており、その重要なピースに関わってくるのが、彼の婚約者である『冬川明美』であり、同じく主席卒業で同じ者同士で足取りも同様だった。
しかし、彼女は自衛隊に入隊し、優秀な成績を残しているのに行方だけでなく、生死すら不明なものになっており、調査を難航させている大きな阻害要素でもある。
彼女は『生体AI』および『クローン』に関する研究の第一人者だったが、クローンに関する研究を本人が倫理的な検証をしている最中に篠ノ之束が無断で使用し、技術が漏洩したことで研究者としての道を自ら閉したという記録が残っている。
国際IS委員会には仮でも良いからとこの内容を報告したものの、あり得ないと突っぱねられて、再度の調査を命じられたが、更識としてはこれ以外の信憑性がある事実が見つからない現状で頭が痛い。
国際IS委員会が彼が発見されてから信用できない動きを次々と起こしており、私自身もその動きには警戒しているけど、それがまるで手遅れな感覚に陥っており、それが不安の大部分を占めていている。
(私は何を見落としている、、、信憑性のない、否、まさか、、、国際IS委員会が情報を隠蔽している?)
私は急いでパソコンで白騎士事件、藤川翔と冬川明美が入隊した以降の情報を引っ張り出して手短な雑用紙で3つの関係の接点と過去にしたが拒否された資料を照らし合わせた。
白騎士事件の当日、藤川翔は野島崎南方訓練区域、冬川明美は横須賀基地に停泊中の艦艇内で勤務し。同日に二人の両親は不審死として報告されている、、、その日は異様に不審死が多く、死因等の詳細は警視庁に問い合わせたものの一切の回答は得られなかっただけでなく、その当日に行われていた工事の許可に関するものすらなかった。
確か通信インフラが原因不明の遮断を受けており、今も詳細は分かっておらず、白騎士事件の写真も多くはなく、その日はなぜか情報が大きく欠落していた。
ここでふと嫌なものが背中を伝って、まるで暗闇の底を覗こうとしていると感じてしまい、脳内が混乱したが、すぐにあの日勤務していた家の者を調べて後日呼び出して聞き出すことを連絡したところでデスクに置いていたスマホが着信を知らせた。
相手先が実家で暗部を取り仕切っている長で知らされたことが寝耳に水を私の脳は瞬時に理解を拒んでしまうほどのものだった。
『防衛省と内調に出向している者たちが部外への秘密の漏洩および不正閲覧したとして拘束され、その説明を求められています。どういたしましょうか?』
(今日は混乱という厄災から逃れることが許されないようね)
大急ぎで防衛省へと向かう準備をしたが、この日を境に全てが変わってしまうことを私は知る由がなかった。
次回話は何とかすぐにかけるようにします。
長期出張先が妙に厳しいところで執筆ペースが非常に不安定になりますが、どうかよろしくお願いします。