遺恨のIS   作:アルファデッド

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いつも誤字報告して頂いている方、本当にありがとうございます。

こんな作者ですが、よろしくお願いします。


危ない夜

藤川SIDE

 

電話の後、諸々の下準備をしていたほど良い時間になったところで携帯にはセシリアお嬢様からメッセージを受信した通知がされており、どうやら明日の夕方にパーティーをするらしく私は一応呼ばれているらしい。

 

手帳をカバンから取り出して予定を確認すると実習がある以外は特段大きな予定はないので了承の旨を送って、今着ている作業服と常装を軽くプレスしてから寝ることにしてアイロンとアイロン台を収納から引っ張り出してセットし、温まる間にポケットを空にした。

 

作業服とは言ってはいるけど、いわゆる濃紺の幹部作業服ではなくデジタル迷彩の方で陸上戦闘服とも言う、、、

 

色合い的にはどうあっても陸戦を想定してないし、海に落ちれば見つけにくいという苦情というか、抗議がそれなりにあって実際アメリカ海軍では既に緑色デジタルへ段階的に移行している始末だが、変わる様子はなさそうだ。

 

変なアメリカ追従の癖が悪い方向に働いてしまったのだろうなと思いつつも入隊した時には既にこのタイプだったからあまり気にしたことはない。

 

陸上戦闘服と言い張るのだけは本当にやめてほしいと心の中で苦笑いしつつもあの地獄を乗り越えた長い付き合いもあるから変わることがあればその時は少しばかりの寂しさはきっと覚えるだろう。

 

まあ、制服を脱いでダーティーワークやブラックオプスに従事していた期間がそれなりにあるから深い愛着はない。

 

(いや、この世界に対して何も感じることはない)

 

今も目の前は灰色で何も感じれないほどにあの日から私は壊れてしまったのだから。

 

アイロンが温まったところでシワを伸ばして線をつけるべきところにはしっかりと入れたところで常装もやっていくわけではあるが、ここでスプレータイプの洗濯糊の登場だ。

 

もちろん、当て布も忘れることがないようにしましょう。

 

常装の方は線が消えたり、シワがつくがすぐにつくことが許されないので念入りに使う必要がある、、、作業服はどのみち文字の通り作業用だからつける意味合いは薄く、点検用には軽く使うくらいで私は好まない。

 

脳内の無駄話を終えて丁寧にハンガーに吊るして歯を磨きつつ、思いついたアイデアを忘れないように雑用紙かメモ用紙に殴り書きし、寝ようとしたところでサプリや薬を飲んで寝たが、今日も夢見は良くはないだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

ヨーロッパ派遣でのセシリアお嬢様の護衛任務を終えて一息ついたところで新たな命令を受けてコソボへと足を入れることになり、大規模な誘拐をしている犯罪組織の調査へと支援で通常ならば我々は一切関係のない事柄であった。

 

しかし、ISが関与しているとなれば話は大きく変わる。

 

犯罪組織が児童を中心に誘拐しており、ISに関する研究している研究所へ運搬されているところまでは突き止めることは出来たが、立ち入り捜査を行える証拠もなければ複数の国家や企業が支援しているに留まらず、国際IS委員会が秘密裏に関係を持っているせいで迂闊に手を出せない。

 

下手は捜査をすると関与している国家を転覆させかねない混乱を招くスキャンダルになるリスクを抱えていたことからEUとNATOは特殊部隊30人の一個小隊で隠密な調査し、事故に見せかけて破壊する作戦が立案され実行を決定した。

 

事前調査で中火器を装備した警備隊(傭兵)が40人の小隊が2個、強固な警報システムを有し、発報すれば近隣の警察が即時出動する厳重さで内部構造は辛うじて入手できた古いブループリントが記載している部分のみで現在の増築部分等の詳細は一切不明のままだ。

 

今作戦がブラックオプスということもあっていかなる目撃者は殺害する規定が設けられ、司令部の苦渋の決断でリソースもなく、任務の特殊性から誘拐された児童も例外ではなかった。

 

現場で何が起きるか分からないため、NBC対応のフル装備でその関係で弾薬は通常よりも少ない量で突入することになり、作戦の決行は深夜でドローンによる偵察•観測支援の下で入口の警備員と近傍の警備を排除し、施設内に侵入したのちに警備本部を無力化、ボディカメラ等に記録で調査を開始したが、見つけたものはおよそ人間の所業とは思えなかった。

 

児童を用いた人体実験でクローンの制作からウィルスによる強化人間の製造といったもので実験に耐えられなかったものは雑に焼却処分されており、人の尊厳という言葉が見当たらず、実験という名の体裁でストレス発散をしていると言われた方が納得出来るものだった。

 

男児の末路は悲惨なもので女児のための予備部品扱いまたは実験のモルモットとして扱われ、女児もベクトルが違えど過酷なテストで壊されていた。

 

特にウィルス等を用いたアプローチの強化人間の製造実験室があまりにも凄惨な現場で血の匂いが防護マスクをしていても分かる程で子供が自分を殺せと懇願する姿や壊死した身体で動こうとする姿が今でも私を苦しめている。

 

罪悪感と共に彼らが安らかな眠りを出来るように許しの言葉を言いながら撃っていたが、引き金を引くたびに心が壊れていく感覚がしていた。

 

目撃者を消すという目的から地獄からの解放へと変わり、研究者は誰一人として楽に死なせることはなかった。

 

軍人としては本来、道を踏み外している行為だが、この時の司令部はあくまでも通信機及び記録機材の故障でそんな事実はないという風に黙認するほどには人としての怒りが職業倫理を超越してしまっていた。

 

(恨んでくれた方がまだ楽だ、、、なんで子供が安らかな顔で死ねるんだ、、、)

 

どこまで人は愚かになれるのだろうか

 

科学の自由とは倫理があってのことではないのか

 

なぜ、こんなことが出来るのか

 

少なくとも罪悪感とか何かしらの感情はなかったのかと問い掛けたい。

 

彼女はクローン研究してからずっと倫理的な罪悪感を抱えながら生きているというのに、目の前の惨状を出来るやつらはなんで平気な顔を出来る。

 

私の心は完全に壊れ、世界に碌でもない結末を与えようと決意した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、あの日の夢か、、、

 

まだ薄く暗い空が残っていて時計が5時半を指したところで目が覚め、汗と涙で濡れた身体を椅子に掛けていた手拭いで拭き取ってからストレッチと軽い筋トレを済ませて冷水に近い温度の水を浴びた。

 

意識を完全にクリアなものとしてから身体を拭いてアケミが寝ている間に起きた出来事や情報を聞きながら着替えて入学前に発送した荷物が届いて盗聴器とかも全部除去済みだ。

 

その中に詰めていたプロテインを取り出し、買ってきた牛乳と混ぜて飲んで朝食を済ませて程良い時間になるまでアケミとの会話を楽しんで学校へと向かった。

 

さて、今日も我が社の人間とブツの交換をして早めに教室に着いて携帯で発表された原子力工学の最新論文を調べて読みつつ、今日の実習内容がどんなものを軽く想定し、頭の中で専用機持ちが教導する可能性を考えてLP(レッスンプラン)を作成し、どういう風に教えるのかを詰めているとセシリアお嬢様が入ってきて、世間話や昨日のことについて話してチャイムが鳴るまで続いた。

 

朝のホームルームが終わったところですぐに実習が始まるので男性用として用意されている割と遠い部屋までダッシュで走ってまるで戦闘配置についたかのように速攻で体育服装に着替えて少しばかりの余裕を残してさらにストレッチをすることにした。

 

いつもランニングに使っているものだが、シャツだけは濃紺のドライシャツで幹候紳士の会というネタ全開のシャツだが、別に反社会的だと不適切な内容は書かれていない。

 

 

『幹候紳士の会』

 

※強制入会

 

第一条 女性には優しく丁寧に接せよ

第二条 交際を開始したならば速やかに詳細を包み隠さず報告せよ

第三条 交際の事実が確認でき次第、即刻脱会せよ

第四条 結婚式の日程を決定したならば即時に全会員を招待せよ

第五条 全力で祝福し、独身者の血涙と哀愁を浴びせよ

第六条 NTRは絶対に許すな

第七条 純愛至上主義者な紳士であれ

第八条 美しきものは全て見守るように愛でよ

第九条 元会員とは仲良く揶揄え

第十条 結婚とは人生の墓場であり、未来の始発点でもある

 

入隊時に強制入会後に即時脱会した非名誉会員第1号:藤川翔

 

純愛を貫いた紳士

 

 

背中には上記のことがプリントされており、圧倒的な男社会の悪ノリで恥ずかしいさが勝つのだが、運の悪いことに洗濯していた他のシャツがまだ乾いておらず、これしかないという中々に悲しい事情ゆえに着るしかなかった。

 

このシャツは幹候同期の男性学生が全員作らされており、会名と条項以外にはかなり細かく着用者本人の状況に合わせたカスタムが施されている無駄な徹底ぶりでほぼオーダーメイドと言っても過言ではない。

 

ちなみに前前話くらいに電話した内調の同期のシャツには『純愛とは芸術 即ち 爆発だ』という意味不明なパワーワードが入っているのだが、卒業後にしれっと初度配属された艦のマドンナを射止めて結婚しており、その時の結婚式は伝説になってたようだ。

 

その時に私は参加出来なかったが後日に詳細を本人から聞かされたが、その艦の若い美人を娶るやつには祝福(笑)が死ぬほど降ることだけは確実だ。

 

ちなみに第七条を盛り込んだのは奴だったりする。

 

私の代で始まったものだったのだが、なんか今も後輩たちがこのやらなくてもいい文化を継承してしまったらしく、新たな伝統シャツとなっているらしい。

 

このシャツを見たらクスッと笑うだろう。

 

少なくとも他の会員のやつを見つけた時は大いに笑わせてもらった良い思い出があり、他国との演習の際にはこのシャツの説明すると爆笑間違いなしで何故かアメリカのアナポリス海軍学校に海外支部第1号があるとかないかとかという意味不明な話がある。

 

男の悪ノリは恐ろしいという話をしたところで生徒たちが一通り集まり、授業が始まったのだが生徒たちの笑いを堪えた感じの声がうっすら聞こえてきているが、こんなネタシャツを堂々した出立ちでいたらそうなる。

 

今日の実習は基本飛行というところで飛んでみろと私、セシリアとファーストボーイに指名がかかったので踏み出して左足が着地する前に0.06秒で展開を終えたら彼女も隣で同じようにやったが、彼はまだ展開に時間がかかっている。

 

セシリアお嬢様のISはまだ改修キット適用前で人目が少ない今晩中にはやる予定なので変化していないことに少しがっかりしている生徒はいた。

 

使い慣れていないから仕方がないこととはいえ、変に待ってにプレッシャーを与えたくはないので先に飛ぼうかとセシリアお嬢様にアイコンタクトを図ろうとしたところでコールで展開したようだ。

 

すぐに飛んでまあまあな高度になったところで地上10cmを目標に降下しろという注文が来た。

 

可能な範疇での最高速度で地面に接近し、砂塵を舞わさずにピタリと一切の誤差もなく停止すると隣にもセシリアお嬢様が同じようにしていたのだが、センサーが高速の飛翔体がこちらに向かっていることを探知していた。

 

まあ、ファーストボーイのことではあるのだがセシリアお嬢様に退避しろのハンドサインを送ってすぐにファーストボーイが地面に刺さらないように勢いを相殺できるようにブースターと本人を受け止める体勢を用意するとそれならの衝撃が全身を襲ってくる。

 

しかし、内部の衝撃緩衝材やコンピュータ制御されたブースターのおかげで気を失うことも痛みを感じることなく、暴走ロケットになっていたファーストボーイを止めることができた。

 

地面から10cmを保ったままでやり切ったのか、少し感嘆の声が聞こえたが、それよりファーストボーイには少しばかりアドバイスをしておかないといけない。

 

「空を飛ぶイメージをあまり出来てないが、やはり難しいか?」

 

「はい」

 

「それはそうだな。人は飛ぶことを想定してないから仕方がない、、、君はスーパーマンとか見たことあるか?少し古い映画だが、バットマンでも良い、、、それでも分からない場合はそこらの鳥でも構わない」

 

スーパーマンとかバットマンも今の子たちは観ないかと思いつつ、私が学生のときでもギリギリ観ている人がいるどうかで時代とは残酷なものだなと感傷に浸りつつ、飛ぶイメージをどうやって言語化してやれるかを考えていた。

 

「観たことはありますが、、、」

 

それよりもまだ教科書の角錐とかの記述で引っ掛かりを覚えているようだ。

 

「角錐のことはまず忘れた方がいい。あれは説明にはなっておらん。自分が『飛ぶ』という言葉に対して想像できるものを思い浮かべてみる。そして、一旦、なぜ飛べているのかは考えないことにすると良い」

 

考えたくなる気持ちは分かるが、そういうことをしていると上手くいかないもので出来るまではその行おうとしている行為に集中する方が良いし、早い。

 

あまり長く喋ると授業妨害になるからさっと元の位置に戻って展開状態を解除し、愛すべき重力の制御下で地に立った。

 

「藤川、完璧な挙動だ。あと、墜落を防いでくれて感謝する」

 

「ありがとうございます。お礼を言われる程のことではありません」

 

単に性能テスト代わりにやっただけで特に私は気にしていないことだ。

 

その後は専用機を持っていない他の生徒が学園保有する共用ISで実習を行い、午後は平穏な座学で終わったところで事前に予約していたであろう食堂の一角にはファーストボーイのクラス代表就任を祝う手作りの垂れ幕があり、ポテチなどの学生らしい軽食が置かれてあった。

 

主賓であるファーストボーイが来てクラッカーが鳴ったことで始まり、パーティーはつつがなく行われる中で私は会場の隅っこで存在感を消しながら改修キットの適用手順を脳内でシミュレーションしているところでセシリアお嬢様がスット隣に現れて寄り添うように頭を肩にポスリと預けて少し頬を膨らましていた。

 

「少しは私のお相手しても良いではありませんか?」

 

ジト目でそう言われると自分の抵抗は無意味なものとなるから一旦彼女の方に集中しようと意識を切り替える。

 

「そうですね。お嬢様は学生としての日常を楽しんでますか?」

 

「前みたいに敬語は不要」

 

前、、、彼女の護衛任務の途中から始まったというより、自然と敬語は消えたあの辺りか。

 

「分かった」

 

「それでよろしい、ふふ。ええ、この何もない日常が楽しいわ。貴方に出会わなかったら、こんな日々にはなかった」

 

私がいなくても彼女は楽しんでいただろう。こういう時間を謳歌するのが子供の義務でもあり、権利でもある。当主の責務や一族の因縁に追われている方がおかしい。

 

「君は自分で自分らしくあろうとした。それは紛れもなく君自身の努力だ。私のおかげでは決してない」

 

「いいえ、あのまま貴方に出会わなかったら私どこかで大きな過ちを犯してお父様をまだ憎んでいた。だから、私を見捨てなかった貴方に感謝している」

 

「私はただ任務に対して忠実な男だ。お礼を言われるようなことはしてないさ」

 

私は私と明美に忠を尽くしているだけだ。それ以上でも、それ以外でもない。

 

「それでも私は感謝している。それを覚えておいてほしい」

 

「忘れないさ」

 

忘れることはない。

 

「ところで私の想いは気づいていて?」

 

この良い雰囲気で勝負を仕掛けようしているのか、顔が一介の女子高校生から恋する女へと変わっており、逃がさないという極めて強い意志がヒシヒシと伝わっている。

 

「君はまだ広い世界を見れていない。もっと良い人がいる」

 

「そんなありきたりな言葉で濁すことは許さない」

 

目の奥から強烈な圧が滲み出ており、逃げるのなら殺してでも向き合わせるという言外の含みがあらゆる戦場をギリギリで潜り抜けた私に冷や汗をかかせている。

 

「、、、気づいているが、答えることは出来ない」

 

「明美さんの所有物であると同時に彼女のことを愛しているのでしょ。そんなことは分かっている」

 

いつの間にか世間様で『壁ドン』と言われている状態で私が追い詰められている側で猛禽類を思わせる鋭い目が私を貫き、あらゆる危険が起きかねない。

 

「だから、奪ってみせる」

 

私はある事件を除いて最も死の予感を感じている中で身を捩ることも出来ずにただお嬢様の顔を見ることしかできずにいるとかかっていた圧が胡散し、彼女は壁ドンの状態を解いて元通り、いや、少しだけ離れた。

 

しかし、私は何一つ安心することが出来ない。

 

『アケミ』が怖いし、今後お嬢様の行動に注意を払う必要が出てくるばかりか、この後の作業が恐怖の場になることが確定している。

 

私は主導権を容易に奪われてしまうことが若干の悩みだが、解消されることはないだろう。

 

携帯のバイブレーションが割と激しく、『アケミ』は激怒していることは見ずとも分かるから現実逃避に努めよう。

 

逃避先なんて存在しないけども、、、なんて思っていると校内の新聞記者が入ってきたところで私は速攻で退散することにした。

 

「ショウ、私が引き付けておくから改修キットの作業を先に始めて、すぐに合流する」

 

彼女の好意に甘えてすぐに教室から出て、お嬢様のISが格納されている新しい整備室へと向かったが、途中で尾行車を何人か排除することにしつつ部屋に置いていた諸々の道具を取りつつ変装してから行った。

 

お嬢様に割り当てられた新しい整備室は本来の場所から離れたところにあり、独立した建屋で周囲には警備員と思われる人員が厳重に警戒し、私が近づくと二人組が制止を呼びかけた。

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止だ」

 

私が身分証と昨晩送られて印刷した許可証を取り出して見せると警戒状態から歓迎ムードへと変わった。

 

「ようこそ、プロフェッサー。そして、久しぶりだな」

 

「まさか貴方がいるとは思いませんでした、スミス少佐。お久しぶりです。大変お世話になりました」

 

初対面時はイギリス海軍の特殊舟艇隊X小隊の一人でセシリアお嬢様の護衛任務でお世話になり、私の貴方の恩人でもある。

 

元は特殊空挺部隊の所属だったが、新設されたX小隊に志願した強者で私が会った中で最強の隊員と言っても過言ではなく、私が会った時には中年で歴戦の戦士に留まらず、次々と精強な隊員を育成している超バランスタイプで私の理想で尊敬する人物だ。

 

「君の方が階級が上だ」

 

「貴方にお世話になったことに変わりはありません」

 

「君は相変わらずで何よりだ。そして、、、奥さんのことはお悔やみ申し上げます」

 

「恐れ入ります」

 

日本語もかなり流暢で日本人と何の遜色もなく、その他の言語も現地人並みに使いこなせる。

 

「警備お疲れ様です」

 

「ありがとうと言いたいところだが、俺たちの任務だから気にするな」

 

※【】内は英語でのやり取りです。

 

【了解、敵の行動はどうですか?】

 

【盗聴器、隠しカメラ及びネットワーク監視ウィルス、挙げればキリがない。だが、全部排除済みだ】

 

【貴方も相変わらずですね】

 

【年で予備兵登録になったが、なんとかなるもんだ】

 

【あなたが年だなんて、、、まだまだ若者だと思ってますよ】

 

もう退官が目に見え始めているとは思えない完璧な仕事ぶりで会ったままから変わらぬ強さだ。

 

【おいおい、流石の俺でも年は自覚する】

 

そうは言っているが、この会話中も警戒を一切解いていないし、衰えた様子が見えん。

 

【博士、ここで昔話で花を咲かしたいところだがお嬢さんがそろそろ鉄槌を下しかねない】

 

【そうですね。申し訳ない、すぐに取り掛かる】

 

スミス少佐に案内されて建屋内に入り、念の為の身体検査を行って怪しいものがないか確認した上で厳重に封印された部屋に踏み入ると不知火製作所の作業員が既に適用作業の用意をしており、立体ホログラムがその指示を下していた。

 

『あら、現役JKに迫られてどうだった?』

 

「やめてくれ、咄嗟に避けれなかったことは謝る」

 

大変ご立腹ですと全身で表現されており、作業員たちからは同情の目で見られた。

 

『、、、彼女の奥底と貴方の女誑しっぷりを見誤った私が文句を言える立場ではないわ。さて、準備は万全?』

 

「当たり前だ。あとは本人とそのISが来るだけだ」

 

怒っていることに変わりはないものの、それはそれとして作業の準備は一切止めていないし、俺も端末と接続ケーブルを繋いでプログラムの最終テストと特殊ファイアウォールの起動をしていた。

 

「プログラム及びファイアウォール、異常なし。接続状況は良好」

 

『異常なし、接続良好を確認、そのまま物理解除システム及びECMの準備も進めて』

 

「了解」

 

物理解除システムとECMがこの作業で最も重要な物でこれが失敗すると私達の研究成果がまた無駄になってしまう。

 

[こちら、アーサー。各国の工作員が動き出した]

 

『徹底的に排除。増援を送るので早急にお嬢様の護衛をせよ』

 

[アーサー、了解]

 

この間の爆破で減らしたものの、新たに投入された少数の工作員が動き出したのは想定内だが、面倒なことに変わりはないので私も準備を終わったらお嬢様が来るまでの間は防衛に加わる。

 

『貴方、残りの準備はこっちでやるから裏口の警備への増強へ。人数と装備の差で劣勢になりつつある』

 

状況が悪化し、そのまま彼女に任せて作業員からヨーロッパ派遣で使っていた愛銃とウェポンバッグを受け取って裏口に出て、警備員にウェポンバッグを渡しつつ応戦した。

 

学園ということもあって威圧的にならないように隠しやすい拳銃にしていたせいか、相手がそれ上回る装備になるとどうしても火力不足で練度が高くても押されてしまうが、同等になればどうということはない。

 

学園から少し離れている都合で交戦距離が市街地というには少し離れているが、俺の愛銃には都合が良いのだ。

 

11.5インチの.300 AAC Blackout仕様で400m前後には程よい。

 

M4のクローンの一種であるSIG MCX、第3世代のSIG MCX-SPEAR LTで短時間の部班交換で下手の長さのバレルや弾薬を使用でき、AR-15とM16との互換性もある広い汎用性があり、複数国の軍や警察に採用され、民間モデルもあるから部品に困らない。

 

弾薬は少し特殊ではあるものの、調達しやすい部類で7.62mmとしてはサプレッサーとの相性が良い。

 

敵を確実に黙らせて、ついでに観察しようとしてきた更識のスパイも排除したところでセシリアお嬢様の護衛をした組が加勢したことで殲滅した。

 

死体と銃撃痕は我が社のSにクリーニングをお願いし、お嬢様を迎えて作業の開始をする。

 

作業開始前に警備に必要な特殊通信機を除いて端末に保護処理を施してからお嬢様にはISを厳重封印されている部屋に入る前に外してもらい、物理解除システムとECMを起動した。

 

「改修キットはここまでするのね」

 

「そうだ、ここから先は機密事項だ」

 

「心得てるわ」

 

物理解除システムとはISコアの自己進化部分、人格に似たものやデータ収集プログラムを動かすハードを完全破壊するためのものでこの工程がないと改修キットの適用が始まらない。

 

ECMを起動しているのはコアが分解されていることと作業中にデータ収集プログラムがもし生きてしまった場合に情報漏洩を防ぐためにためにある。

 

特にコアの分解を早めに察知されると非常に面倒なことになる。

 

物理解除システムがきちんと役目を果たしたところで厳重封印した部屋へと移して私や複数の作業員で不要な基盤やパーツなどを素早く取り除いてから使い捨てて良い端末に接続して物理解除が本当に出来ているかを確認し、予めダウンロードしていたプログラムを走らせてた。

 

プログラムがISコアの自己進化とデータ収集をソフト面での確実な破壊をする。

 

ISコアには人格が宿っているとかという話もあるが、それも息の根を止めさせてISとして存在させなくすることでただの高性能コンピュータとしてのみ機能する。

 

その後に必要なプログラムを適用し、不具合になりうる部分を事前に潰してさらに他に変なプログラムや基盤なとがないかを再確認してから新生コアを起動し、無事に稼働していることを見てやっとECMを解除する。

 

ここまでの作業で約1時間半もかかっているが、自分のIS擬きという前例のおかげでスムーズに進行している。

 

あとはISとしてのパーツを外して骨格等から組み直してフルアーマー化し、火器管制などのシステムも組み込むなど深夜近くまで続いたが、何とか日付が変わる前に終わった。

 

私のIS擬きとは色違いかつ、ヘルメットのデザインも若干異なっており、デザインは変わらないものの狙撃とビット運用に特化できるシステムを搭載する都合で少しゴツい感じになる。

 

ビットもISのものより洗練されたものとなり、レーザー出力の向上と防御用途の機能も付与され、実弾ビットにミサイルと小型ガトリングのバージョンを用意している。

 

レーザービットは欺瞞の意味合いも込めて放熱版のような見た目にし、その他は量子化で収納しておいて、手持ち武装も一新されてよりタクティカルで実用的なものへと変更しただけでなく、近接武器も充実しているオールラウンド対応にした機体の完成だ。

 

見た目完全に戦闘用ロボットかバトルスーツであり、ISには見えないというかそういう意図があって設計している。

 

「はじめまして、アケミ•フユカワ博士」

 

バタバタしていたからそういえばお嬢様が彼女に出会うのは初めてでヨーロッパ派遣の時も会う機会がなかったなと思いながら少しばかり胃が重い対面が始まった。

 

『実際に会うのは初めてでしたね。セシリア•オルコット様、私の夫がお世話になっております』

 

既にバチバチな感がしているし、お互いの目が好戦的になっているが、ここで俺が口を挟むと碌なことにならないから黙っているという選択肢しか存在しない。

 

「私のことはセシリアとお呼びくださいませ。堅苦しいのは少し苦手でして」

 

『そうさせてもらうわ。さて、このまま最終調整に入りますが、時間は宜しいかしら?』

 

「ええ、早いに越したことはないから」

 

好戦的な雰囲気は一旦胡散し、本人の詳細なデータは予め貰って大まかな調整が終わっているものの、最終調整で完璧なものに仕上げる。

 

『貴方、操作プログラムの詳細設定をお願い』

 

「了解」

 

『セシリアは持っていれば体操服で構いません。ISスーツは使用しないですから』

 

「分かりました。少し時間をいただきます」

 

彼女が女性作業員に更衣室へと案内されて着替えている間に接続している端末から操作プログラムの設定を引っ張り出して彼女に合わせてデフォルトで設定されている数字を一目で見通し、マニュアル変更できるようにセットした。

 

『これで少しはビッチが歪むかしらね』

 

「無人ISくらいは刺客として送り込むだろうさ」

 

『その時が私達の作品(仮)のお披露目ね』

 

「ああ、お嬢様には少し申し訳ないがね」

 

全ては私達の自分勝手で碌でもない計画のためにある。

 

[こちら、スカンク。清掃終了]

 

『了解、ゴミ処理はいつもの通り。但し、更識のは丁寧に処分しておいて』

 

[了解]

 

更識の人間がいたのは少し面倒だが、いずれは対峙することになるから早まっただけのことで計画に支障はない。

 

セシリアお嬢様が着替え終えて、OSは書き換わっているものの操作感覚は変わらないのでIS擬きの着用というか展開は素早く行われ、最終調整は日付が変わって3時になる少し前に終わった。

 

基本動作の確認もなんのバグもなく、無事に適用できたもののこの場に全員は若干ハイになっており、雰囲気も怪しいものになる。

 

警備員は交代勤務で支障はなく、手空きな作業員たちは簡易ベッドに身を放り投げて寝始めている中でセシリアお嬢様は学園で始めての夜更かしで目がクルクルと回っているよう感じになっていた。

 

さて、厳重封印された部屋には実態のある男女2人とホログラムでしかない女性1人、何も起きないはずもなく、、、

 

「夜更かしの責任は身体で支払っていただきますわ」

 

『こら、そこのブリテンキャットめ。寝ろ』

 

その他の作業員は外で部屋の外で撤収作業に入っており、俺は孤立無縁になっていた。

 

「ふふふ、ここで勝負を決めれば全て良しですわ」

 

うん、冷静じゃないがここでお嬢様をそう簡単に気絶させるわけにはいかない。

 

なぜなら、彼女も俺が教えたCQC使いだからだ。

 

ホログラムのアケミは実体を持たないから指を咥えて見ることしか出来ない、いや、増援を呼びことは出来るがお嬢様の精神衛生的に考慮すると憚られる。

 

どれだけ眠くてもお嬢様は記憶に残してしまうから下手な対応は彼女が傷つくし、生涯の黒歴史になるのが確定してしまうからだ。

 

「さあ、ショウ。私の人生に彩りを与えてくださいまし」(目がイッテる)

 

「まず、睡眠を取ってくれ。話はそこからだ」

 

「あら、、、ならば私から攻めることと致しましょう」

 

セシリアお嬢様がフッと俺に接近するため、急加速して背負い投げで地面に叩き落とす寸法だろうが、そうはさせるわけにいかないようにスッと避けつつ背負い投げの手を牽制するように構えて足払い出来るような体勢で迎えた。

 

俺の構えを見て速攻で押し倒すような体当たりと巴投げに変えれるようにグッと姿勢を低くし、さらに加速を入れた。

 

しかし、寝不足で、いや、演じている。

 

知らない間に随分と成長したようだが、まだ疲労と眠気には若干勝ててないものの、それでも早いペースで私やスミス少佐等が急速錬成で教えたことを使い熟せそうになっている。

 

姿勢が低くなったことで重心も下がってなおさら無傷で無力化しにくいことになったが、今の所は避ける以外の手段はないだろう。

 

素早く後退しつつ、横へと回避した後に次の逃げ道を確保しておいて彼女の次の動きに対応できるようにして姿を見失わないようにしたが、少し想定外のことが起きた。

 

演技の可能性があるけど、挙動にふらつきが見え始めて介抱しないとそのまま顔から地面へのキスをすることになる。

 

後退キャンセルからの彼女の進路上に阻むような感じで立ち、減速し始めたところで少しばかり右に避けつつ、腕は抱き止められるように出すと思い通りに行った部分と彼女の部分的な勝利が確定した。

 

抱き止めることまでは良かったが、彼女もガッチリとホールドしてきたことは想定内なものの割と力強く抱きついており、すぐに引き剥がすことは難しそうだ。

 

「君は疲れている。寝たほうが良い」疲れと困惑に満ちた目

 

「ええ、だから貴方を抱いてから寝ますわ」健康的で狂気に満ちた目

 

『•••』目のハイライトが消失&ホログラムが赤い

 

(絶望的すぎる状況で笑えないのだが、、、)

 

俺はラブコメの主人公でもないのにこんな修羅場に巻き込まれるのは不本意だが、その前に解消しなければいよいよアケミの怒りがオーバーフローする。

 

「明日は授業があるから寝た方が良いぞ。寝不足で新品の機体を墜落させたくはないだろう。完熟運転を済ませなゃならんからね」

 

「むー、、、」

 

「お嬢様が顔を膨らませて拗ねてもダメです」

 

「、、、」胸元で深呼吸

 

「匂いを堪能して時間稼ぎもダメです」

 

そのスーハーという荒い呼吸音が響き、アケミのホログラムがさらなる赤さの悪化で事態が深刻になってゆくことを嫌で分からされる。

 

「、、、、、明日があるから今日は許すわ」

 

『このアイリッシュガールめ、、、うらやま、、、けしからん!』(目のハイライトさん休暇から帰省)

 

アケミのうちなる欲望が盛れたところでホログラムが淡い青色に戻り、顔の表情も少しばかりは穏やかなものになっていた。

 

しかし、セシリアお嬢様はもはや大人顔負けの色香を放っていてそこでも全力さが伝わるところが非常に胃に悪い。

 

『、、、少しばかりはオハナシアイをしましょうか、お嬢様』

 

「ええ、じっくりと私の携帯の中でカタリアイますわ」

 

どうやら、勝負は別会場にて続投するようで胃薬を一箱ほど消費することになってしまった。

 

アケミも適用作業中にセシリアお嬢様の携帯とIS擬きにダウンロードされ、最新バージョンへのアップデートも完了してフルバージョンでの使用可能で私以外で世界で初めての分身ダウンロードだったりする。

 

分身ダウンロードで意識は同一なものの使用者の環境で学習し、自動的にカスタマイズされていくだけでなく、アケミ本体の負担を軽減できることで高いレスポンスを得られる。

 

もちろん、デメリットもないわけではないが、ここで語ることではなかろう。

 

「ショウ、またあとで教室で」

 

「ああ、よく寝ておくんだぞ」

 

そのままお嬢様を見送ると使っていた愛銃の簡易的な手入れを素早く済ませてアケミと今後のことを話した。

 

『貴方、、、計画は順調に動いているけど、まだ時間は欲しい』

 

「だろうな。あれはタイミングの問題もあるが、プロトタイプでは不安だしなぁ。量産型の初期ロットまでは持っていきたい」

 

『ええ、あのビッチを超えなければインパクトがない、、、あとはお嬢様が貴方の踊りにどこまでついて行けるかが要になる』

 

「それは問題ない。彼女なら応えられる」

 

『そう答えると思った。私が生きてればこんな負担を』

 

「負担なんかじゃない、、、俺は明美の夫だ。応えるというのが男というもんだ。そして、私たちの不始末を後世まで残さないためにやり遂げなければならない」

 

全てはあの時、あの遭遇から始まった。

 

だから、碌でもない結末に俺の死が確定されようとだ、、、

 

すべては世界とあらゆる未来のために我らの舞踏会へ招待する

 

 




次回いつ更新できるかな、、、
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