遺恨のIS   作:アルファデッド

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憂鬱な出来事でほぼ一睡できなかった故に遅れてしまいました。

次回はいつ更新できるかなぁ、、、


新たな要素

危ない夜をやり過ごして数時間だけ寝て朝を迎え、少し眠いものの活動に支障はない。

 

『おはよう、貴方。少し時間もらうわ』

 

いつなら待ってくれているアケミが起床して早々に出てくるのは少し珍しいことだが、声のトーンから緊急性は低いものであると分かる。

 

『脅威度は低いから気にはしていなかったが、今日中華人民共和国の転校生が来る。正規の手段で入ってきてはいるけど急遽割り込むような形になっている。データはもう送っている』

 

彼女が言った通り、通知には彼女からの送信物が届いており、開封すると見たことある人物の顔が現れた。

 

「あー、ファーストボーイの幼馴染の一人、凰 鈴音だな」

 

『身辺調査の過程で知った感じね』

 

「その通り」

 

保護対象プログラムの下にいた篠ノ之 箒の入れ替わりで入ってきただけでなく、仮想敵国からの人間ということも相まって即時調査入ったもののその当時はタイミングの悪いありふれた移民だったこともあってすぐに監視対象から外されたことで辛うじて覚えていた。

 

しかし、急遽となるとやはりハニートラップとしてファーストボーイを懐柔したいという狙いが露骨すぎる気もするが、一応今はその価値は存在しているんだったな。

 

『計画に支障はないけど、一応は特異的な事項としてお知らせしておこうと思って、、、あと、強引にクラス代表の座を獲得したみたいね』

 

「恋は人を盲目にするというしな」

 

人は視野狭窄に陥りやすいから仕方がないけど、恋の力は改めて第三者目線で見るとすごいものだなと思いながら今日の課業ではなく、、、授業の準備をしていた。

 

(課業だと入校とかを思い出してしまうな)

 

終えて学校に向かおうと玄関ドアを開けば深夜に格闘?をした相手であるセシリアお嬢様がいるではないか、、、

 

「おはよう、ショウ」

 

「ああ、おはようセシリアお嬢様」

 

「セシリアでよろしい」

 

「お嬢様、なんでここに」

 

どうやら、あっちのアケミとオハナシアイはまだ終わってないらしい。

 

「私の新しいモーニングルーティンだから気にしないで」

 

これは返答を間違えると村人Aのパターンになりそうで一旦は流すことにするしかない。

 

「そうか」

 

「あと、転校生のことで聞きたいことがあるわ」

 

「分かった」

 

あっちのアケミがちゃんと同一の動きを出来ていることに安心しつつ、明美が開発したプログラムの素晴らしさに心の中で感じながら人がいないうちに簡易的な内容を伝えてから学校へと向かった。

 

あの当時から大きく情報は変わっているだろうが、アケミと私がわずかな時間で入手できた範疇ではたった1年で代表候補生の座につき、相当な感覚派かつ自信家でファーストボーイ以外のことは基本的に興味なしというところだろう。

 

中華人民共和国にある日本大使館で駐在武官している同期からの情報でもあるから信憑性も高く、私自身も今のところは本人を見て分析するしかない。

 

あと、セシリアお嬢様によると編入試験は入試よりも遥かに難易度が高く、相当な熟練度と頭脳がないと合格は出来ないようだ。

 

私も軽くは知っていたものの、IS操縦者で学生としての目線の情報は重要でさらなる補完になった。

 

教室に着けばいつもよりは遅い到着で人がそれなりにおり、ファーストボーイが席で女子生徒に囲まれているようだが、こっちが入ってきたことに気がついて挨拶をしてきた。

 

「藤川さん、おはようございます」

 

「おはよう」

 

「少し遅いのは珍しいですね」

 

「ああ、朝から急な電話に対応していたから時間を取られてしまった」

 

「うげ」

 

そんな顔を出来るのは学生までの特権だぞ、、、

 

「社会人とはそんなものだ。君もそうなるから安心したまえ」

 

「安心する要素が一つもないです、、、あっ、転校生の話は聞いていますか」

 

彼がそう問いかけると周りにいた生徒もこっちを見て聞くことにしたようだ。

 

「ああ、軽くは聞いている。なんでも中国から来た代表候補生級の人物のようだな」

 

「なんで代表候補生級と言えるんですか?」

 

「ここの編入試験はかなり難しい噂は耳にしていたからね。最低でもそのくらいの実力があると想定した方が良いだろう。専用機持ちの可能性も大きいと推測してる」

 

専用機持ちというワードに周りの生徒はザワついたようだが、どうやらクラス代表戦は勝てば褒美があるようで勝つ可能性が低くなるのは困るようだ。

 

確かに専用機持ちは私がいる1組と4組の2箇所で1組に偏っているという戦力バランスの悪い編成になっており、ここに配置されることはなく、専用機がいないクラスになるのは自然な流れだろう。

 

「なんならクラス代表になっているか、やらされているかもな、既に」

 

「流石は軍人ってところね」

 

「自衛隊の隊員だ」

 

ここは訂正しておかないと世間様が許してくれないのです、、、海外からすればなんの違いがあると言われても我々は軍人ではないのですからそう言わざるを得ない。

 

そして、意外にファーストボーイ以外のことに興味は持っているんだなと少し思ってしまったが、常装をしている人間がいたら嫌でも目に入るのだろう。

 

「違いないじゃない」

 

「少なくとも国内においてはな。で、そこの彼に用件があるのだろう」

 

少し退くとファーストボーイがやっと彼女の顔を見て思い出したようでそこからの交流の邪魔にならないように退散して席につき、筆記用具を取り出した。

 

まもなく織斑先生が来るだろうと思っていたら来ており、、、あの拳骨は痛いではすまない音をしているけど、体罰でよく訴えられなかったなと思いながら列中魂を貫くことにした。

 

列中魂とは我が国が社の役に立つことがあるにはある処世術で一時的に指導の集中砲火を避けることが出来る。

 

あくまでも集中砲火を避けることができるだけである。

 

結局は集中砲火の飛び火を喰らうのだから、、、

 

その後は午前の座学が終わって昼食の時間になり、いつものように安めのメニューを選んでたところでファーストボーイから同席しないかの誘いが来た。

 

こんな異性しかない空間での同性の心強さは理解できるし、私は敢えて避けていたからたまには良いだろう。

 

お嬢様も同意したところでトレーを受け取って円卓席で話を聞きながら食べていたが、ファーストボーイは非常によろしくない素質の持ち主かと苦笑いしまったが、それはお嬢様も同じだった。

 

関係者以外立ち入り禁止のエリアを平然と踏み入るのは擁護できる要素ゼロだし、それを出来るのは余程の能無しか犯罪者素養のある奴くらいだ。

 

とりあえず、心の中でファーストボーイを死ぬほどぶん殴っておくとして、軽い頭痛がしている気もするが一旦置いておこう。

 

昼時間の残りが少なく、食べ終えたことで先に撤収することにして午後の座学に臨んで気がつけば夕方になっていた。

 

今日は約束通りに彼女の練習に付き合うことにし、かつ新機体への操作を完璧なものにしてもらってシステム自体がより最適化出来るようにしておくために実践的な動きをさせている。

 

あと、レーザービット、いや、ファンネルの射撃動作と防御機能が正常かつスペック通りに動くかも確認したが、なんの問題もなく最適化が完了し、偏向射撃もバッチリだ。

 

まだプロトタイプとはいえ、同時思考補助システムのおかげで無防備になる問題も解消された。

 

そして、何よりも実弾装備の充実化が彼女をやる気の向上に繋がっており、シューティング練習でレーザー射撃時よりも良い点数を取っていることがその証拠だ。

 

、、、実弾の方が慣れていることについては触れないでいただきたい。

 

「ショウ、私はやはり実弾がしっくりくるわ」

 

「本当は良くないことだがね、、、分かってしまえるのが悲しいところだ」

 

「レーザーは直進するのは頭では理解しているはずなのに、勝手に弾道落下計算を含めてしまうわ」

 

「君は狙撃が得意でレーザーを使い出したのは最近だからね」

 

お嬢様の狙撃能力はあのスミス少佐を唸らせるほどで名家の出身でなければ勧誘すると断言していたし、センスはあの時において誰よりもあった。

 

だから、非公式で公表されていないが世界記録を打ち破ることが出来た。

 

ウクライナから借りたスナイペックス•アリゲーターによる4250m3連続の移動目標への狙撃だ。

 

ライフル銃は銃架で固定はされていたものの、ほとんど観測ドローンによる大した支援もない中で初弾から最後まで命中させていた。

 

至近弾でも充分な殺傷能力を担保するために対物ライフルが選定されたが、クリーンヒットさせているという恐ろしいもので任務の性質故に作戦関係者のみで語られる伝説中の伝説だ。

 

「狙撃を教えたのは貴方ですわ」

 

「だが、成し遂げたのは他ならぬ君自身だ」

 

あの狙撃は私がやれと言われても同じような結果を出せる自信はない。

 

「いいえ、ショウならやっていた」

 

心の中を読むのは辞めてほしいところだが、、、なんで読めるんだろうなぁ。

 

「恋する女は最強ですのよ」

 

それで片付かないから困っているし、今に始まったことではない、、、

 

さて、そろそろ帰らないとマズイ時間になってきたので使用した道具などを片付けて借りていたアリーナを出て学生寮への向かったが、その途中でお嬢様がとんでもない事実を言ってきた。

 

「ショウ、もうすぐ私と貴方は同部屋になりますわ」

 

(いや、待て待て待て)

 

そんなことは許されないだろうに世間的にも防衛省的にもそれはあり得ないはずだ。

 

「我が国から正式に要請し、防衛省はそれを今日付けで受諾した。私は一応これでも士官生徒ですわ。秘密保全は問題ない」

 

士官生徒とはイギリス海軍において我が国の幹部候補生に相当するものであくまで教育の場において付与される一時的な階級でしかないし、敬礼を受けない立場にあるとはいえ、確かにイギリス海軍の一員であることに違いはない。

 

いや、通常の行政文書も秘文書もあくまでも防衛省職員及び自衛隊の隊員のみに限定されているから問題しかないのだ。

 

防衛省は何を見てヨシ!をしたというのか、、、新日英安全保障協力条約が両国間の障害を取っ払える大きなものだが、流石にこの使い方は想定されていない。

 

業務用携帯が着信を知らせるバイブレーションをし始め、出ることにしたが嫌な予感しかしないのは気のせいではないだろう。

 

「藤川予備1佐です」

 

『、、、良いニュースとさらに良いニュースがある。どっちを聞きたいかね』

 

(この声は、、、)

 

「お久しぶりです。金井群司令」

 

『私は群司令からただの幕僚に戻った、、、君は元気そうで何よりだ』

 

「そうでしたか、、、大変お世話になりました」

 

『気にするな。司令は尻拭いが主たる任務だ、、、さてどうするかね』

 

どっちを選んでもダメそうな気がするのだが、そこにケチをつけるようでは海上自衛官として、いや、男としての恥だ。

 

「良いニュースでお願いいたします」

 

『ふっ、そう来ると思っていたよ、、、イギリス海軍本部から正式な要請により、セシリア•オルコット海軍士官生徒と協働せよ』

 

「、、、承知いたしました。しかし、随分と急なことですね」

 

『さらに良いニュースにも繋がっているが、外交筋から対IS兵器の開発及び生産な協力体制について打診され、それが承諾された』

 

外務省がよくYESを言えたなと思ったが、どうやら思っている早いペースで国内は変わりつつあるということだろう。

 

『国際感覚に富んでいるやつは気がついているんだよ。ISに未来はないとな。実際、ISへの悪感情の表面化が著しく、対IS兵器の早期取得の流れができつつある』

 

対IS兵器の生産とその輸出は大多数の非IS保有国家を抱え込める大チャンスであり、そこの優位性はこれから大きな国益になる可能性を秘めている。

 

それをただの感情で莫大な利益を見捨てられん外務省と現総理大臣が理性的だっただけのことだ。

 

金井1佐との電話を終えてキラキラした、、、いや、ギラついた目で私を見つめているお嬢様は少し怖い存在になった。

 

アケミが今頃かなりご立腹であろうし、夜はちゃんと眠れる気がしない。

 

(神はいつも私に対して残酷だ)

 

天道さんに向かって罵詈雑言と中指を送りたくなる気持ちを抑えて部屋の前に辿りつこうとしたら割と怒った顔で歩いている転校生と遭遇した。

 

「どうした?」

 

「放っておいてよ!」

 

「それを出来るほど君は健全な状態じゃないね」

 

「うるさい!!」

 

「大方、約束がなかったことにされた。いや、欲しい形で覚えて貰えなかったと言ったところだろう?」

 

「っ!?」

 

元妻帯者を舐めるなよ、、、女性のご機嫌が斜めになる理由は大元を想像すれば予想は出来るのだ。

 

良い意味でヤンデレで独占欲が死ぬほど強くて重い女な明美に振り回されて愉しんだか、、、懐かしいな

 

「怖がる必要はない。私に妻がいたからなんとなく分かるだけさ」

 

「、、、それには的確に当ててくるのが恐ろしいけど」

 

「よく振り回されたよ、、、良い思い出だよ」

 

「良い思い出って、、、」

 

「妻は遠いところに行ってしまってな」

 

殺されたが、この子に言う必要はどこにも存在しない。

 

「ショウ、、、」

 

お嬢様はそれとなく知っているからこそ少し辛い顔をしているし、チャイナガールも地雷を踏んでしまったかのような顔をしていた。

 

「とりあえず、お茶でも飲んで落ち着いた方が良いだろう。私の部屋は生憎と人を迎えれる状態ではないから娯楽室に持って行くが、紅茶かインスタントコーヒーくらいしかない。それで良いかい?あっ、砂糖と牛乳くらいならある」

 

朝の目覚め用に買った苦めなもので子供には良い選択肢とは言えんだろうが、幸いお嬢様は紅茶でえーとチャイナガールこと凰も紅茶で牛乳&砂糖入りのオーダーが入った。

 

作り方はちゃんとイギリスの手順で電子レンジやら塩やらは使いません。

 

(紅茶はヤカンかケトルで沸かしたお湯に、海ではありません)

 

一応、来客用のカップとソーサーはあるが2個しかない。

 

しかし、まあ、、、私のやつはマグカップで模様というのか、絵柄といえば良いのか分からんが、同期が選んだすこぶる癖の強いものだ。

 

I ♡ Nuclear E=mc²が書かれているというでジョークグッズのようなイかれたやつしかないわけで笑うしかなく、まともなマグカップは気がついたらこいつにすり替えられたようだ。

 

(あやつは一回半殺しにせねばならん)

 

この学生寮には何故か娯楽室があるが、極めて質素なものとはいえ最低限度の応接は出来なくはないソファとテーブルがある。

 

ちなみに配膳した時に二人はなんかイマイチな雰囲気だったが、セシリアがマグカップを見て静かに笑い出して、チャイナガールも何事と思って同じように見たらめっちゃ笑ってた。

 

「すまないな。職場の同期がイタズラですり替えたようでな、、、」

 

「堅苦しい感じの人が『I ♡ NewYork』みたいカップで来たら笑わないわけない」

 

「だろうな。私もそうしてる」

 

ちなみに初めてのことではなく、自分もしれっとやつのマグカップを『I ♡ 共産趣味』で見事なまでの真っ赤なものにしてたわ、、、あっ、これ奴の報復措置だ。

 

すり替えられて当たり前だったと思いながら遭遇したときよりはマシな表情をした彼女に聞かねばなるまい。

 

「さて、アイスブレイク出来たところで本題に入って良いかな?」

 

「そうなるよね、、、」

 

「話したくなければ雑談タイムに洒落込むだけのことさ」

 

こういう時は無理に本人が言いたくなるまでは根気よく待つことが必要だあるのだ。

 

「おっと、忘れるところだったよ。大したものではないが、クッキーをどうぞ」

 

トレイが小さいものしかなく、裏の胸ポケットに忍ばせていた個包装のクッキーをお嬢様とチャイナガールに渡してお茶を飲んで少しの間は雑談をした。

 

程なくしてチャイナガールが少しだけ重い口を開いたが、どちらが悪いとは言えない微妙なものだった。

 

「今時、その形で告白するのはすごい、、、私の世代でも今の所聞いたことはあまりないなぁ」

 

「ええ、右に同じくですわ」

 

「うっ」

 

なくはないか、、、入隊同期が彼女を口説いた時のセリフが夏目漱石のあの有名な一文だったしなぁ。お相手さんもそれを分かってて返事したという激アツなエピソードがあった。

 

「あまりないというだけで、、、夏目漱石は分かるかな?」

 

「はい、確か教科書で見た覚えがありますけど、、、」

 

「その人の逸話で『I love you』を『月が綺麗ですね』で訳し、その返しが『死んでもいいわ』という一文があったのだが、それで口説いた奴なら知ってる。夏目漱石の作品が好きな同期だったな」

 

「そ、それで成功したの?」

 

「お相手さんも分かっててその返ししてたし、今では円満な家庭を築くに至っている」

 

「う、羨ましい」

 

「もちろん、ちゃんと段階を踏んだおかげで成り立ったものだいうことを付け加えておく」(死んだ目)

 

「あー」(察し)

 

「うっ!?」(心当たりしかない目)

 

何度も二人の間に入って相談させられて終いには俺が二人に「既成事実でも作れ」と投げやりな回答を連発したか、、、共通である夏目漱石好きというの二人がゲロったのは割と後のことだった。

 

忘れもしない卒業式前日に二人は就寝前の自由時間で教官に不純な付き合いと勘違いされないように場所取りと見張りの役目までやってたら、あのぐじぐじしていたバカップルがゴールインしたときは思わずガッツポーズをしたものだ。

 

(あの後の飲み会はヤバかった、、、急性アルコール中毒で死ぬかも思った)

 

「イイハナシだったなぁ、、、」

 

「ショウ、お疲れ様」(慈しみに満ちた目)

 

「、、、」

 

いかん、このままでは自分も心労会になってしまうのは些かよろしくない。

 

「さて、、、緊張したりして遠回りしたり、ロマンティックにやろうとしたり、不本意な発言をしてしまうと永遠に想いは伝わりません。そんなことを続けるとなら生涯をかけた後悔になると元妻帯者は言っておくけど、出来ていたらこんな事態にはなってないよね、、、」

 

「藤川さんは奥さんはどうだったのよ?今後の参考に包み隠さずに応えてほしい」

 

「端的に言えば変わり者同士が運命的な出会いをして段階を踏んでいくうちに気がつけば既成事実を作って自ら外堀を埋めただけだ」

 

「き、既成事実!?」

 

「既成事実だ。妻曰く、取り扱い要注意な最強のリーサルウェポンらしい。恥ずかしがってたら乙女は永遠に拗らせるだけとのことのようだ」

 

「ショウ、麗しき乙女相手ですわ」

 

「失礼、私としたことが失言をしてしまった。申し訳ない」

 

歳を重ねると発言の内容を精査する癖がいつのまにかなくなってしまうのが辛いところだが、自制しなかった私が悪いけど、お嬢様もだいぶ毒されてるなぁ、、、

 

「お、奥様が強すぎせんか?!」

 

「運命の相手を逃すほど愚かで馬鹿馬鹿しい行為はないと断言している。ちなみにお互い初恋であった上での発言だ」

 

「覚悟が決まりすぎてる!」

 

「私自身も女の勇気ある度胸に応えられない男は切腹すべしという人間だしな」

 

「もはや狂気すら感じる、、、」

 

ああ、狂ってるから今も愛して彼女の意思に従って行動し達成するまで命が果てようと真っ当する覚悟は完了済みだ、、、とっくの昔に

 

「だからこそ結婚したのだ。恋をして愛することはその人のために全てを捧げることだから」(真顔で澄んだ目)

 

亡きセシリアお嬢様の父親はまさしくそうで例え娘に嫌われて、世間体が最悪でも奥さんと娘を守るためだけに全てを差し出して、未来を繋げた。

 

「まず、恋を成就するところからだな。素直が一番だ。最も難しいことだろうけどね、、、少し時間をおいて自分のことを冷静に考えるといいだろう」

 

血が頭にのぼった時は一旦冷静になることが重要で時間もそれなりにかかるものだ。

 

(若いっての良いものだな)

 

明美と出会った頃を思い出して自分らしくないと自覚しながらも明美がまだ生きていたらどうなっていたのだろうかと考えたくなってしまった。

 

(世界は間違いなく大きく変わっていただろうというだけは確実に言える、、、そろそろ、オペレーション•ミーシャが始まって次のフェーズへと移行した頃合いだろう)

 

 

 

 

 

更識楯無SIDE

 

防衛省へと赴いて途中で事案の詳細を聞きながらなんとか説明と想定される詰問に対して胃が非常に痛い、、、

 

(おかしい、、、確かに海自の隊員の事柄は調べているが、秘密漏洩は関係ないはず。いや、まさか、関係があるからほんな事態になっている?)

 

そうなっているのなら状況は複雑なものになる。

 

車が止まって案内係に従って大会議室へと通されると情報本部長、海上自衛隊副幕僚長、警務隊関係者やその他の職員が険しい顔で待ち構えていた。

 

「わざわざ来て頂いて申し訳ないが、事態が事態なので本題に入らせてもらう。更識が一体なにが目的で秘密文書を持ち出そうとしているのか、その真意を問いたい。秘密文書の漏洩の意味するところはどういうものか分からない君ではないだろう」

 

鋭い視線が私を貫き、此方への感情が相当悪いことが伝わってくる。

 

「はい、理解しております」

 

「であるならば、なぜこのような事件が起きた?」

 

もはや査問であり、こちらの下手な言い回しは敵対関係になりかねないが、情報があまりにも足りていない。

 

「答えられませんか?更識家当主、私は難しい質問をした覚えはないが、漠然とした質問をしてしまったことは謝罪する。まず、なぜ閲覧者制限がある秘密文書を持ち出させようとしたのかについて答えてもらいたい」

 

体感としてそれなりに時間を費やして説明したが、何一つ眉が動かず向こうの雰囲気も悪化するばかりでこの一件が全ての決定打で私の説明はただ形式的なものでしかないと思わざるを得ないけど、ここで諦めたら当主としての面子がなくなる。

 

しかし、変わることは最後までなかった。

 

「更識家が我が国に貢献してきた事実はあったが、今回の件で我々はピリオドを打たねばならない、よって現時刻をもって更識家および関係者の権限を全て無効とし、防衛省への立ち入りを禁じる。そして、支援を全て停止する」

 

「ま、待ってください。あまりにも横暴です。我々は最初から最後まで法的根拠に基づいて行動しています」

 

「国際IS委員会から我が隊員の情報を不正に漏洩することがか?さらに我々の優秀な場所からロシアへの情報提供の事実が確認されている。とにかく、話は聞かせてもらいます。これは要請ではありません。これ以上の無駄な抵抗をされるならば警務隊による逮捕権を行使する。以上だ」

 

私は深夜遅くまで拘束されて尋問が続き、もはや敵対国家のスパイと変わらない扱いとなり、更識家の当主として素質を示すために、妹を守るためにやったことが全て裏目に出るとは思いもしなかった。

 

当主として、これまで更識家が築いた人脈を一晩にして失うというあまりに大きすぎる失態は追求される。

 

ただでさえ、受け入れした「藤川翔」の暗殺未遂事案ですでに能力を疑われて対処していたのに、私はどこで間違えたのだろう。

 

妹を確実に守るという事実だけが私の胸に深い痛みを与え、そのせいで私は取り返しのつかないことをすることになると、、、この時は思う暇がなかった。

 

 

 

 

 

同時刻 MI6本部

 

秘密情報部、本部では最高機密が保管されている地下書庫の中でも最も厳重な保管をしている書庫、通称『レベル•ゼロ』への立ち入り及び閲覧権限を持った職員が文書数件を国際IS委員会イギリス支部への漏洩をした事実が発覚し、当該職員の緊急逮捕をしようとしたところ自殺を装った形で他殺されていた。

 

その一件でイギリス政府は大規模な捜査および人事整理を要し、国内のIS関係者への大規模な粛清とも言える状況はヨーロッパ諸国へと波及していた。

 

これまで聖域同然で捜査の手が及ばなかった国際IS委員会の支部への強制立ち入り捜査が行われ、次々と不正等の証拠が発見されていき、テロ組織指定も囁かれるほどには世論は一気に反ISへと傾いている。

 

そんな中で本部の長官とそのごく一部しか知らされていない会議室で長官とその一部が集まって会議をしていた。

 

それも女性のホログラムが投影されている変わった風景だった。

 

※[]と【】は英語でのやりとりである。

 

[本当に抹消されているんだろうな?]

 

穏やかながら強い目の口調でそう問いかけるのは中東地域で長年活動した情報員でMI6の長官を務める中年のダンディな男性だ。

 

【はい、あらゆる電子媒体においての消去残骸から物理化やスタンドアローンへ移されたデータも全て確実に破壊されています】

 

ホログラムの女性が流失先一覧、破壊方法とその証拠を全て長官が閲覧している端末に反映させ、長官の質問を的確に答えると長官は少しだけ微笑んだ。

 

[これほど見事なハッキングは見たことはない、、、君は元々生物学者だと認識しているがどこで覚えたかね?]

 

【インターネットの世界は広大ですから、、、同時に物理的なデータを見れない悲しさに苛まれる】

 

ホログラム越しでも見える探究者として全てを飲み込もうとする果てなき深い海のような目は長官の目をしっかりと見つめてその先のことをすべて見通す感覚が会議室を襲った。

 

【まだ世論に火を灯したばかりであり、油断できる状況ではありません】

 

あくまでもきっかけを作ったに過ぎず、まだ彼らの砂城を崩すには至らないので第二フェーズがあり、国際IS委員会が弁明した後にその信頼を失墜させ、その過程を繰り返して民衆主体の体裁で行うことで社会的信用を失わせることが次の目標になる。

 

失態を何度も何度も起こして弁明する人を信用しないという極めてシンプルな行動原理を最大限に利用したものであり、燃え盛った民衆という数の暴力で抗うことは困難だ。

 

[こちらが諜報員によって入手した情報を提供する]

 

【感謝いたします】

 

[協力してもらっている以上、我々が出し渋るのは紳士として宜しくないからな。ところで君は、、、世界をどうする気だ?]

 

【世界から我々の狂った成果を抹消することです】

 

その目には例え世界が敵対しようと成し遂げるという確固たる意思がはっきりと見え、長官はこれまで中東地域という危険地域で感じたことのない恐怖に近い何かを刻みつけられたような感覚に陥っていた。

 

(これは嫌な匂いがする。彼らが成そうとしていることが本当にそれだけなのか、、、見極めさせてもらうぞ)

 

 

 

 

 

 

 

 

世界はまた一つ変革の波に巻き込まれようとしていた。

 

果たして良い方向であるのかは神のぞ知るところであり、止まらない。

 

 

 

 

日本 市ヶ谷 防衛省

 

地下保管庫

 

 

 

特定機密文書『海上自衛隊 1等海佐 藤川翔に関する調書』

 

作成者:海上幕僚監部および情報本部

 

 

藤川翔 予備1等海佐

 

男性 39歳

 

京都府京都市出身

 

最終学歴:東京理科大学院先進工学研究科マテリアル創成工学専攻博士課程修了

 

出身期別:一般幹部候補生第94期

 

所属:特別警備隊(SBU)特殊小隊

偽装所属: 海上自衛隊 第2潜水隊群 直轄艦 アスチュート級改攻撃型原子力潜水艦1番艦「ニール」艦長

出向先:情報本部現地班情報部員

 

体力検定:1級

 

射撃:特級

 

隊司令褒賞

最優秀隊員賞

 

特記事項:

旧第五護衛艦隊の生存者

ISの共同開発者であり、動力部分に関する基本設計を担当

指名手配犯『篠ノ之束』との交流は確認されているが、入隊以前には絶えており、現在も続いていると推定される。

配偶者の死亡以降、独自の意思で行動している傾向にあり、監視を要する。

 

追記事項:監視の結果から我が国の根幹を揺がす事はないと判断する。しかし、一般幹部候補生第94期への政治的影響力は決して無視できないものであり、引き続き監視を要するが、慎重に実施されたい。

 

配偶者:藤川明美 [旧姓:冬川]

 

女性 36歳(当時)

 

最終学歴:東京理科大学院生命システム工学専攻博士課程修了

 

出身期別:一般幹部候補生第94期

 

最終階級:海将補(2階級特進処置)

 

最終所属:第1護衛隊群旧第5護衛隊 あきづき型護衛艦 (2代目) 一番艦『あきづき』艦長

 

体力検定:1級

 

射撃:特級

 

群司令褒賞

最優秀隊員賞

 

特記事項:

旧第五護衛艦隊事件、南西海域にて殉職したため2階級特進

IS共同開発者であり、生体電子等のシステム設計を担当

指名手配犯『篠ノ之束』との交流は確認されているが、入隊以前には絶えており、現在も続いていると推定される。

死亡直前におけるやり取りから配偶者の行動への影響を鑑みて調査中

 

追記事項:

本人を模した生体AIが稼働している可能性がある報告が確認されており、可能な限り詳細に関する調査を実施されたい。

 

 

 

 

 

イギリス ロンドン MI6

 

地下書庫:レベルゼロ

 

 

 

極秘文書『セシリア•オルコットに関する情報』 

 

作成者:ウィリアム•オルコット海軍中将

 

 

セシリア•オルコット オルコット家本家当主 男爵 海軍士官生徒 IS学園高等部一年生

 

SBS予備兵(超法規的処置)

 

専門:狙撃

 

戦歴:

アイアンウィート作戦(バルト三国におけるテロリスト掃討及び首謀者の殺害)

インディアンサーカス作戦(ピカデリーテロ阻止作戦)

バーボン作戦(スコットランド対テロ作戦)

ヴィヴ•ラ•フランス作戦(パリ大規模テロ阻止作戦)

チャーチル作戦(クーデター阻止および首謀団体掃討作戦)

クローバー作戦(北アイランドのテロ組織に対する掃討及び報復作戦)

グローリア作戦(ヨーロッパにおけるテロリスト掃討作戦)

メイフラワー作戦(米国製超小型戦術核回収作戦)

その他の複数のブラックオプス

 

イギリス代表候補生

IS: ブルーティアーズ

 

成績;優秀

 

 

特記事項:本人の親族状況

父親:オリバー•オルコット(旧姓:キャンベル)

 

死因:爆死(バーボン作戦における民間人の犠牲者)

 

元SAS隊員

 

在隊時の所属:A中隊およびCTW(対テロ中隊)

 

最終階級:大尉

 

専門:爆発物及びマークスマン

 

戦歴:

ロンドン大規模爆破テロ未遂事件

駐英日本大使館占拠事件

不朽の自由作戦

イラク戦争

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争

その他、複数の対テロ作戦

 

 

母親:エレノア•オルコット 前オルコット家本家当主 男爵

 

死因:爆死(カレドニアン•スリーパーにおける脱線事故、後に爆破テロと断定)

 

複数企業のCEOまたは顧問および経営者

 

スコットランド出身

 

特記事項:なし

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