仮面ライダー THE ANIMA ~陰の実力者になりたくて……~ 作:ロードすらいむ
「おめでとう、影野ミノル君!」
嫌に甲高い男の声で、僕は再び目を覚ます。
目覚めた場所がファンタジー風味溢れる中世ヨーロッパもといナーロッパではなく、先程トラックにはねられた山道の路肩であることを確認すると、僕は改めて自分がまだ生きていることを認識した。
「僕は……トラックにはねられて死んだはずじゃ」
「いいや、君はまだ生きている。実に素晴らしい受け身だったよ」
どうやらうまい具合に受け身をとれたらしく、幸いにも外傷はほとんどみられなかった。やはり身に付けた武術と鍛えた身体は裏切らない。
と、冷静な分析もほどほどに。
「さっきから一体何なんだよ、お前。僕は誰かに事故からの生還を喜ばれるほど、人の良いモブを演じていた覚えはないぞ」
暗闇に向かい、声を上げた。ほどなくして一人の男が闇の中から現れた。
狂気的な笑みを面に貼り付けた、痩せ型の男だ。
「君は決してモブなんかじゃない、選ばれた存在だよ。私は君が選ばれたことを祝福している」
「選ばれた……だって? 一体何に」
男の口角はより釣り上がり、心底嬉しそうな顔で僕に何かを言い放った。
「改めてオメデトウ、影野ミノル君。君は神聖なる【ショッカー】の一員に選ばれましたッ!!!」
その瞬間、パチパチパチとどこからともなく拍手が聞こえてくる。いつからそこにいたのかはわからないが、気付けば男の後ろには何十人もの人影が並んでいる。
その人影は皆同じ防護服とガスマスクを装着していて、その様はカルト宗教の集団を思わせる。
「その強靭な肉体、精神力、反射神経……君のような逸材を我々はずっと探していた! 是非我々ショッカーに加わり、世界を " 陰から " 変えようではないかッ」
興奮気味にまくし立てる男を前に、僕はしばらく立ち尽くすことしかできなかった。
───が、僕は一つ気になった。
この男、今『世界を陰から変える』と言わなかったか?
「───いや、たしかにはっきりと聞こえた」
僕の独り言がスイッチとなったか、拍手がピタッと鳴り止んだ。
「……ん? 何か気になることでもあるのかね影野ミノル君。心配せずとも、君にはそれなりの地位と待遇を保証しましょう。つまらない現実など捨てて、我々ショッカーと───」
「笑わせるなよ、おっさん」
地位? 待遇? くだらない。僕はそんなもの欲しくないし、望んでもいない。
僕が欲しいものはただ一つ。
「『力』だ。世界を陰から変えることができる程の、人知を超えた力を寄越せ。それさえ叶えば、僕はお前たちの望む実力者になってやる」
そう、「陰の実力者」その人に!
「……我々ショッカーには、人間を怪人に改造するための技術があります。細菌サイズのナノロボットを用いた改造手術で、君は超人へと生まれ変わることができる」
改造人間、か。悪くない。むしろ陰の実力者なら、その正体がただの人間であるわけがない。人知を超えた力のもとは、魔力じゃなくて最先端の科学技術にあったというわけだ。
「気に入った。その改造手術、受けてやる」
「クックック……君の持つ感性と我々ショッカーの理念は似ている。これなら脳改造の方も難なく済みそうだ……」
「……『脳改造』?」
「今の君が気にすることではない。さぁついて来たまえ」
男とガスマスクの集団に導かれるまま、僕はその場を後にした。
───ここから先、僕の記憶は少し途切れることになる。