仮面ライダー THE ANIMA ~陰の実力者になりたくて……~ 作:ロードすらいむ
「クックックックック……」
突然ホッパーは肩を震わせて笑い始めた。噛み殺すような笑いはやがて大袈裟なものとなり、静寂の色は一変する。
本郷は困惑気味に尋ねた。
「お、おい。どうしたんだ」
「───いや、おかしいことなど一つもない。ただ、眼の霧が失せただけだ」
「思い出したのか? 本当の自分を」
ホッパーは一瞬黙るが、まるで何事も無かったかのように続ける。
「思い出した? あぁ、思い出したさ。俺はショッカーによって創り出されたただの改造人間。量産型蝗怪人零号ゼロホッパーだ」
「……ッ」
「行くぞ、旧き蝗よ! ショッカーの定めし運命に背いたこと、後悔しながら沈むといいッ!!」
台詞の勢いのまま、ホッパーは本郷に殴りかかる。
本郷はホッパーの拳を掌で止め、受け流そうとするが───
「甘いな。その程度の回避行動、読めないはずないだろう」
「何!?」
ホッパーは振りかざした方とは逆の手を出し、思い切り前へ押し出し張り手攻撃を繰り出した。
点ではなく面の衝撃が本郷の腹部を襲う。鈍い音に遅れて、本郷は遥か後方まで張り倒された。
片膝を立て、本郷は嗚咽を漏らしながらホッパーを睨む。
「こいつ……さっきとはまるで別人みたいだ」
「霧は失せたと言っただろう。俺は目醒めた、闇に呼び戻された」
「手遅れだったのか……」
ふらふらと立ち上がる本郷に向かい、ホッパーは畳み掛けるように膝を打ち付ける。
本郷は咄嗟に腕を使って攻撃を防いだが、その行動が仇となった。
「腕を盾に使ったか。だが、それでは視界が制限される」
膝蹴りはあくまで前座。この一手の真価はこの先にある。
「───ッ!? 消えただと」
次の瞬間には、ホッパーはいなくなっていた。……いや、厳密には本郷の視界からいなくなっていた。しかしそれも数コンマ数秒間の出来事であり、早々にタネは明かされる。
「 " 上 " だ。その頭、踏み台にさせてもらったぞ」
声のする方を見上げると、そこにホッパーはいた。がら空きだった本郷の頭を踏み台にして上方へと跳び上がり、あの一瞬のうちに姿を消したと錯覚させたのだ。
しかも、ホッパーはただそこに居ただけではない。
「しまった!」
「……虫なら虫らしく、踏み潰されろ」
落ちてくるホッパーの踵を、本郷は脳天で受け止めてしまった。
幸いにもヘルメットが円形だったおかげで衝撃の大部分は受け流されたが、それでも本郷は大きな痛手を負うこととなってしまった。
ヘルメットの方も負荷に耐えきれず、複眼の一部は破損してしまっている。奥から覗く青年の顔は苦渋に染め上げられていた。
「ついに素顔を見せたな、本郷猛。仮面を剥がれた気分はどうだ?」
「お前……」
「悪く思うな。張り付けた仮面など、いずれは剥がれ落ちる定めにある。───そしてその時、お前は気が付くことだろう」
ホッパーは微笑を浮かべながら " あるもの " を取り出す。
それを掲げ、高らかに王手を宣告した。
「己に課された天命は、決して間違ってなどいなかったと!」
ホッパーはフルスイングで、握っていた「バール」を投げつけた。
「あがッ───」
バールは見事本郷のヘルメットに直撃し、火花を散らしながらどこかへ飛んでいってしまった。
膝から崩れ落ちる本郷を尻目に一言、
「バールはいいぞ。ポテンシャルがある」
と言い残しホッパーはその場から去ろうとする。
が、振り返るとそこに本郷はいなかった。
静寂に包まれた雑木林の中、バイクの走り出す音が風に乗ってホッパーを横切る。
「仕留め損ねた、か」
だが、計画通りだ。奴には生きていてもらわなくては困るからな。
ホッパーは、いや僕はあえてそのまま本郷を見逃し、再び静寂を取り戻した雑木林を後にした。