こだわり派喰種の人肉評論記   作:コーヒーはアイスコーヒーしか飲めない

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三皿目

 

「うわあああ‼︎」

 

 諸君、突然だが肉で好きな部位はなんだい?私はタンが大好きだ。あの独特な食感を知った日から、私はタンの虜だ。薄切り派か厚切り派かについては、また後日腰を据えて語り合おうではないか。

 

「ばっ…化け物めっ‼︎ヒィッ‼︎助けt…」

 

 1時間ほど前、唐突に、無性にタンが食べたくなってしまい、狩りに出てきてしまった。先週の工藤くんもまだ残っているというのに…えっ?工藤くんのタンはどうした?全部ミンチにして腸に詰めてしまったよ。こんなことなら少しくらい残しておくべきだったか…いや、少し残した程度では満足できなかっただろうし、結局狩りに出ていたな。

 

 ここで、私の赫子を紹介しよう。実は私は鱗赫と羽赫という2タイプの赫子を所持していてね。と言っても、太さも長さも申し分ない鱗赫に比べ、羽赫は肩甲骨の上に拳ほどの突起が左右に2つあるだけとなってるため、これを“羽”赫と呼んでいいのかは甚だ疑問である。

 だが、この小さな羽赫が存外役に立つ。この羽赫は電気を発生させることができ、その電気は鱗赫に纏わせることも可能なため、

「ぐぎぃっ!」

このように、射程の長いスタンガンとして扱える。

 電気で気絶させるというのはなかなか優秀で、余計な痕跡を残さないからCCG(ハト)の連中にも気づかれにくく、血酒の元となる血液を無駄に失うこともない優れた仕留め方なのだ。

 今回も余計な外傷の無い、綺麗な肉が手に入った。早速持ち帰って解体しなければ。

 

 解体時に最も重要な工程は何か?私は放血だと思っている。ここが不十分だと肉の質が数段落ちてしまうし、保存にも影響が出る。ポリタンクと漏斗を用意したのち、服を剝いでから獲物を逆さに吊るし、頸動脈か胸部大動脈をナイフで刺し一気に放血する。私は吊るしたが、逆さ吊りで解体するか、寝かせて解体するかは個人の好みだな。注意点として、放血時にナイフの刺入口が大きすぎると、漏斗からあふれて血を無駄にしてしまうから気を付けよう。

 

 放血が終われば、次は内臓の処理だ。まずは、獲物を降ろして寝かせ、内臓を傷つけないように腹を開く。特に膀胱や小腸・大腸を傷つけると悲惨なことになるので細心の注意を払う。その後、内臓を取り出し、腹の中を冷水で洗う。こうすることで血が抜けるだけでなく、温度が下がり身焼けを防ぐことが出来る。同じタイミングで取り出した腸も洗っておこう。

 

 内臓の処理の次は分割と脱骨だ。最初に肋骨と背骨を取り出し、肩甲骨、上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、腓骨あたりも順次抜いていく。あまりビビらずに、力づくで抜いて良しだ。その後の分割は、大型の刃物とかで分けるのが正解なのだろが、私は面倒なので赫子でやってしまう。

 今回は使わない頭部以外の枝肉は冷蔵庫にしまい、タンとついでに頬肉も切り出す。眼球と(ブレンズ)も抜いておくか。

 

 では、タンの下処理に移ろう。切り出したタンを軽く1分ほど茹でたら、表面を軽く削る。タンはあまり大きい部位ではないため、削りすぎると可食部がほとんど無くなってしまうから、軽く削るだけにとどめておこう。

 いよいよタンを切り分けていく。今回は、タン先を厚さ1㎜ほどの薄切りに、タン元を6㎜ほどの厚切りにしていく。厚切りの方は切れ目を入れておくことを忘れずに。

 

 タンの準備が出来たところでそろそろ私の我慢も限界だ、焼いていこうと思う。今回はフライパンではなく、網焼き機を使うことで、タンにはポテンシャルを最大限発揮してもらいたい。

 先に、薄切りのタン先の方から。焼き過ぎないように、表面がじんわりと濡れてきたタイミングを目安に何度かひっくり返し…頃合いだな。

 

 では、いただくとしよう。

 美味い。口いっぱいに広がる脂の旨みは、それでいてしつこくなく、いくらでも食べられる。そして、この柔らかさの中にある確かな歯ごたえ、私が味わいたかったタンの良さそのものだ。噛むほどにあふれ出す肉汁は、絶妙な焼き加減で旨み成分を肉の中に閉じ込めることが出来たことの証左であろう。

 

 次は厚切りのタン元をいただこう。まずは、切れ目を入れた面を下に、焼き色がつくまで焼いたらひっくり返す。反対側もカリッとなるまで焼いたら完成だ。

 こちらもまた美味いな。肉厚でコリコリとした食感はそのまま、さりとて硬くはなっていない焼き具合、完璧と言えるな。鼻孔をくすぐる香ばしさと、タン本来の味わいで、心が満たされていくのを感じるよ。

 

 幸せな時間はあっという間に過ぎるというもの、完食してしまった。やはりタンは良いものだな。一人から取れる量が少ないのが残念でならない。いつもの狩場を歩いていた名も知れぬ彼には感謝しきれんな。

 

 明日はどんな味に出会えるだろうか。

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