こだわり派喰種の人肉評論記   作:コーヒーはアイスコーヒーしか飲めない

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五皿目

 

 諸君、突然だがコーヒーは好きか?私は、というか喰種は皆コーヒーが大好きだ。喰種ならば誰しも一軒は行きつけの喫茶店やコーヒースタンドがあるのでは無いだろうか?

 

 そんな喫茶店で提供されるコーヒーも素晴らしいが、自分で淹れるコーヒーもまた一興というもの。先日、近所にコーヒー豆のチェーン店がオープンしてね。つい何種類も豆を買ってしまったので、今回はカッピングをしてみようと思う。

 

「しかし、カッピングをやるなら他の人の意見も欲しいところだ。」

「だから、私が呼ばれたわけですか。」

 

 彼はYH氏。喰種レストランで意気投合して以来、たまにこうして一緒に食事をしたり、コーヒーを楽しんだりしている。物腰柔らかな白髪の老紳士といった印象だが、結構戦えるタイプのようで、喰種捜査官(ハト)からの評価はSレートらしい。ちなみに私も、Aレート喰種『デンキウナギ』としてCCGにマークされている。いやまあ、確かに私の赫子の特徴をよく捉えてはいるが、もうちょっとなんか良い名前は無かったのだろうか…

 

「コーヒーといえば、20区にMM氏のおすすめの店があるらしいですよ。なんでも喰種が経営しているのだとか。」

「それは気になるな。今度行ってみようか。」

「ええ、是非。」

 

 MM氏イチオシの店はさておき、買った豆を確認していこう。今回購入したのは全部で6種類。エスプレッソブレンド、モカブレンド、ブラジル、コロンビア、キリマンジャロ、ブルーマウンテンだ。大体は200g千円前後だったが、ブルーマウンテンだけは4千円ほどしたな。値段に見合った一杯になるか楽しみだ。

 

「それにしてもカッピングですか。私、カッピングは初めての経験なんですよ。」

「貴方ほどの腕前ならば普通に淹れた方が美味いから当然だな。あと、同種の耐熱カップを複数用意する必要があるというのも、地味にハードルを上げてる気がする。」

 

 これからカッピングの準備に入るのだが、そもそもカッピングとはなんぞや?という方もいるだろう。カッピングまたはコーヒーカッピングとは、決められた工程で抽出することで、淹れる人物の腕前に左右されず、公平な条件で評価する手法だ。コーヒー版テイスティングという認識でだいたい合ってる。

 

 カッピングには、先ほど言ったコーヒーの種類分の同じサイズの耐熱カップの他に、カッピングスプーンとキッチンスケール、タイマーが必要となる。また、味が混ざらないようにスプーンを洗う必要もあるため、水とキッチンペーパーも用意しておくと良い。本当はこれに加え、カッピングシートやコーヒーノートを用意して、記録していくのだが、今回はそこまで本格的にはやらないため用意していない。

 

 まず始めに、豆を10g挽いていく。この際、あまり細かく挽きすぎないようにする。だいたい中挽きくらいが適切だろう。挽き終わったらすぐにお湯を注ぐのではなく、この段階で一度香りを確認する。この工程を『ドライ』と呼ぶ。

 

「やはり、挽きたての香りは良いですね。」

「それにしても、この段階ですでに違いが分かるものだな。」

「ええ、モカやキリマンジャロは他に比べて甘酸っぱい香りがします。」

「コロンビアやエスプレッソブレンドは、だいぶ深みのある芳ばしさだな。」

「というか、エスプレッソブレンドは相当深煎りなのでは?」

「確かにそんな感じがする。」

 

 そろそろ次の段階『クラスト』に移る。カップに100℃のお湯を注ぐのだが、この際に注ぐお湯の量は豆の重さと1:16になる必要がある。今回の豆は10gなので、一杯につき160ml注いでいく。注ぐスピードでも味が変わってしまうので、均一にすることを心がける。香りを確認するのはお湯を注いで1分ほど経ってからだ。

 

「ドライの時と比べて、柔らかい印象を受けるな。」

「甘い感じの香りに変わったからでしょうか。それに加え、香りの立ち方も穏やかになりましたね。」

「だが、それぞれの香りの特徴自体はドライに比べて顕著になったぞ。コロンビアはアップル系のフルーティさが、ブラジルはナッツ系やチョコレート系の香りが増した。」

 

 追加で3分ほど待つと粉が浮かんでくるので撹拌していく。味が混ざらないように、次のカップに移る前にはスプーンを毎回水で洗い、水分も味が薄まる原因となるのでキッチンペーパーで拭き取る。粉を沈めるように撹拌するので、粉の層で閉じ込められてた香りが一気に解放される。このタイミングで行う香りの評価が『ブレイク』だ。

 

「ブレイクというだけあって、堰を切ったような勢いで香りが広がるな。」

「まさに香りの爆弾と言ったところでしょうか。」

「それと、豆の香りからコーヒーの香りに切り替わった印象を受ける。」

「湯と混ざり、コーヒーに成った、といったところでしょうか。」

 

 いよいよ味を確認する『テイスティング』に入る。まずは、表面上の泡を2本のスプーンを使って取り除く。別に全部の泡を取り除く必要はない、というより味が変わってしまうので、かき混ぜてしまわないようにやさしく丁寧に行う。ここでも、スプーンは洗う事を忘れずに。

 余分な泡を取り除いたところで、コーヒーを味わっていく。

 

「確か、スプーンですくったのち、空気と共にズッと啜るのが正解でしたね。」

「その通りだ。では、モカブレンドからいただくとしよう。」

「私はブラジルから。」

 

「「美味い。」」

「酸味が強いがキツいといった印象はなく、むしろ優しいさわやかさといったところか。フルボディ寄りとのことだったが、口当たりも軽く非常に飲みやすいな。」

「ブラジルの方は酸味より苦味よりですね。ですが、酸味もちゃんと感じられますし、ちょうどいいという言葉が合いますね。全体的にクセもなく、基準としてこれ以上ないですな。」

 

 続いて私はキリマンジャロを、YH氏はエスプレッソブレンドを手に取る。

 

「キリマンジャロはモカブレンド以上の酸味だな。キレ味強めのスッキリとしたこの味は、朝に目覚めの一杯として飲みたいタイプだ。」

「先ほども言いましたが相当深煎りですね。酸味や甘味はほとんど感じられませんが、キレのある苦味と重厚感のある口当たり、鼻を抜ける芳醇な香りが満足感を与えてくれますな。」

 

 三杯目には私がブルーマウンテンを、YH氏はコロンビアを選ぶ。

 

「最初に酸味が来るがそこまで強くなく、後追いでやってくる苦味が余韻として残るな。風味豊かな味わいと香りが広がり、なめらかな口当たりの中にコクもある。まさに究極のバランス型だな。」

「コロンビアはフルーティな酸味を感じますが、甘味とコクがあるからでしょうか、スッキリというより飲み応えがありますね。」

 

 折り返しの四杯目、私はエスプレッソブレンドを、YH氏はモカブレンドをいただく。

 

「他に何種か飲んだ後だとエスプレッソブレンドは一段と濃く感じるな。まさにストロングテイストと言ったところか。」

「モカブレンド、フローラルな酸味が奥にある甘さを引き立ててると感じますね。」

「冷めたことによって甘味も感じられるようになったのだろう。この温度による変化を感じ取るのもカッピングの妙だと言えるな。」

 

 五杯目に入り、残りも少なくなってきた中で私はコロンビアを、YH氏はキリマンジャロを選択。

 

「氏が先ほど言った通り、コロンビアは甘酸っぱい風味であるが、しっかりとしたボディで飲み応えがある。が、酸味のおかげかクドくは感じないな。」

「キリマンジャロも甘酸っぱい風味ではありますが、コロンビアと違ってミディアムボディ特有の飲みやすさが良いですね。後味も、昔懐かしのコーヒーといった印象です。」

 

 最後の六杯目、私がブラジルを、YH氏はブルーマウンテンで締めとする。

 

「冷めてくるとブラジルは甘味が増してくるな。苦味との調和が取れていて実に美味い。」

「ブルーマウンテンはさすがの完成度ですね。最後の一杯として申し分ないです。」

 

 少しずつスプーンですくいながら味わって飲んでいたのに、気が付けば完飲していた。

 

「他と比べながら飲むことで、コーヒーそれぞれの長所をより鮮明に味わえた気がするよ。」

「ええ全く。今日は誘っていただきありがとうございました。」

「こちらこそ、自分以外の感想を聞きながらというのは新鮮で楽しかったよ。どうもありがとう。」

 

 本当に、突然の誘いにも快く応じてくれたYH氏には感謝しきれんな。

 

 明日はどんな味に出会えるだろうか。




察しの方もいらっしゃるかもしれませんが、清石くんが今回コーヒー豆を買った店はカルディです。
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