【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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91球目 部屋割り

 

 

 

3日間のU-18選抜合宿の初日が終わり、北海道ツナの寮に向かった北瀬達。

空き部屋が足りなかった為、1部屋に3人詰め込む事になっている。

まあ敷き布団はちゃんとあるので、身体に問題が起きる様な事はないだろう。

 

 

部屋割りは、なるべく他の選手と交流しろと言う事なのか、薬師5人組は全員別の部屋だった。

人見知りの北瀬や雷市は青い顔をしつつも、ドナドナと出荷されていくようだ。

 

 

 

 

北瀬の部屋は、市大三高の天久さんと巨摩大藤巻の本郷と一緒らしい。

彼は、どんな人達かなぁと緊張しながらドアを開ける。

 

 

___ガチャ

 

「よろしくお願いします! 薬師高校の北瀬涼です!」

「おー北瀬じゃん、ホントに同じ部屋なんだー……知ってると思うけど、いや知らないか?

とりあえず、俺は市大三高の天久光聖。よろしくっ!」

「…………」

 

市大三高の天久さんはニッカリと返事をしてくれたが、本郷はムスッと黙ったままだった。

 

だが北瀬は先輩に歓迎されて安心したのか、少し嬉しそうな声で返事をした。

 

 

「知ってます! 確かスライダーとカーブを使う凄いプレイヤーで、俺達も全力で当たらないと厳しいかもって監督が言ってました!」

 

全力で当たれば負けないという若干失礼な発言にも聞こえるが、天久は特に気にせずに会話を続けた。

 

 

「おー良く分かってんじゃん! あ、これも縁って事でメルアド交換しねぇ? 俺ら3人、U-18で戦う仲間だし」

「良いっスね! ……まあ、俺が最終的に選ばれるかまでは分からないですけど」

 

実力からすれば有り得ない、落選するかもと言う北瀬の言葉に対して、天久は内心ドン引きしながらこう返した。

 

 

「いや自己肯定感低っく、大丈夫かお前?

165kmのストレート+変化球4つの選手なんて、どう考えても選ばれるでしょ」

「でも俺、毎試合10点近く取られてますし……」

 

毎試合10近く取られているから選ばれないかもしれないという、北瀬の悲観的な言葉に呆れながら天久は冷静に話していた。

 

 

「それは薬師守備の問題っしょ、北瀬に非はねぇよ。多分

まあ良いや。薬師って新しい強豪校じゃん、部がどんな感じなのか教えてくれよ! 超気になる!」

 

天久先輩の言葉に、楽しそうに話し始める北瀬。

彼は薬師野球部の事が、かなり好きなので、人に話せるのが嬉しかったのだ。

 

「分かりました! ……えっと、どんな事を話せば良いですかね?」

「じゃーまずは、実質12人で戦ったって噂の春のセンバツの話してよ! ……急造部員だったんだろ? どうやって連れてきたんだ?」

 

天久先輩の言葉に、懐かしいなぁと思いながら北瀬はにこやかに話す。

いつの間にか、部員集めまで良い思い出になっていた様だ。

 

 

「ああ……あの時は部員集めもしたんですけど、誰も入ってくれなくて。結局テニス部から、部員を貸し出してくれる事になったんですよ!

来た人達は騙し討ちで連れてこられたらしくて、可哀想でしたけど、人数不足で負けたくないから仕方なかったというか」

 

北瀬の説明に驚愕した天久。そんな経緯で甲子園に出る選手なんて、前代未聞過ぎるだろと考えていた。

クールというか世間話に興味がない本郷も、流石にマジかよと驚いた顔をしている。

 

 

「えー……無条件で甲子園に出られるのに、誰も入ってくれないとかあるのかよ?! しかも騙し討ちで連れて来なきゃいけないとか……

まあ、キツい練習を熟すのはド素人にはキツイか」

「……いや、練習は佐藤くんしかやらなかったんですけどね

流石に無理矢理連れてきて練習させるのも良くないんじゃないかって事で、つっ立ってるだけで良いからって連れてきたんです」

 

連れてきた連中が、練習すらしていないとか……酷くね? 甲子園って聖地への冒涜じゃねーのとうっすら思った天久。

軽いノリの奴とはいえ、一応甲子園に対しての思い入れはあった様で、彼自身も自分の思考に驚いていた。

 

「えぇ…………それで甲子園優勝はヤバいな?!」

「まあ、佐藤くんは薬師打線に感銘を受けたとかで、自分から1週間位練習に付き合ってくれましたけど……最後に彼がフライをキャッチした時は、めちゃくちゃ驚きました!」

「……」

「ビデオで見た時は普通のフライに見えたけど……確かに1週間しか練習してないって考えると凄いな」

 

 

……

 

 

話は変わって、伊川のポジションについてになった。

彼の正規ポジションはセカンドで、人数不足の関係でキャッチャーも兼任していたという話を聞き、なるほどなぁと天久は納得している様である。

 

「へー、やっぱり伊川はセカンド希望なんだ。そりゃリードが上手くならねぇ筈だわ」

「伊川のリード、そんなに下手くそですかね? YouTubeで何時間か動画見たりして、割と頑張ってたと思うんですけど……」

 

北瀬が暴露した伊川の努力不足に対して、げんなりしながら天久はこう返した。

 

 

「そりゃYouTubeでちょろっと見た位じゃ、そんなに上手くならねーよ!」

「やっぱりそんな物なんですか……」

 

俺らってこんな奴らに負けてたのかよ……それに夏、エースは温存されてたしな。

まー腹立つけど、相手に舐められたままで終わる訳には行かねぇな___今年の夏、絶対コイツらを倒して全国に行ってやる。

 

ちゃらんぽらんな天久だが、彼は今、甲子園に行くことを強く誓い直した。

その影響がどこに現れるかは、まだ分からない。

 

 

……

 

 

暫く薬師について話した後、天久自慢の市大三高の部員達について話をしていた。

たまに笑えるジョークを言ったりしていて、話がめちゃくちゃである。

 

 

「で……アイツら1日1000スイングすれば、バットの精を宿せると思ってんのよ」

「マジすか! じゃあ俺達にも宿ってるかもしれないっすねー」

 

北瀬は笑いながら、薬師野球部員にも宿ってるかもしれないですねなんて話していた。

 

薬師高校のスイング回数は尋常ではない。

守備を捨てた分、打撃で盛り返せとばかりに毎日バットを振りまくっているのだ。

……あくまで彼らは、ホームランを狙う気しか無かった。

 

 

 

和気あいあいと話している彼ら(本郷は除く)

学校に戻れば甲子園を掛けて戦う敵だが、この3日間は味方であると認識しているのだ。

それに天久は、ついでに北瀬の強さの秘密が分かったらラッキーじゃね? という感覚でつるんでいた。

天久は、基本ノリの良い人間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、伊川の部屋には影山と御幸先輩がいた。

キャッチャー陣で固めているのだろうか? ……いや、伊川は捕手枠での招集ではない為、たまたまだろう。

 

 

彼は内心、知り合いが1人いて良かったとは思っていたが……野球狂のヤバい御幸先輩が同室なのは最悪だなと考えていた。

実際の所、御幸は上下関係に煩くない割とマシな先輩なのだが、ゆるゆる野球部所属の伊川は気付かない。

 

 

 

___コンコン

 

「失礼します、薬師高校の伊川始と言います。よろしくお願いします」

「おー、入って良いぞー」

「伊川! 北瀬のボールをキャッチするコツを教えてくれ!」

 

挨拶もそこそこに、唐突に伊川に対してキャッチングのコツを聞く影山。

向上心が強すぎる性格で空気が読めない、奥村の上位互換の様な選手なのだ。

 

伊川は一瞬ぽかんとしながらも、こういう奴だよなと納得して話し始めた。

 

 

「えー……普通に構えたまま、飛んでくるのを待ってれば良いだけなんだけど」

「うぬん。よく分かんねぇから、もっと教えてくれ!」

 

結果的に先輩である御幸を無視して会話を始めた、伊川と影山。

だが御幸もキャッチングのコツが気になっていたので、彼らの会話に真剣に耳を傾けていた。

 

 

「まず、飛んできて欲しい所に構えるだろ? 次に、北瀬が投げ始めるだろ? 最後はボールが飛んでくるから、タイミング良くミットを閉じれば良いだけだ」

「ん? つまりミットの位置は、全く修正しなくて良いって事か?」

 

影山は驚いた様な声で、伊川にこう質問する。

それに対して伊川は、普通の事を話す様に驚きの事実を告げた。

 

 

「それはした事ねぇな! 北瀬は絶対、構えた位置に投げ込むし。精々ズレてもボール1個分位だしなー。やる意味がねぇと思う」

「なるほど___参考になった、ありがとう」

 

参考になったとお礼を言われた伊川は、微妙な顔をしながら影山に対して質問した。

 

 

「こんなので良いのか? 俺、あんま参考になる事言ってねーと思うけど……まあ野球なんて感覚でやってるだけだし、細かい事を聞かれても困るけどな」

「いや、今まで北瀬と組んできたプレイヤーの経験は、すげぇ参考になる

……というか、理屈もちゃんと学んだ方が良いぞ? その方が強くなるし、もっと野球が面白いなる!」

 

影山がキラキラとした目で、理屈を学べばもっと野球が面白くなると口にしたが……伊川は懐疑的だった。

野球を面白いなんて殆ど思わないしと、内心考えているのだ。

まあ試合でホームランを打つのは、ガチャでちょっと良いキャラが出た時位には面白かったけど。

 

野球を学んだ所で面白くなる筈が無いと思ってはいるが、それは言い出し辛く、別の言い方をしてお茶を濁した。

 

 

「いやぁ……そうは言っても、たかが部活だしなぁ……」

「月島みたいな事言うなよ」

「チームの陰険メガネだっけ? なんか親近感湧いたな」

 

 

 

和気あいあいと話す2年生2人の話に、御幸は置いていかれていた。

彼にも話しかけた方が良いと思うが、この部屋にいる伊川と影山はそんな風に空気を読むことなど出来ない。

……いや、厳密に言うと、伊川は御幸に話しかけたくないだけな気もするが。

 

 

 

こうして、U-18選抜1日目は終わった。

明日はどんな事をするのだろうか……? 2日目の日程は説明されていない為、彼らはそれを知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

朝早く起きて、今日の練習に備えるU-18候補生達。

各自準備運動をしてグラウンドに到着すると、そこには稲城実業の皆さんが立っていた。

 

 

並木監督が、今日の日程について説明し始める。

 

 

「えー今日は軽く素振りをやった後に、稲城実業と練習試合をしてもらいます。急遽集められた俺達と違い、今までの積み重ねのチームワークがあるので強いです

ですが、俺達は日本代表候補として集められたプレイヤーです。絶対に勝つという気持ちで、試合に臨んでください」

 

「あっ、北瀬と影山には別行動して貰うから! 少しでも変化球を取れるようになって貰わないといけないんでね」

 

 

 

 

 

 

 

U-18に選ばれた選手は全員使う事にした様で、基本的には1打席+2回分の守備を行った選手から交代させていた。

 

1回から2回までの投手は、6安打1フォアボール3失点。

3回を投げた選手は、4安打1失点

4回から5回までは降谷が登板して、2安打3フォアボール無失点。

6回から7回までは天久が登板して、4安打1失点。

8回から9回までは本郷が登板して、0安打無失点。

 

ピッチャー陣は、この記録である程度の格付けが決まり、監督はどのピッチャーをU-18に呼べば良いのかを確信したという。

 

 

 

対して成宮鳴相手で、薬師高校のメンツの成果は……

伊川は2打席で、ツーベースを2回放ち、エラー無し。但し味方に衝突1回

秋葉は2打席で、三振とヒット、エラー無し

雷市が2打席で、ヒットとホームランを放つも、エラー2

三島は2打席で、フライとツーベース、エラー1

 

まずまずの成果を上げたと言って良いだろう。

最強クラスの打線と、貧弱な守備をありありと見せつけていた。

 

 

 

試合は5-9で、順当にU-18代表が勝った様だ。

……短時間で何回もエラーをしてくる奴らや、飛び出してくるセカンドに感覚を狂わされた結果、味方のピッチャー達が本来の実力が出せなかった可能性はあるが、真相は不明。

 

 

 

一方その頃、北瀬と影山はキャッチング練習をしていた。

超スローボールは取れるようになり、次はフォークを取ろうと練習しているらしい。

 

 

___バシッッ!

 

___バシッッ!

 

___バッ、ガツ

 

「ドンマイ、影山」

「クソッ、悪りぃ……次は捕る!」

 

 

___バシッッ!

 

___バシッッ!

 

 

……

 

 

途中休憩を指示された北瀬達は、ゆっくりスポーツ飲料を飲みながら少し話していた。

 

 

「クソッ、俺の実力不足だ……!」

「いやでも、フォーク8割位は取れてんじゃん! 別に良くね?」

 

北瀬が、なんの慰めにもならない甘ったれた事を言い放つ。

捕手が2割取れなくても、野手陣だって沢山ミスするんだから誤差範囲でしょと、本気で思っているらしい。

薬師野手陣とU-18代表候補の守備が、同レベルの筈もないのだが……

 

 

「良くねぇ! キャッチャーって言うのは取れて当然なんだよ、そこから先が、腕の見せどころなんだよ!

構えた所ドンピシャで飛んできてるのに、タイミングが掴めねぇし……絶対直ぐに、全球種取ってやるからな!」

 

「へぇ、そうなんだ……楽しみにしてるな!」

 

 

 

影山は、全球種を取ってやると宣言しているが……練習出来る時間は、合宿残り1日と、U-18本番前に集まる数日間しかない。

 

彼は、本当に全球種取れるようになるのだろうか? 

まあ影山がストレートしか取れなくても、北瀬が登板した試合は全部勝てる気がするが。

 

U-18合宿は、明日が最後。

プロ2軍との戦いで、何かを掴む事が出来るだろうか……?

特に、DH枠を雷市に取られている三島は、ファーストでスタメンを取るために頑張って欲しい。

 

 

 

 

 

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