【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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92球目 vsプロ

 

 

 

 

U-18合宿最終日。日本ツナファイターズタウン鎌ケ山の寮の中の、ミーティング室に彼らはいた。

並木監督がホワイトボードの前に立ち、今日スタメン出場する選手を説明し始めている。

 

 

「分かってると思うけど……今日スタメン出場する選手が、基本的にU-18代表になるから。出せなかった選手も何人か入れるつもりだけど、心構えして聞いてね」

 

『……ハイッ!!』

 

 

 

「まずは、4回裏までのオーダー

 

1番は藤澤くん センター

2番は秋葉くん レフト

3番は伊川くん セカンド

4番は北瀬くんだけど、DHで轟くんを入れる

5番は赤川くん サード

6番は遠本くん ファースト

7番は影山くん キャッチャー

8番は原くん  ライト

9番は真貝くん ショート

 

そして、7回表からのオーダー

1番は鳥山くん センター

2番はそのまま

3番はそのまま

4番は北瀬くん DHは無しに変更する

5番は三島くん サード

6番は遠本くん ファースト

7番はそのまま

8番は大場くん ライト

9番はそのまま

……以上が今回スタメンの選手になる」

 

『……ハイッ!!』

 

 

悲喜こもごもな選手達を尻目に、関根トレーナーが引き継いで話し始める。

 

 

「相手は格上のプロだけど、俺達にも勝機はある。エースピッチャーの北瀬なら、2失点以内に抑えられると思うからね

後は野手陣が、どれだけ援護出来るかっていう話だ。ここで君達の実力を見せて、プロにアピールして欲しい」

 

『ハイッ!!』

 

 

選ばれた選手達が、元気よく返事をした。

……雷市、北瀬、伊川の声だけは小さかったが。

 

三島は自分がスタメン確定の立場では無い事を悔しがり、雷市は特に何も考えていなかった。

……というか三島は、酷い守備を披露したのにも拘らず、サードで一応試してくれる事を感謝すべきではないだろうか?

 

 

ちなみにこの時代、DHを途中で解除出来る仕組みは無いが、今回は練習試合と言う事で通して貰ったらしい。

どうでも良い話だが。

 

 

 

 

 

 

 

1回表、U-18の攻撃。打順は1番藤澤。

走塁の神と言うべきな程走力に優れた選手で、打力も高いプレーヤーだ。流石は日本代表有力候補という事だろう。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 

だがそんな彼でも、プロのボールを打つ事は出来ずにあっさり三振にされてしまった。

まあ大人のプロ相手では仕方ない。

そう考えているのか、彼はあまり悔しそうでは無かった。

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで、打順は2番秋葉。

ミート力が高い打撃系で、守備はそこそこな選手である。

 

 

___ガキン!

 

「……アウト!」

 

当てに行く事は出来たが、ボールの芯と合わずにゴロを打ってしまった。

プロ相手なので、簡単にボールを取られてアウト。投壊野球所属の秋葉は、それでも悔しそうにしていた。

ミート力が売りの選手として、もう少し上手くやれたと思っているのである。

 

 

 

 

ツーアウトランナー無し、打順は3番伊川。

 

彼は監督の言葉を聞いて、こんな事を考えていた。

 

(プロにアピール出来るのか。じゃあマイナーリーグスカウトにもアピール出来るのかな? 少しでも良い条件で行きたいしなぁ……

相手は成宮以上のピッチャーだけど、なるべくホームラン狙おう)

 

実際の所、メジャーのスカウトを敷地内に入れていない為、ここで打った所で評価は上がらないのだが……そんな簡単な事を伊川は気付かなかった。

 

 

__カッキーン!

 

 

「伊川ー! ナイスホームラン!!」

「カハハハ……ナイスホームラン!」

「ガハハハ、後で俺も打つ!!」

「次も頼むぞー!」

 

あっさりとホームランを打ってしまった伊川。

U-18の選手達や監督、それにプロ選手達も啞然としていたが、薬師野球部員は驚かない。

気持ちよく歓声を飛ばして、ホームランを祝福していた。

 

 

そして、日本ツナの監督は、伊川の天才ぶりに脳を焼かれていた。

 

(今投げているのは、1軍間近のピッチャーだぞ?! なんという逸材……! やはり俺達は、絶対彼を1位指名するぞ!!)

 

伊川がマイナーリーグ行きを志望しているとは知らない監督は、この逸材を早く首脳陣に伝えなければと慌てていた。

 

 

 

 

呆然としている相手ピッチャー。

確かに素晴らしい逸材だとは聞いていたが、まさか高校生から初回ホームランを打たれるとは思っていなかったのである。

 

そして打順は、4番轟。

投壊野球の薬師の中でも、1番薬師らしい選手である……つまり、最高の打撃力に最低限度以下の守備力という事だ。

まあ今回は、DHで使うから関係のない話だが。

 

 

___カッキーン!

 

「よっしゃ2連続!」

「くそーっ……ナイス雷市!」

 

プロ相手に特大ホームランを放った雷市。動揺しているピッチャーなど、相手にもならないようだ。

相手ピッチャーも悪い選手では無いのだが、少しだけ打たれ弱かったらしい。

 

 

 

 

ツーアウトランナー無しで、打順は赤川。

超優秀なスラッガーであり、薬師高校の台頭までは高校最強の打者だと言われていた様だ。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

それでも、相手ピッチャーを打つ事は出来なかった。

日本ツナのピッチャーは持ち直してなどいなかったが、レベルが違い過ぎたらしい。

 

 

 

 

攻守が代わり、1回裏日本ツナの攻撃は1番のショート。

走力がかなり高く、1軍に代走要因として上げられそうな選手である。

本人はバッターとして試合に出たいらしいが……

 

 

___バシッッ!

 

「アウト!」

 

だがそんな速さも、打てなければ意味がない。

北瀬の剛速球に全く合わせられず、簡単にアウトを取られてしまった。

 

日本ツナの選手達は、引きつった顔を隠せない。

日本代表とはいえ、高校生に負けたら一生の恥だと思っているのである。

変化球4つ持ち相手に、チームメイトがストレートだけで押し切られた事にも衝撃を受けていた。

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで、打順は2番のレフト。

巧打が売りの、割と万能な選手である。悪く言えば、器用貧乏という事にもなるが……

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

そんな選手もものともせず、北瀬は簡単にストレートだけでアウトを取った。

流石は、高卒でメジャーに招集されている化け物である。

 

 

 

 

ツーアウトランナー無しで、打順は3番のファースト。

ミートもパワーも高い、優秀なバッターである。まあかなり守備は悪いが……当然、崩壊薬師守備程ではない。

 

 

___バジッ!

 

「ストライク、バッターアウト! チェンジ!!」

 

影山はここでフォークを解禁し、プロをあっさりアウトにしていた。

完璧には取れなかった様で、変な音がしていたが……メジャークラスのボールを取れているので100点満点と言って良いだろう。

 

 

 

……

 

 

 

7回表までに、秋葉は3打席ワンヒット、伊川は2打席スリーヒット1ホームラン、雷市は2打席ツーヒット1ホームランを放っていた。

……が、それ以外の選手は全く打てていなかった。ゴロとフライを何回か打っただけである。

まあそれでも、薬師打線の活躍で3点取れているが。

 

 

そしてピッチャーの北瀬は、今の所1つもヒットを打たれていない。フォアボールも出していない。

完全試合という言葉が、全員の脳裏によぎり始めていた。

 

プロ2軍の選手達は、負けるだろうけどせめて完全試合だけは崩そうという、悲壮な覚悟を決めつつあった。

なんせ、全く北瀬のボールを打てる気がしないのである。

どうしようもない理不尽を相手に、同じ年代に生まれなくて良かったぁなんて現実逃避をしている選手もいた。

 

 

 

 

8回裏、U-18の攻撃は3番伊川。今日の彼は、ホームランを狙っている。

 

 

___カッキーン!

 

何とかホームランになりそうな打球を放った彼だが、かなり顔が引き攣っていた……凄く嫌な予感がしたのである。

 

 

___バシッッ!

 

相手センターが、ネットを超えていきそうな打球を掴み取る超ファインプレーを見せ、伊川はアウトにされてしまった。

何気に伊川にとって、普通に打ちに行ってアウトにされたのは始めてだった。

 

 

マイナーリーグにアピールする筈だったのに……と、内心落ち込みながらベンチに帰っていく伊川。

そもそも今日、マイナーリーグのスカウトは来ていないのだが、そんな事を彼は知らない。

 

 

「敵は俺が取る!」

 

凹んでいる伊川を見て、北瀬は楽しげにそう宣言した。

強い相手を打つのを元から楽しみにしていた様で、更にやる気が上がっていた。

……伊川は始めてマトモに勝負に負けて凹んでいたが、彼はそこまで野球が好きではないと薄々気付いている北瀬は、特に心配などしていなかった様だ。

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで、打順は4番北瀬。轟のDHを外して、彼に打たせてみる事にした様だ。

完全試合達成の為、少しでもスタミナを温存させようかとも考えたが……明らかに体力が有り余っている為、予定通り出す事にした様である。

 

 

___カキーン!

 

アーチスト・エースキラー・超長打跳躍の3つがフル稼働した北瀬は強かった。

簡単に2塁打を放ち、楽しそうにベンチの反応を伺っている。

 

 

「カハハハ……ナイス北瀬!」

「ガハハハ、次は俺が打つ!」

 

 

 

 

ワンアウトランナー2塁で、打席にはやる気がみなぎっている三島。

 

 

___ガキーン!

 

力任せにボール引っ張り、ツーベースヒットを放った。

プロ相手にこの力技。これには思わず、U-18の監督達も唸っている。

 

 

「三島くんの守備は悪いですが……どこかでスタメン起用したくなってしまいますね」

「そうですね。優秀なプロ相手に、最初から打てるのは素晴らしいですよ!」

 

意外と足も速い北瀬は、悠々とホームイン。これでプロ相手に4点差を付けてしまった。

 

 

 

 

6番遠本は簡単にアウトにされて、スリーアウトチェンジ。

これで試合は、9回表に入る。

 

 

……

 

 

4点差、ツーアウトランナー無しで、打順は9番のキャッチャー、原田雅功。

稲城実業の元キャッチャー兼キャプテンだった男だ。

 

 

 

___ガギ

 

北瀬-影山バッテリーは、完全に討ち取った当たりを出したが……コロコロと転がっていくボールを、サード三島が落球。

1番楽なサードとはいえ、元々守備が下手くそな上に慣れていない守備位置では、こうなる事は予想されていただろう。

 

エラーの可能性は元から考えていたとはいえ、残りワンアウトで完全試合目前でのやらかしに、並木監督達は頭を抱えていた。

この偉業目前の時にやらかした三島と、北瀬の仲が悪くなるかもしれないと一瞬思ったのである。

 

 

「ゴラーッ! 何やっとんじゃ三島!! ふざけんな!!」

「えっ、すみません?!」

 

当然、CL学園の遠本から罵声が飛んだ。

北瀬の、プロ相手での完全試合を阻害したのだから当たり前だろう。

……だが崩壊守備に慣れきっている三島は、なぜそんなに怒っているのか分からなかった様だ。

えっ、そんな怒られるんですか? みたいな顔をして謝っている。彼もまた、薬師野球部の常識に脳みそが支配されていた。

 

北瀬も、三島が怒られて可哀想だと思ったのか、慰めの言葉を掛けていた。

 

 

「ドンマイ三島! 次はきっと取れるよ!」

 

完全試合を崩されておいてこの対応。周りの選手達は、聖人か何かかなぁと思った程寛容な対応だった。

……というか後ワンアウトで試合終了なのに、次の機会なんてあるのだろうか?

 

 

 

その後、プロ2軍の1番は簡単にアウトにされ、試合終了。

4点差をつけてU-18が勝利し、北瀬はノーヒットノーランを達成した。

 

 

「試合終了! 0-4で、U-18の勝ち! 礼!!」

『ありがとうございました!!』

 

 

 

素晴らしい偉業を打ち立てた北瀬。

だが彼は、何で1点も取られなかったのだろうと困惑していた……いつもエラーで点を取られまくっている為、自分の能力を過小評価しているのである。

 

 

ちなみに、実は9番キャッチャーとして試合に出ていた元稲城実業のキャッチャー、原田雅功。

彼は北瀬達の無双を見て、鳴達は大丈夫か……? とめちゃくちゃ心配していた。

 

多分、その懸念は正しいだろう。

薬師高校のキャッチャーである由井は段々と育ちつつあり、北瀬のボールに限ればU-18の影山に近い程取れるようになって来ている。

プロ2軍相手にノーヒットノーランを達成出来るピッチャーを倒さなければ、稲城実業は甲子園に行けないのだ……流石に可哀想過ぎる。

 

 

 

 

試合が終わった後、U-18メンバーが帰り支度をする前に、並木監督が今回の総評を告げていた。

 

 

「今回の合宿は色々な意味で薬師高校出身が目立っていましたが、他の選手達の優秀な能力もしっかり見せてもらいました

 

今から呼ばれた選手が、俺達が最終的にU-18に選んだ18名です。まずは2年生から

北瀬くん、本郷くん、降谷くん、影山くん、伊川くん、轟くん、三島くん、円城くん、秋葉くん、原くん

 

残りの、3年生を発表します

天久くん、御幸くん、赤川くん、真貝くん、遠本くん、藤澤くん、

それに、今日合宿に参加していない成宮くんと、カルロスくん

以上の選手が、キューバで戦うメンバーになります」

 

___パチパチパチパチ

 

選ばれた選手は嬉しげにしているが、選ばれなかった半数の選手は俯いていた。プロ相手での試合に選ばれなかった事で覚悟はしていたが、それでも悔しくて仕方なかったのである。

 

……それでも、彼らは選ばれた選手の健闘を称えた。

スポーツマンシップに溢れた、素晴らしい行動である。

 

 

「野球というのは、才能も大いに関係するスポーツです。

ですが、それを見た上で立ち上がれる選手だけが、プロになれる資格を持ちます___君達なら、U-18初優勝を必ず達成出来ると信じています

選ばれた選手も、選ばれなかった選手も。これからの活躍を期待しています。今回はありがとうございました」

 

『ありがとうございました!』

 

 

薬師高校から、U-18日本代表メンバーが5人も選出されてしまった。

この衝撃の展開は、朝のニュースで大きく報道される事になる……投壊薬師高校の名は、高校野球に興味のない人にも大きく知られていたからだ。

 

謎のおっさん達からも熱い支持を得て、今回も差し入れが大量に届いた様だ。

問題ない物品かどうかまで調べている片岡コーチは、非常に多忙だと言えるだろう。

当然教員も動員して調べているが、野球部の責任者を置いておきたかったらしい。

 

 

 

ちなみに、内心日本代表という言葉に内心ビビっている北瀬と伊川。

元々彼らは、割と小心者だったのだ……甲子園優勝校の選手とは思えない弱いメンタルである。

 

そんな彼らは、夏の甲子園決勝が終わって1週間程したら、今度はU-18日本代表として戦う事になる。

ギチギチの日程ではあるが……頑張って戦い抜き、日本に初優勝を齎して欲しい。

 

 

 

 

 




キャッチャー組の才能を

影山は、メジャー選手になれるかも
御幸は、国内最高レベルのキャッチャーになれる
奥村は、プロで正捕手を掴める可能性も割とある
由井・円城は、プロで正捕手を掴める可能性も少しある

程度として書いてます
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