【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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成宮とカルロスは、U-18当確だったから合宿に参加しなかったという描写に変更しました。すみません


93球目 練習

 

 

 

U-18合宿が終わって皆が後片付けをしている最中、北瀬が青森安良の真貝さんがいる部屋を訪ねていた。

 

 

___コンコン

 

「薬師高校の北瀬涼です……失礼します」

 

入室して来た北瀬に、部屋にいる3人は慌てていた。

2年生とはいえ北瀬は明らかに格上の選手である上に、薬師野球部以外は、プロ相手とはいえ1度も安打を放てていなかったのだ。

当然萎縮位はしてしまっていた。

 

だが北瀬は、以外な事を言いに来ていた様だ。

 

 

「あの、真貝さん……春のセンバツの時、骨を折ってしまってすみませんでした」

「……いや、まあアレは北瀬さんは悪くないですよ!」

 

 

(えっ、俺相手に敬語を使ってる? 聞き間違えたかな??)

 

3年生の真貝さんが敬語を使ってくる事に困惑している北瀬。

何かの間違えかなぁと思いつつ、相手の言葉に耳を傾けていた。

 

 

「それに、綺麗に折れてたらしくて2ヶ月弱で治ったんで問題ないっすよ!」

「許してくれて、ありがとうございます。でも、そんなに掛かったんですか……」

 

骨折位なら3週間位で直せる北瀬は、大怪我をさせてしまって申し訳ないという顔をしながら話していた。

虚弱体質の真貝さんは、大変だなぁとも思っている……実際の所、彼は健康体なのに怪物球威によって怪我をしたのだが、それを北瀬は知らない。

 

 

「いやいや、手首を折って2ヶ月なら運が良い方ですよ。後遺症も残らなかったし

……それに折れたのは、カット打ちをした俺の普通に自業自得ですから、北瀬さんが気にしなくても良いっすよ?」

「それは…………というか、何で俺に対して敬語を使っているんですか? 一応俺、2年生なんですけど」

 

堂々巡りになりそうな話を続けようとしていたが、北瀬はやはり俺の年齢を間違えているだろうという事に気付いて、訂正を入れた。

真貝はその言葉を聞いて、流石にそれは知ってますけどと苦笑いしながらこう答えた。

 

 

「いや、実力に差がありますからね。実力主義の俺としては、敬語を使いたくもなりますよ!」

「へぇ……そうなんですか……?」

 

野球の実力なんてあまり気にしていない北瀬は、困惑した表情をしながら一応返事をしていた。

実力と年齢って関係なくないか? と思っているのである。

 

そして彼は、自分の事を特別優れているとは思っていないので、真貝さんの供述は意味不明だった。

……まあいっかと、その場では流していたが。

それにこのままだと、先輩に敬語を使わせていると悪評が立ちかねないのだが、彼は大丈夫だろうか?

 

 

 

会話が終わる辺りで、メルアドを交換する事になった北瀬。

真貝は、未来のメジャー選手の連絡先を手に入れたと内心ウキウキだったらしい。

 

昔怪我したのは凄くショックだったけど、北瀬さんが甘い性格で割と得をしたな。

もし俺がメジャーに行ける事があったら、彼に色々聞けるなぁと喜んでいたのである。

彼もまた、上昇志向の強い人間だった。

 

 

 

 

 

 

帰りの電車に乗りながら、薬師高校の2年生達は楽しげに話していた。

 

 

「全員、U-18に選ばれて良かったなぁ!」

「そうだな。雷市、北瀬、伊川は選ばれるだろうと思ってたけど、俺らも選ばれて嬉しいよ!」

「カハハハ……沢山打つ!」

「フル出場出来なかったのは悔しいが……選ばれたからには全力で戦ってやるぜ!」

 

普通に楽しげに話している三島に対して、つい秋葉はこう零していた。

 

 

「いや、優太がフル出場出来ないのは守備が酷いからだろ……もう少しエラーを減らしたらどうだ? 北瀬の完全試合も崩した所だし」

 

その言葉に、まあ正論だよなと思った三島。

だがそれを理解しつつも、こう言って提案を断ってしまった。

 

 

「……ここ1年で急激に打撃が成長してるからなァ。ホームラン狙うのが楽しすぎて、辞めたくない!

今の俺なら、どんなボールだって打てるからな!!」

「カハハハ……ワカル!!」

 

野球狂の雷市も、三島の言葉に非常に共感していた。

薬師打線での異常な成功体験は、選手の思考すら変えてしまっていたのである。

元々パワー型の選手だったとはいえ、三島は守備を疎かになどしていなかったのだが……今の彼はホームランに支配されてしまっている。

 

まあ彼はプロになったら、DHとして活躍するであろうから問題ないのかもしれないが……いや、やはり高校時代から守備を捨てるのはよろしく無いのではないだろうか?

 

 

 

 

 

 

薬師高校の寮に帰ってきた北瀬達。

出迎えてとは言っていないにも拘らず、3軍の選手の多くが出迎えてくれていた。

 

太平が代表して、彼らに祝いの言葉を言った。

 

 

「北瀬先輩! 伊川先輩! 雷市先輩! 秋葉先輩! 三島先輩! U-18代表選出おめでとうございます!!」

『おめでとうございます!!』

 

『ありがとう!』

「ガハハハ、まあ当然だな!」

「カハハハ……アリガトウ!」

 

口を揃えて祝ってくれる後輩達に対して、お礼を言う北瀬達。

先輩達が選ばれた事を喜びながら、太平はこう宣言した。

 

 

「俺、先輩達の勇姿を絶対見ますから! 活躍楽しみにしています!!」

「ありがとう。優勝目指して、俺達頑張ってみるよ!」

「ガハハハ! 俺もホームランを打つから、期待して良いぞ!」

 

このままグダグダ行きそうな流れを見て、割と冷静な伊川が荷物の片付けの指示を出そうとした。

 

 

「そろそろ寮に戻らないとな……日も落ちてきたし」

「そうだな……出迎えてくれてありがとう!」

 

そう言って北瀬は荷物を持ち直そうとしたが、よく北瀬の事を見ている熱心な1年生が、目の前に飛び出してこう言った。

 

 

「北瀬先輩、お荷物お持ちします!!」

「いや、うーん……じゃあ頼むわ」

 

1人の後輩の動きを見て、我こそはと先輩達にむらがる1年生。

素晴らしい活躍をした先輩達に憧れて来たライト勢なので、推しの野球選手へ貢献する感覚である。

 

 

「伊川先輩! 俺が荷物持ちますよ!」

「雷市先輩! 今持っていきますね!」

「三島先輩! 部屋までお持ちします!」

「秋葉先輩! 荷物持っていって良いですか?!」

 

「あ、ああ、ありがとう……?」

「カハハハ……」

「えっ、良いのか? ありがとな!」

「無理に俺まで持ち上げなくても良いのに……ありがとう、助かるよ」

 

 

1年生の圧に流されて、部屋まで荷物を持ってきてもらう事になった彼ら。

自分のベッド周りを散らかしていた三島は、後で少し落ち込む事になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

普段通り自主練習の時間に、由井とキャッチング練習をしていた北瀬。

そこに結城が現れて、メラメラと闘志を燃やしながら彼らにこう声を掛けた。

 

 

「北瀬さん___バッターとして、勝負させてください」

 

その言葉に対して北瀬は、なんかやる気入ってるなぁと考えながら気軽に了承した。

 

 

「まじで? ……じゃあ由井、グラウンドで受けて貰って良いか?」

「ハイッ!!」

 

 

 

 

北瀬達が向かったのは、1軍のグラウンド。

そこでは秋葉や2軍の選手の一部が、片岡コーチのノックを受けていた。

 

北瀬は片岡コーチに対して、今グラウンドで勝負をしても大丈夫かどうかを聞いた。

 

 

「あのーすみません、今結城と勝負する事になったんですけど、グラウンド使う事は可能ッスか?」

「良いだろう___だが結城だけではなく、ここにいる9人にも勝負をさせる事が条件だ」

「分かりました! アザース!」

 

 

 

片岡コーチがノックをしていた時の陣形のままの守備で、北瀬がマウンドに立った。

相手は、薬師高校1年生の中でトップクラスの打力を誇る結城。

 

ちなみに、審判は片岡コーチが引き受ける様だ。

 

北瀬は、なるべく三振に抑えたいなぁなんて考えながら、由井の指示通りに投球した。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!」

 

___ズバシッッ!

 

「ストライク!」

 

___バシッッ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

 

 

ボール球に手を出させ、簡単に三振にさせてしまった北瀬-由井バッテリー。

 

 

「凄いなぁ由井は! 結城を簡単に三振にしちゃうとか、最強のリードだな!」

「いえ、北瀬さんの実力だと思います!」

 

お互い謙遜し合っている薬師バッテリーだが、言っている事は由井が正しい。

165kmのビタビタストレートがあれば、キャッチャーが何もしなくてもアウトを取ることが出来るのだ。

……いや、伊川みたいに足を引っ張ってくるキャッチャーと組んでいるなら話は別だが。

 

 

「北瀬さん、ありがとうございました……次は打つので、また練習よろしくお願いします」

「おー、またな!」

 

結城は、もっと打撃力を上げねばと考えながら、次のバッターの為に守備に付いた。

彼は恐らく、元々悪い守備を気にせず、打撃力に特化した選手に育っていくだろう……こんなんだから薬師野球部はDH育成校だとか言われてしまうのである。

 

 

 

 

次は、薬師高校1番打者の秋葉。

他の学校の主砲なんかより明らかに強いにも拘らず、薬師高校特有のマシンガン打線によってあまり目立たない、不運な選手である。

守備だって彼が支えているのに、ファインプレーがないというだけで目立たないのだ。

 

 

___ガギ

 

そんな彼はエースと偶に勝負をしている事もあり、何とか掠らせる事に成功するも、真上に打ち上げてしまってキャッチャーフライになった。

 

 

「ナイス由井!」

「ナイス北瀬さん!」

 

好打者を討ち取った事により、笑顔で声を掛け合う北瀬-由井バッテリー。

なんだかほんわかした空気が流れている。

 

 

……

 

 

他の2軍の部員8人も三振に討ち取って、じゃあそろそろ戻ろうかな由井がキャッチャー防具を外そうとした時、大きな声を架けられた。

 

 

「ちょっと待ったー! 俺も打ちたい!! ます!」

 

現れたのは、日本語の怪しい火神である。

 

キラキラした目で見てきたので、もう休憩しようと思っていた北瀬は、やるかぁと思って質問した。

 

 

「俺は良いけど……片岡コーチ、大丈夫ですか?」

「___許可する」

 

 

ワンアウトツーストライクと、追い込んでからの1球。

北瀬は油断したつもりは無かったが、バットから快音が鳴り響く。

 

 

___カキン!

 

ついこの間、プロ相手にノーヒットノーランを達成したにも拘らず打たれてしまった北瀬。

ミートAパワーAでアーチスト持ちの火神は、今からでも打撃だけ考えればプロ1軍で通用する選手であり、北瀬であれど打たれてしまう場合があるのだ。

 

 

「うわっ、打たれちゃった……火神すげぇな!」

「おう! 北瀬の球も、びっくり唸りを上げててスゲェと思いました、です!」

 

爽やかにお互いの健闘を称え合う北瀬と火神。

彼らは、割とスポーツマンシップに溢れた選手でもあるのだ。

 

 

「そうか? ありがとな! ……やっぱり火神は、将来の4番だよなぁ!」

「アザッス! でも俺は、北瀬センパイ達がいるまでに4番に成ろうつもりなんで!」

 

好戦的な火神の発言に、ニヤッとしながら北瀬も答えた。

 

「そっか……俺も、火神や雷市に負けない!」

「おう!」

 

火神と初めて会った時のイメージとは違って、かなり良い奴だなぁと思い始めている北瀬。

かれらは学年を超えた友情を深め始めていたが、その頃由井は内心かなり落ち込んでいた。

 

(北瀬さんの実力なら、火神くん相手でも絶対負けないんだ。それなのに負けたのは、変化球を取れない俺のせい……もっと頑張らないと)

 

 

もっと頑張ろうと心に決めた由井。

だが最近、オーバーワーク気味になりつつあるが、大丈夫だろうか……?

地方大会まで後1か月、焦る気持ちは確かに分かるが、故障しない様に気を付けて欲しい。

 

 

 

 

 

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