【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
ここまで書き続けて来られたのは、誤字報告をしてくださる方やここ好きを推して下さる方、評価を入れて下さった方や感想をくださる方に、シナリオを提供してくださる方のお陰です!
本当にありがとうございます。これからも完結まで頑張って行くので、できれば最後までよろしくお願いします!!
活動報告で頂いた設定集
西東京の強豪の一角、打の青道……と呼ばれていたが最近は薬師の印象が強すぎる為あまりそう呼ばれることがない
正直監督自身が来年の夏までは甲子園を諦めている節があり、実は士気が低くなっている
重要人物
沢村栄純
関東大会の完敗を経て思考錯誤を繰り返し大きく成長
純粋な球速アップに加えて多彩な変化球を習得しており今や降谷と並ぶ立派な主力投手の一人
北瀬に対する対抗意識は一切衰えておらず、その打たれ強さと向上心からくる成長は監督からの評価も高い
降谷暁
圧倒的な豪速球が持ち味の誰もが認める青道の2年エース
U18の選抜で北瀬の正捕手を決定するための試運転で誰も正確に捕球できない姿で中学の頃を思い出して複雑な心境になっていた
立ち上がりと暑さに弱いが、最近は克服しつつある
「今は君の方がずっとずっと強い…それは分かってる…だけど、勝つのは僕ら青道だ、勝ちは、譲らない……!」
御幸一也
キャッチャーとしてのあらゆるテクニックを含めた能力は超高校級と呼ばれるものの、流石に北瀬の怪物変化球をいきなり捕球するのは難しかったようだ
勝てば市大、負ければ甲子園の土を踏めぬまま引退となる
「えええええ!? 御幸先輩駄目だったんですか!? 『北瀬を真に輝かせるのは俺だ』みたいなこと言ってたのに!?」
「うるせーな、俺が1番ヘコんでるんだよ! クソっ北瀬とバッテリー組むほぼ唯一のチャンスだったのに!」
「御幸先輩……北瀬君の球落とした時秋大会で稲実に負けたときと同じ顔してましたね」
「おい言うなってそれ!」
(こいつにはU−18で宙吊りだった北瀬の正捕手の座を勝ち取り『日本最強投手の相方』という箔を……と思っていたんだが……まああの怪物速度の変化球をハイとってくださいと言われても、無理だったものは仕方ないか)
5回戦、薬師高校vs青道高校を迎える前日、青道野球部の食堂にで何やら沢村が騒いでいた。
「沢村にとっては2年目の、そして先輩達3年生にとっては最後の夏となる夏季地区大会
5回戦の相手は昨年夏青道を降し、センバツ優勝した薬師高校
破城槌とまで言われる圧倒的な攻撃力、そしてメジャー級とまで言われる日本最強のピッチャー北瀬を相手に沢村は、青道は戦えるのか___
……ってこれ漫画だったら最終回の相手っすよね!?地区5回戦の相手じゃないでしょ!?」
「変なナレーションいれんな! っつーかなんでおめーが主人公なんだよ!!」
「痛い! 痛いっス倉持センパイ!!」
無駄にそれっぽいナレーションを1人で話し始めた沢村に、イラッとした倉持は彼の頭を強く叩いていた。
当然それにクレームを入れる沢村。だが、皆がピリピリしている時にそんな事を言う方が悪い気もするが……
「自分と同じ左腕の日本最強投手とチームを倒す、それが、新・沢村伝説の始まりだー!!」
「それもう打ち切りのラストだろ……」
怒られた直後にも拘らず、沢村は直ぐにナレーションを再開して締めに掛かった。
彼の言葉に今回は御幸がツッコミを入れている……倉持はツッコミを放棄したらしい。
和やかな空気(?)を沢村によって強制的に作り出された青道一同だが、明日の試合に対してメラメラと闘志を燃やしていた。
相手が高校最強打線だろうと、俺達は勝って甲子園に行く!
そんな風に一心不乱に勝利を目指す彼らが、薬師野球部に勝つ事は出来るのだろうか……?
ちなみにまだ判明していないが、明日薬師高校が先発させるピッチャーは沢村が語った通り北瀬である。
ついにやってきた、薬師高校vs青道高校の5回戦。
コールド勝ちした事もあるとはいえ、明確な強豪校相手に薬師野球部員は奮い立っていた。
投壊野球部なので、ある程度の実力があるチームにはあっさりと負けかねないからである。
轟監督は、段々と口を釣り上げて凶悪に笑いながら、選手達にこう声を掛けていた。
「相手も、強打と謳われる青道高校……だが、俺達の打撃の方が強い! 今日も楽しんで! お前ららしいスイングで! 青道の奴らに格の違いって奴を教えてやれ!!」
『ハイッ!!』
勢いよく返事をする薬師部員達。
スタメン組は、つまりホームランを狙い続ければ良いって事だなと理解した。
別に監督はそこまでしろとは言っていない気もするのだが。
まあ彼らの持ち味と言ったら、打撃力ではなくホームラン数だと思っているらしいので仕方ないだろう。
ちなみに監督が凶悪な笑い方をしていたのは、大エース北瀬をマトモなリードで活かせるのは、公式戦で始めてだったからである。
あまりにも嬉しすぎて、変な笑いが出てしまっていたのだ。
対して相手チームの落合監督は、あくまで冷静な声でこう話していた。
「相手は国内最強の大エースに強力な打者陣だが、絶対に勝てないという訳でもない。前にも話した通り、彼らを攻略出来るとすれば相手キャッチャーの弱点を付く事だ
……よし、それじゃあ勝ちに行くぞ」
『ハイッ!』
心の籠もった声で返事をする青道野球部員達。
俺達なら出来る、絶対勝ってみせると、闘志が大きく燃えていた。
だがそれを指揮する落合監督は、内心こんな事を考えていた。
(とは言っても……昔の伊川のリードと違って、由井は普通にちゃんとリードしてくるのが痛すぎるな。ぶっちゃけ勝てないだろコレ)
選手を信じる片岡前監督と違い、落合監督は冷静にデータを分析するタイプなので、勝てる可能性は1%位かなと非情な事を考えていた。
まあコントロール◎の165kmピッチャー+高校最強打線を有する薬師高校相手では、そう考えてしまっても仕方ないと言えるだろう。
今全力を尽くそうとしている選手達からしたら、たまったものでは無い気がするが……
薬師vs青道という好カードにより、5回戦にも拘らずスタンドは満席状態で、立ち見をしようとしている人までいる状態だ。
観客達は、始まるまで近くの人と今回の試合について述べ合っている様である。
「薬師相手に、どこまで青道は戦えると思うか?」
「薬師の先発って北瀬だろ? 5回コールドにされてもおかしくないよなぁ」
「あーあ、降谷と御幸は甲子園で見たかったなぁ」
「降谷は運が良けりゃ春のセンバツで見れるだろ!」
ここにいる観客の殆どが、薬師高校の勝利を確信していた。
当然だろう。マトモなキャッチャーを得た165kmを、どうやって打てば良いのか。
それでも一部の熱心な青道ファンは、祈るように彼らの勝利を期待している。
1回表、薬師高校の攻撃は1番秋葉。
ミート力が高い上にホームランも狙える、ある種理想のバッターである。
全国で5本の指に入るかもしれないと言われるバッティングに憧れる中学生達も多い。
……ちなみに5本の指に入ると言われているのは雷市・伊川・北瀬・三島・秋葉・火神と、全員薬師勢である。どうしてこうなった。
対して、青道高校の先発ピッチャーは降谷。
全国2番目の球速を持つ投手であり、ネットの書き込みによると最近157kmを出したと言われている。
コントロールの甘さは目立つが、それでも彼の速さが武器になる事は間違いないだろう。
___バシッッ!
「ボール、フォア!」
スリーボールツーストライクまで粘った秋葉は、最終的にフォアボールを勝ち取った。
降谷の投球を見て、まだコントロールが定まっていないと直感したらしい。
「秋葉ぁ! フォアボールは甘えだぞー!」
「次はホームラン打てよー!」
「ナイスです秋葉さん!!」
「伊川ー! ホームラン狙ってけよー!」
まあ当然の様に、薬師ベンチはフォアボールが不満だったらしいが。
彼らはスリーベースが普通でホームランが良し、それ以外は微妙だと考えているのだ。
ノーアウトランナー1塁で、打席には甲子園打率9割超えの男、伊川始。
1年前と違い、守備でもスーパープレイを頻発する完全無欠のセカンドである。
しいて弱点を上げるなら、盗塁技術がCと、甲子園選手では下位レベルという事だが……走力Aという事を加味すれば、全く欠点とは言えないだろう。
___カキーン!
コントロールが定まらず、威力を抑えて投げた瞬間狙い撃ち。
当然の様にフェン直ツーベースヒットになり、これでノーアウト2・3塁
「惜しいぞ伊川ー!」
「次はホームラン狙えよー!」
「ナイスです伊川さん!」
「北瀬ー! ガンガン打てよー!!」
薬師ベンチはあまり喜んでいなかったが、それでもランナーはノーアウトで得点圏に進んでいる。
次のバッターは、3番の北瀬。
投壊の薬師高校クリーンナップであり、エースでもあるプレイヤーだ。
___バシッッ!
「ストライク!」
(やっぱ降谷さんのボール速えぇ! こんな速さのボール、ピッチングマシーンでしか打った事ない!)
北瀬は、157kmのボールに全くタイミングが合わせられていなかった。
薬師野球部のスタメンは、北瀬をバッティングピッチャーに起用する事によって速球対策が出来ていたが、本人は練習出来ていないのである。
だから北瀬にとって、ある意味相手ピッチャーの速球は弱点の1つになっていた。
まあ、157kmのボールだとあまり打てませんというのは、バッターとして普通の話かもしれないが……
___バシッッ!
「ストライク! バッターアウト!」
降谷は3つボールを出しつつも、北瀬を三振に切り捨てた。
「良いぞ降谷! その調子で行けよ!!」
「ナイス降谷!」
「絶好調のお前は強い!!」
「そのままの調子で頼むぜー!!」
強打者である北瀬を抑えられたのは、青道高校にとって大きな追い風となったらしい。
ベンチやスタンドは大きく盛り上がりながら、エースの投球を称えていた。
ワンアウトランナー2・3塁の場面で、バッターは4番轟。
どんな試合でもホームランを打ってきた、高校最強の長距離砲である。
「カハハ……カハハハ……降谷、打つ!!」
威圧感のある高笑いを響かせながら、薬師高校の4番が打席に立った。
青道高校の野手陣も長打を警戒したのか、外野手はやや後ろに下がっている。
___ガギーン!
大きく鈍い音を響かせて、流し打った打球はライト方向へ飛んでいく。
___バシッ!
「アウト!」
青道の選手が、しっかりと掴み取ってアウト。
だがその瞬間、3塁ランナーがホームに突っ込む。
「セーフ!」
秋葉は余裕のセーフ判定。打球はライト方向だった上に、かなり奥の方まで飛んでいっていた。
走力がDもあれば、余裕でセーフに出来て当然の話である。
「ドンマイ雷市!」
「そんな事もあるよな!」
「やっぱ157km速えぇな……北瀬程じゃないけど」
「次は火神か……ガンバレー!」
結果的には犠打を放てている雷市に対して、何故か慰めの言葉を送る上級生達。
彼らにとって犠打など、アウトとさほど変わらなかったらしい。
薬師野球部にいる間は良いのかもしれないが、プロや実業団に入ってから苦労しそうな考え方である。
ツーアウトランナー2塁で、打席には5番火神大我。
打撃力に特化した天才であり、守備力は薬師ベンチの中でも最弱である。
……それだけ守備が悲惨でもスタメン出場出来るだけのバッティングを、彼は1年生にも拘らず兼ね備えていた。
パワプロで言うなら、パワーAミートAに打撃系の金特2つと言った感じだろう。
___カキン!
いい音を響かせて、打球はショートを鋭く抜けていく……と思われたが、青道鉄壁の倉持がダイビングキャッチで捕球し、アウト。これでスリーアウトチェンジ。
なんと青道高校は、あの投壊の薬師高校を1失点で凌ぎ切ってしまった。
「うわー……ドンマイ火神!」
「今の絶対抜けると思ったのに!」
「俺らが守備やってたらツーベースは行けたよなー」
「まあ、次のバッティングで取り戻そうぜ!」
初回は波に乗れなかったのか、1点しか取れなかった薬師。
残念そうにしながらも、次の回で取ればいいさと気を持ち直していた。
まあ取り戻すも何も、一応今は1点先取した場面の筈だが……守備崩壊に慣れている薬師野球部からしたら、負けているのも同然だったらしい。
それよりも、裏の守備を頑張った方が良いのではないだろうか?
1回裏、青道高校の攻撃は1番倉持。
俊足と守備力がウリのショートであり、薬師のショートとは毛色が違う選手である。
まあ薬師部員と似ているプレイヤーなど、中々いないと思われるが……
___バシッッ!
「ストライク! バッターアウト!」
(マジかよ……3球ストレートで仕留められちまった!)
倉持は、三球三振で仕留められてしまった。
だがそれは、彼が弱いという事を意味しない___大エース北瀬が、あまりにも強すぎるのである。
165kmストレートをビタビタのコントロールで投げられてしまえば、強豪校の高校生が打てなくても仕方ないだろう。
ワンアウトランナー無しで、次の打順は2番小湊。
一時期木製バットを使えていた程にミート力が高いバッターであり、数値を出すとするならAとすら言えるだろう。
欲を言えばもう少しパワーも欲しい所だが、それでも彼は非常に優秀な2番バッターである。
___ガギ
運良くボッテボテのゴロを放てた小湊だが……ボールはセカンド方向に飛んでいき、伊川が危なげなくキャッチした後優しく送球した。
「アウト!」
これは完全にアウト。
一部の青道贔屓な観客達は、薬師の守備ならあるいはと思っていたが、流石にそう上手くはいかなかった様だ。
ツーアウトランナー無しで、打順は3番白州。
穴のない器用なプレイヤーであり、強いて言うならミート力Bが強いと言える。
ミート力Bという所だけ見ると甲子園上位レベルなのだが、どうしてこんな選手が沢山いる青道高校が甲子園に行けていないのだろうか……?
それは、同地区のライバルがあまりにも強すぎるからである。
高校最強打線を有する薬師高校に、シニアで結果を残した投手や野手陣を根こそぎ持っていった稲城実業など、あまりにも強力な学校が西東京には多過ぎるのだ。
___バシッッ!
「ストライク、バッターアウト! チェンジ!!」
そんな白洲も、ストレートだけで呆気なくアウトにされてしまった。やはり、チート能力を持った北瀬が強すぎるのである。