【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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101球目 未出場

 

 

 

2回裏までは、以外にも1-0と投手戦が続いている薬師高校vs青道高校の試合。

だが3回表では、また薬師高校恐怖のクリーンナップに回ってしまうのだ……青道高校のエースである降谷暁は、耐え抜く事が出来るだろうか?

 

 

 

 

 

ノーアウトランナー無しで、打順は1番秋葉から。

青道高校のピッチャーも薬師高校バッターも、共にU-18に選ばれている天才同士の戦いである。

 

 

___ガギッ!

 

「アウト!」

 

安打製造機である秋葉だが、芯を捉えられなかった事で157kmの剛速球に打ち負けアウトを取られてしまう。

 

まあ、バッターというのは毎回当てられる物ではないから仕方ない。

 

 

「ドンマイ秋葉ー!」

「惜しかったです秋葉さん!」

「カハハハ……ドンマイカズマ!!」

 

 

 

ワンアウトランナー無しで、打席には2番伊川。

強打者の風格溢れる威圧感を撒き散らしながら、堂々と打席に立っている。

 

 

(まあ実際の所、北瀬が投げてるなら援護って要らねーよな。由井が何とかしてくれるし……わざと打ち負けたりはしないけどさ)

 

当本人は馬鹿げた事を考えていたらしいが、そんな事は一切伝わってこない立ち振舞いである。

 

 

___カキン!

 

彼は普通にヒットを放って、これでワンアウトランナー1塁。

薬師の上級生達からはブーイングが飛んでいたが、面倒そうな顔をして無視していた。

……一応、盗塁の準備をしているらしい。

 

 

 

 

次のバッターは、3番ピッチャー北瀬。

甲子園決勝で5打席連続本塁打を放った、化け物バッターである。

それなのにピッチャーとしての能力の方が高いとか、規格外にも程があるだろう。

 

 

___カキーン!

 

勢いよく打ち上げた打球は、惜しくもホームランではなくフェン直ツーベースヒットになった。

 

 

「惜しいぞ北瀬ー!」

「次は行ける!!」

「ナイスツーベースです、北瀬さん!」

「雷市ー! ここは一本頼むぜー!!」

 

薬師ベンチは満足していない様だが、157km相手にツーベースというのは誇れる戦果だと思うのだが。

……そんな事、薬師野球部には関係ないらしい。あくまでホームランを打てなかった事を残念がっている。どこの戦闘民族なのだろうか?

まあある意味、北瀬が信頼されている証拠かもしれない。

 

 

 

 

ワンアウトランナー2・3塁で、打席には4番轟。

大砲揃いの薬師野球部の中で、主砲に相応しいと内外から評されている素晴らしい4番である。

偶に北瀬の方が大活躍する時もあるが、彼のバッティングの調子は出場させてみるまで分からないので、雷市が4番に相応しいと言えるだろう。

 

流石に轟監督は、ただでさえ守備で博打をしているのに打撃でも博打はしたくないらしい。

最近雷市を4番に置くことが多いのは、身内贔屓とかではなく普通に戦略だと思われる。

 

 

___カッキーン!!

 

『わああぁぁ!!』

 

1-0と緊迫した場面で、雷市はスリーランホームランをぶちかました。

 

 

「良いぞ雷市ー!」

「流石俺達の4番!!」

「ホームに突っ込むの嫌だったから、マジ助かった……」

「ホームラン最高!!」

 

これには打撃にうるさい薬師部員達もにっこり。

ワイワイと雷市のホームランを祝福しながら、歓声を上げている。

 

観客席も、彼の打撃に大層盛り上がっている様だ。

 

 

「流石は薬師ー! ナイスホームラン!!」

「雷市! 雷市!!」

「北瀬-由井から4点も取れんだろ! これは勝負アリだな」

「やっぱり薬師打線は最強だわ!!」

 

 

 

 

大盛りあがりのスタンドの中で、次に戦うチームの選手達は渋い顔をしていた。

具体的に言うと、準決勝で当たるであろう市大三高や決勝で当たると思われる稲城実業のプレイヤーの事である。

 

 

「バケモンかよ……流石だわ」

「コレ、やっぱり薬師が来ますかね?」

「だろうな。沢村とも勝負してみたかったんだけどなー」

 

「樹ぃ! アイツら相手ならどんなリードをする?」

「えっと……2番から4番は長打警戒で、それ以外の選手を仕留める感じですかね……?」

「甘いね! 全員倒そうと思わないと、薬師相手ならすぐ持ってかれちゃうよ!」

「鳴お前、樹に八つ当たりすんの辞めろって。何言っても文句言うつもりだったろ……」

 

 

彼らとマトモに戦わざるをえない西東京のエース達は、内心ヤバいなとちょっと思いながら試合を見ていた。

いくら強気な天才ピッチャー達でも、アレとは出来れば戦いたくなかった様である。

まあ、逃げられる訳がないのだが。

 

 

 

……

 

 

 

6回表までに、薬師高校は北瀬・雷市・結城を合わせて4本のホームランを出し、11点差を付けていた。

4回からは流れを変えようとしたのか2年生の沢村が緊急登板していたが、薬師打線には関係なかった様である。

 

___そして、なんと1点も取られていない。

記録ではエラーにならないミスが出てしまい、ノーヒットノーランとまでは行かなかったが、3塁まで1度も到達されない素晴らしいピッチングを見せていた。

 

ちなみに守備陣は、ボテボテのゴロを2回処理しただけである。

それ以外は、全部北瀬が三振を取っていた。1年前までは強打と謳われていた青道相手に、素晴らしいピッチングだった。

 

 

 

『あと1つ!! あと1つ!!』

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク! バッターアウト……試合終了!!」

『わああぁぁ!!』

 

 

 

 

 

 

最後は4番降谷を打ち取り、6回コールド勝ちで試合が終わった……薬師打線ならもっと投壊させると観客達からは予想されていたが、思ったより青道のピッチャーは強かったらしい。

 

 

「11-0で、薬師高校の勝ち! 礼!!」

『ありがとうございました!!』

 

 

 

 

「薬師ー! やっぱりお前らの野球が最強や!!」

「ホームラン4本か……薬師にしては少ないな」

「御幸ー! お前はやっぱり甲子園で見たかった!!」

「北瀬ー! 次はノーヒットノーラン行けるぞー!」

「青道も、良く頑張った!!」

 

観客達からは、青道高校も健闘したという声も上がっていた。

薬師打線相手に、11点コールドというのは素晴らしいと思った人も多かったのである。

……1年前から台頭した新たな強豪校が相手なのだが、そんな事は忘れ去っている観客は多かった。

 

 

「あぁ……負けてしまった……っ!」

「グスッ……勝ち目は薄いって、分かってたけど……!!」

「うぅっ……俺達、もっとやれる事があったんじゃないか……?」

 

泣き崩れる青道野球部。彼らが3年間……いや、人生の大半を掛けて欲した甲子園出場の夢は、ここで途絶えてしまったのだ。

 

 

 

 

そんな中、薬師のエースに向けて、青道のエースである降谷暁が真剣な顔をして右手を差し伸べる。

 

 

「今は君の方がずっとずっと強い、それは分かってる

 

___だけど、次勝つのは僕ら青道だ。次こそ、勝ちは譲らない……! だから今年の夏は、絶対、甲子園で優勝してね」

 

「俺だって、薬師打線相手に抑えられるとは思えないですけど___俺達は、次も負けない

甲子園だって優勝して、真田キャプテンを笑顔で見送ってみせる……また戦いましょうね、降谷さん」

 

 

(多分、俺達みたいななんちゃって強豪校じゃない所に所属してる降谷さんは、凄く負けて悔しい筈なのに

……そういう所、本当尊敬しますよ、降谷さん)

 

北瀬も真剣な顔をして右手で握り返し、改めて甲子園優勝を誓う。

 

……今年の夏になって新入生達が入ってきて、部の雰囲気が大きく変わった。

寮が出来て野球推薦制度なども導入されて、新しく強豪校になっていくであろう薬師野球部の姿を見続けていた。

そして夏の甲子園が終われば、真田先輩達との別れになる事も明確に分かり始めていた。

 

だから相手を負かす事がどういう事なのかも、彼はなんとなく分かっていたつもりになっていたが……尊敬するエースの言葉は、やはり北瀬にとって重かったらしい。

握手をした後、試合が終わったのにも拘らず真剣な顔をしたまま、北瀬は歩いて去っていった。

 

 

 

 

そして沢村は……そんなライバル達を見ながら俯いて、歯を食いしばっていた。

 

 

(俺は、負けて悔しいんだ……だから、降谷みたいに負けてすぐに相手を称える事なんて、出来なかった……!

本当なら……俺達を倒して勝ち進む相手に、頑張れよって声を掛けるべきなのに……)

 

伝統あるチームを背負いピッチャーとして戦い抜いた沢村は、1年生の頃の結城キャプテンや、今の降谷の様な対応が出来なかった。

まあ、こんな場面で相手にエールを送れる彼らが若干イカれているだけな気もするが、沢村にとっては苦しい事だったらしい。

 

 

(……これで、俺が追いかけて来た御幸も引退しちゃうのか。俺もこのチームで、甲子園に行きたかったのに……)

 

 

「御幸先輩……俺……オレ……!」

「…………沢村。お前らは絶対、甲子園って大舞台に立てよな……期待してるから」

 

御幸キャプテンは大切なピッチャーの呼び声を聞いて、キャプテンとしての仮面を被った。

彼だって最後の夏に負けてしまった衝撃から立ち直っている訳ではないが、それでもピッチャーの調子を咄嗟に察したのである。

 

 

 

……こうして、古豪になりつつある青道高校の夏は終わった。

 

 

 

 

(はぁ……3日後にまた試合か。疲れるなぁ……まあ真田キャプテンの為に、次回は頑張って打つけどさ)

 

そんな張り詰めている空気の中、やる気のない事を考えながら一応次の試合を考えている選手が、約1名いたらしい。

 

 

 

 

 

 

次の試合で戦う事になる市大三高の選手は、完全にビビっていた。

同格の青道高校が1点も取れない相手に対して、どう戦えば良いのかと焦っているのである。

 

そんな部員達を見て、天久が不思議そうな顔をしながら冷静な声をかけた。

 

 

「えっ、何? お前らビビってんの?」

「そりゃビビるだろ! 青道相手に無失点の、165kmピッチャーだぞ?!」

 

その言葉に対して天久は、それはそれ、試合は試合だと思って普通に話す。

 

 

「そりゃ北瀬は強いけど……次の試合、ぶっちゃけ俺ら相手に先発じゃ出してこないだろ?

だってそしたら、北瀬3連投になるし。いくら何でも、アイツ今日6回まで投げてるからキツいっしょ」

『確かに……!』

 

 

天久の言葉によって薬師野手陣の崩壊具合を思い出した彼らは、それなら行けるかもと希望を持ち始めた。

まあ相手ピッチャーを炎上させる打力は変わらないのだが、それでも勝てると思い始めたのだ。彼らは単純な性格をしている。

 

 

「まあ、それなら行けない事もないか」

「あいつらの守備ヤベーしな!」

「そうそう! 相手が北瀬をリリーフにしてくる前に、大量得点して逃げ切りゃいいっしょ!

むしろ……青道と稲実に挟まった5回戦に当たったの、すげぇラッキーじゃね?」

 

 

 

軽薄さが見え隠れする天久だが、チームメイトの事は何やかんや信じ切っていた。

だから、市大三高のエース天久光聖は、楽観的な態度を取れたのである。

 

だがまあ、流石にちょっと1年前の事を思い出して凹んだりもしていた。

 

 

「でも、ほっしゃん……俺ってやっぱり救えねえホームラン級のバカだわ

あの時野球から離れなければ……1年前、こんな奴等と戦ってるのを指を咥えて眺めずに済んだのに!」

「……何点欲しいか言ってみろ、俺達絶対もぎ取ってやるから」

「じゃっ、青道が6回11失点だから……16点よろしくな!」

「お前やっぱ、すぐ調子に乗るな……」

「やってやんよ! 20点位取ってやる!!」

 

衝撃的な試合を見ながらも、あくまで皆で話し合って勝利を目指すチームの姿を見て、田原監督は内心こう思っていた。

 

 

(天久ボーイを中心に全員の意識がレボリューションしている…漸く最高の市大をお見せできそうだよ、北瀬ボーイ)

 

彼らにとって、一年越しのリベンジ戦。

相手が史上最強打線、全国最強投手であろうとも……天久達ならば勝てると信じているのだ。

 

 

 

 

 

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