【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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活動報告に学校の展開提供をくださる方、ありがとうございます! 楽しく書かせて頂きました!


105球目 選手宣誓

 

 

 

 

157kmの怪物降谷率いる青道高校や、絶好調の天久擁する市大三高。

そして、異次元のキレを持った都のプリンス成宮を倒して夏の甲子園への出場を決めた薬師高校。

 

魔境西東京地区で優勝を勝ち取った彼らは、1週間後の甲子園に向けて身体を休めていた。

 

 

 

 

ちなみに、非常に残念な事に……地方大会で18番の山内先輩と、19番の増田先輩は、甲子園ベンチ入りメンバーからは外されてしまった。

 

彼らは最後の機会だったのにと、メンバー発表が終わった後にこっそり泣いていた。

そんな彼らをたまたま目撃してしまった伊川は、やっぱり最後は勝って終わりたいと思ったという。

 

春のセンバツでも貰えた、優勝校の選手が貰えるメダルを、山内先輩と福田先輩に渡したいと考えたのだ。

北瀬と話し合って、優勝したら俺達2人の奴を渡そうと既に決意している。

 

 

 

 

 

 

 

8月4日、甲子園対戦カードを決める為、全国の猛者達がホールに集まった。

甲子園出場チームのベンチ入りメンバー全員がこの場所に集まり、緊張した面持ちで抽選を待ち望んでいる。

 

 

「なぁ、前も思ったけどさぁ……キャプテンだけで引いて来てくれりゃ良いのにな。面倒だし」

「1人だけに押し付けたら、可哀想だからじゃないか?」

「カハハ……凄く静か……」

「お前らー! まだ始まってないけど、一応静かにしておけよー。テレビカメラ映ってるぞー!」

「監督が1番煩いですよ……」

 

なんか、全く緊張してなさそうなチームが約1校あるが……

両隣の強豪校チームは、努めて見ないフリをしていた。本当は睨みつけたい所だが、流石に甲子園優勝校に喧嘩を売る覚悟は無かったらしい。

彼らのチームは、今までの歴史でも2回戦までしか出場出来ていないからである。

 

 

 

 

「___只今から、第88回全国高等学校野球選手権記念大会の組み合わせ抽選を行います」

 

 

 

……

 

 

 

ようやく真田キャプテンが壇上に上がり、クジを引いた。

強力なライバルである、大阪桐生や巨摩大藤巻とは運良く当たらなかった様だ。

 

 

 

このくじ引きは3回戦までの対戦相手を決めるのだが、北瀬や伊川は対戦表を見た所で、どこが勝ち上がってきそうかなんて分からない。

せいぜい1回戦が愛媛科学技術高校な事位だ。

しかも、どんなチームかは全く分からないとしか言いようがない。そもそも北瀬達が学校名を知っているのなんて、せいぜい10校位なので。

 

 

 

 

謎の貫禄を出しながら、面倒だという顔をして壇上を見上げている北瀬と伊川。

素晴らしい選手なので、テレビカメラから組み合わせ抽選を見ている人達は貫禄があると思い込んでいるのかもしれない。

 

彼らは実際の所、ぼけーっとして寝ないように頑張っているだけだった。

あまりにも静かで、やる事もないからである。

 

 

 

 

 

 

「15校の選手が、選手宣誓をやってみたいと声を上げました」

 

あ、真田先輩も選手宣誓やってみたかったんだ。

壇上に並んでいる真田先輩を見て、北瀬達は内心で呟いていた。

 

 

「今、封筒の準備が……整いました。封筒をどうぞ受け取ってください……選手宣誓をするのは、果たしてどのチームの主将でしょうか?

今、封筒を一斉に開けてください!」

 

 

___パラッ

 

 

「そして、選手宣誓に選ばれた人は手を上げてください!

……ではキャプテン、前の方においでください」

 

真田キャプテンが、目を丸くしながら手を上げる。

確率1/15で、選ばれるとは思っていなかったのだ。

主将を慕う北瀬達は、先輩がやりたかったらしい選手宣誓に選ばれた事に驚きながらも、嬉しそうに眺めていた。

 

 

「選手宣誓甲子園の札を持っている、キャプテン! 学校名とお名前を教えてください」

「薬師高校の真田俊平です!」

 

 

___パチパチパチパチ!

 

「薬師高校の真田キャプテンが今年の選手宣誓の大役を引き当てました

甲子園に出場する49名のキャプテン達。その倍率をくぐり抜けて選ばれた、今のお気持ちを教えてください」

 

真田キャプテンが、にこやかな笑顔でこう話した。

 

 

「甲子園という大舞台で、選手宣誓をさせて頂く事が出来て光栄です! とても嬉しく思っています」

「なるほど。最後に、選手宣誓への意気込みを教えてください」

「全国の野球部の代表として、悔いの残らない様しっかりと宣誓したいと思っています!」

 

「ありがとうございます!

第88回全国高等学校野球選手権記念大会の映えある選手宣誓は、薬師高校の真田キャプテンに決まりました! 皆様盛大な拍手をお願いします!!」

 

 

___パチパチパチパチ!!

 

 

 

 

 

 

組み合わせ抽選などが決まって撤収した後、北瀬と伊川が真田キャプテンに対して、楽しそうに話しかけていた。

 

 

「選手宣誓選ばれたの、おめでとうございます! 先輩が言うの、楽しみに待ってますね!」

「真田先輩がアレ言いたかったとは知りませんでした。けっこうキツそうじゃないですか?

言葉は決まってるとはいえ、あんな大舞台で言うの

……いや、先輩なら全然大丈夫だと思いますけど」

 

彼らの言葉に、抽選に当たってニヤけている真田が嬉しそうに返した。

 

 

「いやーあんな大舞台で目立てるの、ちょっと楽しそうでさ! 二度とない機会だから、これはせっかくならやらなきゃなって思ったんだ!

……ちなみに、言葉はこれから考える事になるらしいぜ」

 

「マジすか?! スゲーっすね、楽しみにしてます!!」

「確かに二度とない機会ですもんねー、言われてみればそんな気がして来ました」

 

 

 

 

 

 

 

 

抽選から3日後、開幕式で真田キャプテンが選手宣誓を始める時間になった。

 

 

「選手宣誓を行います。選手代表……薬師高校主将、真田俊平くん!」

 

『わああぁぁ!!』

 

 

___パチパチパチパチ!

 

真田キャプテンは整列している選手達の前に立ち、薬師野球部の黒い帽子を脱いで一礼する。

壇上に上がって、マイクの前で話し始めた。

 

 

 

 

「俺達の野球は、後輩達の努力によって支えられて来ました。監督達の尽力に救われて来ました。

 

甲子園という舞台があり続けるのは、野球という競技を支えて下さった沢山の方々や、この舞台でプレーされた偉大な先輩方のお陰です

俺達がこの場所に立てたのは、沢山の方々に助けて頂けた事や、チームメイトに恵まれた奇跡のお陰です

 

だからこそ、この甲子園という舞台で

___俺達選手一同は、最後まで力の限りを尽くして、チームの為に戦い抜く事を誓います!!

平成18年8月7日、薬師高等学校野球部キャプテン、真田俊平!」

 

 

___バチバチバチバチ!

 

 

 

 

帽子を被って一礼し、真田主将は薬師野球部が並ぶ最前列に戻って行った。

 

 

(真田先輩カッコいい! これだけでも甲子園に来た甲斐があったなー!)

(開会式とか、前回は面倒だとしか思ってなかったけど……真田先輩が大舞台で話すなら話は別だな)

 

キャプテンを尊敬しまくっている北瀬や伊川は、大体こんな事を考えていた。

コイツらは、前回の開幕式でうとうとと寝かけていやがったのだが……今回は別らしい。

 

真田キャプテンの勇姿に内心歓声を上げながら、北瀬達は嬉しそうに見ていた。

彼らは、自分が尊敬している人間が褒められるのは大好きなのである。割とマイルドヤンキーなので。

 

 

 

 

 

 

 

 

薬師野球部にとっての1回戦。

くじ運が良く、彼らは2回戦目からの戦いになる。

相手は選抜にも出場しているとはいえ、2回戦で稲実成宮に無得点15奪三振の6失点で敗北している私立愛媛科学技術高等学校。

長いので大体の場合、通称のエカギ高校と呼ばれている。

 

 

 

相手チームのキャプテンである、ムード◯の羽佐間原二郎がこうやってチームを鼓舞していた。

 

「俺たちの目標は甲子園に出ることじゃねぇ

___このチームが、日本で一番つええってことを証明する為に、ここまで来たんだろ

……だからよ、景気づけにぶっとばしてこうぜ! 選抜優勝校!」

 

『おうっ!!』

「俺達なら行けるよな!」

「全力で戦って、勝ちに行こう!!」

 

 

 

 

 

 

対して薬師高校は、何故か片岡コーチがベンチメンバーの前に立ち、チームを鼓舞していた。

 

 

「相手も、春のセンバツ出場校。けして弱くはない相手だ

___だが、お前達なら絶対に勝てると信じている

行くぞっっ!!」

『おうっ!!』

 

 

 

片岡コーチは、轟監督の醸し出す別に行けるっしょ! というナメプモードが見ていられなかったらしい。

今回は私に話させてくださいと頼みこみ、彼が甲子園1回戦の前に話す事になったのだ。

 

ちなみに轟監督は、まあ良いんじゃないですか? 位の反応だった。

薬師基準では強豪校な相手ではない為、誰が選手達の前で話すかとかは、別にどうでも良かったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

1回表、薬師高校の攻撃は1番秋葉。

高校野球の打者として、5本の指に入るかもしれないと言われる選手である。

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

初回から、先頭打者ホームランを出してしまった。

 

 

「良いぞ秋葉ー!」

「ナイスホームラン!」

「秋葉さん! ナイスです!!」

「伊川もホームラン頼むぞー!」

 

打撃に煩い薬師高校も、ホームランを打つなら大満足だ。

ギャーギャー騒ぎながらも、次の打席を楽しみにしている。

 

 

 

 

ホームランで1点取りノーアウトランナー無しで、打席には地方大会打率9割超えの伊川。

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

「薬師最高!」

「2連続ホームランかよ!」

「本塁打記録の更新頼むぜー!!」

 

 

 

またしても、本塁打が出てしまった。

まだ1回表も終わっていないのに、薬師高校の勝利を確信する観客達。そして……

 

 

___カッキーン! 3番北瀬がホームラン。

___カッキーン! 4番雷市もホームラン。

___カッキーン! 5番火神もホームラン。

___カッキーン! 6番三島もホームラン。

___カキーン!  7番瀬戸がツーベース。

___カキーン!  8番真田がヒットを放ち。

___ガギ     9番奥村がようやくアウト。

 

___カキン!   1番秋葉がヒットを放ち。

___カキン!   2番伊川がヒットを放つ。

___カッキーン! 3番北瀬は満塁ホームラン。

___カッキーン! 4番雷市がホームランを打って。

___カキン!   5番火神がヒットを打つ。

___カッキーン! 6番三島がホームランを打って。

___ガギン!   7番瀬戸がアウト。

___カッキーン! 8番真田がホームランを放って。

___バシッ!   9番奥村が三振。

 

 

 

……打席が完全に2巡して、ようやく薬師高校の攻撃が終わった。

1回表でホームランが既に10本出ていて、なんと15得点も取れてしまっている。

 

 

 

薬師の投壊野球に慣れたと思っていた観客達すら、呆然と試合を眺めていた。

……最早、騒ぐ余裕すら無いらしい。

 

 

「……夢でも見てるのか?」

「ありえん……」

「投壊野球って言っても限度があるだろ……」

 

 

 

……

 

 

 

先発の真田が5回で降板した頃には、60-2と差が開きすぎていた。

 

野球の打線は水物という言葉がある様に、10得点取ったチームが、同じ相手に1点も入れられないなどということはザラにある話だ。

だが引っ繰り返して言うのなら、常日頃から大量得点で勝つ攻撃型のチームが更にありえない位点を取って勝つ事もある、これはただそれだけの話である。

 

20点取るのが当たり前で、取れないときには10点程度のチームが一番回る調子の良い日。

それが今日だったと言う事だ。

 

 

大体は奥村が2アウトしてチェンジとなる……同じ人間が同じ回に2回アウトというのは何かがおかしいが、とにかくそうなってた。

 

 

だが……どれだけエガキ高校が打たれたところで、終わりの合図などない。

 

___この試合に、甲子園にコールドはない。

どれだけ打線が回ったとしても、目を覆うような惨劇が広がっても、どれだけ長引いても。

ピッチャーが4番手まで投げられなくなって、遂にベンチの野手が投げるハメになったとしても……

 

 

 

 

敗北は無いと見た薬師野球部に、1年生のパワードにリリーフで登板されるも、必死で反撃を試みている。

 

だが……1年生相手でもエラー失点含めて10点しかなく、エガキ高校は、9回2塁2アウトまで追い込まれてしまった。

 

 

 

 

___ガギーン!

___ボテッ

 

「やべっ!」

『ブッ……ワハハハハ!!』

 

 

エラーがレフト火神からまた出て、なんとか1点追加となる……だがそこで、観客席から大爆笑が響いて来た。

 

なんだ? なにがそんなに面白い? 薬師のエラーはいつもの事だろう、それとも皆を笑っているのか?!

そうエガキ高校のキャプテンが、苛立ちと怒りを滲ませながら視線を向けると、そこにはスコアボードの表示。

 

___111-11、薬師11エラーの表示があった。

 

 

その後エガキ野球部のバッターはあっさりと三振、コールド10回分の超大差負けになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……111-11で、薬師高校の勝ち! 礼!!」

『ありがとうございました!!』

 

 

 

彼の名誉のために言うと、守備そのものは火神なりに大真面目にやりはした。

その結果としてのエラーでしかないし、片岡コーチも大会後の要改善点と片づけている。

 

___だが、己のこれまで野球人生の集大成を、全てを掛けた勝負を、珍記録として片づけられたことにエカギ野球部のメンバーは言葉を無くし……魂が抜けたような顔になっていた。

 

 

 

今回ばかりは、いつもエラーしてばかりの火神や雷市も居心地の悪さを感じたが、監督が言った今日の飯はビッグなハンバーグだぜという言葉で切り替わった。

いつもの事だが、彼らは立ち直りが早すぎる。

 

 

 

勿論ゾロ目について、薬師野球部の監督や選手達は記者にも質問されていた。

だが、打線はいつも以上に回っていたとはいえエラーについてはいつも通り過ぎて、大真面目にやった結果と言い切られた以上は誰も突っ込まなかったという。

 

 

___薬師黄金世代が彩ったエカギ戦の珍記録は、十数年に渡ってネットの玩具になった。

 

ちなみに雷市は15打席中11打席でホームランを打ち、二度と誰も超えられない大記録を出していた。

 

 

 

 

 

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