【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
甲子園3回戦まで駒を進めた薬師高校。
相手は春夏甲子園通算9回出場の強豪校、紅海大章栄高校である。
薬師高校の先発は、1年生の友部。
彼は薬師高校の3番手ピッチャーで、1年生の割には優秀な選手だ。
昨日の試合では全く出場していないので、彼のスタミナは6回位までは持ってくれると思われる。
試合直前、片岡コーチが部員達にこう話した。
「相手は甲子園通算9回出場の名門、紅海大章栄。チームの伝統や歴史を、俺達より多く持っている
___だが、それでお前達が負ける事は無い
唯一無二の打撃力で、この試合も勝ち上がってくれると、信じている! 行くぞっ!!」
『オーッ!!』
ちなみに薬師高校が友部を先発させる時は、相手をナメている事が多い。
北瀬と真田の実力差が大きいのと同じ様に、真田と友部の実力差も大きいからである。
打ちまくって相手の士気を下げていない先発で、1年生ピッチャーを出すのはリスクがあるのだ。
それでも、選手の故障リスクを考えて轟監督は今回友部を起用したのだろう。
対して紅海大章栄の松ケ浦監督は、チームにこんな声を掛けていた。
「相手は確かに強いなぁ……でもラッキーだ。1年生を先発させて来たから、勝機はあるぞ!
U-18に5人も送り込んだ、高卒メジャー行きが決まってる選手までいる薬師を甲子園で倒したら一生自慢できる!
___全力で戦い抜いた者にしか、甲子園優勝は無い! 行くぞお前らぁ!!」
『オウッ!!』
1回表、紅海大章栄の攻撃は1番松岡。
ミート能力と走塁・盗塁技術が高い選手である。
___カキン!
___バシッ!
「アウト!」
ヒットになるかと思われた当たりは、セカンド伊川の方向へ飛んでいってアウト。
伊川は守備職人でもあるので、軽い当たりだったら当然の事だろう。
ワンアウトランナー無しで、打席には2番斎木。
粘り打ちが得意な選手であり、県内では1番ウザいバッターとして名高い。
___ガキーン!
「俺が取る!」
___バシッ!
「アウト!」
高く打ち上げた打球は、レフト北瀬真正面。
エラーを持っていない彼は、普通にキャッチしてアウト。これでツーアウトになる。
ツーアウトランナー無しで、打席には3番宮瀬。
パワーが自慢と本人は言っているが、実はミート力の方が高いプレイヤーである。
___カキン!
「セーフ!」
ライナー性の当たりは、ファーストを鋭く抜けてライト火神の方向へ飛んでいく。
「あっ、やべ」
「俺が取る!」
守備G捕球Gエラーの三重苦を併せ持つ火神は、案の定ボールが取れずに後ろに逸らした。
守備過労死枠の秋葉がフォローしている内に、ランナーは2塁へ進んでしまった。
ツーアウトランナー2塁になって、打席には4番堀。
キャッチャーとしてもバッターとしても優秀な選手で、ドラフト下位指名が噂されている。
___カッキーン!
『わああぁぁ!!』
ツーストライクと追い込まれてから、彼はなんとホームランを打ってしまった。
「ドンマイ友部!」
「そんな事もあるぞ!」
「次抑えりゃ大丈夫だ!」
「ガハハハ、俺達で20点は取るからな!!」
薬師ベンチはそれでも余裕ぶった表情を崩さないまま、ホームランを打たれてしまった友部を励ました。
彼らにとって、ホームランというのはよくある事だからそこまで緊張感を感じなかったのである。
そして、5番鳥山をセカンドゴロで討ち取ってチェンジ。
地味に、秋葉・伊川・北瀬の所ばかりに打球が飛んでいる。守備が硬い所に打球を飛ばさせる、奥村のリードセンスが光るプレーだった。
1回裏、2点先取されている薬師高校の攻撃。
最初にバッターボックスに入るのは、1番の秋葉。
ちなみに轟監督はコロコロ打順を変えるのが好きなのだが、この超火力バッター軍団の順番を変える事に、あまりメリットを見出だせないのが残念らしい。
___カキーン!
初球から長打を放って、薬師高校の打者陣としての優秀な打撃力を見せつけていた。
「惜しいぞ秋葉ー!」
「次はホームラン行けるぞー!」
薬師ベンチからは、ヤジのような何かが飛んでいたが。
ノーアウトランナー2塁で、打順は2番伊川。
高校最強の安打製造機として名高い、春のセンバツでの打率10割の記録を持つ化け物バッターである。
___カキン!
無難にセンター方向への打球を飛ばし、ヒット。
粘れば長打を打てた気がするが、面倒くさかったらしい。
ノーアウトランナー1・3塁で、打席には3番北瀬。
ニコニコと対戦投手からすると不気味な笑みを浮かべながら、バッターボックスに入って行った。
……彼は甲子園の熱狂が楽しかっただけである。
___カキン!
ピンチに強い紅海大章栄のエースだが、薬師野球部の打撃力が高過ぎて意味をなしていなかった。
3塁ランナーはあっさり帰塁してしまい、ノーアウトで1点取られてしまった。
ノーアウトランナー1・2塁で、打席には4番火神。
なぜ彼が4番に置かれているかというと、轟監督が「火神も4番に相応しい打撃力を持ってるんだよなぁー……置いてみよ」という気まぐれを起こしたからである。
___カキン!
薬師にしては珍しくヒットが出まくり、満塁のチャンスで5番轟に回る。
「カハハハ……満塁……!」
薬師打線は長打を打ち過ぎて、満塁のチャンスなんて殆ど回ってこない。
雷市は喜び勇みながら打席に立ち、凶悪な笑みを浮かべている。
___カッキーン!!
『わああぁぁ!!』
打球はグングン伸びていき、バックスクリーン直撃。
薬師打線が大好きな観客達を喜ばせる、主砲の一撃だった……いや、今回は4番ではないが。
この後、6番三島がツーベースを放つも7番瀬戸・8番奥村・9番友部が相次いで三振。
それでも、紅海大章栄は、初回から薬師上位打線に5点も取られてしまっていた。
……
ランナーの伊川がゲッツーで仕留められたり、絶好調の轟がサイクルホームランを打ったりなどの珍事が起きつつ、薬師高校は35-15で勝利を掴んだ。
「サイクルホームランおめでとうございます! 今のお気持ちは?!」
「カハハハ……えっと、楽しかったデス……」
「この偉業を、誰に伝えたいですか?!」
「ツタエタイ……? 別に……」
試合後、続々とやって来た記者達の言葉に全く答えられず、しどろもどろする雷市。
真田がフォローしようにも、雷市の周りをレポーターや記者達が囲っていて辿り着く事が出来ない。
……結局、雷市のあまりにも酷い口下手は、一部の層から可愛いと人気が出ていたらしい。
甲子園準々決勝は、昨年の夏優勝校の大阪桐生。
二刀流の坂根や、現在通算47本塁打の赤川など、優秀なプレーヤーが多く集まっているチームである。
試合直前、轟監督はニヤリとしながらこう口にしていた。
「相手は、夏の甲子園優勝校。俺達は、春のセンバツ優勝校……どっちもつえぇし、名勝負になるんじゃねーの?
___それなら、今の俺達の打撃力を日本中に知らしめているチャンスだな! ボッコボコに打って、相手ピッチャーを打ち倒してやれ!!」
『はいっ!!』
打撃力なら、俺達は誰にも負けない。そんな自負を持って、彼らは夏の甲子園優勝校である大阪桐生に挑んでいく。
対して大阪桐生高校の松本監督は、真面目な顔をしてこう語る。
「えー、相手は春のセンバツ優勝校。投壊薬師は、確かに強いです。でも、総合力で言えば俺達の方が勝っていると証明しましょう
___俺達の努力と才能を、示す時が来た。行くぞぉ!!」
『おうっ!!』
確かに、投壊と称される打撃力は凄い。確かに、日本最強とも評されるエース北瀬は凄い。
……だが、俺達の方がプレーヤーだ。打撃も守備も走塁も、手を抜いた事なんて無い。
所詮、新たな強豪校なんかが甲子園を2連覇するなど、許せる訳もない。
___俺達はこの試合に勝って、夏2連覇を達成してやる!
彼らはそう考えていて、気合十分だった。
1回表、薬師高校の攻撃は1番秋葉。
安打製造機と評される、優秀なバッターである。
対して大阪桐生のピッチャーである垣本は、最速153kmのストレートに、スライダーとフォークを投げられる逸材だ。
ちなみにU-18は、甲子園と日程が近い為辞退したらしい。怪我リスクを増やしたくなかったのだと思われる。
___ガギン!
鈍い当たりを響かせて、打球はファースト方向に飛んでいった……当然アウト。
「ドンマイドンマイ!」
「次は行けるぞー!」
薬師は通常運転で、チームの打撃を応援している。
早くホームラン出ないかなぁなんて考えながら、楽しく野次を飛ばしているのだ。
ここが甲子園だと言う事を忘れているのだろうか?
ワンアウトランナー無しで、打席には2番伊川。
打率9割超えを維持し続ける、化け物バッターである。
___カキーン!
当然の様に長打を放って、これでワンアウトランナー2塁。
薬師ベンチは不満げな顔をしているが、伊川にとっては関係ない事だった。
次のバッターは3番北瀬。
調子が良い時と悪い時で差が激しいが、それでも高校最強クラスのバッターである事には変わりない。
これで本職はピッチャーなのだから、恐ろしい話である。
___カキン!
ホームランを打ちたかった様だが、流石に打てずにヒット。
ベンチからは野次が飛んでいる。
ワンアウトランナー2・3塁で、打席には4番轟。
高校最強の長距離砲であり、他の追随を許さない圧倒的な打力の持ち主だ。
___ガギ
「アウト!」
だがまあ、打率10割選手ではないのだからこんな事もあって当然だ。
芯を外した当たりはふらふらと飛んでいき、大阪桐生のショートが掴んで送球。あっさりアウト。
ツーアウトランナー2・3塁で、打席には5番火神。
1年生とは思えない圧倒的な打力に対して、既にファンが多く付いている様だ。
___カキーン!
フェン直の長打を放って、ランナー2人を帰塁させた。
やはり、優秀なバッターである。
ツーアウトランナー2塁で、打席には6番三島。
「ガハハハ、絶対ホームラン打ってやるぜ!!」
何やら、打つ事を宣言している様だ。
___バシッ
「アウト!」
だが、残念な事に三振にさせられてしまった。
もうちょっとズレていたらホームランだった、惜しいファールなども出ていたのだが……結果が残せなければ意味が無い。
三島は悔しそうに、バッターボックスから去っていった。
……
3回終了時、3-0と薬師高校と戦っている割にはあまり点差が付いていなかった。
これは垣本のピッチングセンスの賜物である。
……だが、彼は汗を多量にかいている。
明らかに国体やセンバツの時よりもスイングが強く、また、とある3人からの威圧に負けている感のあった垣本は、自然球数が多くなっていた。
4回裏、松本監督、垣本に非情の降板宣告。
背番号18の二階堂をショートにやり、坂根がマウンドに立った。
……なんと、投球練習もろくにやってないのに、薬師クリーンナップを相手にして1点で抑えてしまった。
縛りプレイで自分たちを抑えている北瀬に対する強い対抗心が、それを成功させたのかもしれない。
単純に、彼の才能もあると思うが。
……
その後8-0と突き放されたまま、運命の9回裏。
捕手が伊川に変わったにもかかわらず、1番藤澤は3球ともアウトローの直球で見逃し三振。
次に角倉は、初球のなんてことのないカーブを打ち上げ高いたかーいピッチャーフライ。
ラストバッター坂根は、すべての球種を解き放たれ空振り三振。
薬師野球部相手だと考えると、少ない点差で試合が終了。
地方大会と違い9回まで頑張ったと考えると、やはり大阪桐生は非常に強かった。
あの史上最強世代の大阪桐生に一切点を取らせないまま勝ったことは、その後数カ月にわたって話題になった。
……ちなみにノーヒットノーランは、野手陣のエラーが付かないミスで無くなっていたらしい。
真田先輩は、ドラフト何位指名だと思いますか?
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1位指名
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外れ1位指名
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2位指名
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3位指名
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下位指名
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無回答