【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
お礼の書き方が分からないので、ここに書かせて貰いました
あの市大三高に勝った事で有頂天な自覚はある。
こんなニヤけてたらキモくね? 俺一応イケメンで知られてるのにさ、絶対だらしない顔してるよ今。
4回で5点も取られてて、投手として良かったとは全く言えねぇのにさ。ヤベぇ。今、すっげぇ嬉しい。5回戦でこれなら、甲子園に行ったらどうなっちゃうんだ?!
「礼!!」
『ありがとうございました!!』
「監督! 取材の方が探してますよぉ!」
「まったく、何で俺と北瀬で探さなきゃいけないんだよ……試合直後だぞ」
「まあ俺達合わせて5エラーしてるし偉そうな事は言えないけど。あれ、君達はたしか青道の……人だよね。何で隠れてるの?」
「いやぁ、なんとなく……」
「てか、何で俺達まで隠れてるんだ? 監督達探しに来たのに……?」
時間が少し進み、試合が終わった後いつの間にかどこかに行ってしまった轟親子を探しに、じゃんけんに負けた北瀬、伊川が歩いていた。
すると監督達を見つける前に、物陰にいる青道高校のユニフォームを着ている3人組を見つけて、思わず一緒に隠れてしまった。その直後に雷市がバットを振っている所を見つけたが、雰囲気に流され一緒に隠れていた。
雷市はバットをブンブンブンブン振っている。試合終了直後だぞ、もっと休もうよ。やっぱりあの親子、野球に狂ってるわ。
俺らみたいに、部活だから渋々やってる奴とはやる気がちげぇなあ……別に、ああなりたいとまでは思わないけどさ。
「こらこら休むなァ!」
「今日のピッチャー、凄い気迫だった……あんな闘志むき出しのピッチャーが、全国にはいっぱいいるんだよなぁ……! もっともっと……! もっと打ちたい……!!」
(雷市の熱意って、何か凄いよね。俺達もなんかしなきゃって気にさせられてる)
(……そうか? 暑苦しさがヤバいだけじゃないか? 別に俺達、プロ野球選手になりたいとか思ってないんだからさ。程々で良いんだよ、程々で)
(そうかな? ……伊川の言う事も、一理あるけど)
普段通り、以心伝心で北瀬と会話していると、珍しく北瀬が、何かしなきゃなんて思い始めていた。
面倒くさい、辞めとこうぜ。北瀬が何か始めたらさぁ、俺まで焦っちゃうじゃん。人生なんて、程々に楽に行こうぜ。どれだけ頑張っても、甲子園とか無理に決まってる。
あれ、でも俺達三強の市大三高に勝ったんだよな……どうせマグレだろうけど。それか所詮、四天王の中で最弱……って奴。3チームしか無いけど。
「……全国にいるピッチャー全部打ちてぇ〜っ!! 纏めてブッ飛ばしてぇ〜っ!! カハハハハ!!」
「お前はプロの世界で飯食いてぇんだろ? 雷市。そうなりゃ、毎日色んなピッチャーと戦えるさ」
全国にいるピッチャー打ちたいって、どんだけの数試合するつもりだよ。俺達の身が持たねー! ……でも轟監督なら、マジで実現させそうで怖いわ。
県内ベスト8の実力ですって色んな学校に売り込みかけてさ、そしたら1回位試合してくれる所、割とあるかもしれないし。
てか、プロになりたいって……俺よりちょっと上って位の実力でさ、何億円も稼げるような野球選手になんてなれる訳無くない?
ちょっと考えれば分かるじゃん。まあ轟親子は野球脳に支配されてる所がみてて面白いんだけどさぁ。分不相応な野望は身を滅ぼしかねないと思うけどね。
「全国とかプロとか、スケール大きいね。同じ1年なのに」
「それな」
「……流石、バカみたいな練習中毒者は違うなァ」
「そこまで言わなくて良いだろ! 練習熱心って言え!」
「なんで栄純くんが怒ってるの。そもそも練習中毒って、球児としては悪口でも無いと思うけど……」
やべっ。この場には北瀬以外もいたのに、ちょっと言い過ぎたかな。反省します。
……いやでもさ、何時間も試合して、その上自主練で全力でバット振るとか馬鹿のする事だって思わない? マジで同じ人間のする事とは思えねーよ。
「とりあえず、選抜投手の真中を打ち砕いたんだ。後は西東京でお前の相手になりそうなピッチャーは……稲城実業、成宮鳴。あいつ位しかいねぇな
稲実を倒して甲子園で活躍してみろ、一躍スターの仲間入りだぜ。そしたらお前、2年後にドラフトで契約金ガッポリ。俺の借金も帳消しだぜ!」
「……うおおぉぉ! 稲実ナルミヤァ!! ブッ飛バス!!」
スターの仲間入りは、ちょっと言い過ぎじゃないかな。たかが1回、高校生の中で割と凄い人を倒した所で、別に賞金が出る訳でも無いんだし。
はぁ……このまま行けば、俺達マジでそんなのと戦うんだ……キッッツイ。
「へー。ナルミヤって人そんなに強いんだ……面倒くさいし、戦いたくないなぁ」
「この間、誰かが熱心に説明してたような。ほらあれだって、チェンジアップとスライダー使いのサウスポーって」
「もう1球種位無かった?」
「そうだっけ? ……あ、轟親子呼んでこないと。じゃあまたね! 青道の皆さん」
「じゃあ3日後にねー」
「……」
なんか返事が無いな、この人達無愛想なのか?
ピンク髪の人なんて、フレンドリーな髪色してるのにな……いや、ソレは俺もか。
「ちなみに、何で北瀬は彼らが青道だって分かったの?」
「どっかで青道のユニフォーム見た事あるんだよね。何だっけ?」
「まさかの市大三高を7回コールドで仕留めた薬師高校! 轟雷蔵監督は、今回の試合をどう見ますか?」
どっかの取材の人が来たから監督が中心になって答えてる最中、ようやく俺の頭は冷静になってきていた。
試合中はアドレナリン出まくってて真中さんの事ザコとか思ってたけど、よく考えると俺よりずっと強い、強豪校のエースなんだよなぁ。俺達が勝っただけで、俺が勝ったとは言えねぇわ。
心の中で謝っとこ。後、2番手ピッチャー出すとかいう舐めプしてスミマセンって。
そういえば、次の青道戦で北瀬を投手として初お披露目と行くのかな……?
北瀬を出すのは、どうせならド派手に決勝戦とかが良いんじゃないか? 次の都千草相手なら、三島と三野先輩で十分勝ってくれるだろうし、1週間後の先発は俺で決まりっしょ。
いや都千草相手にも出してくれるって言うなら足引き摺ってでも出るけど、2番手投手の俺を壊すリスクを負ってまで出す場面じゃ多分ねぇよな。
……てか次回の試合、そもそも俺出してくれんのかな?
打者として出場する分の体力は3日後なら十分回復してるだろうけど、別に打者としての俺って絶対出した方が良いって感じの実力じゃないしなぁ……
「えーそうっすね……コールド勝ちは出来過ぎですね。いや、勝てたのは実力もありますが、エースに完投されてたらもうちょい展開が変わってたでしょうねぇ。まーそういうメンタル面を含めたのが試合なので、順当に勝ったといった所でしょうか」
「強豪の市大三高相手に順当に勝ち上がる、それが出来るのが今の薬師高校という事ですね! では主砲の北瀬くんは、この試合をどう見ますか?」
「えっ、まあ、負けたら終わりのトーナメントなんで、勝てて良かったです」
「では、もう1人の主砲である轟雷市くんはどう思いますか?」
「カハハハ……カハ……肉! 食べ放題!!」
「そんな金うちにはねぇよ!」
そういや試合中、「コールド勝ちしたら肉で腹膨れるまで買ってやるよ!」とか言ってるのが聞こえてたな。嫌な予感してたけど、やっぱり買う金無かったのかよ。やっぱ監督は、野球以外ダメダメだなぁ。
「嘘吐き! このクソ親父っー!!」
「チッ、仕方ねぇなー。後で北瀬か真田に肉まんでも買ってもらえ」
「舌打ちしてますけど、ソレ監督全く損して無いっすよね?!」
良いぞ、もっと言え涼! ……別に雷市に肉まん買う事自体は良いけど、そもそも監督はもっと雷市に食料を買い与えるべきだと思う。そんな心遣い、監督に出来るとは思えねぇけどさ!
空気が比較的読める真田を含め、記者の前で轟親子が格闘している事に何も疑問を持っていなかった。
写真を撮ろうとしていたカメラマンは、まさかこんな場面を撮るわけにもいかずに困り、とりあえず次の取材相手の写真も撮ってみる事にした。
「では! エースの真田くんは、この試合をどう思いますか?」
「えっと、そうですね……4回で5点も取られておいて偉そうな事言えないっすけど、野手陣が打力でゴリ押ししてくれたお陰で勝てました。青道にも稲城実業にも勝って、轟親子達を甲子園まで連れて行きたいです」
対戦相手に情け容赦の無い轟監督、イケメンだけど短文で無難な事しか言わない北瀬、全く関係無い肉の話をしだして暴れる轟選手。
この後にちょっと感動的でマトモな事を言ったイケメン真田君に記者とカメラマンは、祈りを捧げたくなる位感謝した。
「素敵な感想ありがとうございました!! 後で新聞にちょっと乗ると思うので、是非確認してみてくださいね!!」
後日、真田だけがドアップで映った写真と記事を見て、野球部一同が不満げな顔をする事になる。
「何で真田先輩の顔だけ載ってるんスか!」
「不思議だよなぁ。俺そんなに活躍してないのにさ」
「イケメンで口が良いからじゃない?」
「北瀬や伊川だって顔はド級に良いのになぁ」
「口が上手く無いからじゃない? 轟親子を甲子園に連れていきたいとか、メディア受けしそうな事言えなかったんでしょ」