【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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展開を提供をしてくださった方、ありがとうございます!
甲子園の砂について詳しくなくてすみません、ダイヤのAの知識のみで書いております


2年生・秋季大会編
115球目 壮行試合


 

 

 

 

「やった……!」

「俺達の、勝ち……??」

『……よっしゃあああぁぁ!!!』

 

___わああぁぁ!!

 

地響きの様に鳴り響く歓声の中、薬師野球部の春夏甲子園連覇が決まった。

 

 

「4対2で、薬師高校の勝ち! 礼!!」

『ありがとうございました!!』

 

8回裏、下級生達はもう駄目かと思った所で、エース北瀬の劇的なホームラン。

甲子園優勝という誉れに、歓喜の渦に湧く薬師野球部部員達。

轟監督も片岡コーチも、大粒の涙を流して喜んでいる。

 

 

「ううっ……」

「ここまでやっても……! ダメだったのかっ……」

 

確実に戦う事になるであろう、薬師高校への対策は思いつく限り行った。

……それでも、試合前から満身創痍だった彼らに勝つ事が出来なかった。

 

巨摩大藤巻高校の部員達は、悲嘆に暮れていた。

彼らにとって甲子園とは、出場を目指す物では無い。悲願の北海道初優勝を奪い取る物なのである。

 

万全のライバルと戦いたいという気持ちはあった。

だがそれよりも……薬師部員数名の入院を聞いた時は、甲子園優勝に近付いたという喜びの方が重かった部員が多い。

 

そんな巨摩大藤巻にとって背中を押されている様な状況でも勝てなかった事が、彼らは非常に悔しかったのだ。

 

 

「北瀬、涼」

「……なんだ? 本郷正宗」

 

そんな中、少し涙を流しながらも話しかけて来た本郷に、北瀬は微妙そうな顔をして返事を返した。

勝った事は嬉しいけど、相手チームが泣いているのは微妙な心持ちなのである。

 

 

「お前と対等に戦えたのは、お前がこの球を教えてくれたからだ___感謝している。そして、次こそお前を倒す」

「俺も負けない! ……本郷のピッチング、今日も凄かった。皆が塁に出てくれなかったら、俺が負けてたんだ」

「そうか……」

「うん」

 

北瀬は、本郷の改めての宣戦布告に返答しつつ、俺達のチームが強かったと言葉を返した。

 

 

___こうして、薬師高校対巨摩大藤巻の戦いは終わった。

ちなみに本郷本人は内心、チームが強かったと言うより北瀬が強かっただけだろう。と思ったとか思ってないとか。

 

 

 

 

 

 

試合の整列後、北瀬達は恒例の甲子園の砂の持ち帰りを決行しようとしていた。

大勢のカメラマンが待ち構えるピッチャーズマウンドの雰囲気に、北瀬は気圧された様な顔をして立ち止まった。

なんか、俺が行く所が1番人が多い気がする……皆で勝った試合なのにな。と思ってしまったのだ。

 

そんな微妙な顔をしている彼を見た真田は、北瀬の背中を両手で押して連れて行った。

 

 

「ほら、行って来いよ涼!」

「真田先輩……それに、友部もパワプロもさ

___俺達4人で取りに行かないか? あの砂」

 

北瀬は真田達の方を振り返って、そんな言葉を掛けた。その方がチームらしいと思った様である。

だが当然、そんな風習は無いと知っている真田と友部は困った顔になった。

 

 

「えっ、俺もですか……?」

「良いッスね! じゃあ一緒に行きましょう!!」

「いやちょっとなー。望まれてるのは今日完投したエースの、北瀬だけだと思うけど……」

 

真田先輩の言葉に、北瀬はしゅんと寂しそうな顔をしながらピッチャーズマウンドの方を振り返った。

 

 

「俺だけじゃなきゃ駄目なんですか……? やっぱりそうですよね…………」

「……しょーがねーな、俺も最後だし一緒に行ってやるよ!」

「やった! 俺ピッチャーの所で砂掻き集めるの、憧れてたんですよねー!」

「えぇ? じゃあ俺も……」

 

こうして彼らは、4人で同時に砂を袋に詰める所を観客達に披露する事になった。

カメラマン達は一瞬瞑目したが、まぁこれはこれで良いんじゃないか? と思って放置する事にした様だ。

 

 

___こうして、真田、米原、森山、平畠、福田、山内、増田、薬師野球部3年生達の夏はハッピーエンドで終わった。

全国約4000校の頂点に立つ者しか見られない景色を味わえた事を後輩や監督達に感謝しながら、彼らの最後の夏は終わった。

 

 

ちなみに……北瀬が2年後、メジャーで衝撃のデビューを果たした事によって、ピッチャー全員で砂を掻き集めるのが甲子園では寧ろ主流になったらしい。

 

 

 

 

 

 

薬師高校の吹奏楽部員達も、歓喜の渦に湧いていた。

 

 

『やったあぁぁ!!!』

「凄い……北瀬先輩達って、やっぱり凄いんだ……!!」

「私、この学校に来て良かった……!!」

 

他の今までの積み重ねがある吹奏楽部と違い、甲子園で演奏するには力不足感が否めなかった彼女達。

ネットでの誹謗中傷に、心が折れかける日もあった。

 

……でも、野球部の彼らはこれ以上の非難に耐えて戦っている。

それなら薬師野球部を応援する私達が、挫けている暇なんてないんだ!

そうやって彼女達は、日々の苦しい練習にも耐えてこの場所に立っている。

 

___だから、この特等席で試合を見ることが出来た。

彼女達は、間違いなくこの瞬間幸せだった。

 

 

「北瀬、伊川、轟……なんて素晴らしい選手達!! ワシここまで生きて来て良かった!!」

「そんな隅っこで喜んでないで、こっちで騒ぎましょうよ!

理事長が野球部と私達吹奏楽部を支えてくれた事は、全員知ってますよ!」

「ホントか? じゃーお邪魔するわい!!」

 

1人で喜んでいた理事長を見て、ノリの良い吹奏楽部員が彼を一緒に騒ごうと誘った。

割と人好きな理事長は、喜んでその輪に加わる。

 

 

「私達近くの店を貸し切り予約してるんですけど、理事長もどうです?」

「ワシも良いのか?! 楽しみじゃなー!!」

 

こうして吹奏楽部部員達はどんちゃん騒ぎをしながら、最高の夏は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

甲子園決勝が終わった後、薬師野球部の上級生達はバスでこんな会話をしていた。

 

 

「これで真田先輩達は、もう引退しちゃうんですね……」

「つっても、まだ国体はあるけどな。そっちでも優勝したいから、よろしく頼むぜ!」

「国体は基本3年生の引退試合って感じだから、俺らもまた出してくれるらしいんだよなー!」

「俺も福田もベンチに入れてくれるらしいからな! スゲー楽しみだわ!!」

 

こんな会話をしている途中、急に北瀬と伊川は立ち上がって山内先輩と増田先輩の前に立った。

 

 

「その……俺達がここまで来れたのは、先輩達のお陰だと思ってます! だから、このメダルを受け取ってください!」

「俺も北瀬も、前から優勝メダルを2人に渡したいと思ってたんです。だから、受け取って貰えると嬉しいです」

 

山内と増田は一瞬戸惑っていたが、後輩の好意を非常に嬉しく思ったらしい。

まるで宝石を受け取るかの様に大切そうに受け取り、ふと思い付いた事を口にした。

 

 

「マジで?! ……ありがとな、一生の宝物にする!

それでさ、北瀬と伊川、それに雷市も三島も秋葉もサインを書いてくれないか?」

「えっ? 記念メダルに、チームメイトの名前なんて書いちゃって良いんですか?」

「ああ___チームをここまで導いてくれた、お前らのサインが欲しい」

「俺も!」

「えっ、じゃあ俺も!」

 

こうして彼ら3年生は、将来WBCに出場する5人の選手のサイン入り記念メダルを手に入れた。

大切な野球部の思い出として、そして伝説を残したプレイヤーの希少なサインとして、子や孫に代々受け継がれていく宝になるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

3年生達とそんな事がありながら、甲子園決勝戦が終わって1週間が経過した頃。

4日後のキューバで行われるU-18世界大会の前にある、壮行試合に集まった17人の選手達。

 

 

薬師野球部から選ばれた5人は、残念そうにしながらこんな事を話していた。

 

 

「やっぱり残念だよな……影山が骨折で欠場するのは」

「だよな、あいつも出たかっただろうに……」

「アイツも出たかっただろうけどなー、骨折じゃ仕方ない

……でも北瀬は、誰に投げる事になるんだろうな?」

 

甲子園で2回戦った、合宿でも同じチームとしてやってきた影山が来られなかった事を残念がる彼ら。

 

特に伊川は、北瀬のキャッチャーはどうするんだよ……という表情をしていた。

自分のクソリードを、日本中所か世界中の人に晒すのが嫌だったらしい。

確かにこの場合だと、伊川がキャッチャーをさせられる可能性はあるかもしれない。

 

 

 

 

「よっ、薬師の皆さんお揃いで」

『御幸先輩! チワース!』

「おはよ。甲子園見てたぜ? スゲェ試合ばっかだったな……色々な意味で」

 

そんな事を話している中、今やってきた御幸が、軽薄な笑みを浮かべながら薬師野球部5人に挨拶をしてきた。

甲子園を見ていたという言葉に対して、伊川がゲンナリした顔でこう返す。

 

 

「俺、烏野高校とは2度と当たりたくないです……筋肉痛ヤバかったですし」

 

「それ位で済んで良かったじゃん。準決勝、有り得ない位長かったし

 

あ、それと北瀬。バッテリーは俺と組む事になったから、ヨロシク!

……まー、俺がせめて3日以内に変化球1個取れるようにならなきゃ伊川にキャッチャーやらせるらしいけど、俺は絶対取れるようになるから、あんま関係ねーな!

 

……そういう訳だから、俺が練習する為にキャッチングさせてくれ。頼む」

 

 

 

御幸は、自分が取れないと分かっているのにピッチャーに投げろと指示を出す事に罪悪感を感じて、無意識に彼にしては低姿勢な言動をしていた。

 

北瀬はそれに気付かずに、普通に返事を返す。

 

 

「あ、よろしくお願いします! キャッチングやるんですね、分かりました! どの変化球からやります?」

 

影山よりはピッチャーに合わせるリードをする御幸は、その言葉を聞いてこう返した。

 

 

「そうだな……北瀬が好きな変化球からかな」

「それなら、全力ストレートからが良いですね! いやでも……俺の変化球の中で1番取りにくいらしいんですけど大丈夫ですかね? 嫌なら別の変化球で良いんですけど」

 

全力ストレートは、取るのが大変な上に普通のストレートと軌道がかなり近く、最初に取れるようにするには不適切な球種である。

それを分かっている御幸は、本人が投げたいなら投げさせるべきか? と悩みつつ理由を聞いた。

 

 

「全力ストレートか、あの球威はヤバいよなぁ……ちなみに、何でそれが好きなんだ?」

「普通に、打たれてもあんまり飛ばないからっスね。安心して投げられると思います」

 

北瀬の言葉に対して、御幸は伊川のリードはバレバレだったもんなぁと思いながらこう返した。

 

 

「そういう理由なら、全力ストレートより他の変化球を練習させて貰うわ!」

「えっ……? いや、別に良いと思いますけど」

 

「誤魔化した所で、内心納得してないのバレバレだぜ?

あ、理由はちゃんとあるから

……ストレートと全力ストレートじゃ、緩急が出せないから打ち取りにくいんだよな。まぁお前ならそれでも勝てる気はするけどさ」

「へぇ、そうなんですか! ……で、カンキュウって何でしたっけ?」

 

緩急の意味が分からなかった北瀬は、何となく御幸先輩に質問していた。知らなくても問題ない気はするが、何となく聞いておいた方が良い気がしたのだ。

……北瀬が正気で尋ねている事が分かっている御幸は、顔を引き攣らせながら説明した。

 

 

「お前マジで言ってんの?! 速い球と遅い球を投げる事によって、バッターを差し込む……つまり、ボールの速度に慣れさせないって事だよ」

「へぇ、そうなんですか! そう言えば俺も、そういう配球に惑わされた事有る気がしますね!」

「あーなるほど、感覚派って事か。分かった、そういう所気を付けてリードするわ」

 

1年生の頃の沢村より知識がない事を理解しながらリードを出さなきゃなと思いながら、御幸は話している。

当然、キャッチャーのリードとピッチャーの知識量の関係性が分かっていない北瀬には伝わっていない。

別に伝わる必要も無いが。

 

 

「うす、アザース……?」

「また分かってないな。まあ良いけど……てか、お前のボール取るの超楽しみにしてたんだよな!

少しの間だけだけど、バッテリーとして組めて嬉しいよ。宜しくな、相棒!」

「よろしくお願いします!」

 

御幸の言葉に対して、北瀬はペコリとお辞儀をしてバッテリーとしてよろしくお願いしますと返した。

 

……そんな素直な対応をみせる彼に対して、御幸は内心複雑な気分になっていたらしい。

 

俺偉そうに言ってるけど、今の所北瀬の変化球1個も取れないんだよなぁ。キャッチャーが弱気な所を見せる訳にはいかないから、そんな事言わないけど。

御幸はそんな事を考えながら、表には出さずに頷いた。キャッチャーとしての根性に、満ち溢れている選手である。

 

 

 

 

「良い感じで締めてるけどさ、今日の大学日本代表との戦いでどうやってキャッチするつもりなんだろうな……?」

「北瀬ならストレートだけでなんとか出来るだろ、多分」

「カハハハ……日本代表! 打つ!!」

「俺も負けねぇ!!」

 

近くにいるから話が聞こえていた薬師4人は、大問題に対してぺちゃくちゃと適当な事を言っていた。

ヤバそう……? まーなんとかなるさ! という、薬師特有のお気楽思考を完全に受け継いでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

U-18を本開催を前に壮行試合、対戦相手は侍ジャパン大学日本代表。その舞台は、阪神甲子園球場で行われる。

 

 

集まったU18の面々。

かつてこの舞台に立つために、あるいはこの舞台で鎬を削りあった敵だった仲間達と、さまざまな思いと共にする中そこに現れた大学日本代表。

___そこには御幸が目標とした男、クリスがいた。

 

青道高校の旧キャッチャーである彼らが親密げに話したり、大学生No.1ピッチャーである神木が北瀬にサインを貰ったりなどの和やかな交友がありつつ、彼らの試合は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

1回表、U-18の攻撃はセンター藤澤。

疾風以上の走塁技術に、薬師野球部下位打線並の打力を持ったスーパープレイヤーである。

 

対して大学日本代表の先発ピッチャーは、大学でクリスとバッテリーを組んでいる神木。

単純なスペックではやや物足りなさがあるが、土壇場での勝負強さが持ち味。

球速MAX142kmで、カーブ・シンカー・スライダーを使用するピッチャーだ。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク! バッターアウト!」

 

「ドンマイです! 藤澤先輩!」

「次はホームラン打てますよー!」

「カハハハ……神木、打ちたい!!」

 

呆気なくアウトにされてしまった藤澤。

相手も大学日本代表として選ばれた精鋭、簡単に打てる筈が無いのである。

 

そんな中、普段通りに野次を飛ばす薬師一行。

1人だけでU-18日本代表になっていたら空気を読んで黙っていただろうが、同じチームの選手が5人もいるせいでつい野次を飛ばしてしまうのである。

 

大阪桐生の藤澤先輩は内心、お前らじゃないんだから簡単にホームラン打てる訳ねぇだろ! とキレていた。

……言ったらダサすぎて、口には出せなかったが。

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで、打席には2番ライト秋葉。

チームから日本代表に来たら、何故か打順が1つ上がって2番に抜擢された男である。

 

 

___カキン!

 

4歳も年上のピッチャーから、簡単にヒットを打った秋葉。

薬師野球部には化け物が多く在籍しているせいであまり目立たないが、彼も天才と言っていい実力を持っているのだ。

 

 

「秋葉ー、今ヒット狙っただろ!」

「普通、狙うのはホームランだろうがっ!」

「カハハハ……ドンマイカズマ!」

 

「別にヒットでも良いだろ!」

「そーだそーだ! 安打差別だぞ!」

 

秋葉は大学生からヒットを打ったにも拘らず、野次を飛ばす薬師が誇る長距離バッター3人衆。

そんな彼らに対して、1塁にいる秋葉とネクストバッターズサークルにいる伊川はクレームを入れていた。

 

当然、言っている事は中距離バッターの2人が正しい。

ホームラン以外は価値がないなんて事、野球という競技では有り得ないのだ。

 

やっぱり薬師野手陣って頭がおかしいな……あんな守備を許容する奴らだ。そんな物か。

彼らの野次を聞いているU-18代表ベンチメンバーや、大学日本代表メンバーは内心そんな事を考えていた。

 

 

 

 

ワンアウトランナー1塁で打席に立つ、3番バッターのセカンド伊川。

彼は、高校3強のピッチャー成宮から1回アウトを取られただけで驚かれる程、人間離れした有り得ないミート力の持ち主である。

 

 

___カキーン!

 

初球からあっさりツーベースを放った伊川。

つい打っちゃったけど、少し相手ピッチャーのボールに慣れてからホームラン狙った方が良かったかなぁ。なんて、相手を舐め腐った事を考えていた。

 

残念ながら、伊川の実力からすれば大学生ピッチャーを舐めていても仕方ない。

 

 

 

 

ワンアウトランナー2・3塁で打席に立つのは、DHの轟。

化け物バッター揃いの薬師打線において、主砲を担う高校最強の長距離砲である。

 

 

___カッキーン!!

 

なんと雷市は、場外への特大ホームランを放ってしまった。

これで、1回表から3点入った事になる。

 

この化け物じみたホームランに、大学日本代表達は啞然としていた。

 

 

「嘘だろ?! あの神木が、ここまで打ち込まれるなんて……?!」

「散々、今年の高校生はヤバいって聞いてたけど、ここまでかよ?!」

「あっ……ヤバいって……」

 

俺達は大学生代表、たかが高校生代表なんぞ敵じゃないと考えていた一部のメンバー達は、ヤバいどうしようと顔を青くしていた。

高校生に打ち負かされる屈辱を、想定していなかったのだ。

 

確かに165kmはヤバい。でもソイツが先発してくる訳じゃないなら、俺達の方が上手だろ?

そんな甘い事を考えていた大学生達は、投壊野球を見て絶望していた。

あんなの、プロでもなきゃ抑えられないだろ。という反応である。

……残念ながら、薬師クリーンナップを相手にしたら、プロの2軍でも抑えられないのだが。

 

 

 

 

5番バッターは、薬師野球部で6番を打っている三島。今日もファーストでの起用になる。

打撃力には文句が付けられないが、守備面は大丈夫だろうか……? 薬師野球部と違い、エラーに目を瞑ってはくれないと思われるのだが。

 

そんな彼は「ガハハハ、俺もホームランを打ってやる」なんて普段通りの事を言いながら、バッターボックスにぬるっと入って行った。

 

 

___カキーン!

 

「クソッ! ホームラン打てなかった!!」

 

大学生相手でもホームランを打たないと気が済まないらしい三島は、無念という顔をしながら2塁まで進んだ。

北瀬・伊川・雷市という化け物がチームにいるせいで主役になれないが、彼も大概天才的である。

 

 

 

 

ワンアウトランナー2塁で、6番レフト北瀬が打席に入る。

 

並木監督や関根トレーナーに真木コーチも、普通に北瀬を三島より打撃面でも評価している。

だが、北瀬には守護神としてマウンドに立って貰う事になる為、少しでも身体を休める為に下位打線での起用になっていた。

三島の打撃力も十分大学生達に通用すると判断していたので、無理に北瀬を上位打線に置く必要が無かったのである。

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

初球から、あっさりホームランを打ってしまった北瀬。

彼のパワーは、プロを含めても国内で5本の指に入るといわれている程だ。

たかが大学生No.1如きなど、敵では無かったらしい。

 

相手ピッチャーの、打たれ強さA・対ピンチBなど関係なく、普通の顔をしてホームランを放っていた。

 

 

 

 

その後大学生ピッチャーは、7番ピッチャーや8番ショートをアウトにとって、ようやく1回を終わらせた。

高校生相手に初回5失点というと情けなく聞こえるが、相手のクリーンナップは全員薬師高校だから仕方ない。

 

寧ろ、打ち込まれたのにも拘らず調子を崩さずに、冷静に下位打線を討ち取った彼を褒め称えるべきだと思われる。

 

 

 

 




吹奏楽部も部員が大幅に増え、そこで掛かるお金は理事長が全額負担しています。
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