【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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121球目 野次

 

 

 

 

4戦4勝と、快進撃を続けているU-18日本代表。

スーパーラウンドに進む為の勝ち星は、既に稼いでいるが……勝ち星は一部引き継がれる為、最後の試合でもしっかり勝っておきたい所。

 

最後の対戦相手はパナマ。

既に4戦4敗と、スーパーラウンドに進出できない事が決まっているチームである。

……日本代表としてはぶっちゃけ負けても良い気もするが、格下相手だし出来れば堂々と勝っておきたい所。

 

ミーティングが終わり、そんな雰囲気を醸し出している日本代表達の中、北瀬や三島といった薬師野球部2年生は全然別の事を話していた。

どうやら次の対戦相手より、日本代表のピッチャーが誰かという方が重要だった様だ。

 

 

「今日投げるのは、三島じゃなくて天久さんか……残念だったな」

「悔しいが天久さんの実力は俺も認めている……だが! 次は絶対、先発ピッチャーの座を渡さん!! ガハハハ!」

「おう……ちなみに、次っていつだ?」

 

伊川は、三島はピッチングより守備の練習した方が良いんじゃないかと内心考えながら、天久さんにいつ勝つつもりなのかと質問した。

それに対して、三島はこうやって堂々と答える。

 

 

「そりゃ、プロに入ってからに決まってるだろ! 同じチームになったら、天久さんや本郷に成宮さん達とエースを掛けて争うライバルになるからな! 絶対負けねぇ!

そしてその前に、先ずは同じチームの涼と雷市に勝つ! エースナンバーと主砲、どちらも手に入れてやるぜ!!」

 

「エースナンバーは渡さない! 俺だって負けるつもりはないぞ、三島!」

「カハハハ……次もイッパイ打つ! 負けない!!」

 

薬師野球部員はそうやって盛り上がっていたが、聞いている他の代表メンバー達は困った顔をしていた。

 

三島、まだ北瀬からエースナンバーを奪うつもりなのかよ? バッター一本に絞った方が、絶対お前は強いって!

ぶっちゃけ、ピッチャーとしてはそこそこ程度だろ。自分の強みを活かして行こうぜ……という反応だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

1回表、日本の攻撃は1番藤澤。

走塁・盗塁能力が非常に高いプレイヤーで、塁上からピッチャーを惑わせてくる選手である。

 

パナマのピッチャーはセルヒオ。

149kmと割と速いボールを投げるが、ノーコンが酷い劣化版降谷の様なプレイヤーだ。

 

 

___カキン!

 

バッターは余裕な表情でヒットを打った。

甲子園で戦ったピッチャー達より、ぶっちゃけ弱い気もするので当然の結果だろう。

 

薬師部員達は、これならホームランを打てるだろと思っていたが……流石に他校の先輩達には飛ばせなかった様だ。

 

 

 

 

ノーアウトランナー1塁で、打席には2番秋葉。

将来は全日本でクリーンナップになって欲しいと期待されているバッターである。

 

 

___カキーン!

 

彼はあっさり長打を放ち、ツーベースヒット。

だが薬師部員達は、彼のバッティングに不満を持っていた。

 

 

「次はホームラン行けるぞー!」

「カハハハ……次はホームラン!!」

「ガハハハ、ホームランを狙うのが最善だぞ!」

 

「薬師野球部ってヤベーな、ツーベースでも文句が出るのかよ……」

「あの強気な姿勢が、良いバッティングを量産……してるんですかね……?」

「確かに、ホームランはカッコいいですけど……」

 

 

 

 

次のバッターは、3番の伊川。

審判の誤診以外では、世界大会でもアウトを取られていない化け物である。

 

 

___カキーン!

 

あっさり長打を放って、2・3塁のランナーを返す。

 

 

「伊川ー! 次はホームラン狙ってこうぜ!」

「別に良いじゃん! ……お前がホームラン打てば、点数的には同じだろ!」

「そりゃそうだな!」

 

 

 

 

打席に立ちながら、普段通りの野次を伊川に飛ばしてベンチをざわつかせている、今日はレフトの北瀬がバッターボックスに向かった。

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

ここで北瀬は、初回からホームランを放つ。

地方大会で戦った降谷の下位互換とはいえ、世界大会でこうも簡単にホームランが出せる物なのか?

流石は日本最強の打者陣が誇る大エースと言えるだろう。

 

 

 

 

ノーアウトランナー無しで、打席には5番轟。

特徴的な「カハハハ……!」という笑い声を出しながら、堂々とバッターボックスに立った。

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

そして、2連続ホームランである。

大勢の観客達から歓声が、パナマを見に来た人達からは悲鳴が上がっていた。

 

 

「良いじゃんトドロキー! バンバンホームラン打って来なよー!」

「おっ、鳴も薬師に染まってきたか?」

「カルロスもやろうよ! これけっこう楽しいよ?

味方がこんなに打つ事、そうそう無いだろうし……やらなきゃ損だって!」

「そりゃそうだな。頑張れ三島! ホームラン狙えよー!

……確かにけっこう楽しいわ」

 

 

 

 

徐々に感覚が狂っていくU-18日本代表を背に、悠々と三島がバッターボックスに立つ。

 

 

「ガハハハ! 沢山の声援を聞きながら打席に立つ俺、三島! 4番になる日も近いな!!」

 

ドヤ顔をしながら打席に立つ三島は、何故か絶好調だった。

……世界中の人達が集まるこの大会で、もしかしたら一皮むけた可能性もある。

 

 

___カッキーン!!

 

『わああぁぁ!!』

 

まさかの……U-18とはいえ世界規模の大会で、3連続ホームラン。

 

 

「良いぞ三島ぁ!」

「カハハハ……ナイスミッシーマ!」

「俺が投げてる時も頼んだよー! あっ、でもエラーは止めてね!」

「やっぱホームランは良いよなー! 俺は狙わないけど」

 

日本のベンチは、ワイワイキャーキャーと騒いでいる。

勝てると確信しているからこそ、楽しむ気持ちだけで純粋に騒げているのだ。

 

 

 

 

7番原がヒットを打った後、8番御幸・9番真貝・1番藤澤が相次いでアウト。

打順が1周して、ようやく日本の攻撃は終わった……なんと、1回で6得点もしている。

 

まあむしろ、パナマのピッチャーの実力を考えると、運が良かったと言えるではないだろうか?

最悪、打順が2巡してもおかしくない実力差なので……

 

 

 

 

 

 

1回裏、今回先発の天久は、パナマのバッターを三者三振に仕留めた。

本人曰く「これ位の相手なら全員三振に出来ないとなー、薬師相手に投げられないっしょ! 相手のバッター、薬師の1/10位の実力しかないし」との事らしい。

薬師野球部は、やはり化け物なのかもしれない。

 

 

 

……

 

 

 

こんな感じで試合は進んでいき、9回裏の頃には0-20と日本圧勝ムードになっていた。

むしろこの点差で済んだ理由は、日本の監督が「これ以上、点差は要らない」と言って三振を指示したからに過ぎない。

 

監督達は、1人だけ贔屓する訳にもいかないので全員三振させたので、これで伊川の打率は大幅に下がった。

……彼は全く気にしていないが、もし抗議すれば前言撤回して打たせて貰えたかもしれない位には可哀想な話である。

 

日本からわざわざ応援に来ている観客達は、甲子園準決勝や決勝での惨状を知っている為、監督達を非難まではしなかったが残念そうにしていた。

やはり、世界相手に打ち続ける伊川も見たかったのだろう。

 

 

 

 

 

 

「あー、もっとホームラン打ちたかったなぁ!」

「お前ホームラン2発打ったじゃん、まだ足りないのかよ……」

「俺も分かるぜ! この舞台で、もっともっと打ちたかった!」

「無茶な乱打戦は身体に響くからダメだろ……」

「カハハ……ホームランイッパイ……!」

 

薬師部員達が楽しげに普段通り話している所に、成宮が近付いて来た。

そして、口を尖らせてこんな事を言い出す。

 

 

「お前らさー、身内でだけ話し過ぎ! こっちも試合の感想とか言い合いたいんですけど!」

「……あぁ成宮さん、すみません。成宮さん的にはこの試合ってどうでしたか?」

 

伊川の言葉に、成宮は少し考えるフリをした後、ブスくれた顔でこう話した。

 

 

「……まー、完璧って言っても良いんじゃない? 1点も取られないで大量得点したんだし

___でも、俺が投げてたら1回も打たれずに終えられたけどね!」

 

自分が登板していない試合を褒めるのが嫌だった成宮は、あえて批評を織り交ぜて話した。

そんな成宮の評価を聞いた天久が、ちょっと待てよと会話に混ざり始める。

 

 

「えー、俺も良いボール投げてたじゃん! それに、結局点取られてねーし……結果論で考えようぜ、結果論で!」

「確かに天久のピッチングも、基本的には悪くなかったけどさ……あんな下位打線から危うく1点取られそうだったのは良くないでしょ、手加減にも限度があるよ!」

 

天久に対しての指摘を聞いている、成宮と同校のカルロス。

お前の気が強い所は嫌いじゃねぇけど、同じ代表メンバーに喧嘩を売るなよと思い、茶化しに入った。

 

 

「鳴もけっこうそういう所あるよなー、格下相手には手加減するっていうか。いやそりゃ、常に全力投球とは行かねぇだろうけどよ」

「俺は手加減してても打たれないから良いんですー!」

 

そんな彼らの話題を、聞いているだけの薬師部員達。

身内でだけしか話していないという指摘を聞いてご尤もだと思った北瀬は、勇気を出して話題に乗りに行った。

 

 

「……確かに俺も、全力ストレートを9回まで投げ続けろとか言われたら、キツいかもしれないと思いました」

 

ちょっと的外れな事を話しだした北瀬。

だが天久は、そんな細かい事より気になる事があった様だ。

 

 

「へー、北瀬にもスタミナ切れとかあるんだ? 全然知らなかったわ!」

「はい……全力ストレートを150球投げろとか言われたら、けっこうキツいと思います」

「全力ストレートって、165kmを狙うって事か?」

「そうですね! 基本的に、164km〜165kmの間になると思います」

 

聞いていた日本代表メンバー達は、そりゃ疲れて当然だわと呆れていた。

そもそも150球投げ続けろという指示がおかしいのに、日本最速のストレートをしっかりコントロールして投げ続けろとか、どんな鬼畜なんだよという話だ。

 

 

御幸がドン引きした顔をしながら、伊川に対して質問した。

 

 

「伊川、お前……そんなリードした事あるのかよ?」

「誤解です! そんなの流石に、練習でしか言った事無いですよ! 試合では精々70球位ですから!」

 

伊川はブンブンと首を振りながら否定しているが、言っている事は鬼畜でしかない。

 

なぜ練習で、全力ストレートを150球も投げさせようと思ったのだろうか……?

ピッチャーの負担とかを一切考えない、クソを超えた、地獄みたいなキャッチャーだったんだなぁとU-18の代表達に思われてしまった。

まぁ割と、やらかした事を考えると事実である。

 

 

「北瀬、お前___嫌な事はちゃんと否定しろよな」

「……? いやスタミナ限界を調べてたかっただけなんで、普通に同意してやりました

俺ってけっこう丈夫なんですよ!」

「いくら何でも、丈夫って範囲を超えてるだろ……」

「これが高卒メジャー級の実力って事か……」

 

北瀬の弱点を掴んだと思いきや、化け物じみたスタミナを知らされて終わったU-18メンバー達。

まあ、スタミナ切れは望めないという事が分かっただけ良かったのだろうか……?

 

無尽蔵のスタミナがあるから幾らでも練習出来て、だから北瀬は強いんだなぁと納得した人も多かったらしい。

練習量≒実力だという考えからすれば、どれだけ練習しても壊れない北瀬が強くなっても当然だろう。

 

 

後1年、同地区のライバルとして薬師野球部と戦わなくてはならない、青道高校のエース降谷。

甲子園までの高すぎる壁として立ち塞がる、大エースの実力を散々見せつけられている。

ピッチングが好き過ぎてオーバーワークになりがちな彼は、しっかり休息が取れているのだろうか?

 

北瀬や伊川と違い、降谷は頑丈な肉体をしていないのでちゃんと休みを取るようにしてほしい。

 

 

 

 

 

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