【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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126球目 デメリット

 

 

 

 

アメリカ不動の正捕手であるカーライルも最警戒人物の登場に集中力を研ぎ澄ましミットを構えていたが、あっさりと伊川は2ベースを打った。

 

 

(やはりおかしい……奴は人知を超えている!)

 

ここでカーライルは確信した。

伊川始はそもそもボールを見てさえ居ない、来る地点は予めわかっていて、タイミングすら見切っている……まるでそこに合わせただけのようなバッティングだった。

しかも彼の威圧感によってボール3つ分位ピッチングがズレていた為、ミットの位置やサインを盗まれたというのもありえない。

 

仮説としては彼がバッターボックスにいる間常にゾーンの状態にあり、理屈でなく培われた勘で打っている。

又は指先から離れる一瞬で、人智を超えた計算で割り出して打ち込んでいると言った所か?

 

だがどちらだとしても、そんなことが出来る人間を審判の誤審以外で打ち取れる訳が無い、

仮にこの男が9人いたのなら、どんな名投手が相手でも無限に点を取って勝ってしまうだろう……

 

 

キタセと同等の男はこの先数十年もすれば、もう一人くらいは生まれて来る。

___だがこんな力を持った選手が再び現れるなど、過去も未来も決してありえない!!

 

 

 

 

キャッチャーが動揺に飲まれる中、堂々と現れたのは薬師の最強スラッガーの一角、轟雷市。

 

 

「カハハハ……マイケル、打つ!!」

 

高らかに嘲笑しながらバッターボックスに立ち、何時でもホームランを打ってやると宣戦布告していた。

……ちなみに、彼本人にはそんなつもりは無い。

強いピッチャーと対戦するのが楽しくて、無意識に笑ってしまっているだけである。

 

 

 

 

ここでキャッチャーのカーライルは座る位置をずらし、あからさまにストライクゾーンから外れた場所にキャッチャーミットを構えた。あからさまな敬遠である。

 

 

「えっ……」

 

雷市のテンションが、明らかに下がっていた。

折角強いピッチャーと勝負出来ると思ったのに、自動的に塁に進んでしまったのが悲しかったのだ。

 

これは、投手北瀬起用の弊害が現れたと言えるだろう。

大谷ルールが存在しないU18では投手北瀬を当然打線では使えないし、完投させる予定となると完全試合を崩された例があるために緊急の代打以外では三島を抜いている。

 

……つまり、北瀬を登板させるとアーチスト持ちが自動的に2人抜けるため、打席の回転率、攻撃力が一気に落ちるのである。

 

 

最も他の日本メンバーも全国から集まった精鋭だけあってまあ全く打てないということもないのだが、しかし世界レベルのそのまた更にトップとなると厳しい物があった。

結果後続は討ち取られ、残念ながら1回裏は無失点となってしまった。

 

 

 

 

 

 

2回表、アメリカ代表の攻撃は4番カーライルから。

 

 

___ガキン!

___バシッ!

 

「アウト!」

 

「ガハハ、流石アメリカ代表! 涼のボールに初回から合わせてくるなんてな!!」

「やっぱ凄いな……俺もアイツら相手に投げたい!!」

「諦めろ成宮、流石に決勝戦はエースが完投するだろ!

……まぁ俺も投げたいっちゃ投げたいけどな」

 

流石アメリカ代表の4番と言うべきか、カーライルは振り込んでボールをバットに当てるもゴロとなった。

北瀬のキレキレのボールは最早当てられるだけで凄いレベルなので、日本代表のベンチは称賛している。

 

……というか、敵のファインプレーを呑気に褒めるとは何様なのだろうか?

良くも悪くも、薬師メンバー独特の明るすぎる雰囲気に、日本代表達は汚染され始めていた。

 

 

 

 

そんな穏やかな空気が流れる日本代表と違い、主砲兼キャッチャー兼アメリカ代表キャプテンのカーライルは、冷や汗をかきながら確信を得ていた。

 

芯でないといっても勢いの無い打球に、信じられない程腕に伝わるこの衝撃……

これまでの戦いと、映像記録のバットの当たりと打球速度から予想はされていた。

だが正直、信じたくはなかった。

 

この男、キタセリョーは、メジャー最速レベルの速球を持ちながら……ホンゴーと同じ魔球、浮き上がる隕石弾の使い手であることを。

 

 

メジャーでも最上位級の速球、それを制御し切るコントロール、加えて圧倒的なノビに、何よりもこの球威と呼ぶも憚られる球質の重さ、全てが一級品の4種の変化球……

憧れのメジャーの舞台にさえ、こんな投手は球団の看板クラスにもいないだろう。

 

___だからこそ今ここで倒すと、彼らは闘志を燃やす。

 

そうして他のアメリカ代表メンバーも、負けじとバットに球を当てたが、怪物球威により減衰した打球で簡単にピッチャーゴロになった。

御幸によってショート真貝方向に意図的に打たされアウトを奪われていき、アメリカ代表は2回裏もヒット無し。

 

ちなみに裏の2回裏、日本代表の下位打線も全く振るわず、残念ながら三者三振。

薬師メンバーの馬鹿げた打撃能力に釣られ、普段とは違うスイングをしてしまっていた。

本郷の様に彼らの力の一端を手に入れるには、好感度と友情タッグトレーニングが足りなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

3回表も、あっさりと北瀬によって三者凡退。

次の3回裏は日本代表の攻撃。打順は9番からだが、調子を崩している9番と1番はあっさりと凡退。

ツーアウトランナー無しで、薬師野球部所属の秋葉に打席が回った。

 

 

___カキン!

 

そんな中秋葉は、アメリカ代表相手にヒットを放ち安打製造機の力を見せつけた。

 

 

「ナイスや秋葉!!」

「ツーアウトランナー無しなら、そこは普通ホームラン狙いだろ!」

「秋葉ー、偶には薬師らしい打撃をしても良いよー!!」

「成宮さんまで野次らないでくださいよ……」

「流石に冗談だって……ナイスヒット!」

 

ヒットを打ったにも拘らず、薬師メンバー以外からも野次られる秋葉。

かなり嫌そうな顔をして、他校の先輩相手に対してふてくされていた。

俺だってけっこう頑張ってるし打ってるのに、何でこんなに野次られてんだよ……おかしくね? と内心ちょっと怒っているのである。

 

彼の今大会での打率は、伊川と雷市に続いて世界3位。

それにも拘らずイジられてばかりでは、ムカついても仕方ないだろう。かなり正当性がある怒りだと思われる。

それでも反撃仕切れない性格だから、メンバーからイジられ続けてしまうのだが……幸か不幸か、彼はそれに気付いていなかった。

 

 

 

 

ツーアウトランナー1塁で、打席に立つのは3番伊川。

 

 

「伊川くーん! 頑張ってぇ!!」

「So cool!」

「行けー! 伊川ー!!」

 

最近はプロでもないのに女性ファンが付いてきたのか、甲高い声の応援も聞こえていた。

伊川は煩いとは思いつつ、知らない男の叫び声ばかり聞こえるよりはマシだなと内心酷い事を考えていたらしい。

 

 

___カキン!

 

伊川は余裕のヒットを打ったが、残念なから前の塁にいる秋葉の足は速くないのでツーベースにはならなかった。

 

 

「狙う所、少し変更した方が良いか……? いや、アメリカ代表の守備が凄く良いだけか」

 

狙う位置を間違えたかなと一瞬反省した伊川だが、まぁ問題無いだろうと気にしない事にしたらしい。

野球に対して深く考えない所が、キャッチャーとしての適正の無さに直結していたのだが……そんな事すらも、スポーツへの無関心を極めている彼は気付いていなかった。

 

 

 

 

ツーアウトランナー1・2塁で、打席には4番雷市。

北瀬や伊川といった世紀の天才に劣らない、素晴らしい打撃能力の持ち主である。

 

 

「カハハハ……マイケル、打つ!!」

 

前回の打席と全く同じ事を言いながら、凄まじく口角を上げながらバッターボックスに立った。

凶悪な笑みをしているから女性ファンがあまり付かないのだが……ピュアな彼にとっては関係ない話だろう。

 

 

「……?!」

 

その直後、轟は絶句した。

キャッチャーのカーライルが……前回の打席と同じく座る位置をずらし、あからさまにストライクゾーンから外れた場所にキャッチャーミットを構えたのだ。

2打席連続の、あからさまな敬遠である。

 

アメリカを応援に来ているであろう観客達からもブーイングが飛び交い、アメリカバッテリーは冷や汗をかいていたが結論は変えなかった。

秋葉や伊川とは勝負したのだから、もう勘弁してくれという心境である。

 

勝つ為だけを考えたら3人連続で敬遠したいのだが、流石に観客からのブーイングを恐れて出来なかったのだ。

割と正々堂々を好むアメリカ代表としては苦渋の決断だったが、決勝戦で勝つ為には敬遠を多用していくしか無いと確信していた。

 

 

 

 

ツーアウト満塁の場面で、バッターは5番カルロス。

本来彼は、このメンバーだと下位打線に置かれるのが妥当な守備型選手。

だが薬師部員以外は悉く打撃の調子を落としていた為、1人だけ調子を崩していない彼がクリーンナップに抜擢されていた。

 

 

(この場面なら、やっぱ俺も警戒して来るよなァ

無意識かは分かんねぇけど、長打を警戒してんな。ぶっちゃけ、マイケルの本来の実力なら俺なんて簡単にアウトに出来んのによ……

やっぱ2打席連続敬遠は、アイツらバッテリーのメンタルにもキてるらしい)

 

冷静にアメリカバッテリーの心境を考察しつつ、カルロスは表向き悠々と打席に立った。

伊川や轟を相手にするレベルで警戒させて、アイツらを萎縮させてやろうと考えたのである。

 

彼はパワープレーをしてきそうな見た目とは裏腹に、割と頭が切れる選手だった。

 

 

「……ボール、フォア!」

 

日本代表のクリーンナップであるカルロスを無意識に警戒し過ぎて、ストライクゾーンギリギリを狙い過ぎたアメリカのピッチャー。

案の定フォアボールを出してしまい、日本代表に押し出しで1点与えてしまった。

 

優秀なキャッチャーである筈のカーライルは、今更ピッチャーの心境に気付いたらしい。

彼もまた、誇りあるアメリカ代表の主砲として北瀬を攻略しなければならない重圧や、伊川の意味不明なバッティングに心を惑わされていたのである。

 

 

 

 

またツーアウト満塁の場面で、打順は6番御幸。

チャンスに強いがチャンスメーカーにはなれない、典型的な打点乞食のバッターだ。

 

ちなみに乞食という単語の持つイメージから字面的には蔑称のようにも見えるが……

大半の場合はチームに得点を齎すありがたい存在という意味で、打点乞食という言葉は肯定的に用いられている。

 

 

(1点差の場面、北瀬が楽に投げられる様にしてやりたい

だから俺が狙うのはホームラン……? いやいや、アメリカ相手にソレは狙い過ぎでしょ

あれ、俺本来のバッティングってどんなだったっけ……)

 

 

___バシッ!

 

「ストライク、バッターアウト! チェンジ!!」

 

「うわぁ……」

「満塁で見逃し三振っスか……いや、ドンマイっス」

「一也! これはダサ過ぎるって!!」

「これは流石にアカンやろ!!」

 

脳裏に焼き付いた、薬師部員達の強烈な打撃。

御幸の前のバッター達のヒット、ヒット、敬遠、四球というめちゃくちゃな打撃もあって、彼は脳内で混乱してしまっていた。

 

そして、あっさり見逃し三振。

 

人の良い薬師2年生達は困惑しつつも意外と煽る事は無かったが、流石に他のメンバー達から野次が飛んでいた。

元々無駄にホームランの指示を出し続ける薬師メンバーのお陰で野次を飛ばし易い雰囲気な上、御幸の打撃があまりにも酷かったからである。

 

この押せ押せムードな場面で、普通見逃し三振はしないだろ……せめてバットを振り切って三振して来いよという反応である。

 

 

「北瀬、悪い……」

「? 別に頑張って失敗したなら仕方ないですよ」

「そっか、まぁ次は打つわ!」

「お互い頑張りましょう! 俺は打てないけど……」

 

御幸は思わず年下のエースに謝ったが、チームメイトに結果を求めない北瀬はキョトンとした顔だった。

 

薬師部員だったら見逃し三振なんてつまらない事はしないけど、御幸先輩がフォアボールを取りたい方針ならまぁ良いんじゃないですか?

流石に同じ高校でもない御幸先輩に、絶対にホームラン狙いをしろなんて求めませんよ。と考えていた。

 

御幸が謝ったのはホームランを狙わなかった事では無いのだが、意思疎通が足りずに全く気付いていない。

 

 

 

 

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