【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

144 / 288
127球目 世界最強

 

 

 

 

大チャンスを作った割にはショボイ結果に終わった次の回は試合が動かず、次は5回表アメリカ代表の攻撃。

打順は4番、先程失態を晒してしまったと考えているキャッチャーのカーライル。

 

 

(リョー相手に確実に打ちに行くなんてムリだ

___ギャンブルで行こう、スライダー狙い一択だ。狙いが当たっても確実に打てるとは言えないが……)

 

 

___カキーン!

 

カーライルの博打が、今回は運良く当たってしまった。

フェン直必須の鋭い打球に、今までの経験則からランニングホームランを確信した北瀬。

同点にされてしまう! と思いながら、慌ててボールに向かって走っていた。

酷い守備をしている薬師高校では、エースにも超積極的な守備が求められるからだ。

 

 

___バシッ!

 

「……アウト!!」

 

だが、フェンスにぶち当たると思った瞬間、カルロスのスーパーキャッチでフライアウトになった。

 

 

「スゲェ……! これが日本代表……!!」

「カハハハ……凄い凄い!!」

「マジか」

「俺もあんな守備がしたいなぁ!」

 

薬師の外野では有り得ないスーパープレーに対して、伊川や秋葉、ベンチにいる三島や雷市は歓声を上げていた。

ちなみに他のチームメイトは、確かに今のプレーは凄いけどそこまで騒ぐ程か……? と引いている。

 

 

「カルロスさんありがとうございます! 俺、絶対ランニングホームランになると思ったのに……!!」

「お、おう……?」

 

北瀬なりの感嘆の言葉を、日本代表達は全員聞かなかった事にした。

薬師部員達からしたら至極当然の感想を言っているに過ぎないし、そうでない者達は下手に考え始めたら泣けてくるからである。

 

 

 

 

その後のアメリカ代表はMAX165kmの剛速球相手にあっさり三振し、スリーアウト。

日本代表の下位打線も、打撃の調子を完全に崩しているのでさっぱり打てず三者凡退。

 

5回表まで、日本のエース北瀬は1度も打たれていない。

U-18初優勝にして、完全試合達成という偉業が観客達にも見え始めていた。

 

 

『北瀬!! 北瀬!!』

『KITASE!! KITASE!!』

 

日本サポーター以外にも、彼らの偉業は素晴らしい物として映っていた。

老若男女問わず、日本代表エース北瀬を中心に大歓声を浴びせている。

 

伊川は微妙そうな顔をしつつ、親友の北瀬にこう零した。

 

 

「こういう、人が沢山いる試合では毎回思うけど……観客の熱気ヤベェな」

「そうだな伊川! 俺達は絶対勝たないと!! 真田先輩とか由井達にも、いい報告したいしな」

「あんま気負い過ぎるなよ? 今のお前のピッチングは、絶対間違ってないからな」

「御幸さん……分かりました! このまま投げ続けます!」

 

影響され易いエースピッチャーの北瀬が気負い過ぎていたのを察知したのか、キャッチャーの御幸が窘めていた。

今回の彼はバッティングが非常に不調だが、キャッチングには全く支障をきたしていないのだ。

 

あくまでキャッチャーとしては冷静に、試合の展開を見つめられていた。

このまま北瀬を登板させ続けるなら、この試合は何もしなくても勝てるだろう。

 

___でも、そんな勝ち方で良いのか?

エースに頼るだけで1点を守るだけなんて、よろしく無い。次はアイツの為にも、絶対点を取ってやる!

もちろん、キャッチャーとしての動きか最優先だけとな。

 

御幸一也は、人知れず闘志を燃やしていた。

ぶっちゃけ、絶不調な時にやる気を出し過ぎると空回りしそうな感じがするのだが……彼は大丈夫だろうか?

 

 

 

 

 

 

6回表もアメリカ代表は振り込むも、豪速球カーブ&スローボールの前に掠りもせず。大エース北瀬の記録は続いて行く。

 

裏にはアメリカのエースマイケルがスタミナ切れを起こし、コンラッドが登板。

制球が少し乱れている間に秋葉伊川轟の薬師組が押し込み、2点を奪った。

 

 

「Anyway, one point first! (とにかく先ずは1点だ!)」

「There's still a 3-point difference...we still have a chance to win! (まだ3点差……勝機はあるぞ!)」

 

無論アメリカ代表とて、指を加えて構えていた訳では無い。

死に物狂いで強振し、あの圧倒的球威に負けぬ様にと振り込んでいた。

 

流石野球世界ランキング1位の国の代表と言うべきか、バットに当たる事はあった。

だがそもそも掠らせることすら困難であるその投球を芯で当てるなど、それこそメジャーのスタメン上位クラスでもほぼ不可能な事である。

スーパースターの卵といえど、学生である彼らは尚更……

 

 

 

 

___そして遂に、その時はやってきた。

 

 

「これだけ守備が硬いなら、取られる気がしないっす!」

「お、やる気マンマンじゃん北瀬」

「そりゃ、これだけお膳立てされれば当然ですよ!

___一応、甲子園優勝校のエースなんで」

 

9回表、スタミナ切れの予兆すら見せずに偉大な大エースは堂々とマウンドに立っていた。

 

 

「ストライク、バッターアウト!!」

「ストライク、バッターアウト!!」

 

「I don't want a perfect match, just a perfect match...!

(完全試合、完全試合だけは嫌だ……!)」

 

もはや、悲鳴じみた声を上げているラストバッター。

必死な声援を掛けながら、監督も主砲も見守る他なく……

 

 

「ストライク、バッターアウト! ……ゲームセット!!」

『……わああぁぁ!!!』

 

遂にそのストライクカウントは3つを刻み、3アウト。

球場に響き渡るゲームセットの宣告、そして日本代表サポーターを中心にして歓声が響き渡った。

 

 

 

 

北瀬涼、アメリカチームを相手に国際大会決勝の舞台で完全試合達成。

 

世界大会U-18決勝戦・日本対アメリカ

5−0 優勝国 日本

 

北瀬涼、決勝含めU18先発完投試合における全試合完全試合達成で、文句無しの本大会MVP選手決定。

名実共に世界最強の高校生となった。

 

 

 

 

 

 

「日本初、悲願のU-18日本代表優勝、おめでとうございます!

……では主将である赤川くん、感想をお願いします!」

「チームメイトに恵まれて、ここまで来れました

……俺はあまり優勝に貢献する事が出来ませんでしたが、素直に嬉しく思っています」

 

決勝戦では、5打席無安打の失態を晒してしまった赤川キャプテン。

守備でもボールが全く飛んで来なかったので、立ってるだけの人と言われても本人が納得してしまう惨状であった。

 

それでも悲願である初優勝の場面で水を差す訳にもいかず、無難な言葉で締めていた。

リポーターもぶっちゃけ彼には興味がなく義理で質問しただけだったので、直ぐに主役達への対応に移った。

 

 

「ありがとうございます! ……では!! 今大会で完全試合を2回達成した、日本が誇る大エース! 北瀬涼くんに取材させて頂きます!!

素晴らしい投球を見せてくれた北瀬くん! 完全試合は狙っていましたか?」

「ええっと……俺はキャッチャーに言われた通り投げるだけなので、あまり考えていませんでした

あー、5回表の時は、1点を争う試合になるかと思って緊張していました。でもその後伊川達が点を取ってくれたんで、安心して投げられました」

 

北瀬への取材に慣れているリポーターは、ほぼYESかNOで答えられる簡単な質問をしてくれた。

彼もその質問に安心し、聞いていない事までついでに答えていた。

 

卑屈な受け取り方をしたら、負けたらキャッチャーのリードのせいだと言っている様に聞こえてしまうが……当然彼にそのつもりは無い。

緊張しながら、思った事を口にしているだけである。

 

 

「なるほど! チームメイトに支えられた勝利だと言う事ですね!! ありがとうございます!

では優勝の喜びを、誰に1番伝えたいですか? 今の率直な気持ちをよろしくお願いします」

「真田先輩ですかね」

 

両親とはあまり関わりのない北瀬は、尊敬している先輩の名前を答えた。

薄々そう答えると分かっていたリポーターは、放送事故にならない様に気を付けながら感想を誘導する。

 

 

「なるほど! お世話になった元キャプテンに、喜びを伝えたいという事ですね!

もし良ければ、真田前キャプテンに今の気持ちのメッセージをお願いします!」

「強い相手と戦うのは、楽しかったけど……俺は先輩とも一緒に戦いたかったです

俺は来年メジャーに行くので、向こうで待ってますから」

 

選出候補にすらなっていないキャプテンに対して、一緒に戦いたかったと言うのは良いのだろうか……?

リポーターは内心悩みながら、美談に仕立て上げた。

 

 

「尊敬しているキャプテンを、メジャーリーグで待つ……お2人があの舞台で共に戦う事を、楽しみにしています!

では、歴代U-18世界大会でも断トツの打率を叩き出した伊川くん! 今の感想をよろしくお願いします!!」

「親友であり兄でもある北瀬に、絶対MVPを取って貰おうと必死でした!

優勝してコイツが選ばれたんで、安心しています」

「伊川くんも今大会打率8割と非常に活躍していました……それなのに、自分が選ばれたいとは思わなかったんですか?」

 

伊川はしっかり返答出来ると知っているリポーターは、少し意地悪な質問をしていた。

MVPに選ばれてもおかしくない成果を出しているだけに、普通なら聞き辛い質問なのだが……彼なら良い感じで返してくれると分かっているのだ。

 

伊川も心得た物で、観客受けする笑顔でこう答えた。

 

 

「全く思いませんでした

……いや可能性は0%ではないとは思っていたのですが、俺が選ばれるより北瀬が選ばれた方が嬉しいです

コイツは、メジャーでも活躍出来る天才だと信じてます!

だから、薬師野球部メンバーである彼らをアシストする事が、俺のすべき事だと思います」

「ありがとうございました! 仲間との絆が、伊川くんにとって1番大切な物だという事ですね!!

次に、北瀬くんと同じく先発として活躍した成宮くん! 彼の活躍無しでは、日本代表が決勝戦まで進む事は難しかったでしょう!

今回の優勝に対して、成宮くんは……」

 

 

 

 

 

 

長々と続いた取材が終わった直後、他のチームメンバー達は親に対して電話を掛けていた。

時差を考えると日本は深夜だと分かっているが、試合を見てくれていると分かっているのである。

 

だが北瀬と伊川はそこまで両親に興味がないので、先輩や後輩に対してメールを返していた。

特に伊川は、真田先輩から返信が来た瞬間に電話を掛けて結果を報告していた。

 

 

「もしもし真田先輩ですか? 深夜にすみません……試合、見てくれていたんですね!」

「そりゃ見てたよ! 初優勝なんて激アツじゃん!!」

 

真田先輩の嬉しそうな声に、ほっと一安心した伊川はつられて嬉しそうに話し始めた。

 

 

「ありがとうございます、見てくれていて嬉しいです!

……北瀬も取材で言っていた通り、真田先輩が見てくれていて嬉しかったと思います」

「優勝の喜びを、1番に伝えてくれて嬉しかったよ!

……メジャーに行けるかは、ちょっと、うん、アレだけどさ。俺もプロに行っても頑張るぜ!」

 

真田キャプテンを過剰に信頼している伊川は、彼の言葉を謙遜だと思ってスルーした。

 

 

「俺も頑張ってメジャーに行けたら良いなと思います!

あ、北瀬も先輩と話したそうにしてるんで、今代わって良いですか?」

「もちろん良いぜ! じゃあ北瀬にかけ直すわ!」

「了解です!!」

 

国際通話の料金を気にせず、真田は北瀬に電話を掛けた。

北瀬は喜んで真田キャプテンからの電話を取り、楽しげに話し始めている。

 

そんな北瀬が真田先輩と会話している場面を見ながら……少し寂しそうな顔をして、伊川は笑っていた。

 

 

 

 

 




1番藤澤   ライト    5打席0安打1四球
2番秋葉   レフト    5打席4安打
3番伊川   セカンド   5打席5安打
4番轟    DH     5打席2安打3四球
5番カルロス センター   5打席1安打1四球
6番御幸   キャッチャー 5打席1安打
7番赤川   サード    5打席0安打
8番遠本   ファースト  4打席0安打
9番真貝   ショート   4打席1安打

こんなイメージです。書き方間違ってたらすみません
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