【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
暫くして彼ら日本代表が連絡を取るのが終わり、空港に行き日本に帰ろうと動いている。
日本代表のキャプテンである赤川は、伊川が真っ先に高校のキャプテンに電話を掛けたのを知って、笑いながら茶化していた。
「マジで伊川は真田って奴の事尊敬してるんだな……
こんな大きな大会で勝って、親に掛ける前に前のキャプテンに掛けたのはビックリしたわ!」
「……ああ、まあめっちゃ尊敬してますから」
「そもそも、伊川は親の連絡先知らないんで……
いや、俺も伊川も真田先輩を尊敬してるのは本当っす!」
伊川は血縁関係のある両親の連絡先を知らないと言う事は、ヤバいと気付いていたので誤魔化そうとしていたが、北瀬はあっさりとチームメンバーに暴露していた。
細かい事を気にしない性格の、弊害が現れている。
ネットで北瀬や伊川の情報は大量に出てくるとはいえ、そこまで細かい事情を知らなかった日本代表メンバー達は静まり返っていた。
「あーいや、寧ろあんなゴミの連絡先なんて要らないんで、一生知らなくて良いですから!
必要な書類とかは北瀬の母に送れば対応してくれるんで、マジで気にしなくて良いんで!!」
「……いや、なんか、マジでスマン。考え無しだったな」
地雷を踏み当てた赤川は、困った顔をしながら下級生に対して謝っていた。
普段後輩に対してあまり謝らない彼も、流石に気まずかったらしい。
「別に俺にとっては普通なんで、謝らなくて良いっすよ」
「日本行きの便がそろそろ来たから、移動しよう……どうしたんだ?」
「何でも無いっス!」
並木監督がやって来たので話を中断し、誤魔化した伊川。
監督も時間が無い今はとりあえず誤魔化されてやって、飛行機の発着を待とうとしていた。
深刻な喧嘩では無いのなら、今直ぐ聞く必要は無いと直感していたのである。
こうして飛行機に乗った後、伊川に両親の話を振り直す人は流石にいなかったので有耶無耶になった。
ちなみに並木監督は、真木コーチや関根トレーナーに話を聞いて勝手に納得していた。
そもそもパスポートを伊川に取らせる時、両親とは連絡が付かずに身元引受人である北瀬母に連絡していた為、事情は知っているのである。
最後の最後で微妙な空気になりながら、今回のU-18日本代表メンバーの集まりは終わった。
彼らは北瀬達の事情を少し知り、北瀬や伊川という逸材が高校生になるまで世間に出て来なかった事に割と納得がいったらしい。
U-18世界大会を終え、薬師に帰って来た2年生達。
真田先輩や轟監督に片岡コーチ、それ以外の先輩後輩達も入口まで迎えに来てくれて、キャーキャーワイワイとはしゃいでいた。
「伊川先輩! 世界大会はどうでしたか?!」
「甲子園と違って、異国情緒溢れる感じかな
___でも、熱気は甲子園と変わらなかったよ」
「北瀬先輩、国際大会MVPおめでとうございます!!」
「ありがとう! これで俺が、世界1の高校生か……? あんまり実感湧かないや」
「雷市先輩! 決勝戦めちゃくちゃ警戒されてましたね!
敬遠3回もするなんて、普通有り得ませんよ!!」
「カハハハ……もっと打ちたかった!」
「三島先輩! 15打点はヤバいッスね!」
「ガハハ! もっと打てる様になって、雷市に勝つ!!」
「秋葉先輩! 国際大会の決勝で、5打席4安打は超ヤバいっすね!!」
「ありがと、練習の成果がちゃんと発揮出来て良かった」
沢山話しかけてくる後輩達全員に返事をしている彼ら。
内心、俺は聖徳太子じゃないんだから1人ずつ話しかけてくれねぇかなと、思ってたとか思ってないとか。
キャーキャーと、まるで芸能人を迎えるかの様に2年生達に群がっている3軍選手を見て、奥村は嫌そうな顔をしている。
お前らは、あの人達みたいに活躍したいと思わないのか?
自分には全く関係の無い、スーパースターを迎える様な顔をしやがって。
確かに先輩方はスーパープレイヤーだけど、そんな彼らの技術を盗もうとは謂わないのかよ!
コイツらは、何の為に野球やってるんだ!!
憤慨している奥村、3軍はスター軍団を見る為に部活をやっているので、その意見は正しいだろう。
誰でも入れる新しい強豪校かつ甲子園優勝校なので、やる気のない奴も紛れ込んでしまっているのだ。
正直、3軍の大半は野球部から追い出してしまった方が良いのではないだろうか?
「よし、全員揃ったな?! ……今日は甲子園優勝&U-18優勝を祝って、焼き肉パーティじゃー!!」
『あざーっす!!!』
そうやってはしゃいでいる所に、理事長がやって来て嬉しいプレゼントをくれた。大量の高級肉である。
もちろん野菜や芋にジュースなどもしっかり沢山用意されていて、彼らは思いのままに焼き肉を楽しんでいた。
「皆で食べる焼き肉って、やっぱ最高だな!!」
「だよな! 俺、この為に部活やってる感あるわ……」
「言い過ぎじゃね?」
北瀬と伊川も、はしゃぎ回っている後輩達を見ながら、楽しそうに肉を食べている。
そこにやって来たのは、あからさまに緊張している轟監督と片岡コーチ。
どうしたんだと思いながら彼らは監督達を見て、肉をごくんの飲み込んだ後、不思議そうな顔をしながら質問した。
「あれ、監督もコーチもどうしたんですか?」
「焼き肉をなるべく速く食べ終わり、監督室に来てくれ」
悪い事をした覚えがない伊川は、不思議そうな顔をしたまま轟監督に質問した。
「分かりました……でも、何でですか?」
「スカウトが来ている」
『?!』
それを聞いて、せっかくの美味しい肉を吹きそうになった北瀬や伊川に1年生達。
「悠長に焼き肉食べてる場合じゃなくないッスか?!」
「いや……エディー・C・ヘンソンさん達が、楽しんでるなら急かさなくて良いってさ
だから、まあうん、なるべく速く食って来てくれ」
『ハイ!!』
監督の言葉を聞いて、一致団結した1年生達。
すぐさまこう言い残して、その場から去っていった。
「俺、焼けてる肉と野菜を他から貰って来ます!!」
「俺ジュース取ってきます!!」
「先輩達の部屋行って、制服探してきますね!!」
「ありがとう! 助かるよ!」
「マジありがと! 後でなんか美味しい物作るな!」
一瞬で集まった肉や野菜をガツガツと食べ、制服に着替えて直行した北瀬達。
気が逸る中、なるべく丁寧にドアをノックして監督室に入って行った。
「お忙しい所失礼します! 北瀬涼です!」
「遅くなってしまい大変申し訳ありません! セカンドの伊川始です!」
慌ててやって来た北瀬と伊川を見て、スカウトのヘンソンは朗らかな笑みを浮かべながらこう話した。
「私達が待つと言ったのだから、気にしなくて良いさ
……さて、今回は契約内容更新の話をしに来たんだ。先ずは伊川、君とはマイナー契約をするという話だったけど訂正する。君もメジャー選手としてスカウトしたい」
「マジすか……?」
伊川は困惑した顔をしながら、ヘンソンスカウトの話を聞いていた。
メジャーリーグって、甲子園より凄い大会なんだろ? 俺なんかと契約して良いのかよ。と思ったのだ。
「そうだ。そして年俸は……最低でも1年35億円。契約内容によっては更に支払おう」
「えぇ……??」
自分の異常な才能をあまり信じていない伊川は、有り得ない金額を聞いて思考停止していた。
ぽけーっと突っ立っている彼を見て、ヘンソンスカウトは笑顔のまま冷静に理由を述べる。
「君の打撃センスは素晴らしい! 甲子園で大活躍していたのを見ていた時も良い才能だと思っていたが、まさか国際大会でも打率9割を維持してしまうとは……
これだけの実力を前にしたら、年齢やメジャーリーグでの実績なんて些細な物さ
寧ろ、能力的に考えたらもう少し支払われても良い位だ。流石に学生の内から、メジャー選手の収入トップ10に入る様な契約は出来ないと上司に言われてしまったがね」
伊川は理路整然としたヘンソンの話を聞いて、そんな物なのかなぁ……と納得した様なしていない様な顔をした。
そこまでの大金を求めていない彼からしたら多すぎる金額だったが、まあ多い分には良いかと思っていたのだ。
「……過分な評価を頂けて、嬉しく思っています」
「おお! じゃあ契約には前向きという事で良いね?
……日本の法律的にまだ正式に契約出来ないのが残念でならないよ。何年契約が良いというのはあるかい?」
伊川はその言葉に、少し考えた。
1年で35億も貰えるなら、それ以降は野球しなくても良いよな。別に浪費する予定も無いし。
でも北瀬と一緒に生活するなら、俺も野球をやっていた方が良いか……?
そこまで考えた伊川は、この結論を出した。
「じゃあ、北瀬と同じ年数での契約でお願いします」
「OK! じゃあ、次の北瀬との契約で決めよう!
次に北瀬……君との契約金額を、5年150億に上げようと思っている。この金額で大丈夫かい?」
北瀬は5年120億という意味不明な金額が、まだ上がるのか……? と困惑しながら頷いた。
非現実的な数値を前にして、思考が停止しているのだ。
対して伊川は、変な事に気付いてしまった様だ。
困った顔をしながら、彼にとって矛盾している点をヘンソンスカウトに聞いていた。
「あれ、それだと俺の方が契約金高い事になると思うんですけど……何かの間違いですか?」
北瀬と伊川、両方と契約したいスカウトは内心冷や汗をかきつつも、北瀬のプライドに差し障らない様に注意しながら現時点での評価を告げた。
「間違いじゃないよ。現時点での評価は……北瀬より伊川の方が高くなったという事だ
国際大会で1番日本の勝利に貢献したのは北瀬だが、1番結果を出したのは伊川だったと言う事さ」
「……なるほど」
「良かったじゃん伊川! これで、俺達2人でメジャーに行けるな!!」
基本的にプライドが高いピッチャーにも拘らず、弟に契約金が抜かされても気にしていない北瀬。
ヘンソンはほっと一安心しつつ、やはりこの兄弟は仲が良いなと微笑ましく思っていた。
長い話し合いが終わりスカウトと翻訳者が帰った後、北瀬と伊川は大きなあくびをした。
国際大会から帰って来た直後、凄そうなスカウトとお話し合いなんて疲れるに決まっているのだ。
「ふあぁぁ、疲れたー」
「そうだな……でも、俺がこんなに評価されるとは思わなかったよ」
さて契約内容は話し終わったし自分達の部屋に帰ろう、という雰囲気を醸し出している彼らを見て、片岡コーチは内心申し訳なくなりつつも無情な一言を告げた。
「___次は、メッズのスカウトの方との話し合いだ」
『マジすか?!』
国際大会での大活躍によって、様々なチームからのスカウトが殺到していたらしい。
流石にこの数を今日中では裁けないので、休息も兼ねて何日か練習を休んで対応させるらしいが……
伊川は内心、球団とかどこでも良いからマリナイズで良くないか? と考えていたらしい。
最初に来たスカウトの契約金にも全く不満が無かったので、5人目あたりのスカウトと話す時は内心面倒くさがっていた。
どこも同じ位の金額に待遇を言い出していた為、彼にとっては本当にどこでも問題無かった様だ。
まぁ外面が良い伊川は、その内心を表には出さなかった。
北瀬が最初に来てくれたマリナイズとの契約を最優先にしたいと話した時に、兄がそう言うなら俺も……という対応を返し続けてはいたが。