【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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展開をくださった方、ありがとうございます!


131球目 中堅校

 

 

 

 

強豪校として当然といった様子で、2回戦と3回戦を突破した薬師野球部。

4回戦の相手は東京高垣高校。栄冠ナイン的には大体DからCランク程度で、弱小という程では無い。

それなりに勝ち進めはするが市大、青道、稲城のような強豪名門には勝つのは非常に難しい程度の強さのチーム、要は中堅というヤツである。

 

試合前に轟監督の話を聞いていた北瀬達だが、相手の情報はあまり覚えられていなかった様だ。

ぶっちゃけコイツら相手なら楽勝だなと考えている監督の空気が伝染していた為、真剣に聞いている部員が少なかったのである。

 

 

試合直前、北瀬は伊川にどうでも良さそうな顔をしながら一応質問していた。

 

 

「相手のピッチャー、どんな奴だったっけ?」

「えーっと確か……MAX137kmで、そこそこのカーブとシュート持ち……だったっけ?」

「いや、俺に聞かれても」

 

監督が中堅って言う割には弱くないかと思った北瀬と伊川は、感覚がマヒしている。

140km前半でも投げれれば十分立派な速球派として名乗れたこの時代、それこそ甲子園常連の先発クラスでもなければ150kmだの変化3種だのを、まともなコントロールで投げるなんて無理なのである。

 

監督の話を適当に聞いていた伊川は、北瀬の質問に疑問符を付けて返して呆れられていた。

分からないから伊川に質問してるのに、俺に聞かれても分かるわけ無いだろうという反応である。

 

 

 

 

 

そんな事を言いながら始まった試合。1回表、薬師高校の攻撃は1番秋葉。

国際大会でも大活躍していて、普通の時代だったらドラフト競合必至のバッターである。

怪物球威の本郷や156kmの降谷、烏野のミート力軍団に同チームの雷市や三島という優秀な選手達が同年代にいる為、1位指名を取るのがギリギリという感じになってしまっているが……

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

真面目な顔をしてバッティングに挑んだ秋葉は、初球からあっさりホームランを放った。

 

 

「良いぞ秋葉ー!」

「ナイスホームラン!」

「秋葉さん! ナイスホームランです!」

 

初球からのホームランに、盛り上がる薬師ベンチ。

実力的には打てて当然といった気もするが、やはり自チームのプレイヤーが打ったボールが柵を超えていくのを見るとテンションが上がるのだ。

彼らの頭は、とにかくホームランを打つ事に支配されているらしい。

 

 

 

 

次に打席に入るのは、国際大会で世界初の打率8割超え、有り得ないミート力を持つ伊川だ。

MVPこそ同チームの北瀬に譲ったが、彼が高校生最強のプレイヤーであるという意見も多い。

 

そんな彼は今回、(このボールなら簡単に打てそうだな……ホームラン狙うか)と考えながら打席に立っていた。

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

そして脳内でした宣言通り、軽い振りでホームランを放っていた。

 

 

「ガハハハ、良いぞ始!!」

「普段からホームラン狙えば良いのになー」

「ナイスです、伊川さん!!」

 

ベンチはまた盛り上がり、ワイワイとはしゃいでいる。

伊川は、やっぱりホームランの方がウケが良いよなぁ、俺もホームラン狙い続けるべきか? でもどうせ後ろが打ってくれるから、メリットがあんまり無いんだよなぁ……

なんてちょっと考えながら、喜ぶ素振りすら見せずに悠々とマウンドを一周している。

 

彼のこういった淡白な面が、相手校に得体のしれないバッターと呼ばれる一員だった。

単純に野球に強い関心が無いから打っても喜べないだけなのだが、そんな事を他のチームの選手達は知らない。

 

 

 

 

2連続ホームランが出た後に打席に立つのは、国際大会でMVPを獲得した北瀬。

彼は内心、こんな相手のボールを打っても楽しくないなぁと酷い事を考えながら、得体のしれない威圧感を出してバッターボックスに立っている。

 

 

___カッキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

相手バッテリーは敬遠しようとしたのか4回連続でボール球を投げて来たが、フォアボールで出塁というダサい真似をしたくなかった北瀬がクソ球を掬い上げてホームラン。

 

一仕事したぜ! いやボール球をホームランにするのは大変だったなぁという顔をしながら、北瀬はドヤ顔でマウンドを回っていた。

 

 

「めっちゃドヤ顔してるな!」

「カハハハ……アレを打つのは大変そう……」

「北瀬先輩もやっぱり凄い……!!」

 

薬師ベンチは好き勝手な事を言いつつも、北瀬のホームランを喜んでいた。

伊川の事ばかり尊敬している花坂も、このホームランには感銘を受けた様だ。

流石、あの伊川先輩が尊重する親友ですよね! 凄っごい選手だなぁとワクワクした顔をしている。

 

 

 

 

3連続ホームランという意味の分からない事態のながら出てくるのは、薬師野球部の主砲轟。

3回戦にしては非常に多い観客達も、好き勝手に騒ぎながら彼の勇姿を見届けようとしていた。

 

 

___カッキーン!!

 

『わああぁあ!!』

 

結果、4連続ホームランである。

まだ1回にも拘らず非常に消耗している相手ピッチャーを見て不思議に思いながら、雷市は豪快なスイングで電光掲示板にぶち当てていた。

 

 

「ガハハハ、流石は俺のライバル!」

「やっぱり雷市は凄いなぁ! 俺、あんなに飛ばせなかったし……」

「北瀬はボール球を掬い上げてたじゃん、比較しても仕方ないって」

「雷市さん、やっぱり凄い……!」

 

ホームランが出た事を楽しみながらも、この結果は当然だと見ている薬師部員達。

雷市の打撃力を、最大限に信頼しているのだ。

 

 

 

 

ノーアウトランナー無し、4打席連続ホームランの場面で出てきたのは5番三島。

最近の好調を買われ、久しぶりにクリーンナップに抜擢されていた。

轟監督の事なので適当に決めた可能性が高いが……そんな事は気にせす、三島は喜び勇んでいた。

 

 

「ガハハハ、ここは俺も打つ場面だな!!」

 

 

___カッキーン!!

 

『わああぁぁ!!』

 

その言葉通り、三島は確信ホームランを放った。

相手バッテリーは、薬師の上位打線にある程度打たれる事は想定していたとはいえ、流石に不味すぎると白目を向いていた。

 

こんな負け方をして何も出来ずに終わったら、来年の新入部員数に影響してしまう……

よりによって、甲子園春夏連覇かつ国際試合のU-18で世界最強投手の座と上位打線を独占した薬師と予選ブロックに当たってしまい、絶望していた東京高垣高校。

悲観的な予想通りの展開になってしまい、部員の半分位は俯いていた。

 

 

「……流石、メジャーから大金積んでスカウトが押し寄せてくる選手がいるチームなだけあるよな!

こんな奴らと戦うなんて、それこそ大金積んでも出来ない経験じゃね?」

 

そんな時、キャプテンの佃はなんとか明るい雰囲気を作り出しチームメイト達にこう言い始めた。

このまま気持ちが落ち込んだまま試合を続けたら、打てるヒットも打てなくなってしまう。

 

チームを支える主将としても野球好きの選手としても、何とか試合を成り立たせて少しでも良い終わり方をしたい。

そう考えた彼は、必死にチームを鼓舞していた。

真田や成宮の様なカリスマが無い彼にとって、この圧倒的劣勢で人の感情を動かす事は難しいのだ。

 

 

「……だよな。せめて、前向きに戦おう!」

「……下手したら、甲子園出場よりメジャー選手と戦う方が難しいかもしれないしな」

 

そして、彼の思いはチームに届いた様だ。

今の彼ら、東京高垣はある程度団結して薬師野球部に挑む事が出来ていた。

 

 

___カキーン!

 

「シンに合わせられなかったな……」

 

 

___カキン!

 

「精進が足りない……」

 

まあ圧倒的な実力の前では、メンタルの持ち用なんて関係なかったのだが。

6番火神にあっさりとツーベースを打たれた後、7番結城にもヒットを打たれていた。

 

 

「次はキャッチャー相手だ! 絶対抑えられる!!」

「休憩処だ! ここでアウトを2つ取ろう!!」

 

そんな状況でも、彼らは真剣に戦っていた。

次のバッターである1年生キャッチャー由井と、珍しく出てきた非力な1年生疾風は絶対に討ち取ろうと頑張っていた。

 

だが……由井だって、中学生の頃に国際大会に出場した天才である。

元々なんちゃって運動部のつもりで入った元上級生組とは、比べ物にならない下積みと素養があった由井。

夏の経験もあり、更に北瀬との友情トレーニングの恩恵を受けた事により、パワーヒッターを超え半ば結城と並ぶアーチストとして覚醒しつつあった。

 

 

___カッキーン!!

 

『わああぁぁ!!』

 

その結果は、ぐうの音も出ない場外への特大ホームラン。

 

 

「やったな由井!」

「カッコいいじゃん!」

「ガハハハ、それでこそ薬師打線!!」

「カハハハ……ナイスホームラン、ユイ!!」

「来年はクリーンナップかもな!」

 

「ありがとうございます!!」

 

可愛がっている後輩がホームランを打てた事に対し、喜ぶ2年生達。

由井も初のU-18優勝の立役者でもあるスタープレイヤー達に褒められたのは嬉しかったのか、笑顔でお礼を言っている。

 

 

そんなほのぼのとした空気が流れる薬師部員達に対して、東京高垣野球部の空気はお通夜みたいになっていた。

上位層に滅多打ちにされることはほぼ前提で挑んだこの勝負、だが8番打者にまでも本塁打を撃ち込まれてしまった事には流石にショックを隠せず……

四球を連発からの2ベース、本塁打が頻発。

 

 

2番手志島に投手交代も尚止まらない薬師の打線、最終的に3回まで40点差辺りになったあたりで見逃しに入る。

U-18を経て国際試合で無双していた北瀬の、更に進化した球が国内の中堅校に打てるわけもなく……

 

 

___47-0、5回コールド15奪三振で完全試合の虐殺劇。

 

「47-0で、薬師高校の勝ち! 礼!!」

『ありがとうございました!!』

 

 

 

由井に対するスカウトの評価は、相手が北瀬とはいえ御幸との比較もあり、それなりに時間があったのに変化球を捕れなかった捕手としてやや渋かった。

だが、今回スタメン上位にも劣らぬ圧倒的爆発力を見せたことで、守備ができなくもないという薬師最大の欠点が無いプレイヤーとして。

火神、結城に次ぐ「新世代薬師打者」の1人として名を連ねることとなる……最もそんなことを言われても、本人はあまり嬉しくはないだろうが。

 

 

 

 

 

 

試合が終わった後、東京高垣の選手達は泣きながら各々の感情をぶち撒けていた。

 

 

「……悔しい、やっぱ悔しいっ! 負けて当然だって思ったまま戦うのは、凄い悔しかった……」

「やっぱ才能だよな……野球って

別に甲子園出場とか目指せる訳じゃないし、次からはほどほどに頑張れば良いでしょ」

「___お前、ほどほどって何だよ!! 全力で練習して行こうぜ!!」

「どうせ俺達の代は、絶対甲子園に行けないんだ!! それなら受験勉強を優先して何が悪いっ!!」

「お前ら落ち着け! 負けた後につい感情的になっちゃうのは分かるけど……後で冷静になってから話そう」

 

撤収の途中で揉め始めた東京高垣野球部。

心の折れたチームとして終わるか、諦めずに戦う事が出来るチームになるか。

彼らの結論によって、中堅校である東京高垣の命運は大きく変わるだろう。

 

 

 

 

一方、北瀬と伊川は寮に帰った後ぺちゃくちゃとおしゃべりをしていた。

 

 

「今日の試合、相手弱くてマジ詰まらなかったなー」

「でもホームランバンバン打ったじゃん! 楽しくねぇの?」

「それも良いんだけどさー、やっぱ強い相手と戦うのが1番楽しいな! 強くない奴と戦ってると作業ゲーみたいでつまんないし。いや、皆と戦えるのは嬉しいんだけどさ」

「そういう感じか……なら青道の奴らと戦うのが、凄く楽しみだな!」

「あそっか……成宮さんが引退しちゃったし、同地区で1番凄いのは青道だよな!」

 

今回の対戦相手にに対してちょっと酷い事を言いながら、強い相手と戦うのが楽しみだと口にする北瀬。

だが……彼より優れたピッチャーが、彼が現役の間に現れる事は無いだろう。

 

メジャーに行った時、皆の優勝する為に頑張る彼にとっては嬉しい事なのか、それとと競い合うライバルがいない現状を悲しむ事になるのかは分からない。

とりあえず薬師野球部にいる間は、最高のチームメイト達の一緒に野球が出来る事が嬉しくて仕方ないからである。

 

 

 

 




綾瀬川がいるかいないかで展開が大幅に変わるため、ほぼ投票数が同じだったので予定展開を一部公開して再アンケートを取らせて頂きます

綾瀬川がいない場合は、メジャーで孤高の1等星として輝き続ける√になります
野手は轟や伊川がいるので一応ライバルはいますが、投手としての目標は見失い少し闇落ちします

綾瀬川がいる場合は、メジャーで宿命のライバルとして戦い続ける√になります。
投手としての賞を綾瀬川や黄瀬と争い続ける事になるので獲得数は減りますが、こちらの方が幸せかもしれません

追加キャラ

  • 綾瀬川次郎いる
  • 綾瀬川次郎要らない
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