【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
なんか新入生アンケートで通報をされてしまい、一時期見れなくなっていたと思います…ハーメルンのルールを理解してなくてすみません
リアルが忙しくなるので、暫く毎日投稿は出来ないかもしれません。楽しみにしてくださっている方がいらっしゃれば、申し訳ありません
焼き肉パーティをしている途中、北瀬は成宮さんや御幸さんにラインを送っていた。
| ドラフト1位10競合おめでとうございます! |
| ドラフト3位指名おめでとうございます! |
| 真田先輩と同じチームで驚きました! |
次の日には返信が帰って来たので、北瀬は気付いた瞬間返事を返した。
どうやら成宮さんもスマホを触っていた様で、直ぐに既読と返信が付いてくれた。
| ドラフト1位10競合おめでとうございます! |
| ありがと、でも俺もメジャー行きたかった! |
| 成宮さんなら来年にでも行けますよ! |
| 幾ら俺が天才でも、1年はルール上無理だからね? |
| そうなんですか? |
| また戦いたかったので、残念です… |
| そ、俺も数年後には行くから楽しみにしてなよ! |
| はいっ!! |
少し尊敬している成宮さんが、そのうちメジャー挑戦するという朗報を聞いて喜んだ北瀬。
バッティング練習に励んだ後、気付けば御幸さんからも返信が来ていた様なので慌ててスマホのパスワードを解除して返事を返そうとする。
| 真田先輩と同じチームで驚きました! |
| サンキュー、真田に負けない様に頑張るわ |
| 真田先輩も活躍すると思いますが |
| 御幸さんにも活躍して欲しいと思ってます! |
| 頑張ってください! |
| おー、お前らにも届く位活躍するつもりだ |
| …じゃ俺、他の人にも返信しなきゃいけないから |
| またなー |
御幸さんとの会話は直ぐに途切れ、北瀬はスマホの画面を閉じた。
現代のスマホに慣れていない為か指の動作は鈍足だが、まだスマホが普及したばかりの今日では問題が起きていなかった。
技術力が大幅に離れた世の中の自分とチェンジリングされなかった事を、彼は神か何かに感謝すべきだろう。
メールを見た後、北瀬は伊川と美味しい肉を食べながら微妙な顔をしていた。
「プロ入りかぁ……もっと強い相手と戦えるのは、楽しそうではあるけど……」
「北瀬はやっぱ、強い相手と戦いたいよなぁ……」
伊川の言葉に驚いた北瀬は、困惑した表情をしていた。
「言ってなかったっけ? というかそりゃそうでしょ。弱い相手と戦っても真剣勝負って感じしないじゃん」
「言ってたけどさぁ、俺は相手が弱い方が気が楽だな」
「そんなもん……?」
弱い相手と戦う方が伊川の気が楽なのは、負けて絶望した表情を見なくてすむからである。
伊川からすればどんなピッチャーだろうと打てるのは変わらないので、本当に誰が相手でも良いのだ。
チームメイトは勝ちたいらしいから、勝てる相手と戦いたいとも思っている。
「で、楽しそうではあるけど何なんだ?」
「あー、このチームで戦えるのは後1年間弱なのが悲しいなって。だって凄く楽しいじゃん! 今!!」
「だよな!! 一生この時間が続けば良いのにって感じがするよ、特に真田先輩がいた時とか」
そんな戯言を吐いている彼ら、明後日には稲城実業との決戦が始まるというのに楽勝な表情だ。
……実際、彼らからすれば楽勝なのである。
神速のカルロス、巧打の白河、主砲山岡、リリーフ平野、何よりもプロ一軍の舞台でも渡り合える絶対的エース成宮と主戦力であった黄金世代がごっそりと抜け、稲城実業は大幅に戦力が落ちていた。
もちろん名門らしく全体のアベレージは高いが、全力の薬師野球部と戦える程かと言われると違うだろう。
理事長からの差し入れである焼き肉を、美味しく頂いた薬師野球部員。
明日は試合に備えて軽い練習だろうけど、ちょっと食べ過ぎたかな……と思っている生徒も多かった様だ。
男子高校生がこれだけ揃って食べても無くならないだけの肉を買ってきてくれた理事長に、大変感謝すべきだろう。
理事長≒焼き肉だと思い、懐いた生徒も多かったらしい。
ドラフト会議の2日後、秋季大会7回戦目の稲城実業vs薬師高校の試合が始まろうとしていた。
「北瀬くーん! 頑張ってぇ!!」
「北瀬ー!! 世界最強の力を見せてくれー!!」
『北瀬!! 北瀬!!』
決勝でもない地方の大会であるにも関わらず、東京中のみならず都外からも多くの人が押し寄せ満員の球場。
地鳴りのような声援と共に、マウンドに現れた北瀬。
既に甲子園や野球はあまり知らないが、北瀬と伊川は知っているという人間も最近は非常に多くなっている。
なんだったら、球団の看板投手よりも知名度が高くなりつつあるのだ。
ちなみに彼は、今だに学校ではあまり異性からモテていない。
いや確かにまだ口周りは上手くないが、たまに天然失言が炸裂するものの対人能力も大幅に改善し、人の良さも知られている今クラスでは女子の友人もいる。
それに、国内外共に女性のファンだって多い。
……だがあまりにも日本史上最強投手、北瀬涼を渦巻く熱量は強過ぎるのだ。
熱狂的な女子ファンの後輩も今年は多く入ってたが、あまりにも現人神という感じに遠い存在すぎて「じゃあ告白しに行こう」と思う者は皆無なのである。
そういうわけで人気が一周して、同年代の女子から本人的にモテなくなるという意味不明な事態が起こっていた。
まあもう本人は、薬師野球部の活動が楽しくなり過ぎてあまり気にしていないが。
___バシッッ!
「ストライク! バッターアウト!!」
『わああぁぁ!!』
「スゲースゲー!!」
「何だアレ?!」
「今すぐメジャー行けよ……」
「よく分かんないけど格好いい!!」
1回表、北瀬はいきなり直球挨拶代わりの164km。
ノビの付いた豪速球に完全に振り遅れた多田野、あっという間に3球ストレートだけで空振り三振。
その後も稲城実業は立て続けに三者凡退、裏では秋葉北瀬が赤松の独特なカーブに苦戦するものの、伊川轟火神三島が本塁打を打った。
2回表、主砲に据えられた早乙女が、2ストライクの状況からバントを敢行。
そして北瀬が投球……ここで3塁方向に飛ばしてやろうと思っていた早乙女だが、その球は目の前まで変化なく飛んできた。これはストレートに違いない。
だが緩急を付けたストレートを飛ばす筈のバットは、ボールに接触することなく手元で一気にすり抜けた。
いや、すり抜けるように曲がり由井のミットに収まった。
ストレートではなく、スライダーだったのである……それも以前とは桁違いの曲がり方の。
事はU-18戦後、何故かまた覚醒していた北瀬の捕球練習を必死に由井がしていた時。
捕球できるはずのスライダーを、また由井が後逸した時の事だった。
「あれ、俺のコントロール悪くなったか? すまん」
「違います……それより北瀬さん、俺はコーチと監督を呼んでくるので、伊川さんを連れてきて貰えませんか?」
「ん? よく分かんねーけど分かった!」
珍しく大エース北瀬に呼ばれ、直ぐに轟監督と片岡コーチが現れた。
「なんだなんだ、新球種でも増やしたのか? それとも遂に、炎でも出せるようになったのか?」
「それは無いっすよー」
「別にいいけど、何で俺も呼んだんだ?」
先輩である伊川の素朴な疑問をスルーしながら、由井はお願い事をした。
「伊川さん……1度北瀬さんのスライダーを捕る所、見せてもらってもいいですか?」
「全く問題はないけど、技術的な事は何も教えられねぇぞ? 俺結局何となくでやってるし……」
由井のお願いを聞いた轟監督は、怪訝な顔をした。
「あれ、由井お前スライダーは取れたんじゃねーの?」
「……コーチもバッターボックス立ってもらってもいいですか、見てほしい物があるので」
「分かった、準備しよう」
___バシッッ!
北瀬にとっては通常通りのスライダーを、堂々と監督達の前で見せた。
そのスライダーは、確かに以前よりも桁違いの大きな変化をするようになっていた。
無論それも凄まじいことだが……
「……おいおいおい、やばすぎだろ! それは幾らなんでもやばいだろ!!」
「北瀬、いつからできるようになったんだ。これは」
轟監督と片岡コーチの言葉に首を傾げながら、北瀬は困った顔をした。
「え? ……あ、確かにU-18の後なんか凄く調子が良い気がしますけど。でも普通にスライダーですよね?」
「___隠してたわけでは無いのか」
「実質数日で習得してんじゃねえかてめー! もうそれだけで一生食ってけるぞ!!」
「へー、良かったじゃん北瀬! メジャーでもやってけるってよ! 確かに前よりボール曲がってたよなー!」
ここまで言っても何も理解していない北瀬と伊川。
その反応を見て、轟監督は顔を引き攣らせていた。
「………ところで北瀬、由井。お前ら『それ』投げるって、伊川にちゃんと言ったのか?」
「はい、ちゃんと『スライダー投げる』って言って投げましたけど……」
「……すいません、先輩達を相手に試すような真似をしました」
自分の事なのに置いてけぼりになっている北瀬達を他所に、由井の言葉を聞いてコーチと監督は顔を顰めた。
本来、指示とは違う球を投げるという行為は、下手をすれば怪我に繋がりかねないからだ。北瀬の剛速球であれば尚更に。
確かにスライダーといえばスライダーだが、中身が問題だったのだ。
「……ハア、まあ伊川自身が気にしてねえみたいだし今回はいいけどな___こういう事は二度とすんなよ」
「はい、すいませんでした」
「えっ、何の話だっけ伊川」
「ごめん、俺にもよく分かんねー」
そして、今回の伊川の捕球を見てある事に納得した轟監督と片岡コーチ。
確かに野球に対するやる気が無いとはいえ、基本的に言う事を聞いて周りに合わせる伊川が、何でリードだけは勉強しないのか元から疑問に思っていた。
どうしてもキャッチャーがやりたくなくて、必死の抵抗なのかと思っていたが……どうやら違う様だ。
「しかし……そうなるとなんで伊川がリードを一向に勉強しようとしなかったのか分かった気がしたわ
……いやちげーな。できなかったんだ、アイツ」
「……明らかに軌道が違う球でも、少なくとも変化方向が大まかに分かるなら、何事も無かった様にキャッチング出来てしまう
つまり伊川からすれば、ボールは飛ぶ球、飛びにくい球、手を出してはいけない球の3種類だけ
ストライクゾーンに入ってる球が打てない、ボール球に手を出す感覚が全く理解出来ないんでしょうね
ここまで極まっていると、打てない打者の心理が分からないのもある意味道理です」
「俺、前からおかしいと思ってたんです……伊川さんはキャッチャーとしての努力をしていない訳ではなかった
頭脳明晰な面を所々見せているのに、リードだけはいつまで経っても良くならない
その理由に対して個人的にいくつか仮説を立てていたのですが、やはり監督やコーチの言う通りだと思います」
伊川にとっては打てる球は打てる事こそが当たり前で、打てないことのほうがおかしく映る。
だからこそ彼はリード以外のあらゆる技術をプロ以上に完璧に熟しながら、それだけが出来なかったと理解した。
……しかし、何とか伊川の意味不明な現状をある程度理解した監督達の推測も、正確に言うなら間違いだった。
彼自身の認識の壁を乗り越え知識を身に着けていれば打撃の時と同じ様に、類まれな観察眼で相手の立ち姿から狙い球を推測し、最も打たれないコース、球種、球速を割り出す能力にでも目覚めていただろう。
北瀬の更に成長したコントロールと、彼ら特有のテレパシーを使えばその軌跡さえも操って。
最もその理屈を、他者に説明出来たかは分からないが……
「す…………ストライク! バッターアウト!!」
北瀬から放たれるスライダー、最早その変化を捉える者は誰1人としていない。
熟練者のバントすらすり抜ける、唯一無二現代最強の魔球と化していた。
その軌道に、審判すら一瞬呆然としてしまう程に。
正直あまりにも凄すぎて、由井もつい数日前まで10球の内1球位は後逸してしまう有り様。
轟監督から由井が捕球できるようになるまで実践では前通りに投げるように命令され、封印された程だった。
北瀬はワザと一定に曲がらない様にして投げる経験がなかった為、苦戦したと話していたが……まあそれは彼視点であって、傍から見たら簡単に出来ていた。
北瀬や伊川だけを観に来たミーハーな人間にとっては、実況を聞いてあのスライダーという凄く曲がる球が凄いらしい……ということくらいが精々の理解度だろう。
だが野球というものに人生を掛けてきた球児達、次世代のプロを見つけるスカウト達は一目見て思った。
『次元が違う』
あの途中、手元まで完璧にストレートと同じ軌跡を描きながら、あの変化。
実際にバッターボックスに立ったならば、その軌跡は如何ほどか……確実に、見てからでは遅い。
豪速球が頭に入っている状態であれが飛んできた日には、掠るどころか振ることすら躊躇うだろう。
圧倒的なノビと球威の合わさった、165kmのまさしく究極と呼べる怪物速球に加え全てが一級品の変化球。加えて完璧なコントロールに完投可能なスタミナ。
U-18の完全試合を見て、例え現役のプロを含めても日本最強投手であることに異論が挟まる余地は無い。
___だが最強の座に立って尚、投手北瀬の進化は止まらない。
赤松はよく投げているが、並の全国クラス投手程度では完全に物足りなくなっていた薬師黄金世代相手では……
恐竜的進化を起こした新世代に、あっというまに2回でコールドの点差がつけられてしまい次の3回。
その赤松を相手に、北瀬が投げたストレート。
『ひゃ……』
その表示に映し出された数値、それに誰もが言葉を失い……
『167kmだあああああ??!!』
最初に北瀬が現れた時よりも、更に強い地鳴りのような歓声が球場を渦巻いた。
『あそこが頂点等と誰が言ったと、そう言わんばかりの超次元投球! これが北瀬涼! これが高卒でメジャーに行く男の実力!!!』
自己ベスト、及び全国史上最速記録を更新。
異次元の変化球を見せられた、後の人類最速に迫る圧倒的豪速球に誰もが言葉を失った。
3回までであっという間に27球9奪三振を築き上げ、北瀬による奪三振ショーが繰り広げられる中、次の4回で酷い問題が起こった。
「カルロ……あっ!」
多田野が別の球種の球を打つつもりで振ったら紛れ当たりを起こし、左中間へ打ち上げた力無い当たりが出た。
飛んでいった方向はセンター秋葉方面だったので問題ない筈だったが、北瀬はうっかりU-18で共に戦ったカルロスの名前を呼んでしまった。
秋葉は動揺し固まった後慌てて飛びつくも、僅かに追いつけず2塁打となる。
彼は守備力捕球共にDと薬師スタメンの中では優秀な守備能力を持っていたが、甲子園出場校としては割と不味い守備をしている。
だから他の人の名前が唐突に呼ばれてしまうと、適切な判断など出来る筈が無かったのだ。
ともすれば怠慢と言われかねない悲惨な守備だったが、一応左中間へのポテンヒットとして記録された。
これにより北瀬の完全試合&ノーノー消滅となる。
本人は寧ろ、秋葉の守備を邪魔してしまって少し申し訳なく思っていたが、薬師稲実共にかなり気まずい空気が流れていた。
とはいえ以降、北瀬が投球に引き摺ることもなく無失点で抑え込んで薬師がコールドで圧勝した。
稲実相手に、圧巻の5回14奪三振である。
以来、一部の下級生達は守備練習により一層熱が入った。
一部の守備能力をちゃんと鍛えている選手達は、1点を争う場面を俺達が何とかしないとと考えたのだ。
今回の一件はいい刺激と薬になった……のだろうか?
それは彼らの練習成果次第だろう。
ちなみに大エース北瀬から直々に名前を呼ばれたカルロス本人は、少し泣いた。
試合の後、北瀬はいつも通りに失言を放っていた。
「なんかさぁ……つまんなかったよな、負けそうになくて」
「いやいや勝てたんだから喜ぼうよ。強豪校相手だぞ?」
「北瀬はバトルジャンキーなんだろ、多分!」
2年生達がくだらない事を言っている間、監督やベンチ入りしている1年生達は強豪校相手への虐殺じみた展開にちょっと引いていた。
「にしても…あのコントロールであの変化量の球を4種投げれるだけで余裕で飯食えてたってのに、もうあいつ何と戦う気なんだ?」
「野球の星から来た宇宙人とかじゃないですかね?」
「1年後にはメジャーに行くんですから、メジャーリーガーでしょう……」
「でも、あれはもうメジャーでレジェンドと呼ばれた選手達を既に超えてるのでは……?」
『…………』
ちなみに彼本人は、部活が楽しいから頑張っているに過ぎない。
皆と勝てるように頑張ろう位の気持ちで、化け物じみた成果を出しているだけである。
そのうち、マトモに戦える相手が全くいなくなって絶望する事にならなければ良いのだが……
一方その頃、青道高校の沢村はライバルのさらなる飛躍を笑い飛ばしていた。
「ハハハ……! 北瀬の奴、また1つ壁を越えたか!!」
「壁っていうか天井3枚越しにぶち破ってるんだけど……いいのかな? アレ」
「プロ含めて全国最強の投手に勝てないと甲子園行けないっておかしいよ、どう考えても……」
「やっぱり、樹達は勝てなかったか……」
「正直、分かってはいたよ。でも微かな可能性を引き摺り出すのが、引退した先輩としての役目でしょ?」
ラギー・ブッチ
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いる
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いらない