【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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昔活動報告に頂いた大阪桐生のイメージのまま、部員を大幅に入れ替えて書きました!違ったらすみません


140球目 対抗策

 

 

 

 

2回戦の相手は美川実業だったが、北瀬がサクッと三振にして野手陣が大量得点を取って終わっていた。

途中から三島が投げたりもしていたが……大局は特に変わらなかったらしい。

 

 

 

 

そして準決勝、薬師高校の相手は大阪桐生。

1年生の頃に国体で戦って負けている相手である。

 

試合前日に北瀬と伊川は、監督に呼び出しを受けていた。

 

「監督にコーチ……何の用っすか?」

「お前の腕が大丈夫か、一応病院に行ってもらうからな!チームの士気が下がらない様にこっそり呼び出したんだ」

「ここから合わせて3連戦して貰う事になるが___調子がおかしいと思ったら、いつでも言え」

「はいっ!」

 

かかりつけの病院に行ったが、試合をしてきたとは思えない程に疲労が溜まっていない綺麗な腕だと言われていた。

鉄人がヤバいのもあるが、5回50球で降りたのも大きいだろう。

 

ちなみに病院の先生は、彼が死んだ後に解剖したら、人類医学の発展に繋がるのでは……?と内心ちょっと考えていたらしい。

残念ながら、彼を解剖しても元々身体が強いだけという結果が出ると思われる。

 

 

 

 

「相手チームの説明をするぞー、強い相手だからちゃんと聞いとけよ?

エースピッチャーは2年生の垣本、MAX148kmのストレートにスライダーとフォークにカーブが武器で、低めにスゲェよく決まる

普通に考えたらドラフト競合の逸材なんだが……お前らや烏野のメンツがいるからどうだろうなぁ……

ちなみに主砲は木村勝、強振も繋ぎも出来て守備力も相当ある、理想的な4番なんだよなぁ……お前ら投壊野球とは違って」

『ははは……』

「まーお前らも強いから良いけどな!

お前らの悲惨な守備力は、エース北瀬がカバーする!だから全力で、打って打って打ちまくれ!!」

『はいっ!!』

 

 

 

 

一方、大阪桐生の選手達はビリビリと気迫が伝わってくる様な迫力ある顔をしていた。

 

 

「えー……相手の先発は167kmの大エース北瀬。変化球は色々あるが、多分スライダーしか使って来ないだろう

カーブやフォークにスローボールを使って来ても気にするな。そう何回も使えないだろうからな。なんせキャッチャーが取れないし……

2番の伊川、3番の北瀬、4番の轟。この3人の誰かは敬遠してくれ。それ位なら観客達も許してくれるさ……こっちは挑む側だからな

……全力で戦って、大阪桐生の意地を見せろ!行くぞ!」

『おうっっ!!』

 

監督の言葉に返事をした後、直ぐに彼らはバラけて仲の良い部員と話していた。あまり協調性が無いチームなのだ。

 

「アハハハ、北瀬と戦えるの楽しみだなァ」

「結局、補給食はバナナとゼリーのどっちだと思う?」

「薬師野球部の皆さんは、いつ見ても元気ですなぁ」

 

纏まりの無い彼らを見ながら、松本監督はなんだか悲しくなっていた。

 

(俺……今日も空気だったな……)

 

一応名将なのだが、人望型では無いので個性的なメンツは一応話を聞いてくれる程度の事しかしてくれない。

前の人望があった監督に憧れていた彼は、少し泣いた。

 

 

 

 

1回表、大阪桐生の1番が打席に立った。

 

(MAX167kmの剛速球とやら……見せて貰おうじゃないか)

 

ピッチングマシンで170kmを打てているとはいえ、人の投げるボールとは全く違うと分かっている。

胸を借りるつもりで挑もうと、彼は打席に立った。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク! バッターアウト!!」

『わああぁぁ!!』

 

『決まったああぁ!! 北瀬涼、本気のストレート!!

日本野球界最速の167kmで三振!!』

 

打てなかったとはいえ、冷静にベンチに戻っていった。

167kmが毎回毎回打てる訳が無い。イイとこ1回打てたらラッキー位だろう。

 

……だからピッチャーの垣本が、どこまで抑えられるかに試合は掛かっている。

そう思いながら彼は、次のバッターに情報を伝えた。

 

「思ったより相当ノビがあるぞ……というか、浮き上がってねーか?」

「そーか、そら困るなぁ……ちゅうか1番打者なんやさかい、もう少し弱点見つけてきてや」

「うっせ!」

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで出てきた2番打者。

 

(とは言うたけど……わしだって自信あらへんで。なんやよ167kmって……)

 

___バシッ!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

『きゃああぁぁ!!北瀬くーん!!』

 

そんな事を考えながら出てきたバッターは、あっさり三球三振にされていた。

けして彼が弱すぎる訳では無い……北瀬が化け物なのだ。

 

「クセやら掴めへんか思たけど……無理どした。彼は化け物どす」

「せやなぁ、アイツ何者って感じだし」

 

 

 

 

ツーアウトランナー無しで、打席には3番バッター。

 

(ここで打っとかなアイツらを付け上がらしてまう。ヒットでええ、一発打って威嚇せなな)

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク、バッターアウト!チェンジ!!」

『北瀬!!北瀬!!』

 

そんな事を思いながら打席に立ったバッターだが、残念ながら三振。

北瀬の剛速球に、全く腕が追いつかなかった様だ。

 

 

 

 

 

1回裏、薬師高校の攻撃は1番秋葉。

轟監督が強いと言う相手なので、気合を入れて打席に立っている。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク、バッターアウト!!」

 

「ドンマイ秋葉!そんな事もあるさ!!」

「ガハハハ、次はホームラン狙えよ!!」

「ギリギリでしたよ秋葉さん!」

 

フルカウントの場面で、秋葉は見逃し三振。

伊川は(アレは確かにストライクゾーンだったよな……俺の見間違えかもしれないけど)なんて考えていた様だ。

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで打席に立つのは、2番伊川。

神宮大会でも10割打者の、化け物じみた天才である。

 

 

___カキン!

 

『わああぁぁ!!』

 

彼が打った瞬間、何となくはしゃぐ観客達。

だが伊川は、この後の展開を思って気分が暗くなっていた。

 

(コイツの変化球……けっこう曲がるし低めに集まってるな。良く分かんねぇけど、こういうのが打ちにくいんだろ?けっこうマズくね??)

 

 

 

 

ワンアウトランナー1塁の場面で、打席には3番北瀬。

 

「北瀬くーん!頑張ってぇ!!」

「北瀬ー!最強を見せてくれぇ!!」

『北瀬!!北瀬!!』

 

(コイツスゲェ強そうだなぁ!楽しみ!!)

 

観客達の盛大な歓声も気にせず、ワクワクしながら打席に立つ北瀬。妙な所が図太いのである。

 

 

___カキーン!

___バシッ

 

「アウト!」

『ああ……』

 

かなり良い当たりだったが、センターのダイビングキャッチが成功してアウト。

観客達は残念がっているが、北瀬はワクワクしていた。

 

(やっぱ大阪桐生マジ強い!どうやって勝てるかなぁ!!)

 

自分達が勝つ事を前提としながらも、北瀬はどんな接戦になるかと思ってワクワクしていた。つけ上がり過ぎではないだろうか……?

実際、世界最強クラスのピッチャーなのだから仕方ない。相手を見下してないだけマシだろう。

 

「マジ強かったよ!雷市も楽しんで来い!!」

「カハハ……楽しみ!!」

 

ベンチに戻る直前、北瀬と雷市はそんな為にならない事を話して笑っていた。

そもそも北瀬に相手の分析など出来ないから仕方ないのかもしれないが、コレで良いのだろうか……?

 

 

 

 

ツーアウトランナー1塁で、打席には4番轟。

雷市という名前にちなんで、薬師雷砲と呼ばれたりする打撃の神様である。

 

 

___カキン!

 

「ガハハハ、雷市ー!ヒットなんて要らねぇぞー!!」

「ホームラン打てー!」

「うっせぇホームラン信者が!!」

「ナイスです!雷市さん!!」

「球見えてますよー!」

 

薬師ベンチは気に入らなかった様だが、実際これでランナーは進んだ。

 

 

 

 

得点圏にランナーを置き、打席には5番火神。

 

(キタセが取られて、ライチがヒットになったピッチャー……すげぇ楽しみだ!!)

 

ワクワクしながら打席に立った彼は、妙な威圧感を放っていた……ついに彼は、その能力まで手に入れていた。

 

 

___カキーン!

 

『わああぁぁ!!』

 

「地味だけど一応ナイス!」

「1点取ったしなぁ……」

「ナイス火神!マジ良いぞ!!」

 

ライト方向にヒットを放ち、これで2塁ランナーが帰って1点先取。

 

薬師は平然としていたが、大阪桐生は頭を抱えていた。

 

「おいおい、俺ら最低2点は取らなきゃいけねーのかよ」

「分かっとったけど……流石薬師打線やな。わしらでも勝てへんか?」

「何弱気な事言いよる!いつも通りヘラヘラしときや!!」

「……そらそうや、すまん」

 

 

 

 

戸惑っていた大阪桐生は直ぐに立ち直り、ツーアウトランナー3塁の場面で6番三島が入った。

 

「ガハハハ!追加で2点入れてやるぜ!!」

 

___ガギーン!

___バシッ

 

「アウト!スリーアウトチェンジ!!」

『あぁ……』

 

ドヤ顔をしながら出てきた三島だが、ライトにダイレクトで取られてスリーアウトチェンジ。

薬師打線を見に来ていた多くの観客達は、ため息をついていた。

 

「惜しかったなー」

「ワンアウトなら犠打だったのになー」

「ドンマイです、三島さん!!」

「でも……良く飛んでましたよ!!」

 

「ガハハハ、そうかそうか!!次はホームラン打ってやるぜ!!」

 

取られた瞬間は凹んでいた三島だったが、盛り上げ役に近い田川の「でも……良く飛んでましたよ!!」という言葉で復活。

ガハハハと大胆不敵に笑っていた。あまりにも立ち直りが早すぎる。これがキャプテンの資質……なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

2回表、大阪桐生の攻撃。打順は4番木村。

 

(俺が打つ、それで垣本の動きで帰ってやる!)

 

名門大阪桐生4番としての意地に賭けて、彼は威圧感を出しながら打席に立った。

由井と北瀬は、直ぐに彼の打撃能力の高さに気付いた。

 

(アレは北瀬さんや伊川さんと同じ、才能に選ばれた選手だけが持つ威圧感……!この人、絶対ヤバい!!)

(この人マジで強そうじゃん……激アツ!!)

 

由井は半ば恐怖を抱きながら、北瀬は闘志を燃やしながらピッチングを始めた。

 

 

___バシッッ!

 

「ボール!」

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク、ツー!」

 

 

___バシッ!

 

「……ボール!」

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!バッターアウト!」

『わああぁぁ!!』

 

珍しくボール球を使いながら、北瀬-由井バッテリーは木村を討ち取った。

北瀬は(当てられないのかー、残念)なんて思っていたが…、木村は何が掴んだらしい。

 

5番の垣本に、こう囁いていた。

 

「俺相手でも、奴らは三振狙いを崩さなかった……行けるぞ、全力バント!」

「アレマジでやるのかよ……まぁ仕方ねーな」

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで、打順は5番垣本。

ちなみにエースでもあるので二刀流だ。

 

(青道高校の沢村の様に……勢いよく轟方向に転がす!)

 

そう……薬師高校が対策出来ているのは普通のバントだけであり、セオリーから外れた勢いがあるバントの対策は終わっていないのだ。

決まれば半分位の確率で出塁出来る、素晴らしい博打。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!」

「北瀬さん!バント狙いされてますよ!!」

「なるほど!打たれたら走る覚悟しとくよ!!」

 

だがあまりにキレのあるストレートに対し、垣本はバントを決め切る事が出来なかった。

 

(ヤバい、今ので狙いは完全にバレたな……でもやるしかねぇ!!)

 

それでも悲壮な覚悟を決め、バント狙いを崩さない垣本。

相手に実力で敵わないなら、弱点を付くしかない。バレバレだろうとやるしか無いんだ!

そう考え、全力で変速バントを決行しようとしていた。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク、ツー!」

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

 

だが……それでも彼は、決め切る事が出来なかった。

北瀬の怪物球威や超投打躍動に変化自在という金特に対して、全く勝てなかったのである。

 

「アレ何やってんの?馬鹿じゃね、バレバレじゃん」

「いやいやアレは仕方ないって、相手167kmだぞ?」

「にしたってダサいけど」

 

心無い観客は垣本をバカにしていたが、彼は甘んじて誹謗中傷を受け入れていた。

俺達が薬師に対抗仕切れてないのが悪い、結果で見返すしかないんだと考えているのだ。

 

 

 

 

ツーアウトランナー無しで、打席には7番。

彼もまた、バント狙いを決めようとしていた。

 

(やってやるぜ!……てか、コレ決めたら俺凄くね?!)

 

かなり楽観的な彼は、バント狙いにも拘らず楽しげに打席に立っていた。

彼の脳内には、バントを決めて皆から褒められるイメージしか無いのである。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!」

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!」

 

 

___カーン!

___ゴロゴロゴロ

 

「アッ……」

 

何か上手く決められてしまった。

勢いよく転がっていく変なボールに、雷市は対応出来ず。

慌てて守備範囲か怪しいセンターの秋葉が対応するも、ランナーは2塁まで進んでしまった。

 

「ナイスゥ!」

「ようやりましたなぁ」

「マグレやん!ええけどな!!」

「ヒューヒュー!!」

 

本当に決まってしまった謎バントに、大阪桐生のメンバー達はこれでもかと盛り上がっていた。

可能性はあると監督から言われてはいたが、まさか本当に決まるとはあまり思っていなかったのである。

 

対して薬師ベンチ、こんなのを決められて凹んでいそうだと思われていたが……

 

「雷市さん酷すぎますよ!!」

「奥村仕方ないって!これが薬師野球部だし……」

「ドンマイドンマイ!まぁこれくらいならセーフですよ!!」

「ウケる!ヤバ過ぎー!!……まぁ俺の時はやって欲しく無いけど」

「パワプロヒデェ!!」

 

1人を除き、特に気にしてはいなかった。

そもそも入学を決めた1年半前の夏の守備力はもっと酷かったので、仕方ないと諦めているのだ。

 

むしろ、アレからポジションを奪えない俺達が悪い様な気がしたり……気分が悪くなるから、考えるのを辞めよう。

大体のメンバーは、そんな雰囲気だった。

 

流石は世界1の投壊野球部、他とは面構えが違う。

 

 

 

 

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