【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
今更かもしれませんが。
というか原作薬師以上の打撃力に、原作薬師以下の守備ってコンセプトなのですが、どういう風に書けば良いんでしょうか?
『ありがとうございました!!』
青道高校との試合が終わり、挨拶をした。
一応キャプテン位の立ち位置の小林にとって、強豪校の青道関係者が泣き崩れるその光景はどこか現実感がなく、ぼうっと突っ立っていた。
(市大三高の時も思ってたけどさ、リアルで強豪連続撃破なんて夢よりも空想っぽくね?)
現実逃避じみた事をかんがえながら、俺なんかよりよっぽど優秀なキャプテン、青道の結城と握手をする。
「おめでとう……」
「……??」
相手強い意思が篭った言葉、あまりの眼圧に、試合後なのに気圧されかけた。というか、何を言ってるのかすら一瞬分からなかった。
「てっぺん取ってこいよ……小林」
「あ、ああ……俺の名前知ってたんだ……」
(強豪のキャプテンって、大して強くない俺の名前まで覚えてるんだぁ……スゲェな……)
その言葉を掛けられた時、頭がまっしろになり、自虐みたいな言葉しか言えなかった。
だって3年生でフル出場するのは、俺と大田の2人だけ。3年生だからって選ばれた消去法キャプテンが、こんな事態を想定している訳が無い。
そうは思うけど、もうちょいそれっぽい言葉を言えなかったのか……後で思い返して後悔する事になる。
帰り支度をしている最中、青道高校と書いてあるユニフォームを着た女子達が、意を決した顔をして話しかけて来た。
なんか千羽鶴が沢山繋がった物を持っているし、目の下にクマみたいなのが出来ている。
(えっ何、俺なんかした?? さっき気の利いたセリフが言えなかったのを怒ってるの?? 試合でもないのに、何でこんなに緊張しなきゃいけないんだ?? 俺は普通に適当に選ばれたキャプテンだぞ??)
「チーム全員の想いが詰まっています……頑張ってください……最後まで」
彼女達が居なくなった後も、話しかけられていない部員まで完全に硬直していたが、北瀬の一言でようやく時が動き出す。
「あっ……あの子達マネージャーかぁ……」
「あ、圧が重すぎる……」
準決勝の相手は仙泉学園。2mありそうな長身の投手がいたが、まあ市大三高や青道と比べると、そんなに強くないのでサクッと勝って試合を終える。
そのまま稲城実業の試合を見た後、北瀬と伊川は連れションに行き、本人達はどうでも良いと思っている会話を交わしながら出た。
「そういや何でだろう? 前回と3回戦より相手弱くなかった?」
「有名所じゃ無かったんじゃない? 知らないでしょ、仙泉学園高校なんて」
「言うな、聞かれてたらマズイだろ! ……それに、俺らがそれ言える立場か?」
伊川の舐めプな発言を聞かれていないかと考え、無意識にキョロキョロしていると、近くから野球ファンらしき声が聞こえた。
「成宮圧巻だったな! 打線も圧巻だったし……」
「今年も優勝は稲実で決まりかぁ」
「でも薬師もヤバくね? 色々……」
今、俺達薬師の事ヤバいって言った人が居た気がする。どっちのヤバいだろう? 打撃が凄いって意味か、守備が下手くそって意味か。
聞きに突撃したい位だけど、やったらマズいだろうなぁ。
強豪に勝ち続けて有頂天になってる自覚のある北瀬は、自信過剰な脳味噌が作り上げた妄想だったら嫌だなと思いながら、伊川にも聞こえたか聞いた。
寧ろ、これだけ野球が上手くて自信の無い人の方が珍しいのだが、本人は知らない。
「今さぁ、俺達の噂が聞こえた気がするんだけど!」
「三島みたいな事言うなよ……」
「でも俺達って決勝進出チームだし、有り得るだろ!」
聞こえてなかったと言いながら伊川は呆れていたので、ついムキになって反論した。
(そこまで言う? 可能性は無くは無いでしょ)
「おっ、薬師のバッテリーじゃん。まだ帰ってなかったのか」
「スタンドから高みの見物かぁ?」
「俺達の、良いデータは取れたのか」
急に小柄な金髪の白人っぽい人や、地黒な黒人っぽい人がいる集団に話し掛けられた2人は、何で俺達に話し掛けてくるんだと困惑した。
「さあ? どうですかね?」
「俺達データとか良く分からないし、聞かれても答えられないっス。さーせん」
「あれ伊川、この人達って決勝で対戦する選手じゃない?」
「本当だ、イナシロって書いてある。あっ! この人ってあの、監督が勝てば一躍スター入りとか言ってた成宮鳴じゃね? 多分……金髪で小柄だし」
記憶を思い出している最中、咄嗟に敬語が取れてしまった2人だが、稲城実業の2年生達は気にしなかった……気にしなかったが、小さいという言葉は余計だった様だ。
「ちょっと、小さいからってどういう事? 次戦う選手すら覚えてないの!」
「仕方ねぇだろ、鳴。無名チームだし、マトモに情報収集して無いんじゃないか?」
「対戦相手の主軸を調べないなんて、馬鹿なんだろうな。情報不足後悔すると良い……10年後も、20年後も」
「えっ、あっ、スミマセン……」
言うだけ言って、成宮鳴率いる集団は去っていった。
「何だったんだ、あの人達……?」
「さぁ……? 20年後ってなんだよ、何する気なんだ……?」
思わぬ出会いから3日後。スタンドからの大歓声が鳴り響きながら……西東京代表を決める、薬師対稲城実業の試合が始まる。
「成宮ー!」
「真田くーん!」
「カルロース!」
「鳴ちゃーん!!」
「今年も甲子園連れてってくれー!」
「はーっ遂にここまで来たか……思ったよりも随分早かったなァ!
……おい雷市! お前が打ちたい打ちたいって言うから、お前を1番にしてやったんだぞ。これで1発も打たなかったら、今日の晩飯抜きだからな!」
「それだけは嫌だぁっ!!」
「おい雷市暴れるな!」
「だったら打てぇーー! ナルミヤ叩き潰せー!!」
決勝戦に進む強豪校だとは思えない、薬師高校では普段通りの、轟親子が主体になった超しょーもない寸劇を挟んだ後、急に真面目な顔付きになった監督が号令を出す。
「いいかっ、ここから先はオメーらの仕事だぞ!
___テメーの為に打て、守備につけ! そんで勝利の味って奴を、しこたま味わい尽くせ!!」
『おうっ!!』
薬師高校と異なり、大方の予想通り順当に勝利を積み重ねてきた稲城実業は、冷静にこれからの試合を見据えていた。
「先発は北瀬か……やっぱりそう来るよな……」
「そりゃそうだろ……鳴! 昨日は良く眠れたみてぇだな」
成宮が稲城実業に勧誘した1人であるカルロスは、相手のオーダーを見て納得した声を出す。
キャプテンの原田は、たまに眠れなくて不調になるエースの目に隈が出来ていない事に対して安心していた。
成宮は、昨年の甲子園で暴投してから、頻繁に悪夢で眠れない日があるのだ。
そんな事実は無かった事の様に自信満々な表情をしたエースは、心配しがちな相棒に対して不満げに口を尖らせ、軽口を叩く。
「うん! 雅さんったら、そんな心配しなくても大丈夫だし___さて、どうやって潰してやろうか?」