【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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148球目 投手戦

 

 

 

 

1回裏、青道高校の攻撃は1番金田。

この秋にようやくスタメンを掴んだ選手であり、死んでも手放したくないと思っているらしい。

 

巨摩大藤巻の高校のピッチャーはもちろんこの男。U-18初優勝をした時の先発を努めた本郷正宗。

MAX152kmのストレート、変化球はスライダーとスプリット、9回を投げ切るスタミナも持ち合わせている素晴らしい選手だ。

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___バシッ!

 

「ストライク、ツー!」

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク!バッターアウト!!」

『わあぁ!』

 

三球三振、ストレートのみで打ちのめした本郷。やはり、この男も天才である。

 

 

「むむっ、アイツが高校最強右腕か!俺が打ち倒して、最強の座をこの手に……!」

「本郷くんを倒しても高校最強右腕の称号は手に入らないんじゃないかな、栄純くん左腕だし」

「僕も負けない……!」

「その熱意は登板まで残しておいてくれ……」

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで、打席には2番ショート高津。

今までの青道高校では正直レギュラーを取れなかった選手だが、ここ数年の低迷によってスタメンになった面がある。

彼にとって、それが良い事なのかは分からない。

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___バシ!

___ブォン

 

「ストライク、ツー!」

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

 

彼もまた、三球三振で仕留められてしまった。

本郷に変化球を使わせただけ、1番バッターよりはマシなのだろうか?それに、巨摩大藤巻バッテリーは対戦相手を舐めているのだろうか?

 

(俺達は本郷正宗のチーム。ここで温存しなきゃ、薬師高校への勝ち目は無い!!)

 

……厳密に言えば、違う。彼らは、全力の薬師高校相手に8失点で抑えた青道高校を評価していた。

だが、それでもここで球数を抑えなければ甲子園優勝は出来ないと分かっているのだ。

 

本郷はスタミナもあるピッチャーだが、北瀬の様な鉄腕では無い。

準決勝と決勝を投げぬいて貰う必要がある為、ここでカウントをフル活用する訳にはいかないのである。

 

北瀬はそんな彼らの思惑に全く気付かず、不思議そうな顔をしていた。

 

 

「なんか……巨摩大藤巻の攻撃の時も思ったけど、あっさりアウト取られてくよな」

「先輩達みたいな打撃センスが無いからですかね?」

「ああ……そういう?」

 

ちゃっかり1軍選手達と混ざっている太平が、適当な事を言った。

いや彼は本気なのだが、あまり野球知識がない。所詮、実質高校から野球を始めた選手なのである。

 

 

「太平くんが言うのも確かに合ってるけど、どちらかと言うと巨摩大藤巻のキャッチャーは本郷さんを温存してるんだと思います」

「あー、北瀬はめっちゃスタミナあるもんな。本郷も割とありそうだけど3連戦はキツいか」

「別に日にちが空いてれば疲れないと思うけどなぁ……」

 

伊川は理屈で納得していたが北瀬は出来ていなかった。

なまじ自分が無茶を通せる肉体をしているから、出来ない人間の事が分からないのだろう。

彼は監督にしたら不味い人間なのかもしれない。

 

 

 

 

ツーアウトランナー無しで、打席には3番セカンド小湊。

 

(兄貴はいつも、俺の前を走っていた……彼を打って、兄貴を超えたい!!)

 

強い決意を抱いて、打席に立った小湊。憧れている兄を、甲子園の舞台で超えてやると闘志を燃やしていた。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!」

 

 

___ガギ!

 

(ボールが……重すぎる!)

 

 

___バシッ

 

「アウト!スリーアウトチェンジ!!」

『わあぁ!!』

 

当てる事は出来たが、重さに対応出来なかった小湊。木製バットだったら折れていただろう。

彼は元々木製バット使いだったのだが、新しく就任した落合監督に金属バットに代えられていた。

 

彼はかなり不満だったらしいが、正直怪物球威を相手にして木製バットを使い続けては打てる可能性が0に近くなってしまうので仕方ないだろう。

……まぁ、それでも打ちきれなかった様だが。

 

 

「ふぁぁあ。ゴロが出たけど、巨摩大藤巻なら取れて当然だよなー。俺達みたいに打撃力偏中のチームじゃないんだし」

「なんか眠そうだな、伊川。さっきまで楽しそうに見てたのにさ」

「そうか?まぁ今のプレー、俺の参考になる所がねぇし」

「確かにな……」

 

伊川は根本的に野球に興味がないので、自分が使えない動きには興味がない。

他人と勝負する事よりは、自分個人で高みに近付く事が好きな性格なのだ。恐らく短距離走とかフィギュアスケートとか、個人の結果を出すスポーツの方が好きなタイプである。

 

どんなジャンルでも結果を出せる伊川が、興味のない分野に挑む事になったのは不幸かもしれない。

当然彼は、北瀬と出会った事を後悔などしないだろうが。

 

 

「でも、ライバル達が戦ってるのを見るとワクワクしないか?俺は打ちたくなってくるし、投げたくもなってくるな!!」

「お前、ほんと野球が好きになったよなー」

「全力で勝負するのは楽しいからな!」

「……そっか」

 

対して北瀬は、他人と競い合う事が好きだった。

彼は全力投球とか、切磋琢磨という言葉に惹かれるタイプである。伊川がいなかったら最悪、喧嘩に明け暮れて極道入りしてた可能性もあったのかもしれない。

 

……いや、その場合は極亜久中学に進学しなかったと思われるので可能性は相当低いが。

とにかく、彼が野球というスポーツに出会えたのは幸運であった。北瀬や伊川をチェンジリングした、神様だか妖精だかが居るなら彼の熱意を見て喜んでいるだろう。

 

 

 

 

 

 

2回表、巨摩大藤巻の攻撃は4番キャッチャー円城。

リトルの頃から本郷を支えてきた、名実共に彼の相棒であるプレイヤーだ。

内心、本郷の才能に圧倒されていて自分などまだまだだと思っているらしいが……彼に付いていけるだけの才能がある事は確かである。

 

 

___バシ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___カキーン!

 

「セーフ!」

『……わあぁ!』

 

「お、ようやくヒットが出たか……」

「ガハハハ!あの当たり、俺のパワーならホームランだったけどな!中々円城もやるな!!」

「お前のパワーで物事を考えるなって」

 

振り遅れつつも何とかボールに当て、ツーベースヒットを打った円城に対して微妙な雰囲気を醸し出す薬師。

彼らは基本、1回で1点位は取れて当然だと思っている。

 

 

 

 

 

ノーアウトランナー2塁で、打席には5番ライト佐々木。

 

(ネクストバッターズサークルで見ていた限り、そこそこの球にしか見えないんだが……皆が打てないと言う事は、やはりボールの出所がおかしいんだろう)

 

解析班の分析を信じて打席に立った彼は、バットをかなり短く持った。

元々そういう持ち方をする選手とはいえ、かなり極端にやっている。佐々木は、チームメイトの実力を信じているからこうしたらしい。

 

 

___バシッ!

___ブォン!

 

「ストライク!」

(はっ……?全く出所が見えねぇぞ?!遅いとかそういう次元じゃないだろ!)

 

慌てて振った佐々木は、ボール球に手を出してしまった。

初球は仕方ないとは思いつつ、こんな遅い球に……と悔しげな顔をしている。

そもそも142kmは高校球児として別に遅くないのだが、甲子園常連クラスの選手からすればそういうイメージになるのだろう。

 

 

___バシ!

 

「ストライク、ツー!」

 

 

___バシッ!

 

「ボール」

 

 

___バシッ!

 

「ボール」

 

 

___バシ

___ブォン

 

「ストライク!バッターアウト!!」

「くそっ!!」

 

粘った彼だったが、最後はチェンジアップで敢え無くアウト。右足でグラウンドを少し蹴りながら、悔しげに去っていった。

 

 

 

 

ワンアウトランナー2塁で、打席には6番レフト佐々木。

 

(沢村ってピッチャー、思ってたよりヤベェ!)

 

内心そう慌てながら、表面上は堂々と打席に立った。

 

 

___バシ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク、ツー!」

 

 

___ガギン!

___バシッ

 

「アウト!ゲッツー!!」

 

せっかくのチャンスの場面を、ツーストライクと追い込まれた佐々木が消してしまった。

 

 

「悪い円城、本郷……」

「仕方ない、次は打とう!」

「フン……」

 

巨摩大藤巻高校のベンチは問題なく彼を迎え入れたが、正直このチャンスを逃した事は相当痛かった。

それを、後々彼らは実感する事になる。

 

 

「ゲッツーって俺達よくあるよな?何でだろ……」

「強打者の宿命って奴じゃないか?具体的に言うなら、パワーヒッターはゲッツーになりやすいらしい」

「それに俺達は走塁も微妙だしな……そりゃ出てくるよ」

 

薬師野球部は、青道高校と巨摩大藤巻のどちらが勝っても良かったので他人事の様に話していた。

どちらもそこそこ因縁があるチームなので、片方を応援はし辛かったのも大きい。

 

 

 

 

 

 

2回裏、4番バッターはレフトの降谷。

 

(僕は……いや、僕達は北瀬くんに勝ちたい!

その為には、こんな所で終わる訳にはいかないんだ!!)

 

尊敬するライバルと対等に戦う為に、降谷は巨摩大藤巻を打ち破ろうとしていた。

本郷もU-18で一緒に戦った仲間ではあるのだが……正直、関わりが無かったので印象が薄かったらしい。

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___バシ!

 

「ボール」

 

 

___バシッ!

 

「……ボール」

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「……ストライク、ツー!」

 

 

___バシッ

 

「ボール!」

 

 

___ガギン!

___バシッ

 

「アウト!」

 

降谷相手には贅沢に球数を使い、ゴロで仕留めた巨摩大藤巻バッテリー。

彼の打撃力は、正直かなり警戒対象だったらしい。

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで、打席には5番金丸。

ストレートに強く、積極的な打撃が持ち味な選手である。

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク、ツー!」

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク!バッターアウト!!」

(くそっっ!!俺程度は眼中に無いって事かよ!!)

 

まるで見せ付けるかの様に、ストレート3球で仕留めた巨摩大藤巻バッテリー。

……事実、青道高校に見せつけていた。お前ら程度に、うちのエースが打てるのかと。

 

 

「ナハハ、惜しかった金丸!お前の敵は俺が討ってやる!!」

「沢村の前に東条の番なんだけど……」

「じゃー2連続ホームランを打つしか無いな!!」

「東条くんならともかく、自分の打撃力を覚えてる?」

「なにおう?!打とうと思わない者に打つ資格は無いのだ!!」

 

 

 

 

少し青道ベンチが騒がしい中出てきたのは、6番バッターの東条。ピッチャーも兼任している外野手である。

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___バシッ!

 

「ストライク、ツー!」

 

 

___バシ

 

「ボール」

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

1球様子を見ることには成功したが、彼も呆気なくアウトになった。

やはり本郷は怪物である。異常な球の重さも合わさり、無双状態に入っていた。

 

 

 

……

 

 

 

こうして膠着状態が続いた中、6回表で青道高校のピッチャーとライトが交代する出来事はありつつも激しい投手戦が繰り広げていく。

そして延長に入った10回裏、青道高校の攻撃で遂に決着が付いた。

 

 

___カッキーン!

 

『……わああぁぁ!!』

『は、入ったああぁ!!長い長い投手戦の中、青道高校エース降谷のソロホームランで試合が決まりました!

青道高校はここ8年甲子園出場がありませんでしたが、悲願の春のセンバツに漸く出場!

実力では他に負けていない!U-18初優勝を成し遂げたピッチャーの一角である、エース降谷の実力を示し切りました!!』

 

ほんの少しだけ甘く入ってしまった本郷の球を、怪物降谷が決め打ち。

流石にこれでは怪物球威も耐えきれなかった様で、ボールは吹き飛びホームランになった。

……この一撃だけで試合が終了、夏の甲子園を沸かせた巨摩大藤巻は、春のセンバツベスト8という結果で終わる事となった。

 

 

「試合終了!0-1で、青道高校の勝ち!礼!!」

『ありがとうございました!!』

 

 

 

 

手に汗握る投手戦が終わった中、何故か薬師野球部の1軍選手達は白けていた。

 

 

「漸く打ちましたね……遅すぎませんか?」

「両方ピッチャーが強いチームだしなー、こんな物だろ」

「俺がもし青道にいれば、序盤で決められましたね」

「それは殆どの薬師部員に当てはまるんじゃない?攻撃面も守備面も含めて」

 

完全に打撃に脳みそを狂わされている彼らにとって、かなり微妙な試合だったらしい。まるで子供みたいな考え方である。

キャッチャーなどの頭脳系選手は楽しんで見ていたが、大半の部員にとってはつまらなかったという。

強豪チームから来た筈の1年生達も、たった1年弱で感覚をめちゃくちゃに狂わされていた。

 

 

 

 




アウトになった人数を数え間違えていたので消した展開です



ノーアウトランナー無しで、打席にはピッチャー沢村。
1年生の頃は打撃はバントのみの男だったが、この2年弱でかなり成長したらしい。
一応強豪校というか、出場さえできればセンバツベスト8にも入れる青道高校で7番を打てていた。


___バシッ!

「ストライク!」


___バシッ!

「ストライク、ツー!」


___バシッ!

「ストライク!バッターアウト!!」
「クソッ!アピールか?!アピールプレイなのか?!!」

沢村は、金丸の時と同じく実力を見せ付けて来ようとしているのだと思ったらしいが……実際の所、沢村のバッティングは本当に眼中に無かったらしい。
巨摩大藤巻のバッテリーは、沢村程度のバッターには打たれないと確信していた。
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