【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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152球目 2回目

 

 

 

 

7番由井が討ち取られ、青道高校の攻撃。

1回裏、ノーアウトランナー無しで打席に1番が入った。

 

対して薬師高校の投手は、日本最強と呼ばれるピッチャーの北瀬が満を持して登場。

今回の甲子園では投手としての出場が1度もなく、ただでさえ豊富なスタミナが有り余っているだろうと観客からは言われていた。

そもそも彼は全試合投げても問題ない位の体力持ちなのであまり意味はない采配だったが、そんな事は伊川位しか知らない。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

『わああぁぁ!!』

 

「北瀬さん!良い球来てますよ!」

「ありがと!後2人もきっちり抑えよう!」

「はいっ!!」

 

三球三振に仕留めた大エースを見て、観客達は大いに沸いていた。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

『わああぁぁ!!』

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!バッターアウト!チェンジ!!」

『わああぁぁ!!』

 

後2人も北瀬-由井バッテリーは三球三振で仕留め、初回で4点差を付けた薬師高校。

日本の北極星と呼ばれる北瀬相手に、4点も取れる筈がない。観客達は薬師高校の優勝を確信していた。

 

 

そんな状況でも、沢村栄純は大きな声を上げてチームを激励していた。

 

 

「さぁーてここからが重要ですよ!試合をひっくり返して甲子園優勝をしましょう!!」

『……おうっ!』

「声が足りない!もう1度!!」

『オウッ!!』

「わーっはっは!!ナイス掛け声!!」

 

初回から4点も取られ、薬師高校に勝つ為には北瀬から5点取らなければならない状況でも……彼らは怯んでいなかった。

沢村栄純のもつ生来の明るさに惹かれ、周りもまだ戦えると思い込んでいたのである。

 

 

だがそんな根性論で考えていない落合コーチは、この試合は負けたなと内心断じていた。

沢村の転がすバントで取れる点数は過剰に多めに見積もって3点といった所。

他で奇跡が起きて1点取れたとしても4点だから、逆転には1点足りないのだ。

 

(というか……甲子園3連投で全く消耗しない投手って何なんだ?前とか準決勝で烏野と戦っておいてアレだったしなぁ……化け物か?

それに、真夏の練習でも汗すら殆どかいてないってどういう事だよ。1人だけクーラー付いた部屋で練習してるのか??)

 

落合監督は、内心そんな事を考えていたらしい。

 

 

 

2回表、薬師高校の攻撃は8番瀬戸。

ミートCパワーBと、他の強豪校なら1年生でクリーンナップレベルの実力者だ。

薬師高校での扱いは打撃は微妙だけど守備はそこそこ出来る選手という感じだが、本来なら将来の主砲として大いに期待されている選手なのである。

 

(甲子園決勝戦に出るのは始めてだ……夏の時は悔しかったけど、そもそもここは一生に1回でも立てる人は少ない場所。先輩達に連れていって貰った恩を打って返さないとな

……まぁ、俺がノーヒットでも普通に勝ちそうだけど)

 

多少緊張はしているが、プレーに支障は無い。

自分がやらなくても他の人がなんとかしてくれる環境が、逆に今のメンタルを安定させているのだ。

 

 

___ブォン

___バシッ

 

「ストライク!」

 

(やっぱり沢村さんの球は、出所が見え辛過ぎる!今回は振るのが早すぎた!)

 

即座にバッティングを修正しようとする瀬戸。プロ注な選手が数多く在籍する日本一の打撃王国の選手なだけあり、攻撃能力だけは異様に高かった。

 

 

 

___ガギーン!

___バシッ

 

「アウト!」

「オシオシオーシ!!」

『オシオシオーシ!!』

 

だがそれでも、炎のサウスポー沢村栄純の実力によってフライアウト。

残念ながら、これが現時点での瀬戸の実力である。

今まで注目されていなかっただけで、青道高校の2枚看板は素晴らしい選手なのだ。

今までの様に、7打席4安打みたいな結果を出せる相手では無いのである。

 

 

 

 

ワンアウトランナー無しで、打席には9番秋葉。

轟監督の気まぐれで今回は2番最強説を提唱する事にしたので、秋葉の打順はここになったのだ。

つまり今回も彼は、監督達に実質クリーンナップとして期待されている。

 

 

___バシ

___ブォン!

 

「ストライク!」

 

 

___バシッ

 

「ボール!」

 

 

___バシッ!

 

「……ストライク、ツー!」

 

変速サウスポーの球に慣れ切る事が出来ず、ツーストライクまで追い込まれた秋葉。

決勝戦で1回も打てなかったら恥ずかしいからちょっと困るなと思いつつ、チームの勝利は欠片も疑っていなかった。

 

 

___カキン!

 

「セーフ!」

 

「ナイスです秋葉さん!」

「今単打狙っただろー!」

「ガハハハ、まだまだ未熟だな!」

「お前さっきアウト取られてた癖にー」

「このまま打ち崩して行きましょう!!」

 

意見が割れているが、一応秋葉を褒めている薬師ベンチ。

沢村の強さは、甲子園出場校の中で彼らが1番知っているのである。

秋葉が単打しか打てなくても仕方ないと、ある程度納得していた。

 

 

 

 

ワンアウトランナー1塁で、打席には1番轟。

高校最強のホームランバッターである。国内ではなく、世界中の選手を含めての話だ。

 

 

「カハハハ……サワムラ、打つ!!!」

 

ギラギラした目付きで口角を上げながら、雷市はバットを一振りした。

 

 

「轟ィー!ホームラン打てぇ!!」

「薬師雷砲を見せてくれーっ!!」

『トッドロキ!!トッドロキ!!』

 

観客達は、轟雷市のホームランを望んでいた。会場中が、薬師圧勝ムードである。

___だが青道メンバーは、全く諦めていなかった。

 

 

「わははは!ここで轟を抑えて、NO.1サウスポーの座を手に入れてやるぜ!!」

「栄純くん!きっちり抑えて行こう!」

「沢村ァ!お前なら出来る!!」

 

そして轟vs沢村の戦いが始まる。

 

 

___バシッ!

___ブォォン!

 

「ストライク!」

「オシオシ、オーシ!」

 

初球は完全にストライク。雷市は沢村のブレ球に翻弄されている。

 

 

「良いぞ沢村ー!」

「こっちに飛ばして来てくれて良いよー!」

 

 

___バシ

 

「……ボール」

 

轟は微動だにせず、ギリギリな所でボール判定。

だが伊川は(今のはストライクじゃね……?)と思っていたらしい。実際その意見は正しいのだが、人間は精密機械ではないのだ。伊川以外の会場中の人間は、審判の判定に納得していた。

 

 

___カキーン!

___バシッ!

 

「……アウトォ!」

『あああぁぁ……』

 

打球はライト方向に落ちたが、降谷の矢のような返球によって轟はアウトにされた。

しかし秋葉は2塁まで進み、これでツーアウトランナー2塁である。

 

 

 

 

次の打順は2番北瀬。U-18世界大会でMVPを取った、名実共に高校生最強のピッチャーだ。

堂々とした立ち振る舞いで、彼は歩いていった。

 

 

『わああぁぁ!!』

『北瀬!!北瀬!!』

『キャー!北瀬くーん!!』

 

バッターボックスに立っただけでこの大歓声。この場所まで彼を見に来たという人は多いのだろう。

 

(うん、やっぱり甲子園は良いなぁ!熱気が凄いし、強い人達が沢山いるし!!ずっとこの場所にいたいなぁ……!)

 

北瀬はワクワクしながら打席に立っていた。もちろん、観客達すら驚く様な威圧感を出しながらである。

 

 

___ガギーン!

___バシッ!

 

「アウト!」

『あぁ……』

 

「……やっちまった!」

 

球種の予測を間違えた結果、ボール球に手を出してしまった北瀬。飛距離は良かったが高く打ち上げてしまい、センターに取られてアウト。観客達は悲しそうな声を出していた。

 

かなり悔しがっている北瀬だが……伊川は、北瀬が何やかんや今の攻防を楽しんでいる事が分かっていた。

火神程ではないが、彼は強い相手と戦う事が好きなのである。

 

 

「わーっはっはっは!これが沢村栄純の実力だぁ!!」

「たった1回アウトにしただけじゃねーか!でも良くやった!!」

「栄純くん、このまま実力以上の力を発揮しててね!」

「ムム!はるっち違うぞ!これが俺の実力だからな!!」

「どうだか」

 

危機的状況の中でも、青道高校の選手達は明るい。

最高のライバルと甲子園決勝戦の舞台で戦う事は、彼らの悲願だった。

それが今叶っているのだから、追い込まれる理由が無いのだ……それに相手は、最高の監督であった現片岡コーチ。彼らの躍進を望んでいた部員も多かったらしい。

 

 

 

 

2回表が終わり、次は青道高校の攻撃。

次の打順は、4番沢村。バントが異様に上手いので、今回だけ主砲扱いされている。

 

 

「よっしゃあぁ!沢村伝説を作り上げてやるぜ!!」

「おめーバントするだけじゃねーか!」

「まぁ白龍高校の時みたいに、バントランニングホームランをやったら伝説になるかも……」

 

今、青道高校の選手がフラグを立てた。

 

 

___カーン!

 

狙い通り、1塁ベースにボールを当てる事に成功した沢村。流石に毎回成功するレベルではないが、今回は成功した様だ。

 

ボールは外側に飛んでいき、三島は慌てて追いかける。

この隙に沢村は1塁を回って2塁に進もうとしていた。当然博打にはなるが、北瀬相手に連打出来そうな選手なんていないので限界まで進むしかないのだ。

 

 

___グリッ

 

「いって!」

「マジかよ?!」

 

慌てて追いかけた三島は、風で変な方向に動いたボールを踏んで転んでしまった。当然ボールはコロコロと転がり続けている。

沢村が2塁に到達して3塁に進もうとしている時、万が一を考えてボールを追いかけていた伊川が到着し、3塁に投げた。

 

 

「アッ……」

 

だが急いで投げた為、構えているだけでミットに収まる様な送球は出来なかった様だ。

当然構えているだけで良いと思っていた雷市は取れず、ボールはフェンスまで飛んでいった。

 

 

「…………セーフ!」

『ええぇ???』

 

まさかの甲子園で2回目のバントランニングホームランである。

観客達は、最早怒る事も出来ずに絶句していた。

 

 

『…………』

「カハハハ……」

「悪いな……てか三島、大丈夫か?」

「ガハハハ!ちょっといてぇけど大丈夫だぜ!」

 

流石の薬師1年生達も絶句していたが、ミスをした上級生達は気にしていなかった。

だって1回表で4点取ってるし、ここから先も沢山ホームラン打つし、実質無傷じゃないか?1点なんて誤差だよ誤差。そんな感じの事を考えていたのである。

 

 

『選手交代のお知らせをします……ファースト三島くんに代わりまして花坂くん、花坂くん……』

「あわわわわわ、僕が甲子園決勝戦で戦うの……?!」

「クソッ、まだ戦えるのに!……花坂、俺の代わりにホームラン頼んだぜ。頑張れよ!」

「は、はいっ!」

 

ここで監督は選手交代を決めた。

三島は嫌だったが、アナウンスされてしまった後ではどうしようもないと渋々ベンチに帰っていった。

それでも後輩にエールを送ってベンチに戻る三島は人が出来ていると言えるだろう。まぁ頭薬師しているので、ホームランの事しか言っていないが。

 

 

「監督、何で俺をベンチに引っ込めたんすか!まだまだ戦えましたよ!」

「いやお前軽く捻挫してるだろ。怪我を舐めちゃいけねーよ、今は大丈夫でも後々響いてくるかもしれねぇからな

それに、花坂だって強い!この試合だって9割9分勝てるんだから、怪我人を無理して使う必要ねぇんだよ」

「そりゃそうかもしれないけど、まだ打ちたかったっす」

「正直な奴だよなぁ。まぁ自分に正直な所も、お前の良い所なんだが」

「あざーす……お前らぁ!俺の代わりにホームラン頼んだぜ!!」

『おうっ!!』

 

ベンチに無理矢理引っ込まされた三島は監督に文句を言っていたが、直ぐに気持ちを切り替えて応援を始めていた。

薬師野球部メンバーは、妙に気持ちの切り替えが速いのだ。特に上級生達は。

波乱万丈な高校生活を送り、衝撃的な事が起こる事に慣れているのだろう。

 

 

 

 

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