【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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160球目 案の定

 

 

 

 

1回裏、薬師高校の攻撃では1点しか獲得出来なかった。

ピッチャー沢村に対し、秋葉がゴロで伊川がホームラン、北瀬がヒットを打って雷市が三振してしまったのである。

 

まぁ投壊薬師打線とはいえ、打率10割とはいかないのだから仕方ない。

むしろ高校最強クラスのピッチャー相手と考えれば、初回から1得点出来たのは喜ばしい事なのかもしれない。

……薬師の選手達はそんな事なんて考えず、けっこう悔しげな顔をしていたが。

 

 

 

 

2回表の青道高校は案の定三球三振にされ、2回裏。

火神はギリギリフライアウトになってしまい三島もフライアウト、由井がフェン直ツーベースを打つも結城が三振して無得点になった。

 

 

「くそーっ!後ちょっとだったのに!!」

 

「三島キャプテン、ドンマイ!」

「てか俺達ってホームラン狙い過ぎじゃないか?」

 

煩い観客達も、別に下位打線を見に来た訳でもないのであまり騒いでいない。

騒がれるのが大好きな三島は、観客達の反応にも内心悔しく思っている。

 

雷市を超え北瀬も超える予定の俺が、打てなくても仕方ないみたいな反応されるのは許せねぇ!俺はもっともっと強くなる男だぞ!!

……1番腹立つのは、そんな反応をされる俺自身だ!甲子園までに、日本で1番期待される選手になってやる!!

 

彼は大体こんな事を考えていた。

ほぼ達成不可能な目標に向かって努力し続け、失敗してもめげない所が三島の最大の特徴かもしれない。

 

 

 

 

3回表、青道高校の攻撃は9番降谷から。

 

 

___バシッッ!

___ブォン!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

『わああぁぁ!!』

 

2番最強打線みたいな采配をしている今回の青道高校でも実質クリーンナップ扱いなのだが、簡単に三球三振にされていた。

まぁ世界最強ピッチャー相手に打てる方がおかしいのだ。甲子園で優秀なバッター程度では、打てなくても仕方ない。

 

 

 

 

「園!頼んだぞ!!」

「たった1点差!ここから巻き返すぞ!!」

 

青道高校のスタンドから降り注ぐ期待の声。

園大和は日本の高校1年生の中で最強のバッターだと言われていて、非常に期待されている選手である。

 

ちなみに、どうして能力に合っていそうな投壊薬師高校に来なかったかと言うと……綾瀬川と真剣勝負がしたかったかららしい。

最高のライバルと3年間戦い続ける道を、彼は選択したのだ。

 

 

___バシッッ!

___ブォォン!

 

「ストライク!」

『わああぁぁ!!』

 

「北瀬のストレート……俺も打席に立ってみてぇ!!」

「良く分かんねぇけど、なんかスゲェ!!」

「北瀬くーん!頑張ってぇ!!」

 

1球目は北瀬の代名詞、世界最速のストレートでストライクを奪いに行った結果、あの園が空振り。

彼らの凄さがよく分かっていない一部の観客達も、「何か凄い」と盛り上がっている。

知識の無い人まで凄いと思わせるのが一流の証。2人の天才が戦う事により、観客達の熱気が最大限まで高まっていた。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク、ツー!!」

『わああぁぁ!!』

 

「今の球……カーブじゃないか?!」

「確かに1年生の頃は使ってたけど……今でも使えたのか……!!」

「今のって何が凄いの?」

「さぁ?早くて凄く曲がってるのは分かるんだけど……」

「アレは!北瀬が今まで封印してたカーブを使ってきたのが凄いんだよ!!使わざるをえなかったのか、今まで使えなかっただけなのか……誰か俺に教えてくれぇ!!」

 

最近由井が取れる様になったカーブを、ここで解禁。

隠し玉として取っておいても良かったのだが、この試合でも絶対に負けないという強豪意識により解禁された。

知識のある観客達はまた発狂し、ニワカファンからかなり引かれている。

 

実際147kmの大きく曲がるカーブなんて見たら混乱しても仕方ないのだが、始めて試合を見に来た様なライトファンからしたら怖い反応だった様だ。

 

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!バッターアウト!」

『わああぁぁ!!』

 

今回の園は、内角低めギリギリの球を見逃し三振。

天才的なコントロールに浮き上がるストレートが合わされば、バッターがこのような反応になってしまっても仕方ないと言える。

 

 

 

 

「綾瀬川を見た時、世界最強だろうと思ったけど……北瀬さんの方が強いか?いやでも、計算され尽くした投球の強さは無いしなぁ……」

「わーっはっはっは、惜しかったな園!俺がお前の敵を討つ!バントランニングホームランでな!!」

 

「狙い過ぎるなよ沢村ぁ!」

「いや、お前が最後の希望だ!ワンチャン狙えよ!!」

 

最終兵器、バントの神様沢村に望みを託す青道高校。

バントだけならメジャーでも通用すると揶揄される彼は、実際薬師相手では最高のバッターだった。

速度は非常に遅いがほぼ確実に当てられるバントと、悲惨な薬師野手陣の相性が凄まじく良かったのである。

 

 

___カーン!

 

勢いよく3塁ベースに転がっていくボール。

捕れるかギリギリの所だったが……雷市は掴み取った!

 

___バジッ!

 

「アウト、チェンジ!!」

『わああぁぁ!!』

 

「ガハハハ!雷市、またギリギリの所に投げたな」

「カハハ、次はちゃんと投げる!」

「ちゃんとキャッチ出来たのは、凄く良かったぞ!!」

「ナイス雷市、助かった!三島もありがとう!!」

 

バントの神様を討ち取った事によって盛り上がる薬師メンバー達。

正直な所、ランナー無しのバントなんて沢村相手だろうと取れて当然なのだが、雷市が守備に付いているとなると話は変わってくる。

前回の三島のファインプレー(尚ランナーには進塁されている)を含めて奇跡だと騒いでいた。

 

まぁホームランが出た時よりは喜んでいないのだが、運良く無失点で抑えられて良かったねみたいな顔をしていた。

薬師野手陣は守備に責任を持つつもりが無いので、エラーなどをかなり他人事扱いしていたが、気にせず北瀬は喜んでいた。

 

 

 

 

 

 

3回裏、薬師高校の攻撃は9番瀬戸。

他校ならクリーンナップだと言われる彼も、この投壊学校では下位打線になっている。

薬師高校は打撃に狂ったチームなので、エラー持ちの瀬戸がショートを守れているという事情はあるのだが……

 

 

___バシッ!

___ブォン!

 

「ストライク!」

 

1球目はムービングでストライクを取られていた。

瀬戸はワンストライク程度では怯まず、次打とうとだけ考えている。

 

 

___バシ!

 

「ボール!」

 

2球目はスプリット、外れてボール。

まだ制球に難のある変化球なので、外れても仕方ないと青道バッテリーは割り切っている様だ。

 

 

___カキン!

 

「セーフ!」

 

141kmの、謎の体勢から投げてくるストレートに差し込まれつつも打った瀬戸。

球の威力は低い為か案外飛び、完全にセーフになった。

 

 

「ナイス瀬戸!……でも差し込まれてるぞー!」

「ガハハハ!ホームラン狙いの良い動きだった!」

「沢村の球、タイミング取りづらいよなぁ」

 

ベンチから微妙な評価を頂きつつも、瀬戸は少し嬉しそうな顔をしていた。

沢村栄純という男の実力を認めているからこそ、打てて嬉しかったのである。

 

 

 

 

ノーアウトランナー1塁で、打席には1番秋葉。

国際大会で出てきてもおかしくない優秀なピッチャーが出てきて、若干げんなりしながら登場していた。

 

U-18決勝戦の5打席4安打は完全に出来過ぎだったのだが、周囲はそのレベルの結果を求めてくるのだ。

最上級生の中でいちばん弱いメンタルをしている彼が、割と困ってしまっても仕方ないだろう。

 

 

___カキーン!

___バシッ

 

「アウト!」

「まじかぁ……」

 

良い当たりだったのだが、ショートのファインプレーに阻まれてアウト。

抜ければ完全に長打コースだった事もあり、秋葉は悔しそうにしていた。

ゲッツーにならなかった事だけが救いである。

 

 

 

 

ワンアウトランナー1塁で、打席には2番伊川。

打率が異常過ぎて誰も気付いていないが、遅いクセ球サウスポーの沢村キラーと呼ぶべき相性の良さだった。

 

(一発ホームラン打ったし、後はリスクを侵さずツーベースで良いよな?)

 

本人は呑気にこんな事を考えていたが……正直チームの為を思うならホームランを狙うべきである。

彼なら沢村相手なら、9割5分位の確率でホームランが打てるのだ。普通に考えたら絶対狙うべきなのだが、後ろに控えているクリーンナップの打力を過剰に信じすぎている彼は気付かなかった。

その事実に気付いていれば、唯菜への好感度アップ作戦もありホームランを狙っていただろうが……結局気付かなかった様だ。先入観が頭脳を鈍らせている。

 

 

___カキーン!

 

『わあぁ!』

 

初球から打ち、しっかりツーベースヒット。

1塁の瀬戸が走っていれば、得点も有り得たかもしれない長打コースだった。

 

 

「まぁ、良し!ナイス伊川!」

「ホームランを狙おうという気概が足りん!」

「流石伊川さん、沢村さん相手でも余裕ですね……」

 

「うおおぉぉ!伊川先輩カッケー!!」

「あの人達が俺達の先輩とか、意味分かんねぇよな!!」

「試合には多分出れないけど……このチームに来て良かった!!」

 

微妙な反応をしているベンチに対して、スタンドで応援している薬師部員達は大いに盛り上がっていた。

彼らは北瀬や伊川と同じチームの一員の筈なのだが、実際はスター選手とファンの集いみたいな関係である。

 

2軍になると浮ついた空気はあまり無かったが、3軍4軍レベルだとスーパースターを見る事に重点を置いている選手が多かった。

だから追い出し部屋みたいなシステムになっている4軍の人達が、誰も退部しないで自由気ままにファン活動が出来てしまっているのだが……新入部員に悪い影響を与えないで欲しい所だ。

 

 

 

 

ワンアウトランナー2・3塁で、打席には3番北瀬。

観客からの大歓声を受けながら、堂々と打席に立った。

 

 

「よし!ここで一発ホームランを打って、3打点獲得してやるぜ!」

 

「頑張れ北瀬ー!」

「ガハハハ!ホームラン狙いが最強だからな!」

「自分のやりたい事を相手チームに明かしちゃって良いのか……?どうせバレてるって言われたらそうだけど……」

 

長打狙いを大声で宣言した北瀬。

青道高校のキャッチャーはそれを信頼し、超長打警戒守備を指示していた。

北瀬は発言で惑わす様な細かい作戦など使えないと、同地区のチームには完全にバレているのだ。

 

 

___ガギーン!

 

「セーフ!」

 

初球からボール球に手を出した北瀬。

怪しい音がなっていたが恵まれたパワーでかっ飛ばし、普通に1塁まで進んでいた。

正直2塁まで進もうとすれば進めていたと思われるのだが、薬師は走塁で無茶をするチームでは無いので実行はしなかった様だ。

 

 

「あー、ヒットかぁ……」

 

「ドンマイ北瀬!ヒットも悪くないよ!」

「ガハハハ!まだまだ鍛錬が足りん!」

「カハハハ……ドンマイキタセ!」

 

これで0-2、薬師高校の3回裏だと考えれば点の入り方が小さいが、普通のチームならかなり良い滑り出しだと言えるだろう。

 

 

 

 

ワンアウトランナー1・3塁で、打席には4番轟。

 

 

「カハハハ……!!サワムラ、打つ!!」

 

「ホームラン頼むぜ!」

「ガハハハ!場外しか認めん!!」

『雷市!!雷市!!』

 

メラメラと闘志を滾らせながら、高笑いをしている雷市。

投壊薬師打線の絶対的主砲に対し、チームメイト達は大いに期待している。

彼なら、最高の場外ホームランを打ってくれるに違いないと信じているのだ。

 

キラキラした目で雷市を見ている彼らだが、打てなかったとしても温かく迎え入れる優しさもある。

楽しく甲子園を目指したいなら、最高の環境だった。

 

 

___バシッ

 

「ボール!」

 

「雷市ー!フォアボールなんて要らねぇぞー!」

「ホームラン狙いで行けよ!」

「大丈夫!お前が打てなくても後ろが打つからな!!」

 

初球は見逃して、ボール。

薬師ベンチは若干辛辣な事を言いながらも、内心ちゃんと雷市を応援している。

 

 

 

 

___カッキーン!!

 

『わああぁぁ!!』

「カハハ……サワムラ面白い!!」

 

「ホームランキター!それも場外!!」

「ガハハハ!それでこそ俺のライバル!!」

「やっぱ雷市はカッコイイなぁ!」

「雷市さんナイスホームラン!くぅっ!俺も打ちてぇ!」

 

2球目、雷市は場外への特大ホームランを放った。

ベンチは総立ちで大喜び。ランナーの北瀬や伊川も楽しげにはしゃぎながら、ダイヤモンドを回っている。

これで0-5、一気に青道を突き放し春季大会優勝の可能性を一気に増やしていた。

 

 

 

 

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