【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
「あー……疲れたけどさ、楽しい試合だったな!」
「カハハハ……サワムラすごかった!」
「ガハハハ!俺は満塁ホームランを打てたし、文句無い試合だったぜ!」
寮に帰った後、ぺちゃくちゃと話している最上級生達。
伊川も彼らの意見にかなり同意していたが、ふとある事を思い出した様だ。
「確かに良い試合だったよな……よく考えたら、まだ決勝戦が残ってるんだけど」
『えっ……??』
北瀬達は、決勝戦の事を完全に忘れていたらしい。
ポカーンと呆けた顔をした後、慌てて取り繕っていた。
「あっ、そうだよな!次は……セイブン高校だっけ?」
「西部高校だよ……1年前の春季大会でも戦っただろ」
『??』
最上級生の5人の中、伊川にしか覚えられていなかった西部高校の選手達は哀れである。
……まぁ手加減しまくった北瀬の150kmストレートにボコボコにされたのが悪いのだが。
薬師高校の守備を相手にしているのだがら、もう少し打撃を頑張って欲しい所だった。
流石に2年生達は覚えていた様で、懐かしそうな顔をしながら瀬戸は先輩達に相手について教え始めた。
「俺達2年生が、始めて薬師野球部として戦った時の相手ですよね!
……でも、決勝戦に来られる様なチームでしたっけ?」
「多分、真田スカウトの資料を見るにくじ運が異常に良かっただけの様な……西東京4大チームが、全部反対の山だったし」
「伊川さんの言う通りだと思います。正直、決勝戦に出て来て良いチームではなさそうです」
伊川の発言を、頭脳プレーが中心のポジションである由井が軽く補足し、皆を納得させた。
そんなチームが決勝戦に来るなんて、他の強豪校が可哀想じゃないか……?と微妙な顔をしている部員達の中、黄瀬は嬉しそうな顔をしてこう言い放った。
「じゃあ、俺が先発出来る可能性もあるッスかね?!伊川センパイ!!」
「えっ?……ああ確かに可能性はあるかもな。監督達も、無駄にピッチャーを酷使したくないだろうし」
「マジすか?!やったぁ!!」
「いやいや、それなら俺も出たい!!」
「パワプロは、もうちょいコントロールを磨いたら?今のままだと、ベンチ落ちの可能性もありそうだし……」
「ゔっ……痛い所突きますね……」
無駄に球速に拘っている様に見えるパワプロ。
___だがプロ入り後の事を考えると、必ずしも不正解な選択では無かった。
薬師高校は、ミート力・パワー・球速が最大300%伸びる学校なのだ。
誰も知らない事実を、パワプロは無意識に察知していた。
身体能力が伸びやすい高校生の頃に球速を伸ばして、プロ入り後にコントロールとかスタミナを伸ばせば良いやと、彼は考えているのである。
それを他の人に言ってしまうと、身体能力が伸びやすい時期にちゃんとコントロールも伸ばしておけよ……とツッコまれてしまうので言わなかったが、パワプロは意外と後々の事を考えていたのだ。
彼の選択は、『甲子園での活躍を捨て、プロで活躍する為に速球だけを優先して練習していく』という方針だった。
チームからすれば迷惑な話だが、別にパワプロが投げさせられなくても今は他にピッチャーが沢山いるので問題ない。
彼は弱小校相手に155kmのストレートで無双させて、ドラフト上位指名してくれる球団が現れるのを待つしかないのである。
球速だけで言えば完全に怪物クラスなので、まぁ指名漏れは無いだろうと言われていた。
パワプロくん大勝利エンドもあるかもしれない。
ちなみに先発黄瀬、リリーフ友部で戦った春季大会決勝戦は……控えめに言って虐殺だった。
4回まで投げた黄瀬は、1球も打たれる事が無かった。もし最後まで投げられるスタミナがあれば、完全試合になっていただろう。
リリーフの友部も、たった3失点。放心している西部高校を見ながらも、薬師打者陣は全力で打ち続け、64-3で圧勝してしまった。
西部高校は、強豪渦巻く西東京地区で決勝戦に来て良い様なチームでは無かったのだ。
優勝した後バスではしゃぎつつ、エースの北瀬は次期エース候補の黄瀬に声を掛けた。
一応、新入生の黄瀬に気を使っている所もあるのだ。
「やった!ナイス黄瀬!!」
「アザース!まー俺なら当然ッスよ!でも4回までしか投げさして貰えなかったんで、まずはスタミナ伸ばしからッスかねー?」
「……無難だと思う。リリーフ専門でやるならこれ以上スタミナは要らねぇけど、多分エース目指してるんだろ?」
「はいっ!北瀬っちが引退しちゃった後、綾瀬川っちに勝ってエースになりたいっす!!」
キラキラした目で夢を語っている黄瀬。
彼を見ている2・3年生達は、こいつ思ったより熱血系なのかなぁと思っていた。
高卒メジャー行きも有り得る選手だと言われている綾瀬川に勝つなんて、普通のメンタルをしてたら言えないからである。
だが三島は、そんな黄瀬すらあ然とさせる様な事を言い放った。
「ガハハハ!良い夢だな!……だが黄瀬、お前は北瀬が引退する前に超えてやろうとは思わないのか?」
「え゙っ、絶対無理っしょ……あの人に勝てる選手なんて居ないッス!!北瀬センパイは、最強無敵な日本の北極星なんスから!!」
黄瀬は、始めて勝てないと思った先輩を神聖視していた。
誰が何をやっても彼より優れた選手にはなれない。彼が唯一無敵のピッチャーであると、盲目的に信じているのだ。
今まで彼が、スポーツの練習を何もしなくてもずっと1番上手かった反動が出ていた。
「いやぁ、何か照れるなぁ……」
「それは違う!___何故なら、俺が北瀬を超える最強ピッチャーになるからだ!!」
「えっ?まだピッチャー諦めてなかったんすか?
……はぁ、まあ頑張ってください?」
「諦めてないぜ!!……黄瀬、応援ありがとな!」
確かに黄瀬からしても、三島の打撃能力は称賛に値するレベルだった。
だが投手としての能力は評価していない。そこそこ強い程度だから、プロには通用しないと見ているのだ。
だから世界最強の北瀬に投手として勝つと宣言した三島を、若干アホの子を見る目で見ていた。
そんな無理な事に時間を費やすより、打撃練習とか守備練習に時間を費やした方が良いんじゃないすかねぇ……と思っているのだ。
そんな若干下衆な事を考えている最中、黄瀬の皮肉に気付かなかった三島に感謝され、彼は少したじろいていた。
才能ある人は好きになる性格をしている黄瀬は、三島にある程度の好意を抱いていた。
だからこんな事でお礼を言われてしまって、若干後ろめたくなっていたのである。
試合が終わった次の日、軽い練習をした後にクールダウンをして自由時間になった伊川と北瀬。
身体が疲れているだろうから休めと、轟監督に言われていたのだ。
だから今日は、後輩達に指導する予定になっている。
もう少ししたらスタメン以外の全体練習も終わるから、そこで合流しようと下級生達と話していた。
そんな時たまたま見つけたのは、木陰で休んでいる結菜。
ベンチに座り、すらっとした足を惜しげもなく見せつけている彼女を見て、伊川は複雑な心境になっていた。
確かに眼福だけど、俺以外も見てるんだよな……嫌だ。
ちらりと自然に見た後、見ている事がバレない様に視線を外した伊川。
そんなあまりにも慎重過ぎる彼を見て、北瀬はこう言い放って彼女に近寄って行った。
「ちょっとは話しかけに言ってみようぜ! こういうのは、アタックしないと始まらないって!」
「でも、面白い事言えないっていうか……」
「じゃあ俺が話しかけに行くからさ! ついて来いよ!」
スポドリを追加で一本持ち、結菜に近付いていった北瀬。
楽しげな顔で彼女に近付いていき、ドリンクを差し出した。
「お疲れ様! スポドリ持ってきたんだけど、要る?」
「あっ、ありがとうございます!」
結菜は高卒メジャー行きのスーパーエースに話しかけられて緊張しながら、慌ててスポドリを受け取った。
「俺らもちょっと休憩する所だったんだけど、ここで休憩して良いか?」
「勿論! あの伊川先輩と北瀬先輩とお話出来て、嬉しいです!」
伊川は内心、好きな子と近くで話せる事にドキドキしながらも、無難な話を考えて話し始めた。
「真田結菜ちゃんって言う名前だよね? 真田前キャプテンとか、真田太平の妹だったりするのか?」
「はい! 真田俊平は、私の兄ちゃんですよ!」
その言葉を聞いて、テンションが上がった北瀬と伊川。
嬉しそうにしながら真田先輩の事を話し始めた。
「やっぱり! 真田先輩と、雰囲気何となく近い感じしてたんだ! 先輩は凄い人だったから結菜ちゃんも凄いんだろうなぁ、てか今の薬師の偏差値ヤバいのに入学出来たってのがまず凄いよ!」
「えへへ、ありがとうございます! 私、元々そんなに頭良くなかったから頑張って勉強したんです! 何とか滑り込み入学出来ました!」
その言葉を聞いて、そう言えば何でこの子は薬師高校に入ったんだろうと思った伊川。
野球が好きなのかなぁと思って、少し勇気を出して聞いてみていた。
「入学出来て良かったな! 俺もマネージャーが増えて嬉しいよ。やっぱり野球が好きでここに入ったの?」
「はいっ! 兄の試合を見ようと思って見たんですけど、伊川先輩も北瀬先輩も轟先輩も凄くって!
間近で見たいと思って、この学校に入学しました!」
目を輝かせて語る結菜に、伊川は少し照れつつも少しだけ自信を持ってこう言った。
「そっか、ありがとう。俺達が、薬師野球部を甲子園優勝させるから!
___この学校を選んだ事、後悔させないつもりだ」
「……後悔なんてしません、絶対」
真田先輩を彷彿とさせる、柔らかな笑みを浮かべた彼女。
北瀬はやっぱり血縁ってあるんだなぁと感じて、伊川はメロメロになっていた。
地元にはこういう大和撫子みたいな笑顔をする女性がいなかったので、美人補正もあるこの子がとても素晴らしく感じられたのである。
幸せな空間に酔っている伊川と違い、北瀬はそろそろ後輩達に指導しに行く時間だと判断。彼は冷静な判断力を失ってはいなかった。
伊川が心から喜んでいる所を邪魔するのに罪悪感を抱えながら、北瀬は心を鬼にして邪魔する覚悟を決めた。
「ありがとな! 伊川も俺も頑張るよ!
じゃあ伊川……そろそろ練習再開の時間だし、戻ろ」
「あぁ、そうだな……またな、結菜!」
「また、よろしくお願いします! 伊川先輩、北瀬先輩!」
第三者視点では、乙女ゲームの美少年キャラの様に去っていった伊川。
だが彼は、思わず名前呼びをしてしまった事に酷く動揺していた。あまりにも馴れ馴れしかったかなと思ったのである。
「北瀬ー!! オレ、俺名前呼びしちゃったよ?! 嫌がられて無かったか?!」
「そんな事は無いと思うけど……そもそもあの子、真田先輩とか太平とかと名前被ってるじゃん。普通にそれ関連だと思われそうだけどな」
「そうだよな……うん、まぁこのままで良い……か? 注意されなければ」
「大丈夫でしょ! 多分!!」
北瀬はまともな根拠も無く同意した。
別に部内で名前呼びされてるの何人もいるし、大丈夫だろうと適当に考えたのである。
実際彼女は嫌がっていなかったので問題ないが、彼は弟の恋心を何だと思っているのだろうか?
これで嫌われてしまったら、流石の伊川でも本気でキレるだろう。
最悪、大乱闘スマッシュブラザーズになってしまう。
伊川が嫌われなくて良かったとしか言いようが無い。
まぁその程度で嫌ってくる人は性格が悪い気もするが。
入れられなかった会話
「くそっ!今回こそ使って貰えると思ってたのに……!」
「いやパワプロさ、もうちょいコントロール上げないと使って貰えないって。俺でもパワプロでも抑えられる相手なら、普通に考えて死球当てない方に投手任せるだろ」
「そりゃそうだけど……速球大好きなんだよ!!」
「お前はプロだって行ける逸材なのにさぁ……それならそれで俺の登板機会も増えるし、もう好きにしたら良いんじゃないの?」
「……忠告ありがとな、友部」
轟監督と片岡コーチの会話
轟監督「やっぱし俺は、今まで通り打撃偏中で選んだ方が良いと思いますよ。打撃力ばかり育てて来たせいで、打撃一本でプロに行けそうな奴が何人もいますから」
片岡コーチ「……私が1番勝てる采配を考えた場合、
北瀬や綾瀬川が投げる時は、ファーストに太平、セカンドに伊川、ショートは瀬戸、サードは花坂で、レフトに雷市、センターに秋葉で、ライトは桜木か北瀬
……つまり、内野にだけは飛ばせて良い采配にします。彼らなら上手く調整して、効率良く球数を減らしてくれるでしょう
パワプロ・友部・黄瀬が投げる時は今までと同じ采配にします。大量得点大量失点になりますが、仕方ないと割り切ります
これなら次世代の選手を育成しつつ、今活躍している選手も出場出来ます
その上、疲れが残る選手も減ると思います」
轟監督「確かにそれもアリですね……ただ、チーム編成がコロコロと変わるのは連携面でのリスクも大きいと思いますが……」
片岡コーチ「連携面のリスクは、練習を重ねる事で低減出来ると思います。但し北瀬や綾瀬川が大崩れした場合、打撃力が足りない事で負ける可能性もあるでしょうね」
轟監督「うーーん。どっちを選んでも強いせいで、逆にどっちを選べば良いか考えるのがむずいっすね」
轟監督(俺は今、薬師野球部の事を第一に考えられているだろうか……三島が下げられると得点力が下がるなんて言い訳で、本当は教え子に試合に出てほしいだけなんじゃないか……?)
前回のアンケートも踏まえ、再アンケートします!ご投票よろしくお願いします!
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轟監督案
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片岡コーチ案
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その他
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無回答