【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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164球目 信頼

 

 

 

 

「ガハハハ!今ホームランを討ち!雷市を超える!!」

 

「頑張ってください!キャプテン!」

「北瀬センパーイ!!172km見せてよー!!」

 

スリーアウトランナー1塁の場面で、打席には5番三島。

幼馴染兼ライバルの雷市を越えようと、日々努力している選手である。

……凄まじい向上心を持つのは良いが、エースと主砲、両方を越えようとするのは難し過ぎる。

彼はピッチャーか野手のどちらかに絞るべきだ。スタミナが普通程度なので、明らかに二刀流は厳しい。

 

 

___ガキン!

 

「……アウト!」

「セカンドに打っちまった!!」

「カハハ……抜けなかった……」

 

ギリ抜けれそうな打球だったが……残念、そこは伊川の守備範囲内。ショート三井に球を渡し、彼がファースト太平に投げた。

何と薬師野手陣がダブルプレー!……とは言っても、守備が上手い奴だけ集めたから起きた事なのだが。

 

 

 

 

ファイブアウトランナー無しの場面で、打席に6番結城。

瀬戸とバッティング能力が拮抗しているらしく、コロコロ打順が変えられている。

ミートCパワーSの結城とミートBパワーAの瀬戸、どちらが強いのか分からなくて困っているらしい。

 

一撃の破壊力をとるか、安定感のあるバッティングを取るか……難しい問題である。

まぁ薬師打線は上から下まで基本強いので、あまり打順を気にする必要は無いのだが。

 

 

「___打ちます、北瀬さん」

「負けない!勝負だ!」

 

 

___バシ

___ブォォン

 

「ストライク!」

 

初球、超スローボールに体勢を崩された結城。

全力フルスイングが仇となり、対応出来なかったらしい。

 

 

「初球からスローボール……!」

「北瀬さんと良い感じに盛り上がってたから、ストレートを投げて来ると思った……?」

「……」

「北瀬さんは首を振らない投手だから、俺のリードに従ってくれてるよ」

「……未熟!」

 

結城の短絡的な考え方を諭した由井。

言われた結城は、自らの甘さを恥じていた。

 

 

___バシッッ!

___ブォォン

 

「ストライク、ツー!」

 

「スローボールから172kmは手ぇ出ないって!」

「エグい!北瀬さんの投球エグい!!」

「北瀬先輩最強!!」

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

『わあぁ!』

 

「結城は当てればめっちゃ飛ぶんだけどなぁ……」

「いやアイツのミート力って、2年って考えたらめちゃ凄いだろ!天才が何人もいるせいで若干霞んでるけど……」

「普通に考えたら、結城さんは主砲扱いですよね……」

 

結城は成長速度も考えたらドラ1も狙える天才バッターにも拘らず、火神や由井に瀬戸といった、彼と同じくドラフト1位を狙える選手達がいる事によってあまり目立てていない。

 

最強チームで甲子園に乗り込める天才達を羨みつつも、正直天才は3人位で十分だよなと思っていた2軍選手達。

化け物が大量にいるせいで誰も目立たなくなってるし、俺らの出場枠も無くなるんですけど?!と焦っているのだ。

 

ちなみに3・4軍の選手達は、そもそも自分が出ようと考えている人が少数派なので、呑気に薬師は最強チームだと喜んでいた。

1軍の選手達ほぼ全員にサインを書いてもらった後輩も多いらしい……ちなみに奥村はくれなかった様だ。

 

 

 

 

シックスアウトランナー無しで、打席には7番由井。

今回だけは捕手を奥村に変更しての戦いになる。由井も内心、エースの球を打ってみたかったらしい。

 

強いピッチャーの球が打ちたい気持ちはよく分かるから許可した北瀬だが、正直奥村相手にどうやって投げれば良いか困っていた。

彼に駆け寄ってきた奥村に対し、困りながらこう言った。

 

 

「えーっと……ストレート、取れそう?」

「全力ストレートとスライダー以外は、全部取ります」

「流石に無理じゃね?一応、U-18のキャッチャーでも取れなかったんだけど」

「___この1年間、ずっと見てきましたから」

 

折れない奥村を見て、基本的に押しが弱い北瀬は負けてしまった。

 

 

「……分かったよ、奥村。お前を信じて投げてみる!」

「信頼を裏切る様な事は、しません」

 

(いやでも、正直無理じゃね?由井だって半年位掛かったのに、見てただけでって相当キツいと思うんだけど……

結局、俺は捕手じゃねーから分かんねぇな。まぁ怪我しそうなら止めれば良いか?)

 

信じるとは言いつつも、やはり半信半疑な北瀬。

奥村が怒ると怖いから全力で投球はする予定だが、正直かなり不安に思っていた。

 

 

 

 

1球目、北瀬は早速ビビっていた。

 

(初球低めにフォーク?!絶対落とすって!)

 

そう思った彼だが、他に良い配球が思い付いた訳でもないので首を振れなかった。

渋々、1球目を投げる

 

 

___バシッ!

 

「ス……ボール!!」

 

ミットが動いてボールにしてしまったものの、ボールは零さなかった奥村。

本人はピッチングの邪魔をしてしまった事で歯噛みしていたが、観客達は衝撃を受けていた。

まさか本当に、日本最速のピッチャーの球をほぼ初見で取り切るとは誰も思っていなかったのである。

 

 

「ナイス奥村!良いキャッチングだったな!!」

「……嫌味ですか」

「嫌味じゃねーよ!取れたじゃん!フォーク!!」

「それでも、ボールになるのは許されません」

「強情な奴だなぁ……まあ良いけどさ!次はもうちょい、ストライクゾーンの内側に配球したらどうだ?それなら多少ズレても大丈夫だぜ!」

「結構です!」

「えぇ?……まぁ練習だしいっか!」

 

大体の事をまぁ良いかで流す北瀬は、奥村のキャッチング能力を知っても軽くで流していた。

この出来事を深く考えず、(奥村も俺の球キャッチ出来るんだなー、万が一由井が怪我したら取って貰おう)位に考えている。

 

 

 

 

一方由井は、奥村の方がキャッチャー能力は格上だと確信して内心焦り始めていた。

 

(奥村くんの方が、悔しいけどリードは良い……北瀬さんの球が取れるなら、彼が正捕手になってもおかしくない

だって、得点出来る選手は沢山いる。大エースを盛り立てられるなら、打撃の穴が出来る事なんて許容範囲かも?

 

それに絆とかを加味されて北瀬さんとのバッテリーを守り切れても、春からは奥村くんが正捕手になる可能性も……マズい、急いで対策しなくちゃ!)

 

薬師野球部には、打撃が得意な選手が沢山いる。

守備型の選手の方がある意味重用される特殊な学校なので、彼が追い落とされる可能性はかなりあった。

 

それに綾瀬川や黄瀬との交友関係は奥村の方が深かった。

大エース北瀬の球を取る事に必死になっていた由井は、後輩達の球を取る時間が無かったのである。

まぁ相手からの好感度は同じ位なあたり、コミュ力の高さではかなり勝っているのだが……

なんなら彼は他のポジションでも割と守備が出来るので、そちらに回されてしまう可能性もあった。

 

 

___バシッッ!

___ブォン

 

「ストライク、ツー」

 

 

___バシッッ!

___ブォン

 

「ストライク!バッターアウト!」

『わあぁ!』

 

そんな雑念に支配されていた由井は、北瀬-奥村バッテリーにあっさり三振にされてしまった。

 

 

「後2人!……奥村もナイスキャッチ!!」

「由井が勝手に自滅しただけですよ」

「自滅?……由井、どうかしたのか?」

「いえ、何でもないです」

「そうなのか?」

「はい!」

「そっか……」

 

奥村の一言によって由井の不安に気付きかけた北瀬だったが、本人が何でもないと言ったのを信じてしまった。

彼は何度騙されても、基本的には人を疑えない質である。本気で信じている仲間の言葉なら、尚更に。

そこが北瀬の美徳でもあるのだが、不利益になる事も当然あった。

 

 

 

 

セブンアウトランナー無しで、打席には8番瀬戸。

ミートBパワーAと、現段階の能力でもドラフト指名に引っ掛かりそうな選手だ。

 

 

「よろしくお願いします!」

「よろしく!……全力で行かせて貰うよ!」

「胸を借りるつもりで頑張ります!」

 

瀬戸は、珍しく普通にエースに敬意を払う選手である。

薬師下級生達は、スタープレイヤーを見るように囃し立てる後輩達と、偶にいるクセのある後輩が目立っているのだ。

彼や由井の様に、親しみやすい雰囲気を出しつつ過度に囃し立てもしない上で、上下関係を意識して敬意を払える選手はかなり少なかった。

 

 

___バシッッ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___バシッ!

 

「ストライク、ツー!」

 

 

___バシッッ!

___ブォン

 

「ストライク!バッターアウト!」

『わあぁ!』

 

そんな瀬戸でも、北瀬相手では三球三振にされてしまっていた。

彼は少し悔しげな顔をしながらも、にこやかにエースを褒め称える。

 

 

「いやー凄いっすね!いつか打てる様に頑張ります!」

「頑張れ!俺も負けない!」

 

爽やかに北瀬を褒めてからベンチに帰っていった瀬戸。

今ので北瀬からの好感度は微増しているので、やはり彼の人の良さは薬師高校では有利に働く様だった。

 

薬師スタメン全員と戦いたいから、9打席勝負にしようと言った北瀬。

だが、投げている自分は打てない事を考慮してなかった。

どうしようかなぁと考えている最中、知らないお兄さんがグラウンドに急に現れた。

 

 

「次のバッター……誰にしよっか?」

「あー、もし良かったら俺に打たせてくれよ!」

『えっ誰ですか??』

 

きょとんとしている部員や、不法侵入者を見るような目付きで見ている部員達。

あわてて宮内は、自分が来た理由について話し始めた。

 

 

「俺はスポーツ医学部生の宮内!青道OBで、片岡コーチに頼まれて来たんだ!んフー」

『へー凄い!』

 

医学生っていうのは、良く分かんねぇけど凄いなぁと思った北瀬達。自分達に宮内さんが来ると連絡が来ていない事は、どうせ轟監督だし……と納得した様だ。

実は、ちょっとお茶目な片岡コーチがサプライズゲストで呼ぼうと思って言わなかったのだが、そんな事を彼らは知らない。

 

伊川は内心、(野球辞めたら医者も良いかもな。今の学力なら行けそうだし)と思っていた。

先の将来設計まで考える余裕がある彼を見たら、全国の野球人が歯噛みするかもしれない。

 

 

「良いっすよ!他の打ちたい奴は、別の日に打てば良いと思うし!」

「うし!全国最強の投手の球、楽しみだ!」

 

こうして、青道OB対薬師の大エースの戦いが始まった。

 

 

___バシッッ!

 

「ストライク!」

「マジか……!」

 

1球目は169kmのストレート。

宮内はあまりの豪速球に愕然としている。速さも見た事ないレベルだけど……何だあの浮き上がる軌道は!こんなのどうやって打てば良いんだよ?!と驚いているのだ。

 

 

___バシッッ!

___ブォン

 

「ストライク、ツー!」

「エゲツねえっ!!」

 

2球目も170kmのストレート。北瀬にとっては全力じゃない、ただのストレートだ。

だが宮内のバットは明らかに空を切った。御幸が競争相手とはいえ、ベンチを温めていた彼に日本の大エースを打てるだけの打力がある筈もない。

 

 

___バシッ!

 

「ストライク!バッターアウト!」

「これが、北瀬のスライダー……噂以上だ!」

 

最後は宮内を楽しませるべく、北瀬の決め球スライダーで終わらせた由井。

その考えの通り、宮内は驚愕しながらも喜んでいた。

 

 

「よっしゃ!これで9人無得点!!」

「あちゃー、2点位は取りたかったな」

「ガハハハ!次は俺の満塁ホームランで勝ってやるぜ!」

「北瀬相手に満塁ってあるのか……?」

「久しぶりに北瀬さんの球を受けましたが……やはり凄まじいですね」

 

こうして今回の北瀬vs薬師野手陣の戦いは、北瀬圧勝に終わった。薬師打線は大エース相手でも3得点取れた事があっただけ、この結果は悔しかった様だ。

 

次北瀬と戦う時は絶対打ってやると、闘志を滾らせながら……U-15優勝の立役者、綾瀬川次郎との戦いになる。

 

 

 

 

どこかで脇役メインの話を書きたいと思っています!もし良ければ、誰が良いか回答よろしくお願いします!

  • 桜木(1軍)
  • 流川(1軍)
  • 百沢(2軍)
  • 國神(2軍)
  • 青井(3軍)
  • 笠松(1軍)
  • 赤葦(3軍)
  • 黄瀬(1軍)
  • 木兎(2軍)
  • 綾瀬川(1軍)
  • 錦織(1軍半)
  • 沢村(青道高校・1軍)
  • 本郷(巨摩大藤巻・1軍)
  • 御幸(ヤクルス・2軍)
  • 天久(阪真・2軍)
  • 北瀬母
  • 真田母
  • 理事長
  • その他
  • 無回答
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