【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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シナリオをくださった方、ありがとうございます!


準決勝

1番 秋葉 (ライト)
2番 瀬戸 (ショート)→流川
3番 伊川 (セカンド)
4番 北瀬 (レフト)
5番 花坂 (サード)
6番 太平 (ファースト)
7番 奥村 (キャッチャー)
8番 桜木 (センター)
9番 綾瀬川(ピッチャー)


決勝

1番 秋葉 (センター)
2番 伊川 (セカンド)
3番 北瀬 (ピッチャー)
4番 雷市 (レフト)
5番 火神 (ライト)
6番 瀬戸 (ショート)
7番 由井 (キャッチャー)
8番 太平 (サード)
9番 流川 (ファースト)


172球目 祈り

 

 

 

 

関東大会準決勝は綾瀬川が虐殺して何事もなく終わった。

参考記録にはなるが、完全試合をまた達成している。

今回の彼は打たせて取るを徹底して、脅威の60球完投。端的に言って化け物である。

これでは綾瀬川を無理に優遇する大人が出てきても仕方ないと思えてしまう。

 

薬師比で打線が湿っていた結果7回まで相手に粘られてしまったが、問題点は本当にそれくらいしか無かった。

 

 

「アイツらけっこう強くなかったか?」

「……っていうより、打線が湿ってただけだろ

そりゃ試し打ちとはいえ、雷市・三島・火神・結城の4人も抜いたらこうなるって」

「だよなぁ……まあ、勝てたからいっか!」

 

薬師部員達は、怪しげな場面も無く余裕で勝てていたから何も気にしていなかったが、轟監督や片岡コーチは何故か深刻そうに話し合いをしていた。

……本当に、ベンチメンバーの誰を出しても簡単に勝ててしまう事が証明されたからである。

 

舐めプにも程があるが、もうこれなら甲子園の舞台でもベンチ入りメンバーの全員を出して、なるべく選手達をアピールした方が良いのかもしれないと葛藤していたのだ。

 

一部観客達からは「甲子園を何だと思っているんだ」と非難を浴びるだろうが、俺達がやる事はご機嫌伺いではなく多くの生徒達を野球で食わせていく事。

だったらもう、全員野球でも始めるか……?と内心お互い困惑しながら話し合っていた。

 

 

 

 

 

 

関東大会決勝戦の直前、北瀬は楽しげに笑っていた。

実は今年の関東大会で彼は1度も投げられていなかった為、久しぶりにピッチャーがやれる事がとても嬉しかったのである。

 

 

「やっっと俺の投げる番になった!」

「良かったな、北瀬!」

「降谷さんと沢村、どっちも強くなってるだろうなぁ!」

「そうだな!」

 

北瀬の嬉しそうな言葉を聞いた伊川は、気まずげな顔をしながら情報を訂正した。

 

 

「いやまぁ……沢村は今回出てこないけどな」

「えっ、何でそんな事が分かるんだ?確かにオーダーに沢村の名前が乗ってないのは変だと思ったけど……」

 

若干北瀬が現実逃避に入っている事を分かっていながら、伊川は渋々説明し始めた。

どうせ言わなくても、後で分かってしまうからである。

 

 

「どう考えても、バントランニングホームランを何回もやってる沢村をスタメン入りさせないのはおかしい

大方怪我かなんかで試合に出せないんだろ」

「……そっか、心配だなぁ」

 

3年間ライバルをやってきた沢村の離脱を聞いて、心配そうにしている北瀬。

打てないかもしれないと思えるピッチャーとの対戦があまりないので、居なくなってしまうと悲しいのだ。

まぁ当然、北瀬は性格が良いので普通に心配している気持ちもある。

 

 

「バントは腰をこうやって……こうっ!

皆さん忘れずに!バントはこう!こうですよ!!」

「沢村ぁ、うっせえ!」

「みんな集中してる所だから、ちょっと黙ろうか?」

 

「……なんか元気そうだな!安心したー!」

「良かったな!」

 

相手ベンチから聞こえる沢村の微かな声を完全に聞き取り、勝手に安心している北瀬。

なんだ、思ったよりも元気そうじゃんと思っている。

 

実際沢村の怪我は軽い炎症で、2週間後には投げられる程度の物だ。

これが甲子園を掛けた戦いなら、強行出場も有り得る位の軽い怪我である。

だから、次の試合に響く事は無いだろう。

 

 

だが……二枚看板の片割れであり、不安定な降谷を支える戦力としては勿論、ムードメーカーであった沢村の離脱は青道高校全体の士気にも大きく影響していた。

 

 

「降谷……頼んだぞ」

「うん___負けない」

『降谷!降谷!』

 

スタンドからの必死な声援を聞きながら、降谷は闘志を燃やしていた。

だが……彼のノーコンは、やる気や熱意で何とかなったりはしない。

寧ろ力み過ぎて能力が下がってしまう事を、チームメイト達は今まで忘れていた。

 

 

 

 

 

 

1回表、薬師高校の攻撃は1番秋葉。

 

(前回は無様を晒したよな……だから、今日は打つ!)

 

前回の試合を反省し、やる気十分といった顔で打席に立つ彼だが、相手ピッチャーの調子は悪かった様だ。

 

 

___バシッ!

 

「ボール!」

 

 

___バシッ!

___ブォン

 

「ストライク!」

 

 

___バシッ!

 

「ボール!」

 

 

___バシ!

 

「ボール!」

 

 

___バシッ!

 

「ボール、フォア!」

 

普段通りの見極めなど必要なく、見ているだけで勝手にフォアボールになった秋葉。

拍子抜けという顔をしながら、彼は無言で1塁に進んだ。

まぁ157kmを冷静に見極められる事も十分アピールポイントになるのかもしれないが、薬師打線の1番に座る彼に取っては足りなかったらしい。

 

 

「ガハハハ!変わってやろうか秋葉!」

「お前をセンターに置くのは流石に……」

「北瀬でも無理だってさ!」

「くっ、まさか守備力で外されてしまうとは……!」

「それくらい分かっててくださいよ……」

 

三島がボケをかましながら、一応打撃の所感を話している薬師部員達。

だが結局、今回は見どころの無い打席だったという結論になっていた。

基本的に薬師野球部では、フォアボールはノーカンと言われているからだろう。

 

 

 

 

ノーアウトランナー1塁で、打席には2番伊川。

 

 

___カキン!

 

あっさりヒットを放ち、次のバッターを見据えていた。

 

(お前なら打てるだろ?___北瀬!)

 

 

 

 

ノーアウトランナー1・2塁で、打席には3番北瀬。

観客達からは楽しげに笑っている様に見える彼だが、内心は少しだけ苛立っていた。

 

(降谷さん……アンタはこの程度の実力じゃないだろ?

それに伊川も、手加減しないで打てば良いのに)

 

敢えて見せ場を譲った伊川の心境など知らないまま、北瀬は打席に立っている。

まぁそもそも、伊川に手加減させて目立ちたいなど一言も言ってないから気付かなくても仕方ないだろう。

 

 

___バシッ!

___ブォォン

 

「ストライク!」

 

 

___カキーン!

 

ホームランとはいかなかったが、走者一掃のツーベースヒットを放った北瀬。

笑顔で観客達を見ながら、にこやかに笑っていた。

 

(やっぱ打撃も面白いな!野球って楽しー!)

 

すぐ気分が上がる彼は、ちょろいと言っても良いのかもしれない。そういう所が彼の良い所でもあるが。

 

 

「カハハハ……ドンマイキタセ!」

「いや、ナイスツーベースです北瀬さん!」

「カッケェ……!やっぱ先輩達スゲェ!!」

「さっすが北瀬っち!でもホームラン見たかったなー!」

 

(ベンチの皆は……意外と喜んでる?

ホームラン打ってないのに不思議だけど、まぁいっか!)

 

新しく部員が入った事によって変わった薬師ベンチが気になりつつも、気にせずにこやかに笑っている北瀬。

彼は細かい事を全然気にしない性格だった。

 

 

 

 

ノーアウトランナー2塁で、打席には4番轟。

 

 

「カハハハ……!___フルヤ、打つ!!」

 

凶悪な闘争心を撒き散らし、彼は打席に立っている。

北瀬と違い調子が安定していて、ほぼ毎試合ホームランを打っている彼は、海外も含めた高校生の中で1番の長距離砲だった。

 

 

「雷市ー!俺を返してくれよー!」

「ホームランいっけー!」

「ガハハ!不甲斐ないプレーをしたら代わってやる!」

「ホームランお願いしまーす!」

 

薬師ベンチは期待度MAX。

俺達の雷市なら、確実に打ってくれると信じているのだ。

 

 

___カッキーン!!

 

『わああぁぁ!!』

 

そして彼らの信頼通り、雷市は場外への特大ホームランを放った。

北瀬は利き腕を掲げながら、彼へ祝福を送っている。

 

 

「ナイス雷市!やっぱカッケーよ、お前!!」

「カハハハ!ホームラン楽しい!!」

 

「ガハハハ!流石は俺のライバル!!」

「やっぱりホームランも良いよなぁ……」

「俺達の3年生は最強だ!!」

「やっべぇ痺れた……!!」

「次は俺の番だ!!楽しみだ!……です!!」

 

 

 

 

なんとか狩場が立て直しそうとしていたが、火神がツーベースヒット、瀬戸はフライで倒れたものの、由井が観客席の奥にまで叩き込んで2ランとなる。

7番打者の彼もまた薬師の主砲の1人なのだ。

 

既に調子が良ければプロ1軍にも通用するレベルにまで向上し、スペックだけでなく試合経験をたっぷり積んで立ち上がりも割と改善されている降谷。

だがやはり、1度回り始めた打線相手には分が悪く炎上、初回6失点となった。

 

 

 

 

 

 

1回裏、青道高校の攻撃……の筈だった。

 

 

___バシッッ!!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

 

 

___バシッッ!!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

 

 

___バシッッ!!

 

「ストライク!バッターアウト!!」

 

だが彼らは、全く抵抗する事が出来なかった。

北瀬涼の投球は、既に全国どころか世界レベルすら到底敵わぬ代物であることは今更言うまでもなく、前に飛ばすことを目的としたお祈りミート打ちを敢行する他ない。

だが今回の薬師内野は連携などを加味しても青道2軍程度には固く、お祈りバッティングで太刀打ち出来る物では無かった。

 

 

次の回も、170kmよりも遥かに速く飛んでくる様な圧倒的なボールのキレとノビ、そこに加わる変幻自在の変化球でタイミングもバットもまるで合わずあっさりと三球三振の有様。

さすがの大和も、今回は対応できず。

 

 

「……天井知らずやなこの人、基本戦略は人任せっぽいし綾瀬川とは全く違うタイプ、やけど……どうしたもんか」

 

結果降谷は4回で12失点。

5回は敗戦処理を続くリリーフ2人に任せるも、ただ1回を終わらせることができず、打者一巡の9失点。

ちなみに、2アウト+5回は露骨な見逃しをされている。

 

裏では酷く淡々としたピッチングで抑えられ、青道高校の投手不足問題の再噴出ともう一つ物足りない狩場のスペックが出ていた。

結果として、21-0に終わる。

 

 

 

 

「なんか今日の降谷さんさぁ、正直びみょーじゃなかったか?」

「かなり調子が悪かったよな……沢村の怪我に引き摺られてたんじゃね?」

 

北瀬と伊川は首を傾げながら、試合後の挨拶をして去っていった。

降谷が彼ら薬師メンバーと直接対峙する時は不調であり続けた試合がなかったので、北瀬達は若干不思議がっているのだ。

一応、北瀬だってバッティングのムラとかあるし有り得る話だとは感じているらしいが……

 

 

 

 

「よ、良かったぁ……エラーしなくて」

 

ショートとして試合に出場していた瀬戸に、実は1回ボールが飛んできていた。

エラー持ちである彼は今回ミットからボールが零れ落ちそうになり、危うく完全試合を消滅させる所だったのだ。

 

 

「あんな怠慢で完全試合を消すなんて許せないからな

……薬師野球部だとよくある話だが」

「なんか俺も守備力が悪くなったよなー。確かに最近練習してないし、多少下手になるのは分かるんだけど」

「練習内容でここまで選手の能力が変わるのは、俺も想定外だった」

 

幼い頃から野球に打ち込んで来た2年生達は薬師の投壊野球ぶりに内心困惑しているが、練習内容の差だろうと一応納得していた。

まさかこの世界に、パワプロ能力なんて物があるとは思っていないだ。

SFじゃないんだから……と、異様な打撃練習効率を全員スルーしていた。

人間とは、自分の持つ常識で物事を考える物である。

 

 

「だよな!打撃力は上がったから良いけどさぁ」

「……」

「いやいや光舟も相当上がっただろ?気にすんなって!」

 

チームメイト達を内心羨ましがっているであろう奥村の悔しげな顔を見て、慌てて瀬戸は言い直した。

瀬戸が落ち込んでいた筈が、奥村が少し凹んだ事で慌てて励ます流れになったのだ。

 

(お前の1番凄い所は、ピッチャーを導くリード力だろ?

それに、光舟だって打撃が悪い訳じゃないんだけどな……比較対象が悪過ぎる。俺も最近強くなってきてるから言えないけど……)

 

親友の瀬戸は、内心でもそうやって奥村を励ましていた。

彼は善良でコミュニケーション能力が高く、友人を大切にする人間だからだろう。

 

 

 

 

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