【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
通常練習が終わり自主練習の時間になった頃、今回は三島と奥村がピッチングをしていた。
___バシッ
「良い球来てますよ」
「ガハハハ!そうだろう!なんせ俺だからな!!」
(おだてれば簡単に調子が良くなる所は、三島さんの大きな長所だな…)
___バシ
「カーブはもっと曲げて行きましょう
取り敢えず、球速は気にしなくて良いです」
「ぐぬぬぬ、まだまだ北瀬の球には届かねぇか……!!」
(注意しても調子が下がらない所も、三島さんの長所だな
というより、彼が決定的に調子を悪くした所を俺は見た事がない。メンタル面は高校最強かもしれないな……)
楽しくピッチングをしている所に、普段よりも威圧感のある顔をしている片岡コーチが現れた。
三島は驚き、奥村は若干ビビっている。
「あ、片岡コーチ!俺らに何の用っすか?」
「三島___忠告だ、ピッチングに割く時間を減らせ」
『?!』
突如、思いもよらない爆弾発言が飛び出した。
エースも4番も両方手に入れたい彼は、当然コーチに掴みかからんとする勢いで反論する。
「何でっすか!!俺はエースも4番も手に入れる男です!
ピッチングの練習減らしたら、北瀬とか綾瀬川に追いつけなるじゃないっすか!!」
「その前に、スタメン出場を果たせる実力を付けろ
今のままでは両方が中途半端になってしまう……投手は足りている以上、野手に専念した方が出場機会は増えるぞ」
「…………」
そう言い残し、片岡コーチは去っていった。
三島は悔しげな顔をしながら、信頼している相棒の奥村に初めてポジションに対する意見を聞いた。
「俺はどっちのポジションも1番になりたい!……でも先に野手を極めろって意見も分かる!奥村はどう思う!!」
「……二刀流の成功事例はないので、片岡コーチの言う事も納得出来ます
でも、プロに行く前に可能性を狭めなくても良いとも思ってますが……ピッチング練習に割く時間を守備練習に費やせば、総合的な実力は上がるでしょうね」
「むむむむ……難しい選択だ……」
三島が唸りなから悩み始めたので、とりあえず今回の練習は解散した。
これからどういった選択をするのか……どちらを選ぶにしても、彼は後ろを振り返らずに自分の道を進む事は間違いない。
北瀬や伊川に秋葉、桜木や三井に流川、太平や疾風に瀬戸といった、守備に興味があるベンチ入りメンバーが集まって守備練習をしている。
ノックをしているのは珍しく轟監督で、周りは不思議そうな顔をしていた。
ちなみに片岡コーチが今回いないのは、三島に対して忠告をしにいっているからである。
轟監督が言うよりは俺が言った方が良いと、彼本人がやると言い出して向かったのだ。
監督業をやるには性格が良すぎる所が弱点といえど、本人にとって多少辛い選択をさせる事位は出来るのだ。
まぁ強制せず忠告で済ませる所が、彼の非情になれる限界を示しているが……
___バ、ゴロゴロ……
「やっべカバー!」
「おぅミッチー!」
ショートの三井が危うい球に飛びついてエラーをした所で、センターの桜木がフォローに入った。
際どいタイミングだが、もしランナーがいても1塁に進めたかどうか位での送球が出来ていた。
守備難の薬師になんやかんや慣れている監督は、感嘆の声を出している。
「やっぱこの面子は守備力良いな!
……三井は取る体勢が少しだけ悪かった!桜木は、今の隣は北瀬なんだから信用して動け!」
『ウス!!』
褒めるついでに若干のアドバイスをしつつ、次のノックを……と思ったが、何やら生徒達が会話を始めている。
部活中とはいえ自主練習時間なので、彼は流れを見守る事にした。
「ナーッハッハッハ!!薬師最強の守備を誇るのは俺の様だな!!」
「なにおぅ?俺だって桜木より上手いっつーの!今のはちょっとミスしただけ!」
『俺の方が上だ!!』
バチバチにメンチを切っている三井と桜木。
元不良同士の喧嘩に、周りの生徒達は注意できずにいた。
そんな時、伊川が思いもよらぬ提案をした。
「じゃあ今回のエラー数で勝負したら?負けた奴はジュース奢りな……まさか、負けるのが怖いとかねぇよな」
『当然だ!!』
「つーかよー、言い出しっぺのガワが参加しないって事はねーよな?」
「……分かった、じゃあ俺もジュース掛けるわ」
「じゃあ俺も!」
「俺もお願いします!」
『俺も!!』
こうして今回も普通のノックだった筈が、ドリンクを掛けた勝負に変わってしまった。
賭け事が好きな監督も、そわそわとしている。
「じゃあエラー数が多かった半数が、エラー数が少なかった半数に奢る……で良いよな?1位総取りにしても多すぎて困るだろ」
「仕方ねーな!それで良い!!」
「俺達は9人でやってますけど、5番目の人はどうするんですか?」
轟監督は太平の言葉を聞いて、待ってましたとばかりに会話に加わった。
「そいつは俺に奢れ!俺も勝負に参加してぇけど出来ねぇからな!」
『えぇ?』
疾風など、何人かの生徒は若干不満げな顔をしている。
リスクを負わずにジュースが貰えるなんてズルいとちょっと思ったのだ。
だが結局、確かに勝負に参加出来ないのはつまらないなと納得して払う事になった。
この40才過ぎのおっさんは、高校生と同じ位の精神年齢をしているのかもしれない。
___カキーン!
___バシ
「北瀬、ナイスキャッチ!」
「ありがとうございます!」
___カキン!
___バシ
「伊川、ナイスキャッチ!」
「あざーっす!」
___カキーン!
___バシ
「おっ!三井、良く取った!」
「あざす!俺なら取れます!!」
こうしてノックで戦った結果……桜木はなんと下位に入ってしまった。守備職人にも拘らず、危ういエラーを無くす事は出来なかったのだ。
まぁそれ以外にも理由はあるが。
「ぐぬぬぬ……まさか俺が7位とは……」
「ばっかでぃ!あんな宣言しといて大負けとはな!!」
「なにおぅ?!ミッチーだって、送球が遅いって言われたの含んだら負けてるじゃねーか!」
「……でもエラーじゃないから勝負は勝ちだよな?」
「ぐぬぬぬ……」
桜木と三井がじゃれ合ってるのを見ながら、北瀬と伊川と秋葉の最上級生組は微妙そうな顔をしていた。
「桜木が負けたのは守備範囲が広すぎたからだよな……」
「俺達ほとんと何もしてなかったしなー」
「ラッキーじゃん、ジュース貰えて!
まぁ試合と同じ様に練習しなきゃ意味ないから、そのあたりを桜木は弁えてたって事だな」
伊川はそう思っているが、実の所桜木な何も考えていなかった。
勝負に勝つ為には守備範囲を減らした方が良いなど、全く思い付かなかったのだ。
まぁ彼が思い付いていてもやらなかったかもしれないが、それとこれでは全く違う話である。
ちなみに、エラー数なしで断トツ1位を取ったのは伊川。
ある程度は瀬戸と流川のサポートをしつつ、取れる球だけを確実に取る戦略で勝利していた。
正直な所実践的な動きではないので、練習の意味を履き違えている。
まぁ彼は元からめちゃくちゃ上手いので、注意される様な動きはしなかったが……伊川の思惑に気付いた轟監督には、バカだなと呆れていた。
その頃、2軍の上位選手である木兎や國神、2mを超える高身長で目立っている百沢、そして1軍である黄瀬と笠松達1年生が集まって1打席勝負を繰り返していた。
最初は黄瀬&笠松vs國神の戦い。
他のチームならスタメン級と言われる程の打撃力を持つ彼を、意外と黄瀬も真面目に警戒している。
___ガギン!
「んー微妙なアタリ……」
「今の打球だと、ギリ1塁まで進まれただろうな」
「えーっ、笠松クン判定厳しすぎ!」
「薬師の守備は良くねぇんだから仕方ねーだろ!」
「まぁ確かに、実戦面で考えた方がいっか!」
鈍いアタリだったが、キャッチャーの笠松から無情のセーフ判定が出た。
まぁ薬師の守備力を考えると妥当な判断だが、ピッチャーとしては面白くない話だろう。
次は黄瀬&笠松vs百沢の戦い。
笠松に連れられて来た百沢は、こんなの打てねぇし1軍相手かよと緊張していた。
___バシッ
「ストライク、バッターアウト!」
「うわぁ、マジで打てねー」
「そりゃ百沢クンに打たれる程、俺弱くないからね!」
「調子のんなしばくぞ!」
「もうしばいてるじゃん!」
調子に乗っている黄瀬を、笠松がしばいていた。
チームメイトに失礼な事を言い放ったからだ。
そして笠松には、この程度の実力で満足されたら困るという気持ちもあった。
黄瀬は、まだまだ上を目指せると信じているのである。
次は、木兎&笠松vs國神の戦い。
バッターの國神は、ストレートかチェンジアップかを見切れば勝てるなと思っている。
___カッキーン!
「よっしゃホームラン!」
「うげっ、打たれた!!」
「木兎!次は討ち取るぞ!」
「かさまつぅ……!」
チェンジアップを見切った結果、ぐうの根も出ないホームランを打たれてしまった木兎。
運良くしょぼくれモードには入っていない様だが、キャッチャーの笠松は心配している
木兎の実力は、気の持ちようで大幅に変わってしまうからだ。
次は木兎&笠松vs百沢の戦い。
バッターの百沢は、打てたら良いなーと思いながら打席に入っている。
彼は秋葉とは比較にならない程メンタルも弱かった。
___バシッ
「ストライク、バッターアウト!」
「また打てなかった……」
「きょーはチェンジアップのキレが良いなー!」
「良いぞ木兎
そのままストレートを織り交ぜて行けば勝てる!」
(またチェンジアップしか投げられなくなった、とか言わねぇだろうな……)
百沢とは別の意味でメンタルが弱い木兎の事を笠松が心配しつつ、この打席は終わった。
ピッチャーが充実している中で、この選手をベンチ入りさせるのは博打みたいな物だろう。
調子が良い時は圧巻のピッチングをするが、悪い時は傍目から見てもあからさまに悪くなるので交代させざるおえないのだ。
彼の調子によって他の投手の登板予定まで崩れてしまうので、監督としては凄く使い辛い選手だった。
ちなみに彼が3年生になった最後の夏、調子ガチャが急に改善されて日本中の高校球児達を困惑させる未来があるのだが……そんな事を今の彼らは知らない。
暫く交代で投げ、打ち続け、これで解散しようという雰囲気になった時、黄瀬が思わぬ事を言い出した。
「あっ、そういや俺も打ってみたい!」
「えっ?いや、別に俺は良いけど……」
疲れていたが、気が弱いので直ぐに了承した百沢。
だが笠松は、胡乱な目付きで黄瀬に質問した。
「百沢が良いなら良いけどさ、そもそも打てんの?お前」
彼の疑問に対して、黄瀬は胸を張ってこう答えた。
「打てるっすよ!
だって俺、ここ1年位しょっちゅうバット振ってるし!」
『えー……』
それって毎日振り込みはしてないって事じゃねぇのと呆れつつ、一応やらせてあげようと定位置についた2人。
___カキン!
『えっ?』
「よっしゃ打てた!
……って言ってもホームランじゃないっスけど」
たった1打席でヒットを打ってしまった、ほぼ初心者ピッチャーの黄瀬に驚いた3人。
彼の能力は弾道3・ミートC・パワーEと薬師高校の中ではかなり下位だったが、打てる時は打ててしまうのだ。
「ああぁ……もう俺ダメだ、今日は投げれねぇ……」
「もう今日は投げなくて良いぞ?寧ろ身体を休ませろ!」
木兎の弱音をスルーしながら、笠松達は解散していった。
最初しょぼくれモードを見た時はグラウンドに三角座りをして落ち込む姿に度肝を抜かれたが、慣れてしまえば気にならない物だった。
薬師野球部員達の寛容さは、性格がアレな部員からしても良い事なのだろう。
三島はどっちを選んだ方が良いと思いますか?
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投手も野手もやる
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投手専念
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野手専念
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無回答