【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話   作:いちごケーキ

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176球目 決意

 

 

 

 

もうすぐ最後の地方大会が始まる頃、伊川と結菜は2人で談笑する程度の仲になっていた。

 

 

「ホント、ここの選手達は凄く格好良くって!

北瀬さんとか雷市さんとかも本当に輝いて見えて……!」

 

結菜の掛け値なしの本音に対し、伊川はその言葉に対して納得しながらも嫉妬してしまった様だ。

まだ付き合えてたりはしていないのだから、結菜が他の人を褒めただけで悔しくなるなんて間違っている思考だと、本人も自覚していた。

そう分かっていても悔しかった伊川は、自分の事も褒めて貰おうと、冗談の様にこう口にした。

 

 

「ちなみに俺は?一応俺も、アイツらに負けない位の結果を残してると思うけど」

「……伊川先輩が、1番カッコいいと思いますよ」

「……スゲー嬉しい、ありがとう」

 

伊川先輩が、私なんかの言葉に、本当に嬉しそうな顔をして喜んでくれている。

___だから、チャンスだと思った。

 

2年と少し前、俊兄が市大三高という甲子園レベルの凄いチームと戦うと知って、応援に駆けつけた日……可愛らしい顔をした彼が、涼しい顔をしてホームランを打った姿に恋をした。

 

あの頃はまだ守備が下手だったけど、その弱点を補って余りある素晴らしいバッティング。

 

 

元々遠い人だったけど、甲子園に行ってテレビで取り上げられてからはもっと遠い人になってしまって……私は芸能人に恋する一般人でしか無かった。

 

だから、この人を少しの間でも手に入れられる可能性があるなら……チャンスを逃すなんてバカらしいよね?

 

 

今の所、ただのマネージャーでしかない結菜は決意した。

 

 

「伊川先輩は可愛いのに格好良くて、優しくて……

私はそんな、伊川先輩の事が好きです! 軽い気持ちでも良いですから……付き合ってくれませんか?」

「俺も、結菜の事が好きだったんだ! 軽い気持ちじゃなくて……初恋で……

___だから、付き合わせて欲しい」

 

こうして彼らは恋人になった。

ちなみに後でその話を聞いた北瀬や花坂は大層祝福した後、勝手に周りに触れ回った結果、部員全員に知れ渡る結果となっていた。

 

それを聞いてちょっと怒ったフリをした伊川。

内心は(他の結菜が好きな奴に牽制出来たから、寧ろありがとな……そんな事思ってるのバレて、結菜に別れるって言われたら嫌だから言わねぇけど)と思っていたらしい。

 

 

それに、顔を赤らめて恥ずかしがっていた結菜。

だが内心は、凄く良い仕事をしてくれましたね……! これで先輩が部活に在籍してる間は、別れられないんじゃないですか?! ありがとうございます!!と喜んでいたらしい。

 

重い想いを向け合う、幸せなカップルであった。

 

 

 

 

 

 

練習が終わって寮の自室に戻った伊川は、真田先輩からラインが来ていた事に気付いた。

喜びつつ、まさか妹と付き合うなんて許さねぇってお怒りメールじゃないよな?と、怖々先輩からどんなメールが届いているのかを見ようとしていた。

 

ちなみに真相は、北瀬から寂しがっていたと聞いた真田先輩が送って来ただけである。

 

 

真田先輩

 

久しぶり、元気にしてるか?

 

既読
めっちゃ元気です!真田先輩はどうですか?

 

やっぱりプロってスゲェわ

 

参考になるプレーばっかり

 

まあ打撃は雷市とかお前の方が凄いし

 

ピッチングだって北瀬の方が凄いんだけどさ

 

平均が凄い高いんだよ!

 

早く2軍から上がりてぇけどムズいな…

 

 

 

 

 

 

 

全く予想していなかった、真田先輩の弱音の様な発言を聞いて驚いた伊川。

プロって先輩ですらキツいんだ、大変そうだなぁと今から憂鬱になり始めている。

恐らく、彼が苦戦する様なピッチャーは今世紀中に現れないと思うのだが……

 

 

真田先輩

 

既読
真田先輩でもキツいんですか?!

 

キツいよ。先輩として、お前らがメジャー行く前に

1軍に上がりたいけどなぁ…

 

既読
先輩大丈夫ですか?頑張り過ぎてたりしませんか?

 

肉体的には高校野球より楽なんだけど

 

怪我の療養で、暫く投げさせてくれないんだよな…

 

 

 

 

 

恋愛に腑抜けている最中に真田先輩の怪我について聞いて、かなり申し訳なくなって来た伊川。

俺と北瀬がもっと何とかできたら真田先輩は怪我をしなかったかもしれないのにと、無駄に罪悪感を感じ始めていたのだ。

 

 

真田先輩

 

既読
怪我するまで投げた事…後悔してますか?

 

それは無いな!

 

お前らと戦った夏は、人生最高の思い出だから

 

後1年さ、俺が遅く産まれていたらお前らともっと

一緒に戦えたのにって思うよ

 

 

 

 

真田の言葉を聞いて、伊川は名案を思い付いた。

先輩も俺達と野球がしたかったって考えてくれているなら、出来るじゃん! という思考である。

 

 

真田先輩

 

既読
じゃあ先輩もいつか、メジャー来てくださいよ!

 

既読
俺、また真田先輩と野球やりたいです!

 

それは厳しいかな…俺、伊川レベルの才能は無いし

 

 

 

 

真田先輩に、才能が無いなんて有り得ない!

伊川はそう思い、真田先輩とのラインに書いた。

 

 

真田先輩

 

既読
そんなのありえないですよ!

 

既読
真田先輩はドラフト1位の凄い選手ですし!

 

外れ1位じゃん。プロで活躍するのだって難しいよ

 

既読
俺、真田先輩とは一生野球出来ないって事ですか?

 

まあ、お前がメジャーリーグ行き辞めて日本で

プロになれば可能性はあるけどな

 

 

 

 

真田先輩の言葉を聞いて、なるほどなと納得した伊川。

確かにメジャーの方が金払いは良いけど、別に人生に大金が必要かって言うと要らないし。

真田先輩と数年野球をやってから、その時も誘われてたらメジャー行って北瀬と野球をすれば良いんじゃないか……?

 

それに、万が一俺がメジャーでも大活躍したら、北瀬が楽しい勝負が出来ないままだしな。様子見で他のチームに行っても良いんじゃね?

そう考えはしたが……それだと言葉の通じない海外に、北瀬を1人で行かせてしまう事になるからと諦めかけていた。

 

 

そうやって伊川が悩み込んでいる所に、同じ部屋にいた北瀬が話しかけた。

 

 

「伊川、どうしたんだ?」

「少し悩んだんだけど、やっぱり駄目そうなんだ」

「何考えてたんだ? 出来れば、教えて欲しいんだけど」

 

この考えは北瀬への裏切りにならないだろうかと、内心ビクビクしながら話した伊川。

だが北瀬はそう思わなかった様で、キョトンとしながらこう答えた。

 

 

「つまりヤクルスワローズに指名されたら日本でプロになって、別の球団に指名されたらメジャーに行くって事だろ? 良いんじゃね!」

「でもそれだと、北瀬は1人で海外に行くことになっちゃうし……」

 

伊川の言葉に、北瀬は笑ってこう言い返した。

 

 

「子供じゃないんだからさ、俺だって自分の人生は自分で何とかするよ! 伊川がやりたい事をやった方が良い!

俺、頑張ってメジャーで活躍するから……! 伊川と野球やるの、楽しみにしてるから……!

だから先に、真田先輩と野球して来いよ」

 

北瀬の言葉を聞いて、凄く寂しくなった伊川。

確かに真田先輩との野球を、もっとやりたいと思う……でも、北瀬と一緒に居られないのは凄く寂しい。

そう思ってるのは、俺だけなのか……?

 

割と依存体質な伊川は、そうやって拗ねていた。

 

 

「……お前も日本に残って、一緒に野球やろうよ

そしたら毎日は会えなくても、たまには遊べるだろ?」

「俺は……もっと強いピッチャーと投げ合いたいんだ

___だから、俺はメジャーに行くよ!」

「…………そっか」

「それにしてと、伊川が自己主張するなんて珍しいな!

お前も、後悔しない選択肢を選べよ!

人生は、ゲームみたいにやり直せないからなー」

 

 

 

真田先輩

 

流石に冗談だから、真に受けるなよ?

 

既読
ヤクルスワローズから指名貰ったら

メジャー行きを辞めようと思います

 

ちょっと待て

 

メジャー行けるなら行った方が良いって!

 

既読
まだ監督達からの許可は貰ってないですけど

 

既読
俺は真田先輩と、もっと野球がやりたいです!

 

既読
先輩が、嫌だったりしないですよね?

 

そりゃ伊川と野球やるのは楽しそうだけど!

 

既読
強い野球がやりたいとか大金が欲しいとか思わない

 

既読
ので特にメジャーに拘る必要がないです

 

本当にお前が後悔しないなら…

 

俺も、お前と野球がしたい

 

競合しそうだから、くじ運によるだろうけど

 

 

 

 

 

伊川は、メジャー行きが確定する直前に進路変更する事になった様だ。

正確に言うならドラフトで競合した場合、ヤクルスワローズに決まらないとメジャーに行くらしいが……

 

伊川の意思の弱さを考慮すると、日本で野球をやる事はほぼ確定だろう。

死にものぐるいで高が高校生を説得に掛かる大人達に、彼が対抗出来る気は全くしない。

 

こうして、北瀬と伊川の進路が分かれる事が決まった。

 

 

 

 

ちなみに伊川は、結菜には後で勝手に決定した事を平謝りしていた。

彼女が金銭面的に許してくれるのかどうか、内心かなりビクビクしながらである。

 

結局、恋に振り回されていた彼だが、北瀬や真田先輩程に執着する対象ではないらしい。

どうしてもやりたい事の為に振られてしまったなら仕方ないと、早々に覚悟しての決意だった。

 

 

 

 

 




後1か月位で完結しそうな感じなので、次の小説の内容を活動報告で募集しています!
もし良ければ投稿よろしくお願いします!
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