【完結済】気付いたらパワプロで適当に育てた選手に転生してた話 作:いちごケーキ
スポーツ関連の有名な雑誌に、また取り上げられた北瀬。
今回の記事では、何と大きな写真付きで7枚ものページが使われている。
大迫力のカラー写真と、まだ高校生の彼の実力を強い言葉で言い切った文章は、野球ファン達から好評だった。
絶対的エース、北瀬涼!日本史上最強左腕、ここに爆誕!!北瀬涼___その名を知らない野球ファンはいない。驚異の左腕から繰り出される“172km/h”の人類史上最速ストレートは、まさに怪物の所業!ただ速いだけじゃない。そのボールは途中から浮き上がるかのように錯覚する、圧倒的なノビを持つ!観客の度肝を抜き、打者のバットを破壊するその球威はヒットをゴロに変えるほどの威力を秘めている。日本中が熱狂し、世界中が恐れるそのピッチングは「最強」の一言で片付けられるものではない!
超絶ストレート___打てるもんなら打ってみろ!
北瀬のストレートは、打者の目の前で浮き上がるような鋭いノビが特徴。172km/hの球速はもちろん、球の威力がとにかく恐ろしい!全力で振り抜いたバットでも空を切り、捕手のミットに吸い込まれる感覚はまさに「見えても打てない」の典型例。スタンドは歓声と悲鳴が入り混じり、対戦する打者は「夢に出る」と言わしめるほどの恐怖を与える。
魔球スライダー___打者絶望のエグい変化!
北瀬のスライダーは、もはや魔球の領域。ストレートと同じ軌道から、最後の瞬間に鋭く曲がり落ちる。打者は見分けることがほぼ不可能で、目の前で急に軌道が変わるその球に空振りさせられる。右打者には内角へ、左打者には外へ逃げるため、どちらが相手でも攻略は至難の業だ。これが北瀬の真骨頂———「勝てるビジョンが浮かばない」とまで言わせる凶悪な球種だ!変幻自在のこの魔球は現代最強とまで呼ばれている!
カーブ&フォーク___多彩な変化球でねじ伏せる!
北瀬のカーブは、大きく縦に割れるダイナミックな軌道で、相手のタイミングを完全に崩す。このカーブがまた速球と見事な緩急を作り出し、打者は頭を抱えること間違いなし。そして、北瀬のフォークは急激に落ちるキレ味抜群の決め球。ここぞという場面で放たれると、打者は何もできずに終わる。常に北瀬の手のひらで踊らされる打者たちの表情は、見ている方が気の毒になるレベルだ。
制球力とスタミナ___まるで人間じゃない!?
驚異的なのはそのコントロールもだ!ストライクゾーンの四隅を狙い打ち、一球ごとに投げ分ける精度は「神業」と呼ばれるほど。150球を投げてもコントロールや球威が一切落ちない頑強さは、まさにモンスター級。試合終盤でもフルスロットル、打者は常にプレッシャーを感じ続ける羽目になる。持久力と鋼の肉体を併せ持った、完全無欠のエースだ!
超攻撃型投手___バッターとしてもトップクラス!
北瀬は投げるだけじゃない。打席に立てばパワーヒッターとしても恐れられる存在だ。左打ちから繰り出される強烈なスイングは、外野フェンスを軽々と越える破壊力。投手でありながら史上最強と言われた薬師打線の3番を任され、勝利をもぎ取るための圧倒的な存在感を放つ。打てる投手というよりも、「打てて、抑える投手」として、1人で試合を決められる真の二刀流なのだ!
総評___日本の至宝、世界に轟く!
北瀬涼は間違いなく日本史上最強のサウスポーであり、投打にわたって他を圧倒する存在だ。WBCでは日本代表の絶対的エースとして、世界の強打者たちをどう料理するか注目が集まる。誰もが知る「北瀬伝説」は、ここからさらに大きく広がっていく___この男を止められる者は、もはや存在しない!
北瀬は手に持った雑誌をじっと見つめながら、顔を少し赤らめていた。
記事には彼の投球スタイルが細かく描かれており、「172km/hの速球」「魔球の領域に達したスライダー」「ヒットをゴロに変える程の怪物球威」などと記されている。
これを見た瞬間、彼は自分がどれほど注目されているのかを改めて実感していたが、同時に少し気恥ずかしさも感じていた。
ある程度は事実かもしれないけど、流石に盛りすぎじゃね?とも感じていたらしい。
高校生になってから急に環境が変わり過ぎて、急激に膨れ上がる自己肯定感みたいな感情ををどうすれば良いのか分かっていなかった。
その時、スマートフォンが振動し通知が届いた。
送り主はすでに卒業しているかつてのエース、真田俊平。彼とは今でも頻繁に連絡を取り合っており、北瀬にとって兄貴分のような存在である。
| 俺も見たぞ!雑誌の記事特集! |
| 相変わらず怪物って書かれてんな! |
真田先輩からのメッセージはいつも通り軽いノリだったが、その文面にはしっかりと称賛が込められている。
北瀬は尊敬している先輩に褒められた事を素直に喜びながら返信を打った。
| 正直ちょっと恥ずかしいですけど… |
| ありがとうございます! |
| 俺も、先輩を追いかけてここまで来れました |
| いや、お前は俺よりスゲェよ |
| 涼が日本一のエースって事は世界中が知ってんだ! |
| 自信持ってこうぜ! |
| ありがとうございます! |
| メジャーに行ったら俺なんかより凄い人が |
| 沢山いますけど頑張ります! |
| いやその前に地方大会と甲子園がありますが |
| 頑張れ!俺も応援してっからな! |
| まあメジャーにお前よりスゲェ奴が |
| いるのかは分かんねぇけど笑 |
直ぐに既読が付き、返信してくれた真田先輩。
彼の言葉は北瀬にとって大きな支えであり、心の中にいつも響いていた。
(俺は多分、日本の高校生の中では1番強いピッチャーだと思う……だから次目指すのは、世界一のピッチャーだ!後で伊川達が来た時、驚く位強くなってやる!
……なんて、そこまで行けるかはあんまり自信ないけど)
特に目標もないまま、強靭な肉体を駆使して練習を積み重ねて来た北瀬。
この時から何となく、世界一というワードに心をくすぐられる様になった。
ちなみに彼は、未だに自分が世界最強クラスである事を知らない。
雑誌やテレビでの報道を見ても、過大表現だと判断し続けているからだ。
別にマスメディア嫌いではないのだが、実は報道をあまり信用していない。
中学校の頃に妙な陰謀論が流行っていたらしく、全部を真に受けている訳ではないのだが……メディアの言うことは半分位ウソだと思っているらしい。
薬師高校に入ってからの北瀬はマスコミについて友達と話す事が無かったので、昔聞いたイメージがこびりついたままになっている。
その後、部室にいた伊川始と由井薫が雑誌を手に取って、北瀬に話しかけた。
伊川は北瀬の幼馴染であり、互いに苦しい時期を共に乗り越えてきた特別な関係だ。
由井は北瀬の相棒で、薬師の捕手として彼の速球を受け止める頼れる存在である。
「おーい北瀬、もうこれ見たか?『北瀬涼、高校野球界に新たな伝説を作る』だってさ
なんかもうお前のこと、神様みたいに書いてあるし」
「北瀬さんは実際、この世界じゃ神様みたいなものですよ……俺からすると伊川さんも似たようなものですけど」
伊川は雑誌を持ちながら、口角が上がりそうなのを必死に抑えようとしている。
彼の声には軽い茶化しのようなニュアンスが含まれているが、その実、幼馴染である北瀬の快進撃を誇りに思っているのが明白だった。
北瀬は恥ずかしそうに目を逸らしながらも、伊川に向かって言葉を返す。
「やめろって、そんな大袈裟に書かれるとプレッシャー感じるし。まー実力が認められてんのは嬉しいけどさ」
北瀬は苦笑いしながら雑誌の記事を見つめる。
伊川はその様子を見て、北瀬の肩をポンと叩いた。
「いいじゃん、お前は俺達のエースだ!
それにどーせ投げてる最中はプレッシャーと無縁なんだから、もうちょいドヤ顔しても良いんじゃね?」
薬師野球部の部室では夕方の練習を終えた選手達が雑誌を手に、例の特集記事を囲んで盛り上がっていた。
全国の高校野球ファンが注目する薬師の大エース、北瀬涼の実力を余すことなく記したその記事には、彼の驚異的な能力が次々と並べられていた。
「やっぱ北瀬さんすっっげ〜!」
「こんな人と一緒のチームで戦ったとか一生モンだぜ!」
MAX172km/hの速球、一球ごとに変幻自在に投げ分けるコントロール、150球を超えても一切衰えないスタミナ、さらには打者の目の前で消えるようなスライダーに、一級品のカーブとフォーク。
今まで挙げた要素が1つだけでも十分過ぎるほど強力なピッチャーなのに、彼の打撃もまたメジャークラスのパワーヒッター級。
これらが1人の高校生に集約されているのは、常識の範疇を超えている。
「いやーこうして羅列されるとなんつーか、漫画とかじゃなきゃ許されない超スペックっすね……」
「……2年前ならフィクションでも使われなかったでしょう。160kmを超えるのは、日本人には無理だと言われていましたから」
部室の隅で2人で記事を読みながら、薬師の雷蔵監督と片岡コーチが苦笑いを浮かべている。
「お前、小学生が考えたヒーローみたいだぞ?マジ」
轟監督の言葉に、部室内が妙な笑いに包まれる。
監督自身、北瀬が規格外の存在であることは承知の上だが改めて文字に起こされた彼の実力を目にすると、現実離れしているように感じずにはいられなかった。
「……それで北瀬、ここまで書かれるとどんな感じ?
気分はスーパーヒーローみたいな?」
秋葉がからかうように言うと、北瀬は顔を赤らめながら少し視線をそらした。
「いやー、まだそんな大した選手じゃないって。期待に答えられる様にもっと強くならなきゃだし
……まだまだ、俺はもっと強くなるよ!」
『……えっ??』
北瀬は照れ臭そうに言ったが、その目には強い意志が垣間見えている。
その言葉に、部室の温度が一気に引き締まった。というか部員達は、雑誌を見ながら心の中で思わず突っ込んだ。
(待って待って待って、コイツまだ強くなる気?)
(いやいや、北瀬先輩それ以上強くなってどうするんですか……?もうメジャーでも頂点狙えるレベルなのに)
「おい北瀬。もし地球代表として戦うんなら、他には一緒に誰が戦うんだろうな?やっぱりイチロウとかか?」
監督は冗談混じりに話を振りながら、まるで北瀬が本当に宇宙人と戦うつもりだと言わんばかりの顔をしていた。
その言葉に部員たちは一斉に笑い出す。
秋葉は声を上げて笑いながら、ボケた監督に対してすぐに突っ込みを入れた。
「いやいや、地球代表って何ですか!
北瀬、お前まさか宇宙まで行くつもりなのか?」
「ないないそれはない!」
北瀬はさらに顔を赤くして苦笑いを浮かべた。
彼の恥ずかしそうに照れた姿が逆に珍しく、部員たちの笑いが一層大きくなる。
由井も隣で微笑みを抑えられなかったが……心の中では別のことを考えていた。
(いや監督も秋葉さんも……北瀬さんは冗談じゃなくて、本気で今より強くなりたいって言ってると思うんですけど
……マズい、この人いつか本当に地球代表とか言い出しかねない気がする。もう何と戦うつもりなんだ?この人。まさか本当に宇宙人と戦う日が来るのか?)
そんな思考が迷走している由井をよそに、北瀬の決意は固かった。
彼にとって「もっと強くなる」という言葉は単なる口先だけではなく、実際に到達可能な次元にあるからだ。
周囲がドン引きするような北瀬の目標は、彼自身にとっては当たり前の未来だった。
「イチロウか、そりゃすげぇな!ハハ、そしたら日本だけじゃなくて、世界中の凄い奴らが集まるチームになるだろうな!そうなったら俺も呼べよ」
「そしたら俺もDHで出してくれ……下さい!」
「DHは雷市じゃね?」
三島と火神が、どこか楽しそうに話を広げる中、次々と周りの人間も乗っかっていく。
「そしたら他の野手は、メジャーからカフレラとか来ればいいんじゃね?もちろんセカンドは俺だよな!」
「伊川が二遊間なら安心だな!でも、相手が宇宙人って……もうみんな何の話してんだよ!」
北瀬はそう言いながらも、仲間たちの楽しげな様子に嬉しそうな笑みを浮かべている。
「まっ仮に相手が地球人じゃなくても、試合ならやる事は変わらないか。俺達ならきっと、どんな相手でも勝てる!」
北瀬のその言葉に、部室の空気が一瞬で引き締まった。
彼の真剣な目からは、チームを本気で信じている重みが伝わったのだ。世界最強クラスの大エースの信頼は、本人が考えているよりも重要なものだろう。
その様子を見ていた黄瀬も綾瀬川も負けじとその場に加わり、声を上げる。
「北瀬さんなら、きっとどんな相手でも行けます!……俺も一緒に戦いますから!」
「センパイ達の背中を追って、俺ももっと頑張るッス!」
その言葉に、部室全体がまた大きな笑い声に包まれた。
冗談交じりのやり取りの中にも、薬師高校野球部の一体感と情熱が感じられたからだ。
彼らの目標はエース北瀬を中心に、新たなステージへと広がっていく。
どこまでも、限界などないと信じているからこそ、彼らは今日も明日も全力で野球に打ち込むのだった。